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目次 – 改訂DVDで学ぶ手話の本全国手話検定試験準1級・1級対応

はじめに

本書を手にされたみなさんへ

みなさんは、街のなかで、バスや電車のなかで、職場で、その他いろいろなところで、手話でコミュニケーションしている人たちを見かけたことがありませんか?

みなさんは、手話を学んで、ろう者(手話をコミュニケーション手段として使う耳の聞こえない人)と話してみたい、友達になりたい、あるいは手話通訳活動をしてみたいなど、さまざまな思いでこの本を手にされたことでしょう。

手話は言語であり、最近では手話言語法(仮称)の制定を求めて全国で取り組みが進められ、手話の社会への広まりがますます求められています。ろう者が豊かに暮らすためには、 手話をさらに多くの人々に広めていくことが、ろう者の切実なる願いです。

社会福祉法人全国手話研修センターでは、ろう者が生活のいろいろな場面で、手話でコミュニケーションできる、そんな社会をめざして、2006(平成18)年より「全国手話検定試験」 を行っています。

この試験は、ろう者とどれだけ手話でコミュニケーションができるかということを大切に していますので、ろう者の集まりである一般財団法人全日本ろうあ連盟や、手話通訳者や手話を学ぶ人たちの集まりである一般社団法人全国手話通訳問題研究会や一般社団法人日本手 話通訳士協会などと協力して行っています。

さてこの度、基本単語リストの変更にともない『手話でステキなコミュニケーション 5 改訂 DVDで学ぶ手話の本 全国手話検定試験準1級・1級対応』をつくりました。前シリーズと同様、この本はDVDと一体になっており、収録している練習問題はろう者が表現していますので、単語だけでなく、短文・長文・会話などのろう者の手話の表し方に ついて実際に学ぶことができます。

また、試験を受ける方だけでなく、手話サークルや手話教室などで手話を学ばれるみなさんにも使っていただけるように工夫してあります。本書の質問などを使いテーマにそって学 習されることで、日頃の手話での会話がより豊かになり広がりがでることと思います。

どうか、この本を通して一人でも多くの方に手話を学んでいただき、ろう者と手話でステキなコミュニケーションの輪が広がる社会となることを期待しています。

2016(平成28)年8月
社会福祉法人全国手話研修センター

この本の使いかた

この本は、DVDと一体となっています。
「見る言葉」である手話を、DVDでくり返し見て、自然な手話を身につけましょう。

○この本の構成
※本書では準1級と1級、2つの級を収載しています。1級は基本単語の設定がありませんので、準1級と1級ではSTEPの構成が異なっています。

単語を覚えよう(第1~3章のみ) STEP1(準1級)
日常会話でよく使われる単語が、50音順でDVDに収録されています。収録順は、テキストの巻末に一覧があります。全国手話検定試験にも対応していますので受験をめざす方は、例文に出てくる単語や、自分のことを話すときに必要な単語から覚えていくようにしましょう。

ストーリーを練習しよう STEP2(準1級) STEP1 (1級)
基本となるストーリー(例文)です。DVDを見ながら、同じように表現できるように練習しましょう。覚えられたら、テキストの文を見ながら表現してみましょう。

ストーリーを作ってみよう STEP3(準1級) STEP2(1級)
テキストのテーマに基づいて、自分でストーリー(例文)を作って表現してみましょう。

長い文章に挑戦してみよう STEP4(準1級) STEP3(1級)
テキストを読んで内容を把握した後、DVDを見ましょう。最初は一文ずつ止めなかつ、 単語を確認し、同じように表現できるように練習してみましょう。慣れてきたら、視線や表情・手話の強弱なども意識しながら、全文を表現してみましょう。

手話で会話してみよう STEP5(準1級) STEP4(1級)
テキストの長文に基づいて質問と答えがDVDに収録されています。質問に対して答えてみましょう。また、質問をしてみましょう。

自分のことを表現してみよう。 STEP6(準1級) STEP5(1級)
ここまで学習したことを使って、自分のことを表現してみましょう。単語のわからないところは、身振りを取り入れるなどして、相手に伝えるようにしましょう。

「単語を覚えよう」の手話単語の動作文については、一般財団法人全日本ろうあ連盟の許諾を得て、『わたしたちの手話学習辞典 I』より転載しています。

学習を始める前に

①第1~3章(準1級対応)はSTEP1~STEP6、第4~6章(1級対応)は STEP1~ STEP5までの学習内容を設定しています。左ページの「◎この本の構成」における学習方法を踏まえて、学習に取り組みましょう。

②第1~3章 (準1級対応)については、右上に級外となる級の数字をつけています。上の級の単語ですが、日常会話でよく使われる単語ですので、ぜひこの機会に覚えておきましょう。

③DVD映像の手話表現において、表現を学ぶにあたって知ってほしいこと、気をつけてほしいことなどを「学習のポイント」としてまとめました。日々の会話にも活かせるポイントですので、ぜひ目を通して参 考にしてください。

④モノクロのアミの掛かった単語(例:まとめる)は副語彙といい、資料編の基本単語一覧表にある見出し の単語(主語彙)のあとに続く単語です。

地域の手話サークルなどで、ろう者と会話をしてみましょう。手話の表現は、地域によって、 また世代によっても多少の違いがあります。テキストの表現だけにとらわれず、いろいろな表現を身につけるとさらに会話が広がります。

全国手話研修センター (編集)
出版社: 中央法規出版; 改訂版 (2016/9/9)、出典:出版社HP

目次

はじめに
この本の使いかた
全国手話検定試験とは?
学習の範囲とポイント
ろう者の生活

第1章 社会生活について話してみましょう
準1級
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 ストーリーを練習しよう
STEP3 ストーリーを作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP 6 自分のことを表現してみよう

第2章 趣味や健康について話してみましょう
準1級
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 ストーリーを練習しよう
STEP3 ストーリーを作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

第3章 仕事や職場について話してみましょう
準1級
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 ストーリーを練習しよう
STEP3 ストーリーを作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

第4章 医療や教育について話してみましょう
1級
STEP1 ストーリーを練習しよう
STEP2 ストーリーを作ってみよう
STEP3 長い文章に挑戦してみよう
STEP4 手話で会話してみよう
STEP 5 自分のことを表現してみよう

第5章 労働や福祉について話してみましょう
1級
STEP1 ストーリーを練習しよう
STEP 2 ストーリーを作ってみよう
STEP 3 長い文章に挑戦してみよう
STEP4 手話で会話してみよう
STEP 5 自分のことを表現してみよう

第6章 政治や経済について話してみましょう
1級
STEP1 ストーリーを練習しよう
STEP2 ストーリーを作ってみよう
STEP3 長い文章に挑戦してみよう
STEP4 手話で会話してみよう
STEP 5 自分のことを表現してみよう

資料編
基本単語一覧表
全国手話検定試験 Can-doリスト
参考図書の紹介

全国手話検定試験とは

1. 全国手話検定試験は、いつから始まって、どこが行っているの?
この試験は、2006(平成18)年から始まりました。2003(平成15)年に、JR嵯峨嵐山駅(京都市)の駅前にオープンした社会福祉法人全国手話研修センターが行っています。

2. 全国手話研修センターはどうしてできたの?
手話を広めたり、手話の研究をしたり、手話通訳者を育てたり、手話通訳者を育てるための講師が勉強できる施設がほしいという声に応えてできました。

ろう者の団体(「一般財団法人全日本ろうあ連盟」といいます)、手話サークルに通っている人や手話通訳者などの団体(「一般社団法人全国手話通訳問題研究会」といいます)、手話通訳士の団体(「一般社団法人日本手話通訳士協会」といいます)など、多くの人たちの願いが実ってつくられた施設です。全国でただ一つの施設です。

3. 試験の目的は何?
①手話のできる人が一人でも増えることを願って、ろう者が安心して暮らせる社会、ろう者が生活のいろいろな場面で、手話でコミュニケーションができる社会(情報バリアフリーの社会)をつくることをめざしています。

②手話を学ぶ人たちから「手話通訳者になるかどうかはわからないが、自分はどれぐらいろう者と話ができるかを知りたい」という声があるように、手話でコミュニケーションできる力を知ることも試験の目的の一つです。

全国手話検定試験を受けられるみなさんを始め、ろう者と手話でコミュニケーションをする楽しさを一人でも多くの人に知っていただき、「全国手話検定試験」で自分のレベルを知り、地域のろう者との交流や仕事などに活用していただきたいと願っています。

また、全国手話検定試験に合格された方が、そのレベルによってどんなことができるのか、活用例等を盛り込み「全国手話検定試験 Can-doリスト」を作成しました。このリストは、各級ごとの到達度のめやす、およその学習歴、手話を読み取る力、手話で表現する力、具体的な活用例を一覧表にしたものです。巻末の資料編 (92~93ページ)にありますので、参考にしてください。

