マンガでわかる ケアマネジャーのためのアセスメント入門
はじめに
新人にとってもベテランになってからも、アセスメントはとても難しいものです。皆さんは、少なからずアセスメントに対する苦手意識があったり、もっとしっかりできるようになりたいと考えておられるからこそ、この本を手に取ったのだと思います。私は、そんなアセスメントを少しでも身近に感じていただけるように、あるいは考え方の道筋を示すことができればと思い、この本を書くことにしました。
手に取っていただきやすくするために、マンガの力を借りながら、新米ケアマネジャーの森山さんの一年にわたる奮闘ぶりにお付き合いいただきたいと思っています。またこの本には、4人の利用者と事業所の先輩たちが登場します。どんな人たちが出てくるのかは登場人物紹介をご覧いただきたいのですが、実は、雑誌ケアマネジャーの連載で登場してもらっていた代々木ケアプランセンターと森山さんの新人時代が物語の舞台です。連載を読んでいただいていた方には、あのメンバーが本書の中でどんな風に描かれるのかもチェックしてみてほしいと思います。新人の方は森山さんに、また、経験のある方は先輩たちになったつもりで読み進めていただければ嬉しく思います。もしかすると新人時代にしかできない経験を、思い出していただけるかもしれません。
この本は、まず森山さんの仕事ぶりをマンガで紹介し、その後、解説をするといったスタイルを取っています。臨場感あふれるマンガという描写の中で、森山さんが生き生きと動いてくれました。森山さんにもわかってもらえるように丁寧な解説を心がけたつもりですが、わかりにくいような点があれば、ぜひ教えていただきたいと思っております。
全10話の森山さんの一年間のストーリーを読み終えた時、皆さんの中にあるアセスメントに対する苦手意識が少しでも薄らいでいたならば、著者としてとても嬉しく思います。では、森山さんと一緒に学んでいきましょう。
2018年4月
吉田光子
目次
はじめに
登場人物紹介
第1話 新米ケアマネ始動
第2話 まずは、“自分のものさし”を知ろう
第3話 モニタリングって?
第4話 更新時に何を見る?
第5話 新規ケースへの挑戦!
第6話 失敗に学ぶ
第7話 利用者と家族の意向が違ったら?
第8話 取り付く島がない…..
第9話 困難事例なんか怖くない
第8話 自分自身をアセスメントする
エピローグ
おわりに
著者紹介
第1話
新米ケアマネ始動
新年度を迎えた4月。森山さんは介護職として働いていたデイサービスを辞め、ケアマネジャーとしての第1歩を踏み出しました。
新しい職場、新しい仲間、そして新しい仕事を前に張り切っています。
ところが……..。
実務の指導を受け、実際に担当を引き継ぐことになりましたが、思ったようには進まないようです。
何が起きているのでしょうか。
解説 利用者の暮らしを理解する
新米ケアマネスタート
新年度を機に、ケアマネジャーとしてスタートを切った森山さんです。まずはケアマネジャーの実務を知ることから始めることになります。ケアマネジャーが働く場はいろいろありますが、森山さんが選んだのは居宅介護支援事業所である代々木ケアプランセンターでした。
これまでデイサービスで働いてきた森山さんですから、介護保険の仕組みは当然知っていましたし、居宅介護支援事業所との付き合いもありました。また、実務研修も受けていますから、ケアプラン作成までの流れも知っているつもりでした。
しかし、具体的なところまではよくわかりませんでしたので、一か月の流れや個別の利用者支援など代々木ケアプランセンターにおける業務内容とその進め方に関して、改めて星さんから説明を受け、理解したのでした。
これから担当する利用者の記録を読む
森山さんは、一通りの業務を理解したところで、一人の方を担当するように言われ、記録を手渡されました。張り切って、読み始めたものの、メモを片手に困ってしまったようです。つまり、記録から何を読み取るのか、焦点を定めずに読んだためにすっかり混乱してしまったのです。森山さんは、無意識的に利用者である阿部さんについて興味を持って読み始めましたが、一方でケアマネジャーとして何をしたらよいのかということにも興味が向かったからです。
そこで、星さんにまず、阿部さんのことを中心に読んでわからないことを整理し、その後ケアマネジャーとしての疑問を話し合おうと言われ、阿部さんを知ることを目的に再度記録の読み取りを始めたのです。けれども、焦点を定めて、阿部さんを知ろうとしたところ、さらにわからなくなってしまったようです。
森山さんは、これまでデイサービスで介護職をしてきましたので、記録の中から阿部さんのサービス利用中の様子は想像できたのですが、自宅での様子がうまく想像できなかったのです。つまり、記録の中の阿部さんの様子が変化していくところがうまく呑み込めなかったようです。星さんの話を聞いて、ようやく納得したようです。
利用者の生活はいろいろな場に存在する
森山さんが混乱してしまったのは、今まで、特定の場で利用者を見てきた(介護してきた)影響があるかもしれません。デイサービスであれば、一定の障がいに配慮された環境ですから、介助の必要な場面ははっきりしていると考えられます。ですが、自宅はそもそも健康な状態での生活を前提にしていますので、いろいろと不自由な環境になってしまいます。
そのため、要介護状態になった当初は、利用者も家族も変化に対応するのがやっとでしょうし、不安や心配でどうしても手をかけてしまいます。しかし時間がたつにつれ、環境にもなじみ、できることとできないこと、介助の必要な場面や箇所がはっきりとしてきます。体の使い方にも慣れ、上手になっていきます。そうすると介助の仕方そのものが変化してくるわけです。
また、生活の場は、自宅だけとは限りません。サービスを利用するだけでなく、これまでの人生でゆかりのあった場や、趣味を楽しんだり買い物へ出かけたり、あるいは旅行を楽しもうと考える方もいるでしょう。こうして利用者が自分らしく暮らしていこうとする時、いろいろな場で工夫したり、必要な介助を受けて生活をしていくことになるのです。
利用者の暮らしを理解する
ケアマネジャーが、利用者の暮らしを理解することは、なかなか難しいことです。今どんなことに不自由を感じ、どうなりたいと願っているのか、過去から将来をも視野に入れていかなければならないのです。どんな土地で生まれ、どんな文化の中で成長したのか、家族の中でどんな立ち位置にいて、どんな思いをしてきたのか、そんなことが、生き方や暮らし方に影響を与えていることもあります。時代からも影響を受けますし、職業や周囲の人から影響を受けることもあるのです。その長い時間の経過があって、今の利用者が存在しているわけです。
そのすべてを簡単に理解できるはずはありません。ですから、まずは利用者一人ひとりに、独自の背景があることを認識し、利用者のことを理解したいと願いましょう。その上で、自分の得意なことや興味の持てる部分から、少しずついろいろな場面を想像し、それが当たっているかを確認しながら、理解を深めていきましょう。相手に関心を寄せ、理解したいと思い続け、かかわり続けることが一番大切です。