どんぐり式 薬局副作用学のススメ 「まず疑え」から始めよ 日経DI 薬剤師「心得」帳




はじめに

「薬局が多過ぎる」「将来、薬剤師が余るだろう」と囁かれて久しいのですが、私は、薬剤師は社会には不可欠な職種であり、数は多い方が良いと思っています。人口1,000人に1人の医師がいる社会と500人に1人の社会ではどちらが優れているでしょうか? それは紛れもなく500人に医師1人の社会ですよね。

いま、日本の実働薬剤師数は、人口約600人に対して1人ですが、これを500人に1人、400人に1人、300人に1人と増やしていくと、確実に薬の適正な使用が広がり、副作用に晒される患者さんを減らすことができるでしょう。

数だけでなく、医師や看護師の技術とは相対的に独立した薬剤師技術が存在することも大切です。「相対的に独立した技術」とは何でしょうか? 私は第1に「医薬品情報検索技術」だと思います。医師から「この薬でこんな副作用が起きるのだろうか」と聞かれたときに、あなたはどうしますか? 添付文書を見て製薬会社に聞いて、それで良しとしていませんか?

相対的に独立した第2の技術は「薬物動態学的評価技術」だと思います。「この薬は、いつごろ効いてきますか」と患者さんに聞かれたときに、どう答えていますか? 消失半減期を考え、血中濃度が定常状態に達する時期を勘案して答えることができますか?

相対的に独立した第3の技術は「機序別分類を応用した副作用チェック技術」だと思います。患者さんはくすりの副作用には敏感です。「スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症って、死ぬこともあるのだそうですね?」と聞かれたときに、あなたは「飲み始めてから、6か月以上たっているので大丈夫ですよ」と答えられますか?

1人でも多くの薬剤師に、この3つの技術を持ってほしい。この本では、その思いを語っています。そして、これらの薬剤師技術を臨床に応用しようとする場合に大切なことは、患者さんや医師、看護師、ケアマネージャーなどの多職種とどうつきあっていくかです。医療は、患者さんを中心に、多職種が関わり合って完成していくものです。ぜひ、薬剤師の技術を明確にして、患者さんの未来の幸福に繋げていきましょう。

2013年9月 菅野  彊

菅野 彊 (著), 日経ドラッグインフォメーション (編集)
日経BP、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1部

第1章 副作用機序別分類ができるまで
◆薬物動態学は難しくない
◆添付文書、きちんと読めますか?
◆勉強熱心じゃなかった学生時代
◆仕事に誇りが持てなかった時代もあった
◆患者さんのための医療がやりたい
◆外来調剤から病棟業務、「在宅」まで
◆薬と検査値の関係が分かる薬歴を作成
◆薬剤師には方法論が必要だ!
◆TDMとの出会い
◆薬物動態理論を武器に医師に処方提案
◆副作用機序別分類の芽生え
◆文献を検索する技術を磨く
◆自分一人が出来ても仕方がない
◆日本初の副作用データベースを作成
◆情報をバックグラウンドに疑義照会を
◆3大テーマを世の中の常識に
◆どんぐり未来塾、始動!

第2章 デカルト先生の教え
◆物事の見方を教えられた出会い
◆量を増やせば、いずれ質が変わる
◆デカルトの鉄則は「まず疑え」

第3章 アウフヘーベンする日まで
◆誰のために、何のためにするのか
◆病院薬剤師と同じ情報が手に入る日は近い
◆3つのPを合わせて見るのが薬剤師
◆未来を予測して現在を対処せよ
◆気になる患者さんをフォローしよう
◆医薬分業は進化の過程です
◆薬剤師は悲観論者が多い?!
◆患者さんが選べばいい

第2部
薬理作用と薬物動態で解く薬局副作用学

1 臓器別分類から機序別分類への転換
2 添付文書の読み解き方
3 薬物過敏症の特徴を知る
4 薬理作用による副作用の特徴を知る
5 薬物毒性による副作用の特徴を知る
6 薬剤性血液障害を分類する
7 薬剤性腎機能障害を分類する
8 薬剤性肝機能障害を分類する
9 中枢神経系の副作用を分類する
10 妊娠と薬
11 授乳婦と薬
12 高齢者と薬
13 薬理遺伝学と薬

あとがき

菅野 彊 (著), 日経ドラッグインフォメーション (編集)
日経BP、出典:出版社HP