4.全国手話検定試験の特徴は何?
手話を学び、学んだ手話でろう者と実際にどれだけ手話でコミュニケーションができるか、 ということを大切にしています。そのために、ろう者の面接委員と手話でコミュニケーショ ンをする試験を、すべての級で取り入れて評価しています。

5. 全国手話検定試験を行うためには?
全国手話研修センターが試験のための計画や準備をして、一般財団法人全日や一般社団法人全国手話通訳問題研究会、一般社団法人日本手話通訳士協会 動法人全国聴覚障害者情報提供施設協議会、一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構、全日本ろう学生懇談会とともに協力しあって行っています。

6. 受験料は?
各級の受験料は、以下の表のとおりです(2016 (平成28)年4月1日現在)。

一般 小・中学生 一般 小・中学生
5級 3,500円(税別) 2,000円(税別) 2級 6,000円(税別) 5,000円(税別)
4級 4,000円(税別) 2,500円(税別) 準1級 7,000円(税別) 6,000円(税別)
3級 4,500円(税別) 3,000円(税別) 1級 8,000円(税別) 7,000円(税別)

 

7. 受験会場は?
全都道府県で試験が受けられるように準備をすすめていますが、毎年試験を行う会場が変わりますので、詳しいことは全国手話研修センターにお問い合わせください(巻末に連絡先を掲載しています)。
みなさんのお住まいの地域で試験が実施されない場合は、他の会場で受験することができます。

8. 受験対象者(試験を受けられる人)はどんな人?
手話を勉強している人なら、誰でも受験できます。

9. 試験内容は? 出題方法は?
各級の試験内容と出題方法は、以下の表のとおりです。

実技試験 筆記試験
5級・4級・3級・2級・準1級・1級 2級・準1級・1級
手話の読み取り 画面に提示される手話を見て設問の内容に合ったものを選びマークシートに記入します。 2級、準1級、1級とも同科目(次頁の10を参照)とし、難易度別(初級・中級・上級)出題となっています。
*2級は四肢択一方式
*準1級は穴埋め方式
1級は小論文方式
手話での表現
(手話によるスピーチ)
提示されたテーマに基づいて、手話で表現(スピーチ)します。
手話での会話
(手話による応答)
上記の表現を基に面接委員の質問に答える方法で直接会話をします。

 

10. 筆記試験の内容は?
2級・準1級・1級の筆記試験は、以下の6つが共通科目となっています。
①聴覚障害者とのコミュニケーション手段とその特徴
②耳の仕組み、障害と社会環境
③聴覚障害者の暮らし
④ろうあ者の歴史
⑤聴覚障害者関連福祉制度
⑥手話の基礎知識

11. 合格基準は?
①手話の読み取り試験、②手話での表現・手話での会話試験、③筆記試験、前記①〜③それぞれの試験結果がおおむね70%を合格基準とします。
※5級・4級・3級の場合は、筆記試験がありません。

12. 受験のめやすは?
各級の試験の領域は、以下の表のとおりです。

級のめやす(レベル) おおよその学習歴 単語数
5級 挨拶や自己紹介を話題に会話ができる
[名前、家族、趣味、誕生日、年齢など]
6ヶ月 約200~300
4級 家族との身近な生活や体験を話題に会話ができる
[一日、一週間、一年のできごとなど]
1年 約500~600
3級 日常生活の体験や身近な社会生活の経験を話題に会話ができる
[友人や近所の人、職場の同僚などと、子どものこと、健康のこと、職場のことなど]
1年半 約800~1,000
2級 社会生活全般を話題に平易な会話ができる
[旅行、学校、予約、公的な挨拶、福祉事務所のことなど]
2年 約1,500
準1級 社会活動の場面、一部専門的場面での会話ができる
[学校、職場、地域、活動(自治会、保護者会、サークル、趣味)のことなど]
2年半 約2,200
1級 あらゆることを話題によどみなく会話ができる 3年 約3,000
全国手話研修センター (編集)
出版社: 中央法規出版; 改訂版 (2016/9/9)、出典:出版社HP

学習の範囲とポイント

準1級および1級で学ぶことは何?(学習の範囲)
準1級は、手話を学び始めて2年半くらいの方が対象です。

ろう者と積極的に会話をしようとする態度をもち、社会活動の場面を話題に会話ができ、一部専門的な場面での会話ができることをめざしています。

また1級は、ろう者と積極的に会話をしようとする態度をもち、あらゆる場面を話題にしてよどみなく会話ができることをめざしています。

そのためには、毎日の生活のことだけでなく、社会で起きた事象や福祉のことについても関心をもち、表現したり読み取ったり、会話をしたりします。

準1級は、手話奉仕員養成テキスト『手話を学ぼう 手話で話そう』を学習し、その内容を習得されたレベルです。また、1級は同テキストを習得され、さらに地域の聴覚障害者との交流を深め、手話であらゆることをお話できるレベルです。

学習のポイント
単語を覚えましょう

単語の数は増えると、会話が広がります。 準1級では、DVDで単語の表現をくり返し見て、表現したり読み取ったりしてみましょう。 DVDの基本単語は、索引系列のように〈あ行〉から入っています。

まずは、ストーリー(例文)の中に出てくる単語や、自分のことを話すときに必要な単語から覚えていくとよいでしょう。

準1級では、社会生活や専門的な分野にかかわる単語がいろいろ出てきます。 趣味や健康のこと、仕事や職場のこと、社会で起こったできごとなど、巻末の基本単語一覧表を使って、単語を整理しながら学習を進めてみましょう。

なお、1級は基本単語の設定がありませんので、5級~準1級の基本単語一覧表の単語に加えて、医療や教育、労働や福祉、政治や経済などさまざまな分野で使われる単語も覚えましょう。

どの級でもそうですが、一つひとつの手話を相手にわかるように、ていねい正しく表すことが大切です。

そのためには、「手の形」「手の位置」「手の動き」を確かめてきちんと覚え、表現の間違いや読み間違いのないようにしましょう。手話には地域差や世代間の違いなどもありますので、あなたの身近なろう者から教えてもらった手話(単語)と、DVDの中で表現されている手話(単語)とが異なっている場合もあります。どちらも間違いではありませんので、両方覚えるとあなたの会話はさらにステキなコミュニケーションになりますよ。

ストーリーの練習をしましょう
DVDを見ながら、同じように表現してみましょう。

まずは、単語を正しく手話の語順どおりに表現できるようにしましょう。

次に、単語を表現するときのスピードや、単語と単語のつなぎのところに気をつけてみましょう。

手話は、語と語のつなぎが重要なポイントになります。単語の位置や方向が表現される内容によって工夫されています。これは、手話奉仕員養成テキスト『手話を学ぼう手話で話そう』で学習する内容です。

それができたら、次は、視線や表情に注目しましょう。ストーリーがDVDのように、自然に表現できるようになるまで、くり返し練習しましょう。

長文の練習をしましょう
テキストの文章を読んで、まず内容を理解しましょう。

次に、DVDを見て話の流れがつかめるようになりましょう。わからない単語は、テキス トの手話単語分解を見て、確認しましょう。

DVDだけで、手話を読み取れるようになったら、自分で表現してみましょう。

まずは、一文ずつ区切って表現できるようになりましょう。ストーリーのときと同じで、 最初は単語を正確に並べられること、できるようになったら手話の位置や方向、表現の大きさやスピードにも気をつけて表現してみましょう。視線や表情も重要なポイントです。

手話の語順を覚えるくらい練習ができたら、全体の文章も表現してみましょう。この時に は、細かいところを落としてもかまわないので、全体として伝えたいことがきちんと伝わる ように表現できることをめざしましょう。

会話の練習をしましょう
テキストにそって、質問に答える内容を自分で考えて表現してみましょう。最初は、DVDの答えのとおりでもかまいません。慣れたら、単語を一部分変えて答えてみましょう。わからない単語があれば、DVDで確認しましょう。

会話をするときは、聞かれた内容に「はい」「いいえ」と答えるだけでは豊かな会話になりません。聞かれた内容について答えるだけでなく、その内容をふくらませ、コメントを加えて話すことができるようになると、豊かな会話になり手話が上達します。

初めて会う人や、ろう者とコミュニケーションをするときは、誰でも緊張(ドキドキ)しますよね。でも、手話は“目で見る言葉”です。話をする相手の目を見て大切です。「目を見て話す」ということは、相手に自分の気持ちを伝えようという心(気持ち)の表れです。

