所得税入門の入門 (令和元年度版)




はしがき

わが国には、50を超える種類の税金があります。所得税は、中でも最も身近かな税金です。

脱サラして商売を始めたいが税金はどうなっているの、
マイホームを購入したいが、住宅ローン減税は、
家や土地を売りたいが税金はいくらかかるの、
病院に入院したが医療費は税金から返してもらえるの、
投資信託をすすめられたが税金は、
パートで働きたいがいくらまでなら稼いでも……などなど

この本は、題して『所得税入門の入門』としました。
所得税法はむずかしくてわからないとも聞きますが、どなたにでもわかるようにポイントだけを絞って、やさしく書きました。

できれば最初から読んでほしいのですが、商売をしておられない方は第2章の2をとばし、土地や家を貸しておられない方は第2章の3をとばすなど、関係のあるところ、興味のあるところからお読みください。

本の題名は『所得税入門の入門』ですが基本はしっかり書いてあります。これだけわかれば所得税の知識は十分です。あとは、特例や適用要件、手続きです。それは必要な都度補えば十分足ります。

なお、この本の発行に当たっては、税理士西教弘氏に大変お世話になりました。ここに厚くお礼申し上げます。

平成11年5月
著者

―令和元年度版発行に当たって―

今回の改訂に当たっては全面的に見直しました。
平成31年(2019年)度の税制改正に伴う改正事項はもちろんのこと、読者のみなさまからのご意見も取り入れ、より読みやすいように、わかりやすいように、と心がけて多くの箇所を書き直し充実を図りました。

所得税は、私たち個人にとって最も身近な税金です。また、知らなかったばかりに損をしたと、よく耳にする税金です。
NISA、株式の売買、土地の譲渡、医療費控除、住宅ローン控除のことなど興味のあるところからお読みください。この本がみなさまのお役に立つことを念じてやみません。

なお、この本は、平成31年4月1日から施行の「所得税法等の部を改正する法律」を含め、平成31年4月1日現在の法令によっています。

また、令和元年度版の発行に当たって、税理士長田義博氏、税理士寺嶋芳朗氏、滋賀大学教授増山裕一氏には、いろいろとアドバイスをいただくなど大変お世話になりました。ここに厚くお礼申し上げます。

令和元年5月 改訂に当たって
著者

藤本 清一 (著)
税務研究会出版局、出典:出版社HP

◆もくじ

第1章 所得税の基本

1 所得税とはどんな税金か

2 所得税はどのような人にかかるか
(1) 居住者とは
(2) 非永住者とは
(3) 非居住者とは
(4) 法人にかかる所得税とは

3 所得税がかからない所得はあるか
1 利子・配当にかかるもの
2 給与にかかるもの
3 資産の譲渡にかかるもの
4 その他

4 所得税はどのようにして計算するのか
1 所得税の計算のしくみはどうなっているのか
2 各種所得の金額はどのように計算するのか
3 課税所得金額はどのように計算するのか
4 納付税額はどのように計算するのか

第2章 所得の計算方法の基本

1 所得の種類にはどのようなものがあるか

2 事業所得とその計算について
1 事業所得とは
2 事業所得はどのように計算するのか
3 総収入金額はどのように計算するのか
(1) 総収入金額の計算の基本
(2) 自家消費など
(3) 広告宣伝用資産の安価での譲受け
(4) 付随収入
(5) 損害賠償金や保険金を受け取ったとき
(6) 国庫補助金や地方公共団体から補助金の交付を受けたとき
(7)債務免除を受けたとき
4 必要経費はどのように計算するのか
(1) 売上原価
(2) 租税公課
(3) 荷造運賃
(4) 水道光熱費
(5) 旅費交通費
(6) 通信費
(7) 広告宣伝費
(8) 接待交際費
(9) リース料(リース取引)
(10) 賃借料
(11) 損害保険料
(12) 修繕費
(13) 消耗品費
(14) 福利厚生費
(15) 給料賃金
(16) 支払利子
(17) 手形売却損
(18) 地代家賃
(19) 減価償却資産の減価償却費
(20) 繰延資産の償却費
(21) 事業用固定資産の損失
(22) 貸倒損失
(23) 貸倒引当金
(24) 損害賠償金等
(25) 家族事業従事者(青色事業専従者給与)等の取扱い(26) その他
① 家内労働者等の所得計算の特例
② 医師等の社会保険診療報酬にかかる必要経費の特例
③ 青色申告特別控除
④ 外貨建取引

