図解入門 最新気象学のキホンがよ~くわかる本[第3版]




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はじめに

本書の初版が2008年に発行されてから10年が経とうとしています。2012年の改訂版(第2版)も含め、現在に至るまで長きにわたりご愛顧いただき、大変嬉しく思っています。そしてこの度、第2版の発行から約6年が経とうとしているのを機に、第3版として新たな改訂版を発刊させていただく運びになりました。

気象学と言うと、物理や数学の理論が絡み難解だというイメージが先行してしまい、どうしてもハードルが高い分野だと思われがちです。

しかし、本来、気象学はわたしたちの日常生活にも深く関わる身近な存在である上、日々の経験に基づいて直感的に考えることができる分野でもあります。

本書は「気象学の入門の、さらに入門の教科書」というコンセプトのもと、本来であれば知っている前提として省略してしまうような細かな部分にも、可能なかぎりページを割いて説明をするように心がけています。図版もこだわって、どうしたら分かりやすくなるか、見やすくなるかというのを最優先にして作成しました。

第3版では、旧版では取り上げていなかった項目をいくつか追加するなど、情報量を大幅に増やしました。線状降水帯や局地的大雨など、近年耳にする機会が増えた用語についても取り入れるようにしました。

また、今回の改訂の目玉として、2017年3月に改訂された国際雲図帳に対応させたことが挙げられます。そして、それに伴って、雲の種類に関する内容を増強させました。さらに旧版では取り上げなかった天気や大気現象の一覧表も新たに挿入しました。

本書が「気象学」の勉強の一助となれば幸いです。

2017年12月1日
岩槻 秀明

岩槻秀明 (著)
秀和システム、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 太陽と地球
1-1 太陽の概要とエネルギー源
太陽のパワーはどこからくるのか
1-2 太陽系の惑星
太陽の周りを回る星たち
1-3 地球のまわりをまわる月
地球の唯一の衛星
1-4 地球の誕生とその歴史
わたしたちのすむ地球のあゆみ

第2章 大気の鉛直構造
2-1 地球大気の構造
空はどこまで続いているのか
2-2 対流圏と成層圏
天気の変化はどこで起こるのか
2-3 オゾン層とオゾンホール
オゾンはなぜ必要なのか
2-4 中間圏・熱圏・外気圏
オゾン層の上から宇宙空間の境目まで
2-5 地球大気の起源と歴史
空気はどのようにしてできたのか

第3章 熱力学の考え方の基礎
3-1 熱力学に入る前に
基本的な用語の確認をする
3-2 ボイル・シャルルの法則と状態方程式
気体の体積・圧力・温度の関係を探る
3-3 静力学平衡と非静力学平衡
なぜ空気は空中にとどまっていられるのか
3-4 熱力学の第一法則
気体を加熱したときのエネルギー関係
3-5 乾燥断熱変化
乾燥空気を圧縮・膨張させたときの温度変化
3- 6水の相変化
なぜ氷を温めると融けるのか
3-7 湿潤断熱変化
雲はどのようにしてできるのか
3-8 温位
高度の異なる2つの空気塊の暖かさを比較
3-9 相当温位と湿話
大雨になる可能性について調べてみる
3-10 フェーン現象
風が山を吹き降りるときの気温変化
3-11 気温の観測
温度計の種類と観測方法

第4章 水蒸気量の表現方法
4-1 水蒸気圧
水蒸気の圧力を数値化する
4-2 混合比と比湿
水蒸気と空気の質量の比率
4-3 相対湿度
一番身近な水蒸気の表現方法
4-4 露点温度と湿数
なぜ結露ができるのか
4-5 可降水量
大気中の水蒸気がすべて雨になったら?

第5章 雷雲の発生しやすさを調べる
5-1 積乱雲と積雲対流
夏の入道雲はどうやってできるのか
5-2 「大気の安定度」の基本的考え方
大気が不安定とはどんな状態を指すのか
5-3 乾燥大気の安定度
大気の安定度を判定する(その1)
5-4 湿潤大気の安定度
大気の安定度を判定する(その2)
5-5 対流不安定
相当温位でみる大気の安定度
5-6 エマグラム
大気の安定度を調べるための天気図
5-7 エマグラムにみる積雲対流
雲の発生高度を知る
5-8 雷雨の可能性を知る指標
積乱雲の発生を予測するために
5-9 逆転層
高度とともに気温の高くなる層