自分のことを話しましょう
DVDで、ろう者の手話表現をくり返し見て身につけることができたら、それを応用して自分のことを手話で話してみましょう。手話単語を知らなくても、身振りや指立など、 いろんな方法で補うことができます。また、この機会に使える単語を増やしていくのも大切なことです。

ここまで練習したら、サークルや集会などろう者のいるところに出かけていって、自分のことをどんどん話してみましょう。表現の上手下手よりも、話したいことを持って、どんどん手話を使って話していくことが大切です。

ろう者を取り巻く社会問題や生活について学びましょう
ご存知のように全国手話検定試験では、2級から実技試験のほかに筆記試験が加わります。「全国手話検定試験とは?」で筆記試験の内容・出題方法について記述しています(6~7ペー ジ)。試験を受ける方はもちろんですが、手話を学ばれる方には、手話を学ぶだけではなく、 手話を言語として生活しているろう者の歴史、教育、労働、障害者福祉の基礎など、手話奉仕員養成テキスト『手話を学ぼう 手話で話そう(講義編)』や『改訂 よくわかる! 手話の筆記試験対策テキスト』、全国手話研修センターのホームページに掲載されている情報などを参考にして学習されるとよいでしょう。

また、日常生活のなかでもろう者を取り巻く社会問題や生活について幅広く情報を得るようにして学ぶことが大切です。

全国手話検定試験で、手話での表現・手話での会話試験を受けるときは次のことを参考にされるとよいでしょう。

①視線を合わせていますか?
「目は口ほどに物を言う」と言いますが、伝えたい気持ちは表情からも伝わります。 相手の目を見てコミュニケーションをすることは大切なポイントとなります。

②わかったふりは困ります
もし、手話による質問が読み取れないときは、遠慮なく「もう一度、お願いします。」 と伝え、再度表現してもらいましょう。それでもわからないときは、もう一度たずねましょう。

また、相手の話がよくわからないときは、恥ずかしがらず、相手に「どこがわからなかったか」をたずねましょう。わからないということを伝えることが、コミュニ ケーションの一つとしてとても大切なことです。

③表情が大切です
手話でコミュニケーションをするときは、身振りだけでなく、表情豊かな表現がとても大切です。人前で表情豊かに表現することはどうしても恥ずかしがってしまうかもしれませんが、伝えたいという気持ちが強ければ自然と表情が豊かになります。

④表現方法はいろいろあります
ろう者とのコミュニケーションの方法は、手話のほかにも、指文字やそのものの動きを身振りで表したり、空書したりするなど、いろいろな工夫で表現できます。

⑤姿勢はどうですか?
姿勢が会話に与える影響はとても大きいものです。例え、真剣に話していても、姿勢がだらしなければ、相手に真剣さを伝えることはできません。正しい姿勢で話しましょう。

⑥服装はどうですか?
手話の見やすさは服装にも関係があります。自分の服装が相手にとって手話表現が見やすいかどうかも注意しましょう。

⑦会話は最後まで、
話は途中で止めずに、最後まで続けましょう。

ろう者の生活
本書 (手話倫定試験準1級・1級対応)より前に発行した『手話でステキなコミュニケーション』シリーズ1~3の「手話って何?」でも解説していますが、「ろう者のことば」であり、「言語」です。2006(平成18)年12月、国連で採択された障害者権利条約に「手話は言語である」と明記されたことをご存知の方もおられるでしょう(注1)。

障害者基本法、障害者総合支援法の改正、障害者差別解消法の制定など国内法が整備された現在、障害者権利条約を日本政府は2014(平成26)年1月に批准しました。権利条約も障害者基本法も「言語(手話を含む)」と規定されています。

その条文を実効化するために日本における手話言語法(仮称)が必要です。手話言語法(仮称)の制定を求めて、全国の自治体議会での意見書採択の取り組みを展開し、2016(平成28)年3月3日に1788の全自治体議会において採択されました。手話言語条例の制定も33自治体(2016(平成28)年3月現在)に上り、これから増えていく見通しです。手話言語法(仮称)・条例が制定されることにより、ろう者が手話という言語を獲得し、ろう者がいつでもどこでも手話を使え、手話による情報を得ることができるようになります。

さて、その手話を学ぶために、私たちは何を大切にして学んだらよいのでしょうか。

例えば、みなさんが英語を学ぶとき、学び方は人によって多少異なるかもしれませんが、単語を覚えることから始め、そして簡単な会話へと進むと思います。 日常会話ができるようになるとさらに英語を学ぶことが楽しくなり、英語が話されている国の歴史や文化・伝統などを知りたくなることでしょう。そしてその歴史や文化・伝統がわかってくると、コミュニケーションがより楽しいものになってきます。

手話を学ぶときも同じです。まず単語を覚えその単語を使って会話ができるように学習するはずです。そして、そこでとどまらず、手話を学ぶときに(暮らし)にかかわって手話を学んでほしいのです。手話を学ぶことと「ろう者の生活」とどういう関係があるの?と思われるかもしれません。よく言われることですが、「手話を学ぶ」のではなく「手話に学ぶ」のです。

長い歴史のなかで虐げられてきたけれどもたくましく生きてきたろう者のさまざまな生活を学んでほしいのです。ろう者が守り育んできた「手話に学ぶ」ことは、ろう者の生活を知ることでもあります。次に、ろう者の歴史について少し触れてみましょう。

日本のろう教育は1878(明治11)年に設立された京都盲唖院が最初だと言われています。当時は聞こえない子どもと目の見えない子どもが同じ学校に通っていました。「手勢法」(注2)といわれる手話を取り入れた教育もされていました。しかし、1880年ミラノにて開催された世界ろう教育会議において手話を排除することが採択され、その影響により、日本においても、しだいに「口話法」が広まっていきました。

長い間、ろう教育は口話法が主流になっていました。口話法は、聞こえない子ども達を聞こえる社会に合わせるためのものであり、聞こえない子ども達に大変な苦労を強いたのです。最近では、聞こえない子ども達にとって手話が重要なコミュニケーション手段であるとして、手話を取り入れるろう学校が増えてきました。ろうの先生が手話で授業をする学校も少しずつ出てきました。大学に進学するろう者も増えています。

先ほど、長い歴史のなかでろう者は虐げられてきたと記述しましたが、もう少し詳しく例を挙げてみましょう。

ろう者は、長い間社会生活のなかでさまざまな差別や偏見を受けてきました。例えば、賃金が安かったり、アパートを借りられなかったり、免許や資格が取れないといったことがありました(目が見えない者、耳が聞こえない者、口のきけない者には免許を与えないとすることを「欠格条項」といいます)。

運転免許については1973(昭和48)年に道路交通法第88条の運用が見直され、条件つきではあるものの、ろう者も免許が取れるようになりました。そして2008(平成20)年6月には、聴覚障害者標識(通称:聴覚障害者マークといいます)とワイドミラーをつけることで、すべてのろう者に運転免許取得の道が開かれました。2001(平成13)年にはほとんどの資格、免許で欠格条項が撤廃され、聞こえない医師や薬剤師が誕生しています。

以前は、さまざまな音声情報から取り残されることが多くありました。また、FAXが普及する前は、お互いに連絡を取る方法は直接会うか手紙を出すことくらいでした。今ではFAXも広く普及し、携帯電話でメールのやり取りができるようになり、いつでも連絡が取れるようになりました。テレビの字幕や手話通訳つきの放送が増えていますし、駅やバス・電車の車内などに、電光掲示板が設置されているところも増えています。

これらの改善は、多くのろう者が当たり前の生活をするために手話関係者とともに地道に続けてきた「ろうあ運動」の成果です。

手話を多くの人に知ってもらうことも、ろう者にとっては大切なことの一つです。ろう者の歴史や生活から学び、交流を深めながら手話の学習を進めていく。 さらに手話の魅力を感じることができます。そしてろう者との出会いが、あなたの世界をより広げてくれることでしょう。

注1 詳細についてはここでは触れませんが、全国手話検定試験でも障害者権利条約についての試験問題が出題されておりますので、同解説集の解説等を読んで学びましょう。

注2 手勢法とは手話を取り入れた教育法のことです。「手勢」とは、手話のことです。以前は、手話は「手まね」とか「手勢」といわれていました。

▶︎「テレビのコマーシャルって、 結構面白いのがあるね。」(左)
▶︎「字幕放送は増えたけど、コマー シャルにも字幕をつけてほしい と思うわ。」(右)
▶︎「地域のまちづくりの企画があ ること知っている?」(左)
▶︎「ええ、知っているわ。私はワークショップに参加したいと思っているのよ。」(右)

全国手話研修センター (編集)
出版社: 中央法規出版; 改訂版 (2016/9/9)、出典:出版社HP

目次 – 三訂 DVDで学ぶ手話の本 全国手話検定試験2級対応

はじめに

本書を手にされたみなさんへ
みなさんは、街のなかで、バスや電車のなかで、職場で、その他いろいろなところで、手話でコミュニケーションしている人たちを見かけたことがありませんか?

