硬筆毛筆書写検定理論問題のすべて―文部省認定




平成18年度から、準1級と5級が、30年度から準2級が新設されました。新設された級はそれぞれ1級・2級・4級に準じた問題が出題されております。さらに2級・準2級・3級の理論問題の解答方法がマークシートによる選択式に変更になりました。引き続き本書で硬筆・毛筆とも理論問題の学習をしていただければ、マークシートでの解答にも余裕をもって臨めます。
日本習字普及協会

まえがき

書写検定の一級・二級を受験しようと思う人や、また、三級・四級の受験者を指導している人は、必ず「手びきと問題集」を手もとにもっていなければなりません。「手びきと問題集」は、書写検定の憲法ともいえる基本図書で、具体的な知識を十分にもっている人なら、手びき一冊でも十分です。

しかし、手びきだけでは不安に思われる人たちのために、この本を書きました。この本は、手びきの中にある説明をさらに詳しく説明し、また親切な参考資料をたくさん加えてあり、勉強の方法や答案を書く上での注意までこまごまと説明しているので、手びきとこの本の2冊を持てば、もう鬼に金棒だと思います。

さらに、この本は、単に書写検定のための受験参考書であるだけではなくて、書道や短歌・俳句を勉強している人にとって、さらには一般の人にとっても、教養の書、常識の書といえると思います。
平成7年8月10日

著者

江守 賢治 (著)
岩崎芸術社 (1995/09)、出典:出版社HP

目次

まえがき
(理論問題の領域)      理論問題の勉強を始める前に
常用漢字を正しく書く  漢字の字体の問題
正誤OX のモノサシ
漢字は確実・丁寧に書く
「常用漢字表」でいう「楷書の習慣」
楷書の習慣による形
まちがい捜しの問題で修正すべき字
漢字の筆順       筆順の問題
小学校における漢字筆順の指導
二級のための筆順一覧表
注意すべき行書の筆順一覧表
古典的行書作品の中から
仮名の筆順          三級・四級・五級のための筆順一覧表
漢字の部分の名称    漢字の部分の名称を問う問題
漢字の部分の図解
漢字の部分の名称一覧表
漢字の部分の名称の説明
楷書の形を添削する   楷書の形を添削する問題
添削の問題で指摘すべき字の例
付 小学校での「標準の字体」
旧字体と書写体      旧字体と書写体の問題
新字体と旧字体について
まず覚えるべき旧字体の漢字一覧表
まず覚えるべき書写体の漢字一覧表
草書を読む       草書を読む問題
新字体をそのまま草書風に書いた字
古筆を読む       古筆を読む問題
古筆(こひつ)とは
古筆を読む問題の模範解答
よく使われる変体仮名一覧
古筆の中にある注意すべき箇所の例
粘葉本和漢朗詠集から5例
平仮名・万葉仮名・変体仮名
地模様のある作品が問題に出されるときの図版
元暦校本万葉集の中から一首
平仮名のもとの漢字   平仮名のもとの漢字平仮名のもとの漢字を問う問題
草仮名の「あ」と「き」が平仮名になるまでの形
もとの漢字から平仮名への変遷
歴史的仮名遣い 歴史的仮名遣いの問題
一級の理論問題に歴史的仮名遣いが出題される理由と勉強法
歴史的仮名遣いの例
歴史的仮名遣いで注意すべきこと
いろは歌
書道史         書道史に関する問題
年表①②③
中国の人名と作品名
日本の人名と作品名
書道用語        書道に関する用語の問題
用語の索引に・印を付ける
追補
標準の字体       「標準の字体」が発表された日の新聞記事
「標準の字体」の問題点
「標準の字体」に対する文部省の考え
索引
あとがき

指導者のために
同じ漢字でも、楷書として書く字と、活字の形とは同じではない。
戦前の小学校では、楷書としてこんな形の字も学習していた。
戦前の小学校では、このような行書の字も練習していた。
ある人からの「辛」の字についての質問。
漢字の部分の名称は、必要なものだけ知っていればよい。
漢字の部首について
しんにょうとしんにゅうについて
そうこうという名称について
頁・おおがい・ページについて
書写体について
くさかんむりの形について
しんにょうを字体の上から見る。
ワープロで出てくる挙の字。
汝等は行書を書き得るや。
草書は古典で学ぶ。
仮名のもとの漢字に関する説
字源・字母という語について
摩崖(磨崖)と造像と断碑について
実技の勉強に役立つ書道用語。
懸針(けんしん)と垂露(すいろ)

理論問題の勉強を始める前に
「この書写技能検定試験は技能をみる試験のはずなのに、理論問題にかけている比重が大 き過ぎるのではないか」という意見があります。

しかし、最近行われた試験の実際の問題を見て、一つ一つ検討してみても、必要でないと思われる問題は一つもありません。

例えば、旧字体・書写体なんか勉強する必要がないという人に対しては、
(1)50年前の終戦までは、みんな学・挙・画の字を、學・擧・畫の形で書いていたのであり、
(2)書道の勉強の基本である楷書を、古典的楷書作品で勉強すれば、必ず、その中に書写体といわれる字が沢山出てくる、
という事実を知っていただきたいし、また「草書はたいへんむずかしい、もう必要がない字ではないか」と考えている人に対しては、
(3)明治7年検定済の「小学読本三」には、次のような内容があり、
(4)終戦まで使っていた小学校高学年の習字の教科書にも草書で書かれた手本が幾つもあった、 という事実を知っていただきたいと思います。

そこで、この種の試験では、その内容に興味をもち、また、勉強が必要なのだということをわかっていただくために、書写検定に関係のない一つの刺激材をお目にかけましょう。

これは、最近(平成7年5月下旬)のM新聞の広告欄で見たもので、試験の実施団体ではなくて、通信教育関係の企業が出したものらしいです。

正解
1 そうこう
2 はくう (夕立・にわか雨)
3 ゆめゆめ
4 じって (じゅって ×)
5 うろん

これには、文部省認定の漢字検定の一級が「らくらく合格」などとありますが、らくらくなんてとんでもない、ものすごくハードな勉強が必要だとは思いませんか。

また「毎日の生活にスグ役立つ漢字の読み書き・・・」とありますが、これらの漢字が読 めるということが日常の生活に役立つとはどうしても思えません。私は、これらの知識は 教養だと思っています。

書道・習字やペン習字は、日常の役に立つ面ももちろんありますが、私は、やはり国民的教養として身に付けるという意味の方が大きいのだと思っています。 なお、芸術は人を喜ばすものであり、教養はひけらかすものではないと考えています。

江守 賢治 (著)
岩崎芸術社 (1995/09)、出典:出版社HP