第6章 降水過程
6-1 エアロゾル
空気中に浮かぶ微粒子のいろいろ
6-2 水滴の生成と凝結核
雲ができるのに凝結核が必要な理由
6-3 暖かい雲の降水過程
熱帯地方における雨
6-4 冷たい雪の降水過程
日本付近での雲のできかた
6-5 雲の分類
空に浮かぶ雲にもそれぞれ名前がある
6-6 霧の種類と成因
霧はどうやって発生するのか
6-7 大気現象のいろいろ
大気中で発生するさまざまな現象の種類を知る
6-8 天気のいろいろ
天気にはどのような種類があるのか

第7章 大気における放射
7-1 大気光学の基礎知識
光の基本性質を確認する
7-2 太陽放射の波長域
太陽エネルギーの正体はなにか
7-3 自転軸の傾きと太陽放射
なぜ夏は暑く冬は寒いのか
7-4 黒体放射と諸法則
「放射」に関する基礎知識
7-5 地球放射と太陽放射
なぜ朝の冷え込みは起こるのか
7-6アルベド
なぜ雪はなかなか融けないのか
7-7散乱
なぜ空は青く雲は白いのか
7-8大気光象
虹やハロなどの光の現象
7-9 温室効果ガス
なぜCO2は悪者にされるのか
7-10日射の観測
太陽から降り注ぐ光の量を調べる
7-11 放射エネルギーの収支バランス
太陽放射と地球放射のバランスについて

第8章 大気力学
8-1 大気力学の基礎知識
大気の動きを考えるのに必要な概念
8-2 等圧線と地上天気図
地上天気図に引かれた線はなにか
8-3等高度線と高層天気図
高層天気図の線は等圧線ではない
8-4 高気圧と低気圧
高気圧や低気圧とはなにか
8-5 気圧傾度と気圧傾度力
風はどうやって発生するのか
8-6 地球の自転とコリオリカ
地球の自転が風に与える影響
8-7 地衡風
上空における風の吹き方
8-8傾度風
台風や発達した低気圧での風の吹き方
8-9 摩擦力の影響
地上付近の風の流れ
8-10 温度風
地衡風の高度による変化
8-11 発散と収束
風が散らばる場所、風が集まる場所
8-12 渦度
風の回転成分
8-13 温度移流
暖かい風と冷たい風

第9章 大規模な大気運動
9-1大気運動のスケール概念
気象現象の規模を把握する
9-2 地球規模の南北方向の風の流れ
赤道付近が暑くなりすぎない理由
9-3 地球規模の東西方向の風の流れ
天気が西から東に変わるのはなぜか
9-4日本付近の季節風
なぜ冬には北風が吹くのか
9-5 プラネタリー波と傾圧不安定波
天気の周期変化が起きる原因
9-6 温帯低気圧
日本付近での雨の主因
9-7日本付近の気団と性質
夏の空気と冬の空気
9-8 前線の種類と仕組み
「前線」とはなにか

第10章 中小規模の大気運動
10-1 冬季の日本海側の雪
日本海側の雪はどのようにして降るのか
10-2 雷雨
夏の夕立や激しい雷雨
10-3 集中豪雨
集中豪雨をもたらす雲とはなにか
10-4 寒気を伴った低気圧
寒冷渦とポーラーロー
10-5 台風
台風のしくみと特徴
10-6 CISK
台風の発達メカニズム
10-7 海陸風
海岸地帯での風の流れ
10-8局地風のいろいろ
地形によるさまざまな風

第11章 日本の気候
11-1 気候という考えかた
天気・天候・気候は何がちがうのか
11-2 気候分類の考えかた
気候の種類とその傾向を知る
11-3 異常気象の定義
異常かどうかに判断基準はあるのか
11-4 天文と気候変動の関係
太陽活動は気候に影響を与えるのか
11-5 火山と気候変動の関係
火山が噴火すると寒くなる?
11-6 海洋と気候変動の関係
切っても切れない、大気と海の関係
11-7 都市気候とヒートアイランド
都市化は気候にどんな影響を与えるのか
11-8 地球温暖化
都市化は気候にどんな影響を与えるのか

資料
●重要な用語とポイントのまとめ
●よく使う単位とその変換について
●気象学における重要な数式
●覚えておくと便利な定数や数値

索引
参考資料一覧
著者プロフィール

岩槻秀明 (著)
秀和システム、出典:出版社HP