みなさんは、手話を学んで、ろう者(手話をコミュニケーション手段として使う耳の聞こえない人)と話してみたい、友達になりたい、あるいは手話通訳活動をしてみたいなど、さまざまな思いでこの本を手にされたことでしょう。

手話は言語であり、最近では手話言語法(仮称)の制定を求めて全国で取り組みが進められ、手話の社会への広まりがますます求められています。ろう者が豊かに暮らすためには、 手話をさらに多くの人々に広めていくことが、ろう者の切実なる願いです。

社会福祉法人全国手話研修センターでは、ろう者が生活のいろいろな場面で、手話でコミュニケーションできる、そんな社会をめざして、2006(平成18)年より「全国手話検定試験」を行っています。

この試験は、ろう者とどれだけ手話でコミュニケーションができるかということを大切にしていますので、ろう者の集まりである一般財団法人全日本ろうあ連盟や、手話通訳者や手話を学ぶ人たちの集まりである一般社団法人全国手話通訳問題研究会や一般社団法人日本手 話通訳士協会などと協力して行っています。

さてこの度、基本単語リストの変更にともない『手話でステキなコミュニケーション 三訂 DVDで学ぶ手話の本 全国手話検定試験準2級対応』をつくりました。

前シリーズと同様、この本はDVDと一体になっており、収録している練習問題はろう者が表現していますので、単語だけでなく、短文・長文・会話などのろう者の手話の表し方に ついて実際に学ぶことができます。

また、試験を受ける方だけでなく、手話サークルや手話教室などで手話を学ばれるみなさんにも使っていただけるように工夫してあります。本書の質問などを使いテーマにそって学 習されることで、日頃の手話での会話がより豊かになり広がりがでることと思います。

どうか、この本を通して一人でも多くの方に手話を学んでいただき、ろう者と手話でステキなコミュニケーションの輪が広がる社会となることを期待しています。

2016(平成28)年7月
社会福祉法人全国手話研修センター

この本の使いかた

この本は、DVDと一体となっています。
「見る言葉」である手話を、DVDでくり返し見て、自然な手話を身につけましょう。

○この本の構成
STEP1 単語を覚えよう
日常会話でよく使われる単語が、50音順でDVDに収録されています。テキストの巻末に一覧があります。全国手話検定試験にも対応していますので受験をめざす方は、例文に出てくる単語や、自分のことを話すときに必要な単語から覚えていくようにしましょう。

STEP2 ストーリーを練習しよう
基本となるストーリ(例文)です。DVDを見ながら、同じように表現できるように練習しましょう。 覚えられたら、テキストの文を見ながら表現してみましょう。

STEP3 ストーリーを作ってみよう
テキストのテーマに基づいて、自分でストーリー(例文)を作って表現してみましょう。

STEP4 長い文章に挑戦してみよう
テキストを読んで内容を把握した後、DVDを見ましょう。最初は一文ずつ止めながら、単語を確認し、同じように表現できるように練習してみましょう。慣れてきたら、全文を表現してみましょう。

STEP5 手話で会話してみよう
テキストの長文に基づいて質問と答えがDVDに収録されています。質問に対して答えてみましょう。また、質問をしてみましょう。

STEP6 自分のことを表現してみよう
ここまで学習したことを使って、自分のことを表現してみましょう。単語のわからないところは、身振りを取り入れるなどして、相手に伝えるようにしましょう。

本テキストSTEP1の手話単語の動作文については、一般財団法人全日ろうあ連盟の許諾を得て、『わたしたちの手話 学習辞典I」より転載しています。

○学習を始める前に

①各章にSTEP1~STEP6まで全部で6つの学習内容を設定しています。左ページの「◎この本の構成」における学習方法を踏まえて、学習に取り組みましょう。

②級外の単語については、右上に対象となる級の数字をつけています。上の級の単語ですが、日常会話でよく使われる単語ですので、ぜひこの機会に覚えておきましょう。

③「DVD映像の手話表現において、表現を学ぶにあたって知ってほしいこと、気をつけてほしいことなどを 「学習のポイント」としてまとめました。日々の会話にも活かせるポイントですので、ぜひ目を通して参考にしてください。

④モノクロのアミの掛かった単語(例:仕事)は副語彙といい、資料編の基本単語一覧表にある見出しの単語(主語彙)のあとに続く単語です。

地域の手話サークルなどで、ろう者と会話をしてみましょう。手話の表現は、地域によって、 また世代によっても多少の違いがあります。テキストの表現だけにとらわれず、いろいろな表現を身につけるとさらに会話が広がります。

社会福祉法人全国手話研修センター (編集)
出版社: 中央法規出版; 三訂版 (2016/7/27)、出典:出版社HP

目次

はじめに
この本の使いかた
全国手話検定試験とは?
学習の範囲とポイント
ろう者の生活

第1章 日常生活について話してみましょう
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 ストーリーを練習しよう
STEP3 ストーリーを作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

第2章 印象に残ったできごとについて話してみましょう
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 ストーリーを練習しよう
STEP3 ストーリーを作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

第3章 余暇の過ごし方について話してみましょう
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 ストーリーを練習しよう
STEP3 ストーリーを作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

第4章 仕事、職場について話してみましょう
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 ストーリーを練習しよう
STEP3 ストーリーを作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

第5章 社会のできごとについて話してみましょう
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 ストーリーを練習しよう
STEP3 ストーリーを作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

資料編
基本単語一覧表
全国手話検定試験 Can-doリスト
参考図書の紹介

全国手話検定試験とは

1. 全国手話検定試験は、いつから始まって、どこが行っているの?
この試験は、2006(平成18)年から始まりました。2003(平成15)年に、JR嵯峨嵐山駅(京都市)の駅前にオープンした社会福祉法人全国手話研修センターが行っています。

2. 全国手話研修センターはどうしてできたの?
手話を広めたり、手話の研究をしたり、手話通訳者を育てたり、手話通訳者を育てるための講師が勉強できる施設がほしいという声に応えてできました。

ろう者の団体(「一般財団法人全日本ろうあ連盟」といいます)、手話サークルに通っている人や手話通訳者などの団体(「一般社団法人全国手話通訳問題研究会」といいます)、手話通訳士の団体(「一般社団法人日本手話通訳士協会」といいます)など、多くの人たちの願いが実ってつくられた施設です。全国でただ一つの施設です。

3. 試験の目的は何?
①手話のできる人が一人でも増えることを願って、ろう者が安心して暮らせる社会、ろう者が生活のいろいろな場面で、手話でコミュニケーションができる社会(情報バリアフリーの社会)をつくることをめざしています。

②手話を学ぶ人たちから「手話通訳者になるかどうかはわからないが、自分はどれぐらいろう者と話ができるかを知りたい」という声があるように、手話でコミュニケーションできる力を知ることも試験の目的の一つです。

全国手話検定試験を受けられるみなさんを始め、ろう者と手話でコミュニケーションをする楽しさを一人でも多くの人に知っていただき、「全国手話検定試験」で自分のレベルを知り、 地域のろう者との交流や仕事などに活用していただきたいと願っています。

また、全国手話検定試験に合格された方が、そのレベルによってどんなことができるのか、活用例等を盛り込み「全国手話検定試験Can-doリスト」を作成しました。このリストは、各級ごとの到達度のめやす、およその学習歴、手話を読み取る力、手話で表現する力、具体的な活用例を一覧表にしたものです。巻末の資料編(72~73ページ)にありますので、参考にしてください。

4.全国手話検定試験の特徴は何?
手話を学び、学んだ手話でろう者と実際にどれだけ手話でコミュニケーションができるか、 ということを大切にしています。そのために、ろう者の面接委員と手話でコミュニケーショ ンをする試験を、すべての級で取り入れて評価しています。

5. 全国手話検定試験を行うためには?
全国手話研修センターが試験のための計画や準備をして、一般財団法人全日や一般社団法人全国手話通訳問題研究会、一般社団法人日本手話通訳士協会、特定非営利活動法人全国聴覚障害者情報提供施設協議会、一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構、全日本ろう学生懇談会とともに協力しあって行っています。

6. 受験料は?
各級の受験料は、以下の表のとおりです(2016 (平成28)年4月1日現在)。

一般 小・中学生 一般 小・中学生
5級 3,500円(税別) 2,000円(税別) 2級 6,000円(税別) 5,000円(税別)
4級 4,000円(税別) 2,500円(税別) 準1級 7,000円(税別) 6,000円(税別)
3級 4,500円(税別) 3,000円(税別) 1級 8,000円(税別) 7,000円(税別)