3 不動産所得とその計算について
1 不動産所得とは
(1) 不動産の貸付けとは
(2) 不動産上の権利の貸付けとは
(3) 船舶や航空機の貸付け
2 不動産所得はどのように計算するのか
3 総収入金額はどのように計算するのか
(1) 一般的原則
(2) 特殊な場合
(3) 頭金、権利金など
(4) 敷金、保証金
(5) 特別な収入
(6) 臨時所得となるもの
4 必要経費はどのように計算するのか
(1) 減価償却費(割増償却)
(2) 家族事業従事者(青色事業専従者給与)の取扱い
(3) 立退料
(4) 固定資産の損失
(5) 借入金利子
(6) 青色申告特別控除

4 利子所得とその計算について
1 利子所得とは
2 利子の非課税制度とは
3 利子所得はどのように計算するのか

5 配当所得とその計算について
1 配当所得とは
(1) 配当所得の課税方法
(2) 確定申告をしなくてもよい配当所得
(3) 配当所得とみなされるもの
(4) 協同組合などの剰余金の分配の場合
(5) 株主優待券の取扱い
2 配当所得はどのように計算するのか3上場株式等にかかる配当所得の特例とは
(1) 上場株式等にかかる配当所得の申告分離選択課税
(2) 上場株式等の譲渡損失と上場株式等の配当所得との間の損益 通算の特例
(3) 少額上場株式等にかかる非課税の特例(いわゆるNISA)
(4) 未成年者口座内の少額上場株式等にかかる非課税の特例 (いわゆるジュニアNISA)

6 給与所得とその計算について
1 給与所得とは
(1) 給与所得と確定申告
(2) 給与所得と事業所得の区分
(3) 医師などが受ける報酬の取扱い
(4) 課税されない給与所得
2 給与所得はどのように計算するのか
(1) 収入金額の計算
(2) 給与所得控除額の計算
(3) 給与所得金額の簡易計算
3 特定支出控除とは
(1) 特定支出とは
(2) 適用を受けるための手続き

7 退職所得とその計算について
1 退職所得とは
2 退職所得はどのように計算するのか
(1) 収入金額の計算
(2) 退職所得控除額の計算
(3) 税額の計算

8 山林所得とその計算について
1 山林所得とは
2 山林所得はどのように計算するのか
(1) 総収入金額の計算
(2) 必要経費の計算
(3) 特別控除額
(4) 青色申告特別控除
(5) 税額の計算

9 譲渡所得とその計算について
1 譲渡所得とは
(1) 資産とは
(2) 譲渡とは
(3) 譲渡所得とならないもの
2 譲渡所得はどのように計算するのか
(1) 総収入金額の計算
(2) 取得費の計算
(3) 譲渡費用
(4) 短期譲渡か長期譲渡か
3 土地建物等の譲渡所得の分離課税
(1) 土地建物等の資産とは
(2) 譲渡所得の計算方法
(3) 分離課税(土地建物等の譲渡所得)の場合の特別控除額
4 その他の土地等の譲渡所得の課税の特例
(1) 買換え(交換)の特例
(2) 所得税の税率の軽減の特例
5 株式等の譲渡にかかる譲渡所得等の課税
(1) 申告分離課税
(2) 譲渡所得等の金額の計算
(3) 譲渡所得等の金額に対する所得税額の計算
(4) 特定口座内保管上場株式等の譲渡所得等の申告不要の特例等
(5) 上場株式等にかかる譲渡損失の繰越控除
(6) 特定中小会社の株式の譲渡等の特例
(7) 株式交換または株式移転にかかる課税の特例
(8) 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例

