公務員版 悪魔の辞典




はじめに

本書は、公務員や自治体に関係する用語を解説する辞典です。

ただし、いわゆる真面目な用語辞典ではなく、読者の皆さんに用語の「真実」を理解していただくために、皮肉、ユーモア(ブラックも含む)、一刀両断、愛情など、様々なスパイスを加えています。

ご存じの方もいるかと思いますが、発想の原点は、1911年にアメリカで出版されたアンブローズ・ビアス著『悪魔の辞典』にあります。同書は、様々な単語を皮肉、毒舌などを加えて再定義した、現在も読み継がれている名著です(例えば、「幸福」は「他人の不幸を見ているうちに沸き起こる快い気分」などと説明されています)。

日本でも、これをもとに『ビジネス版 悪魔の辞典』(山田英夫著、日本経済新聞社)や、池上彰氏がテレビの選挙特番で紹介した「政界 悪魔の辞典」などがありますが、本書はその「公務員版」です。

本書の効用は、次の3点です。

第一に、日々忙しく仕事をする中で、いくばくかの笑い、癒やしを得られることです。本書
を見つけた皆さんですから、日々公務員向けの実務書、参考書、ビジネス書などをお読みのことでしょう。もちろん、それらも大切ですが、本書は、「あるある!」と職場の様子を思い浮かべつつ、思わず笑みがこぼれる――、そんな一冊としてお楽しみいただけることでしょう。

第二に、様々なスパイスを加えた再定義により、公務員や自治体にまつわる用語を端的に理解できることです。皆さんに「ニヤリ」または「クスッ」と笑っていただきたいのはもちろんですが、単に「ウケねらい」のためだけに執筆したのではなく、その先にある真実や実態に思いを巡らせていただきたいという、崇高な思いが隠されているのです(本当です!)。

実務や試験対策などにも、多少は(?)役立つことでしょう。人事異動のため、法律・制度等を覚えなければならない方、昇任選考のため勉強する必要がある方、公務員志望の方などにとって、真面目な学術書・参考書を読むよりも、かえって理解が進むのではと考えています。それは、本書の定義により、真実の姿をわかりやすく理解できるからです。……と言っても、あくまで「参考」程度。本書の内容をそのまま試験で書いてはいけません(笑)。

第三に、公務員の方であれば、本書の理解度で「どれだけ自分が公務員に染まっているか」を測ることができることです。本書の用語のすべてを理解できるとしたら、地方自治のリアルを熟知していると言えるでしょう。一方で、骨の髄まで公務員の世界に染まってしまっているとも言わざるを得ません(笑)。それが幸か不幸かは、ご自身の判断に委ねますが、理解できない用語がある方は、まだまだ公務員稼業を客観的に見ることができる幸せな方と言えるかもしれません。

ここまでお読みいただいた方であれば、既におわかりかと思いますが、本書はこのような趣旨でつくられていますので、「ふざけている!」「だから公務員はダメなんだ!」などのクレームはご遠慮ください。あくまで本書の趣旨をご理解いただけますようお願いいたします。

なお、わずかながら、中には、特定の世代にしかわからない皮肉、ユーモアもあるでしょう。「これ、どういうこと?」と思ったときは、若手・中堅の方であれば、ぜひ上司に聞みてください。管理職の方であれば、部下に尋ねてみるとよいでしょう。コミュニケーションツールとしても、お役立ていただければ幸いです。

最後に、読者の皆さんには、一人の時に本書を読むことをお勧めします。会議中にこっそりと読んだり、通勤電車の中で本書を広げたりすると、周囲の人にきっと奇異な目で見られるからです。それによって不都合が生じても、責任は持てませんので悪しからず。

公務員実務用語研究会 (著)
学陽書房、出典:出版社HP

目次 – 公務員版 悪魔の辞典

第1章
新人諸君、これだけは知っておくべし!
役所の常識セレクション
1仕事の基本
2組織
3文書・IT

第2章
中堅職員なら、知らなきゃ赤っ恥?
自治体政策のキーワード
1計画と行政運営
2行政課題

第3章
全職員、知ってトクする知らなきゃソンする?
地方公務員制度の真実
1人事
2給与・勤務条件等

第4章
係長なら部下に説明できて当たり前!
地方自治の基本ルール
1地方自治制度の基本
2法令・財産等

第5章
苦手なあなたもこれならわかる!
財政・会計のリアル
1自治体財政の基本
2予算と決算
3財政運営と会計

第6章
管理職はコレを知らねば地獄を見るかも?
地方議会の実態
1議会の基本
2会議と議員
3議会答弁集

第7章
自治体の日常と口伝を集めました!
公務員のホンネ
1イベント
2格言・教訓・叫び

〈編集方針〉
一.この辞典は、公務員・自治体を取り巻く業界用語ならびに日常用語全般にわたる事項を含む辞典として編修したものである。ことばの定義を簡明に与えることを主眼としつつ、同時に皮肉・ユーモア(ブラックを含む)といった様々なスパイスを加えることにも留意した。

二,用語は、区市町村(基礎自治体)、都道府県(広域自治体)を問わず公務員(自治体職員)が用いるもの、いずれの部署においても知っておけばいつかどこかで役立つ(であろう)ものを広く収集し、その重要なものを網羅した。地方自治制度、地方公務員制度などの法令用語はもとより、カタカナ言葉、隠語・慣用句の類についても、その採録に意を用いた。

三.語釈は、執筆者の経験をふまえたものであり、すべての公務員(自治体)に共通する実態を示したものではないものの、できうるかぎり多くの読者にとって「共感」を抱き、「笑い」がこぼれるものとなるものと願いつつ執筆・編集した。また、それと同じくらい(いや、それ以上に!)読者諸兄姉にとって、公務員人生の糧となる「学び」が得られることを心より願いつつ行った。

公務員実務用語研究会 (著)
学陽書房、出典:出版社HP