 

7. 受験会場は?
全都道府県で試験が受けられるように準備をすすめていますが、毎年試験を行う会場が変わりますので、詳しいことは全国手話研修センターにお問い合わせください(巻末に連絡先を掲載しています)。
みなさんのお住まいの地域で試験が実施されない場合は、他の会場で受験することができます。

8. 受験対象者(試験を受けられる人)はどんな人?
手話を勉強している人なら、誰でも受験できます。

9. 試験内容は? 出題方法は?
各級の試験内容と出題方法は、以下の表のとおりです。

実技試験 筆記試験
5級・4級・3級・2級・準1級・1級 2級・準1級・1級
手話の読み取り 画面に提示される手話を見て設問の内容に合ったものを選びマークシートに記入します。 2級、準1級、1級とも同科目(次頁の10を参照)とし、難易度別(初級・中級・上級)出題となっています。
*2級は四肢択一方式
*準1級は穴埋め方式
1級は小論文方式
手話での表現
(手話によるスピーチ)
提示されたテーマに基づいて、手話で表現(スピーチ)します。
手話での会話
(手話による応答)
上記の表現を基に面接委員の質問に答える方法で直接会話をします。

 

10. 筆記試験の内容は?
2級・準1級・1級の筆記試験は、以下の6つが共通科目となっています。
①聴覚障害者とのコミュニケーション手段とその特徴
②耳の仕組み、障害と社会環境
③聴覚障害者の暮らし
④ろうあ者の歴史
⑤聴覚障害者関連福祉制度
⑥手話の基礎知識

11. 合格基準は?
①手話の読み取り試験、②手話での表現・手話での会話試験、③筆記試験、前記①〜③それぞれの試験結果がおおむね70%を合格基準とします。
※5級・4級・3級の場合は、筆記試験がありません。

12. 受験のめやすは?
各級の試験の領域は、以下の表のとおりです。

級のめやす(レベル) おおよその学習歴 単語数
5級 挨拶や自己紹介を話題に会話ができる
[名前、家族、趣味、誕生日、年齢など]
6ヶ月 約200~300
4級 家族との身近な生活や体験を話題に会話ができる
[一日、一週間、一年のできごとなど]
1年 約500~600
3級 日常生活の体験や身近な社会生活の経験を話題に会話ができる
[友人や近所の人、職場の同僚などと、子どものこと、健康のこと、職場のことなど]
1年半 約800~1,000
2級 社会生活全般を話題に平易な会話ができる
[旅行、学校、予約、公的な挨拶、福祉事務所のことなど]
2年 約1,500
準1級 社会活動の場面、一部専門的場面での会話ができる
[学校、職場、地域、活動(自治会、保護者会、サークル、趣味)のことなど]
2年半 約2,200
1級 あらゆることを話題によどみなく会話ができる 3年 約3,000

学習の範囲とポイント

2級で学ぶことは何?(学習の範囲)
2級は、手話を学び始めて2年くらいの方が対象です。

ろう者と積極的に会話をしようとする態度をもち、社会生活全般(旅行・学校・公的な挨拶・仕事・福祉事務所の場面等)を話題に、簡単な会話ができることをめざしています。

そのためには、毎日の生活のことだけでなく、社会で起きた事象や福祉のことについても関心をもち、表現したり読み取ったり、会話をしたりします。
2級のレベルは、手話奉仕員養成テキスト『手話を学ぼう手話で話そう』の第35講座からの総合練習あたりの内容です。

学習のポイント
単語を覚えましょう

単語の数は増えると、会話が広がります。2級では、5級から3級までの基本単語に2級の基本単語が加わります。DVDで単語の表現をくり返し見て、表現したり読み取ったりしてみましょう。

DVDの基本単語は、索引系列のように〈あ行〉から入っています。

まずは、ストーリー(例文)の中に出てくる単語や、自分のことを話すときに必要な単語から覚えていくとよいでしょう。

2級では、社会生活にかかわる単語がいろいろ出てきます。自分の趣味のこと、仕事のこと、社会で起こったできごとなど、巻末の基本単語一覧表を使って、単語を整理しながら学習を進めてみましょう。

どの級でもそうですが、一つひとつの手話を相手にわかるように、ていねいに正しく表すことが大切です。

そのためには、「手の形」「手の位置」「手の動き」を確かめてきちんと覚え、表現の間違いや読み間違いのないようにしましょう。手話には地域差や世代間の違いなどもありますので、あなたの身近なろう者から教えてもらった手話(単語)と、DVDの中で表現されている手話(単語)とが異なっている場合もあります。どちらも間違いではありませんので、両方覚えるとあなたの会話はさらにステキなコミュニケーションになりますよ。

ストーリーの練習をしましょう
DVDを見ながら、同じように表現してみましょう。

まずは、単語を正しく手話の語順どおりに表現できるようにしましょう。次に、単語を表現するときのスピードや、単語と単語のつなぎのところに気をつけてみましょう。

手話は、語と語のつなぎが重要なポイントになります。単語の位置や方向が表現される内容によって工夫されています。これは、手話奉仕員養成テキスト『手話を学ぼう 手話で話 そう』で学習する内容です。

それができたら、次は、視線や表情に注目しましょう。ストーリーがDVDのように、自然に表現できるようになるまで、くり返し練習しましょう。

長文の練習をしましょう
テキストの文章を読んで、まず内容を理解しましょう。

次に、DVDを見て話の流れがつかめるようになりましょう。わからない単語は、テキストの手話単語分解を見て、確認しましょう。

DVDだけで、手話を読み取れるようになったら、自分で表現してみましょう。

まずは、一文ずつ区切って表現できるようになりましょう。ストーリーのときと同じで、最初は単語を正確に並べられること、できるようになったら手話の位置や方向、表現の大きさやスピードにも気をつけて表現してみましょう。視線や表情も重要なポイントです。

手話の語順を覚えるくらい練習ができたら、全体の文章も表現してみましょう。この時には、細かいところを落としてもかまわないので、全体として伝えたいことがきちんと伝わるように表現できることをめざしましょう。

会話の練習をしましょう
テキストにそって、質問に答える内容を自分で考えて表現してみましょう。最初は、DVDの答えのとおりでもかまいません。慣れたら、単語を一部分変えて答えてみましょう。わからない単語があれば、DVDで確認しましょう。

会話をするときは、聞かれた内容に「はい」「いいえ」と答えるだけでは豊かな会話になりません。聞かれた内容について答えるだけでなく、その内容をふくらませ、コメントを加えて話すことができるようになると、豊かな会話になり手話が上達します。

初めて会う人や、ろう者とコミュニケーションをするときは、誰でも緊張(ドキドキ)しますよね。でも、手話は“目で見る言葉”です。話をする相手の目を見て手話で話すことが大切です。「目を見て話す」ということは、相手に自分の気持ちを伝えようという心(気持ち)の表れです。

自分のことを話しましょう
DVDで、ろう者の手話表現をくり返し見て身につけることができたらそれを応用して自分のことを手話で話してみましょう。手話単語を知らなくても、身振りや指文字などいろいろな方法で補うことができます。また、この機会に使える単語を増やしていくのも大切なことです。

ここまで練習したら、サークルや集会などろう者のいるところに出かけていって、自分のことをどんどん話してみましょう。表現の上手下手よりも、話したいことを持って、どんどん手話を使って話していくことが大切です。

ろう者を取り巻く社会問題や生活について学びましょう
ご存知のように全国手話検定試験では、2級から実技試験のほかに筆記試験が加わります。「全国手話検定試験とは?」で筆記試験の内容・出題方法について記述しています(6~7ページ)。試験を受ける方はもちろんですが、手話を学ばれる方には、手話を学ぶだけではなく、手話を言語として生活しているろう者の歴史、教育、労働、障害者福祉の基礎など、手話奉仕員養成テキスト『手話を学ぼう 手話で話そう(講義編)』や『改訂よくわかる! 手話の筆記試験対策テキスト』、全国手話研修センターのホームページに掲載されている情報などを参考にして学習されるとよいでしょう。

また、日常生活のなかでもろう者を取り巻く社会問題や生活について幅広く情報得るようにして学ぶことが大切です。

全国手話検定試験で、手話での表現・手話での会話試験を受けるときは次のことを参考にされるとよいでしょう。

①視線を合わせていますか?
「目は口ほどに物を言う」と言いますが、伝えたい気持ちは表情からも伝わります。相手の目を見てコミュニケーションをすることは大切なポイントとなります。

