社会人のための産業カウンセリング入門




はじめに

コンピュータやインターネットに代表される情報技術の発展は、産業界に大きな革命を起こし、国境越えて世界を相手にビジネスを展開するグローバル社会へと変化してきました。国内外の企業間競争はさらに激化し、産業界は競争に打ち勝ち台頭するアジアの国々を含め、国際的なビジネスにおいて少しでも優位なポジションを占めようとする厳しい経済環境になってきたといえます。

このような激しさを増すビジネス競争社会の中で、産業界において長時間労働に縛られながら働く人達は、強いストレスに絶えずさらさされ、身体のみならず精神的にも不調をきたす人が増加してきています。日本の自殺者数は、以前よりは多少緩和されたものの、うつ病を代表とするメンタルヘルス不調者は、大企業を中心に横ばい、あるいは増加傾向にあることが報告されています。

こうした近年の労働環境において、「産業カウンセリング」が果たす役割と責任は以前にも増して重視されています。カウンセリングを通して働く人々が抱える問題解決の支援を行い、彼らが心身の健康を保持・増進し、職務に内発的に動機づけられるような支援を行う役割を果たすことが期待されています。

本書では、産業カウンセリングについて、「メンタルヘルス支援」と「キャリア形成支援」の両面から取り上げています。読者の皆さんが、この『社会人のための産業カウンセリング入門』を読みすすめ、自らの心身の健康を保持・増進するとともに、職場でその知見を有効に活用し、働く人々の心身の健康に貢献し、彼らのさらなる豊かなライフキャリア充足に貢献していただきたいと願っています。

著者を代表して
宮城まり子

宮城まり子 (著), 今村幸太郎 (著), 杉山雅宏 (著), 山蔦圭輔 (著), 渡部卓 (著), 渡邉祐子 (著)
産業能率大学出版部 (2014/1/29)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 産業カウンセリングの歩みと現状
1節 労働環境の変化と課題の多様化
2節 産業カウンセリングとは
3節 従業員支援制度(EAP)の現状と将来
第2章 産業カウンセリングを担うカウンセラー
1節 産業分野のカウンセリングとその領域
2節 産業分野を担うカウンセラーの資質と資格
3節 産業分野を担うカウンセラーとしての倫理
4節 産業分野を担うカウンセラーの役割と機能
5節 産業分野におけるカウンセリングと連携
第3章 職場のメンタルヘルスと産業カウンセリング
1節 働く人たちのメンタルヘルス
2節 組織、職場におけるメンタルヘルスケア
第4章 メンタルヘルス不調とその病態
1節 心の病気とその症状
2節 カウンセリングの意味と方法
第5章 カウンセリングの諸理論
1節 カウンセリング理論とは
2節 カウンセリング理論を学ぶ意義
3節 精神分析療法
4節 来談者中心療法
5節 行動療法
6節 認知行動療法
7節 論理療法
8節 交流分析
9節 ゲシュタルト療法
10節 その他の諸理論
第6章 メンタルヘルス不調による休職と復職
1節 休職から復職、職場再適応の過程と課題
2節 休職中と復職への支援と、産業保健専門職としての社内カウンセラーの役割
第7章 キャリア支援とキャリアカウンセリング
1節 労働環境の変化とキャリア形成
2節 キャリアとは何か
3節 自律的キャリア開発とキャリア自律・自立
4節 人材育成とキャリア開発支援
5節 キャリアカウンセリングによるキャリア支援
6節 キャリアカウンセリングの理論
7節 キャリアカウンセリングの進め方
8節 キャリア支援とメンタルヘルス支援の統合的アプローチ
第8章 産業カウンセリングの実際
事例1 休職から復職、その後の再適応に関する事例
事例2 キャリアカウンセリングの事例1
事例3 キャリアカウンセリングの事例2

索引

著者略歴

宮城まり子 (著), 今村幸太郎 (著), 杉山雅宏 (著), 山蔦圭輔 (著), 渡部卓 (著), 渡邉祐子 (著)
産業能率大学出版部 (2014/1/29)、出典:出版社HP