②わかったふりは困ります
もし、手話による質問が読み取れないときは、遠慮なく「もう一度、お願いします。」 と伝え、再度表現してもらいましょう。それでもわからないときは、もう一度たずねましょう。

また、相手の話がよくわからないときは、恥ずかしがらず、相手に「どこがわからなかったか」をたずねましょう。わからないということを伝えることが、コミュニ ケーションの一つとしてとても大切なことです。

③表情が大切です
手話でコミュニケーションをするときは、身振りだけでなく、表情豊かな表現がとても大切です。人前で表情豊かに表現することはどうしても恥ずかしがってしまうかもしれませんが、伝えたいという気持ちが強ければ自然と表情が豊かになります。

④表現方法はいろいろあります
ろう者とのコミュニケーションの方法は、手話のほかにも、指文字やそのものの動きを身振りで表したり、空書したりするなど、いろいろな工夫で表現できます。

⑤姿勢はどうですか?
姿勢が会話に与える影響はとても大きいものです。例え、真剣に話していても、姿勢がだらしなければ、相手に真剣さを伝えることはできません。正しい姿勢で話しましょう。

⑥服装はどうですか?
手話の見やすさは服装にも関係があります。自分の服装が相手にとって手話表現が見やすいかどうかも注意しましょう。

⑦会話は最後まで、
話は途中で止めずに、最後まで続けましょう。

ろう者の生活
本書(全国手話検定試験2級対応)より前に発行した『手話でステキなコミュニケーション』シリーズ1~3の「手話って何?」でも解説していますが、手話は「ろう者のことば」であり、「言語」です。2006(平成18)年12月、国連で採択された障害者権利条約に「手話は言語である」と明記されたことをご存知の方もおられるでしょう(注1)。

障害者基本法、障害者総合支援法の改正、障害者差別解消法の制定など国内法が整備された現在、障害者権利条約を日本政府は2014(平成26)年1月に批准しました。権利条約も障害者基本法も「言語(手話を含む)」と規定されています。

その条文を実効化するために日本における手話言語法(仮称)が必要です。手話言語法(仮称)の制定を求めて、全国の自治体議会での意見書採択の取り組みを展開し、2016(平成28)年3月3日に1788の全自治体議会において採択されました。手話言語条例の制定も33自治体(2016(平成28)年3月現在)に上り、これから増えていく見通しです。手話言語法(仮称)・条例が制定されることにより、ろう者が手話という言語を獲得し、ろう者がいつでもどこでも手話を使え、手話による情報を得ることができるようになります。

さて、その手話を学ぶために、私たちは何を大切にして学んだらよいのでした。

例えば、みなさんが英語を学ぶとき、学び方は人によって多少異なるかもしれませんが、単語を覚えることから始め、そして簡単な会話へと進むと思います。日常会話ができるようになるとさらに英語を学ぶことが楽しくなり、英語が話されている国の歴史や文化・伝統などを知りたくなることでしょう。そしてその歴史や文化・伝統がわかってくると、コミュニケーションがより楽しいものになってきます。

手話を学ぶときも同じです。まず単語を覚えその単語を使って会話ができるように学習するはずです。そして、そこでとどまらず、手話を学ぶときにろう者の生活(暮らし)にかかわって手話を学んでほしいのです。手話を学ぶことと「ろう者の生活」とどういう関係があるの?と思われるかもしれません。よく言われることですが、「手話を学ぶ」のではなく「手話に学ぶ」のです。

長い歴史のなかで虐げられてきたけれどもたくましく生きてきたろう者のさまざまな生活を学んでほしいのです。ろう者が守り育んできた「手話に学ぶ」ことは、ろう者の生活を知ることでもあります。次に、ろう者の歴史について少し触れてみましょう。

日本のろう教育は1878(明治11)年に設立された京都盲唖院が最初だと言われています。当時は聞こえない子どもと目の見えない子どもが同じ学校に通っていました。「手勢法」(注2)といわれる手話を取り入れた教育もされていました。しかし、1880年ミラノにて開催された世界ろう教育会議において手話を排除することが採択され、その影響により、日本においても、しだいに「口話法」が広まっていきました。

長い間、ろう教育は口話法が主流になっていました。口話法は、聞こえない子ども達を聞こえる社会に合わせるためのものであり、聞こえない子ども達に大変な苦労を強いたのです。最近では、聞こえない子ども達にとって手話が重要なコミュニケーション手段であるとして、手話を取り入れるろう学校が増えてきました。ろうの先生が手話で授業をする学校も少しずつ出てきました。大学に進学するろう者も増えています。

先ほど、長い歴史のなかでろう者は虐げられてきたと記述しましたが、もう少し詳しく例を挙げてみましょう。

ろう者は、長い間社会生活のなかでさまざまな差別や偏見を受けてきました。例えば、賃金が安かったり、アパートを借りられなかったり、免許や資格が取れないといったことがありました(目が見えない者、耳が聞こえない者、口のきけない者には免許を与えないとすることを「欠格条項」といいます)。

運転免許については1973(昭和48)年に道路交通法第88条の運用が見直され、条件つきではあるものの、ろう者も免許が取れるようになりました。そして2008(平成20)年6月には、聴覚障害者標識(通称:聴覚障害者マークといいます)とワイドミラーをつけることで、すべてのろう者に運転免許取得の道が開かれました。2001(平成13)年にはほとんどの資格、免許で欠格条項が撤廃され、聞こえない医師や薬剤師が誕生しています。

以前は、さまざまな音声情報から取り残されることが多くありました。また、FAXが普及する前は、お互いに連絡を取る方法は直接会うか手紙を出すことくらいでした。今ではFAXも広く普及し、携帯電話でメールのやり取りができるようになり、いつでも連絡が取れるようになりました。テレビの字幕や手話通訳つきの放送が増えていますし、駅やバス・電車の車内などに、電光掲示板が設置されているところも増えています。

これらの改善は、多くのろう者が当たり前の生活をするために手話関係者とともに地道に続けてきた「ろうあ運動」の成果です。

手話を多くの人に知ってもらうことも、ろう者にとっては大切なことの一つです。ろう者の歴史や生活から学び、交流を深めながら手話の学習を進めていくことにより、さらに手話の魅力を感じることができます。そしてろう者との出会いが、あなたの世界をより広げてくれることでしょう。

▶︎「テレビのコマーシャルって、結構面白いのがあるね。」(左)
▶︎「字幕放送は増えたけど、コマーシャルにも字幕をつけてほしいと思うわ。」(右)

▶︎「地域のまちづくりの企画があること知っている?」(左)
▶︎「ええ、知っているわ。私はワークショップに参加したいと思っているのよ。」(右)

社会福祉法人全国手話研修センター (編集)
出版社: 中央法規出版; 三訂版 (2016/7/27)、出典:出版社HP

目次 – 三訂 DVDで学ぶ手話の本 全国手話検定試験3級対応

はじめに

本書を手にされたみなさんへ

みなさんは、街のなかで、バスや電車のなかで、職場で、その他いろいろなところで、手話でコミュニケーションしている人たちを見かけたことがありませんか?

みなさんは、手話を学んで、ろう者(手話をコミュニケーション手段として使う耳の聞こえない人)と話してみたい、友達になりたい、あるいは手話通訳活動をしてみたいなど、さまざまな思いでこの本を手にされたことでしょう。

手話は言語であり、最近では手話言語法(仮称)の制定を求めて全国で取り組みが進められ、手話の社会への広まりがますます求められています。ろう者が豊かに暮らすためには、 手話をさらに多くの人々に広めていくことが、ろう者の切実なる願いです。

社会福祉法人全国手話研修センターでは、ろう者が生活のいろいろな場面で、手話でコミュニケーションできる、そんな社会をめざして、2006(平成18)年より「全国手話検定試験」を行っています。

この試験は、ろう者とどれだけ手話でコミュニケーションができるかということを大切にしていますので、ろう者の集まりである一般財団法人全日本ろうあ連盟や、手話通訳者や手話を学ぶ人たちの集まりである一般社団法人全国手話通訳問題研究会や一般社団法人日本手 話通訳士協会などと協力して行っています。

さてこの度、基本単語リストの変更にともない『手話でステキなコミュニケーション 三訂 DVDで学ぶ手話の本 全国手話検定試験準2級対応』をつくりました。

前シリーズと同様、この本はDVDと一体になっており、収録している練習問題はろう者が表現していますので、単語だけでなく、短文・長文・会話などのろう者の手話の表し方に ついて実際に学ぶことができます。

また、試験を受ける方だけでなく、手話サークルや手話教室などで手話を学ばれるみなさんにも使っていただけるように工夫してあります。本書の質問などを使いテーマにそって学習されることで、日頃の手話での会話がより豊かになり広がりがでることと思います。

どうか、この本を通して一人でも多くの方に手話を学んでいただき、ろう者と手話でステキなコミュニケーションの輪が広がる社会となることを期待しています。

2016(平成28)年7月
社会福祉法人全国手話研修センター

この本の使いかた
この本は、DVDと一体となっています。

「見る言葉」である手話を、DVDでくり返し見て、自然な手話を身につけましょう。

◎この本の構成
STEP1 単語を覚えよう
日常会話でよく使われる単語が、50音順でDVDに収録されています。テキストの巻末に一覧があります。全国手話検定試験にも対応していますので受験をめざす方は、例文に出てくる単語や、自分のことを話すときに必要な単語から覚えていくようにしましょう。

STEP2 短文を練習しよう
基本となる例文です。DVDを見ながら、同じように表現できるように練習しましょう。 覚えられたら、テキストの文を見ながら表現してみましょう。

STEP3 短文を作ってみよう
テキストのテーマに基づいて、自分で文を作って表現してみましょう。

STEP4 長い文章に挑戦してみよう
テキストを読んで内容を把握した後、DVDを見ましょう。最初は一文ずつ止めながら、単語を確認し、同じように表現できるように練習してみましょう。慣れてきたら、全文を表現してみましょう。

STEP5 手話で会話してみよう
テキストの長文に基づいて質問と答えがDVDに収録されています。質問に対して答えてみましょう。また、質問をしてみましょう。

STEP6 自分のことを表現してみよう
ここまで学習したことを使って、自分のことを表現してみましょう。単語のわからないところは、身振りを取り入れるなどして、相手に伝えるようにしましょう。

本テキストSTEP1の手話単語の動作文については、一般財団法人全日ろうあ連盟の許諾を得て、『わたしたちの手話 学習辞典I」より転載しています。

◎学習を始める前に

①各章にSTEP1~STEP6まで全部で6つの学習内容を設定しています。左ページの「◎この本の構成」における学習方法を踏まえて、学習に取り組みましょう。

②級外の単語については、右上に対象となる級の数字をつけています。上の級の単語ですが、日常会話でよく使われる単語ですので、ぜひこの機会に覚えておきましょう。

③「DVD映像の手話表現において、表現を学ぶにあたって知ってほしいこと、気をつけてほしいことなどを 「学習のポイント」としてまとめました。日々の会話にも活かせるポイントですので、ぜひ目を通して参考にしてください。

④モノクロのアミの掛かった単語(例:ろう)は副語彙といい、資料編の基本単語一覧表にある見出しの単語(主語彙)のあとに続く単語です。

地域の手話サークルなどで、ろう者と会話をしてみましょう。手話の表現は、地域によって、 また世代によっても多少の違いがあります。テキストの表現だけにとらわれず、いろいろな表現を身につけるとさらに会話が広がります。

社会福祉法人全国手話研修センター (編集)
出版社: 中央法規出版; 三訂版 (2016/7/27)、出典:出版社HP

目次

はじめに
この本の使いかた
全国手話検定試験とは?
学習の範囲とポイント
手話って何?

第1章 地域の行事について話してみましょう
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 短文を練習しよう
STEP3 短文を作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

第2章 子育てや学校について話してみましょう
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 短文を練習しよう
STEP3 短文を作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

第3章 仕事や職場のことについて話してみましょう
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 短文を練習しよう
STEP3 短文を作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

第4章 趣味や健康について話してみましょう
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 短文を練習しよう
STEP3 短文を作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

第5章 外出先での案内をしてみましょう
STEP1 単語を覚えよう
STEP2 ストーリーを練習しよう
STEP3 ストーリーを作ってみよう
STEP4 長い文章に挑戦してみよう
STEP5 手話で会話してみよう
STEP6 自分のことを表現してみよう

資料編
基本単語一覧表
全国手話検定試験 Can-doリスト
参考図書の紹介

社会福祉法人全国手話研修センター (編集)
出版社: 中央法規出版; 三訂版 (2016/7/27)、出典:出版社HP

全国手話検定試験とは

1. 全国手話検定試験は、いつから始まって、どこが行っているの?
この試験は、2006(平成18)年から始まりました。2003(平成15)年に、JR嵯峨嵐山駅(京都市)の駅前にオープンした社会福祉法人全国手話研修センターが行っています。

2. 全国手話研修センターはどうしてできたの?
手話を広めたり、手話の研究をしたり、手話通訳者を育てたり、手話通訳者を育てるための講師が勉強できる施設がほしいという声に応えてできました。

ろう者の団体(「一般財団法人全日本ろうあ連盟」といいます)、手話サークルに通っている人や手話通訳者などの団体(「一般社団法人全国手話通訳問題研究会」といいます)、手話通訳士の団体(「一般社団法人日本手話通訳士協会」といいます)など、多くの人たちの願いが実ってつくられた施設です。全国でただ一つの施設です。

3. 試験の目的は何?
①手話のできる人が一人でも増えることを願って、ろう者が安心して暮らせる社会、ろう者が生活のいろいろな場面で、手話でコミュニケーションができる社会(情報バリアフリーの社会)をつくることをめざしています。

②手話を学ぶ人たちから「手話通訳者になるかどうかはわからないが、自分はどれぐらいろう者と話ができるかを知りたい」という声があるように、手話でコミュニケーションできる力を知ることも試験の目的の一つです。

全国手話検定試験を受けられるみなさんを始め、ろう者と手話でコミュニケーションをする楽しさを一人でも多くの人に知っていただき、「全国手話検定試験」で自分のレベルを知り、 地域のろう者との交流や仕事などに活用していただきたいと願っています。

また、全国手話検定試験に合格された方が、そのレベルによってどんなことができるのか、活用例等を盛り込み「全国手話検定試験Can-doリスト」を作成しました。このリストは、各級ごとの到達度のめやす、およその学習歴、手話を読み取る力、手話で表現する力、具体的な活用例を一覧表にしたものです。巻末の資料編(92~93ページ)にありますので、参考にしてください。

4.全国手話検定試験の特徴は何?
手話を学び、学んだ手話でろう者と実際にどれだけ手話でコミュニケーションができるか、 ということを大切にしています。そのために、ろう者の面接委員と手話でコミュニケーショ ンをする試験を、すべての級で取り入れて評価しています。

5. 全国手話検定試験を行うためには?
全国手話研修センターが試験のための計画や準備をして、一般財団法人全日や一般社団法人全国手話通訳問題研究会、一般社団法人日本手話通訳士協会、特定非営利活動法人全国聴覚障害者情報提供施設協議会、一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構、全日本ろう学生懇談会とともに協力しあって行っています。

6. 受験料は?
各級の受験料は、以下の表のとおりです(2016 (平成28)年4月1日現在)。

一般 小・中学生 一般 小・中学生
5級 3,500円(税別) 2,000円(税別) 2級 6,000円(税別) 5,000円(税別)
4級 4,000円(税別) 2,500円(税別) 準1級 7,000円(税別) 6,000円(税別)
3級 4,500円(税別) 3,000円(税別) 1級 8,000円(税別) 7,000円(税別)

 

7. 受験会場は?
全都道府県で試験が受けられるように準備をすすめていますが、毎年試験を行う会場が変わりますので、詳しいことは全国手話研修センターにお問い合わせください(巻末に連絡先を掲載しています)。みなさんのお住まいの地域で試験が実施されない場合は、他の会場で受験することができます。

8. 受験対象者(試験を受けられる人)はどんな人?
手話を勉強している人なら、誰でも受験できます。

9. 試験内容は? 出題方法は?
各級の試験内容と出題方法は、以下の表のとおりです。

実技試験 筆記試験
5級・4級・3級・2級・準1級・1級 2級・準1級・1級
手話の読み取り 画面に提示される手話を見て設問の内容に合ったものを選びマークシートに記入します。 2級、準1級、1級とも同科目(次頁の10を参照)とし、難易度別(初級・中級・上級)出題となっています。
*2級は四肢択一方式
*準1級は穴埋め方式
1級は小論文方式
手話での表現
(手話によるスピーチ)
提示されたテーマに基づいて、手話で表現(スピーチ)します。
手話での会話
(手話による応答)
上記の表現を基に面接委員の質問に答える方法で直接会話をします。

 

10. 筆記試験の内容は?
2級・準1級・1級の筆記試験は、以下の6つが共通科目となっています。
①聴覚障害者とのコミュニケーション手段とその特徴
②耳の仕組み、障害と社会環境
③聴覚障害者の暮らし
④ろうあ者の歴史
⑤聴覚障害者関連福祉制度
⑥手話の基礎知識

11. 合格基準は?
①手話の読み取り試験、②手話での表現・手話での会話試験、③筆記試験、前記①〜③それぞれの試験結果がおおむね70%を合格基準とします。
※5級・4級・3級の場合は、筆記試験がありません。

12. 受験のめやすは?
各級の試験の領域は、以下の表のとおりです。

級のめやす(レベル) おおよその学習歴 単語数
5級 挨拶や自己紹介を話題に会話ができる
[名前、家族、趣味、誕生日、年齢など]
6ヶ月 約200~300
4級 家族との身近な生活や体験を話題に会話ができる
[一日、一週間、一年のできごとなど]
1年 約500~600
3級 日常生活の体験や身近な社会生活の経験を話題に会話ができる
[友人や近所の人、職場の同僚などと、子どものこと、健康のこと、職場のことなど]
1年半 約800~1,000
2級 社会生活全般を話題に平易な会話ができる
[旅行、学校、予約、公的な挨拶、福祉事務所のことなど]
2年 約1,500
準1級 社会活動の場面、一部専門的場面での会話ができる
[学校、職場、地域、活動(自治会、保護者会、サークル、趣味)のことなど]
2年半 約2,200
1級 あらゆることを話題によどみなく会話ができる 3年 約3,000

学習の範囲とポイント

3級で学ぶことはなに?(学習の節用)
3級は、手話を学び始めて1年半くらいの方が対象です。

普段の生活のなかで感じたこと、体験したことなどを話題にし、ろう者と積極的に会話できるようになることをめざします。家族や友達との毎日の生活や、自分の町や地域のことに関心を持ち、表現したり、読み取ったり、会話したりできるように学習していきます。

3級のレベルは、初めて手話を学ぶ人たちを対象につくられた手話奉仕員養成テキスト『手話を学ぼう 手話で話そう』第19講座~第34講座あたりの内容です。

学習のポイント
単語を覚えましょう

単語の数は増えますが、まずは5級や4級の基本単語の復習をし、表現のしかたがまだ身についていないと思われる手話はしっかり覚えましょう。その上で、3級の基本単語を覚えましょう。

DVDで単語の表現をくり返し見て、表現したり読み取ったりしてみましょう。

DVDの基本単語は、索引系列のように〈あ行〉から入っています。

まずは、例文のなかに出てくる単語や、自分のことを話すときに必要な単語から覚えていくとよいでしょう。

3級では、生活にかかわる単語がいろいろでてきます。町内会のこと、地域の行事、子育てや学校行事、仕事のことなど、巻末の基本単語一覧表を使って、単語を整理しながら学習を進めてみましょう。

どの級でもそうですが、一つひとつの手話を相手にわかるように、ていねいに正しく表すことが大切です。

そのためには、「手の形」、「手の位置」、「手の動き」を確かめてきちんと覚え、表現のまちがいや読みまちがいのないようにしましょう。時には、鏡を見ながら練習するのも自分の手話のクセがわかってよいですよ。

あなたがおつきあいしているろう者から教えてもらった手話(単語)と、DVDのなかで表現されている手話(単語)と異なる表現もあると思います。どちらも覚えるとあなたの手話はさらにステキなコミュニケーションになりますよ。

短文の練習をしましょう
DVDを見ながら、表現できるようになるまで(表現のしかたが覚えられるまで)、くり返し練習しましょう。

例文と手話単語の順序の違いに注意して、しっかり練習しましょう。

長文の練習をしましょう
テキストの文章を読んで、内容がわかってから、DVDを見てくり返し表現してみましょう。

長文はいくつかの短文の集まりですから、短文と同様、例文と手話単語の順序の違いに注意して、しっかり練習しましょう。少し長い文章を表現するときは、テーマごとにどんなことを話したいか考えてから、練習してみましょう。

会話の練習をしましょう
テキストにそって、質問に答える内容を自分で考えて表現しましょう。もし、わからない単語が出てきたら、DVDで確認しましょう。

会話をするときは、聞かれた内容に「はい」「いいえ」と答えるだけでは豊かな会話になりません。聞かれた内容について答えるだけでなく、その内容をふくらませ、コメントを加えて話すことができるようになると、豊かな会話になり手話が上達します。

初めて会う人や、ろう者とコミュニケーションをするときは、誰でも緊張(ドキドキ)しますよね。でも、手話は“目で見る言葉”です。話をする相手の目を見て、手話で話すことが大切です。「目を見て話す」ということは、相手に自分の気持ちを伝えようという心(気持ち)の表れです。

また、手話の単語がわからなくても、身振り(ジェスチャー)で伝えたり、指文字を使ったり、とにかく伝えようという気持ちが大切です。

自分のことを話しましょう
DVDで、ろう者の手話表現をくり返し見て身につけることができたらそれを応用して自分のことを手話で話してみましょう。手話単語を知らなくても、身振りや指文字などいろいろな方法で補うことができます。また、この機会に使える単語を増やしていくのも大切なことです。

社会福祉法人全国手話研修センター (編集)
出版社: 中央法規出版; 三訂版 (2016/7/27)、出典:出版社HP

手話って何?

手話はろう者の言葉です。言葉は人がいろいろ物事を考えたりする「思考」、お互いの意思を伝え合う「意思疎通」、さまざまな「情報の伝達」に使われるものです。

聞こえる人の言葉は「音声」を使う「聞く言葉」であり、音声言語といいますが、手話は「身体的表現」を使う「目で見る言葉」であり、それを視覚言語といいます。

手話はろう者たちの暮らしのなかで生まれた、ろう者にとって大切な言葉です。もし、あなたが手話で話せるようになると、ろう者と気持ちをお互い伝え合うことができるでしょう。

そして、言語にはいろいろな決まりごとや特徴があります。単語を並べる順番や、抑揚、音の変化(例:「旅客機」は「りょかくき」ではなく「りょかっき」と発音が変化します)などです。その決まりごとは日本語や英語、中国語などそれぞれの言語によって異なっています。

それらと同じように、視覚言語である手話にも特徴があります。例えば、日本語や英語など、ほとんどの音声言語には話し言葉と書き言葉がありますが、手話は話し言葉だけで、書き言葉はありません。ですから、手話を学ぶときには、ろう者の手話(指の形や動き、表情)をしっかり見ましょう。

そして、手話にも手話独特の決まりごとがあります。もちろん、他の言語である日本語とは違う決まりごとです。手話を学ぶなかで、はじめは戸惑うこともあるとかますが、そのことを忘れないでいてください。そうすれば、あなたの手話はどんどん上達しますよ。

聞こえないこと
「聞こえない人」というと私たちは「まったく音のない世界にいる人」を想像しがちですが、聞こえの状態は一人ひとり異なっています。生まれたときから聞こえない人、生まれたときは聞こえたけれど大きくなってから病気や事故で聞こえなくなった人、補聴器をつければ少し聞こえる人、音は聞こえるけれど言葉としては聞こえない人などいろいろです。

このように、「聴覚障害者」と一言でいっても、聞こえの状態はさまざまなのです。しかし、聞こえないために周囲とコミュニケーションが取りにくく、周囲の状況がわからなくて困ることが多いということは共通しています。音が聞こえないと、音声での会話が難しいだけではなく、電車の車内放送やサイレンがわからなかったり、後ろから話しかけられてもわからないので「無視した」と誤解されてしまうこともあります。聴覚障害が「コミュニケーション障害」「情報障害」とも例えられるゆえんです。

▶︎「おはようございます。私の名前は嵐山太郎です。あなたの名前は?」(左)
▶︎「わたしの名前は嵯峨花子です。よろしくお願いします。」(右)

▶︎「明日、JR駅前の喫茶店で会いましょう。」(左)
▶︎「ええ。コーヒーを飲んでから出かけませんか。」(右)

▶︎「障害者のボランティア活動をしています。」(左)
▶︎「どんな活動をしていますか?」(右)

コミュニケーション、あれこれ
手話はろう者の言葉であると述べましたが、聴覚障害者はみんな手話だけでコミュニケーションを取っているのでしょうか? いえいえ聞こえの状態が一人ひとり異なるように、コミュニケーションの方法もさまざまです。手話以外のものを以下に紹介します。

指文字:五十音を手指で表現したものです。
筆談:紙に文字を書いて会話をします。
空書:「空書き」ともいいます。空間に文字を書きます。
口話:相手の口の形を読み取ったり、音声で会話したりします。
身振り:実際の動きなどをそのまま表します。

これらの方法は一つだけで使われることは少なく、いくつかの方法を合わせてコミュニケーションを取っています。どの方法が伝わりやすいかは人によって異なりますが、その人が一番コミュニケーションしやすい方法で話しかけてみることが大切です。

社会福祉法人全国手話研修センター (編集)
出版社: 中央法規出版; 三訂版 (2016/7/27)、出典:出版社HP