10 一時所得、雑所得とその計算について
1 一時所得、雑所得とは
2 一時所得はどのように計算するのか
(1) 総収入金額の計上時期
(2) 賞品などで支払われる収入金額
(3) 生命保険契約または損害保険契約に基づく一時所得の計算
(4) 立退料の課税関係
3 雑所得はどのように計算するのか…
(1) 公的年金等にかかる所得の計算
(2) 公的年金等以外の雑所得の金額の計算
(3) 先物取引にかかる雑所得等の金額の計算

11 所得の総合はどのようにして行うのか
1 所得の総合の基本
2 損益通算
(1) 総所得、山林所得および退職所得の損益通算
(2) 分離課税の損益通算
(3) 居住用財産の譲渡損失
3 損失の繰越し
(1) 繰越控除の順序
4 純損失の繰戻し還付

第3章 所得から差し引かれる金額(所得控除)の基本

1 所得控除にはどのような種類があるのか
2 各種所得控除の計算はどのようにするのか
1 雑損控除
(1) 雑損控除の発生原因は
(2) 雑損控除の対象となる資産の範囲は
(3) 災害等に関連して支払った費用とは
(4) 控除額の計算はどのようにするのか
(5) 雑損控除を受けるには
2 医療費控除
(1) 医療費とは
(2) 控除額の計算はどのようにするのか
(3) 医療費控除を受けるには
(4) 特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)
3 社会保険料控除
4 小規模企業共済等掛金控除
5 生命保険料控除
(1) 一般の生命保険契約等とは
(2) 介護医療保険契約等とは
(3) 個人年金保険契約等とは
(4) その年中に支払った保険料とは
(5) 控除額の計算はどのようにするのか
(6) 生命保険料控除を受けるためには
6 地震保険料控除
(1) 控除の対象となる損害保険契約等とは
(2) 支払った地震保険料とは
(3) 地震保険料控除額の計算
(4) 地震保険料控除を受けるには
7 寄附金控除
(1) 特定寄附金とは
(2) 控除額の計算はどのようにするのか
(3) 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の寄附金
控除の特例(いわゆるエンジェル税制)
(4) 寄附金控除を受けるには
8 障害者控除
(1) 障害者とはどんな人か
(2) 特別障害者とはどんな人か
(3) 同居特別障害者とはどんな人か
9 寡婦・寡夫控除
(1) 寡婦とはどんな人か
(2) 特定の寡婦とはどんな人か
(3) 寡夫とはどんな人か
10 勤労学生控除
11 配偶者控除
(1) 控除対象配偶者とは
(2) 老人控除対象配偶者とは
12 配偶者特別控除
13 扶養控除
(1) 扶養親族とはどんな人か
(2) 控除対象扶養親族とはどんな人か
(3) 特定扶養親族とはどんな人か
(4) 老人扶養親族とはどんな人か
(5) 同居老親等とはどんな人か
14 基礎控除

3 所得控除に順序はあるのか
1 所得控除には順序がある
2 以上の所得金額がある場合にも控除の順序がある

第4章 税金の計算はどのようにするのか

1 所得税の計算のしくみはどうなっているのか

2 超過累進税率とはどんなことか

3 変動所得や臨時所得があるとき
(1) 変動所得とは
(2) 臨時所得とは
(3) 変動所得や臨時所得がある場合の税金の計算

4 申告分離課税のしくみはどうなっているのか

第5章 税金から差し引かれる金額(税額控除)の基本

1 税額控除にはどのような種類があるのか

2 主な税額控除の計算はどのようにするのか
1 配当控除
2 マイホームを取得したときの住宅借入金等特別控除
(1) どんな場合に控除が受けられるのか
(2) 新築住宅の取得等のケース
(3) 中古住宅の取得のケース
(4) 住宅の増改築等のケース
(5) 控除はどんな場合に受けられないか
(6) 控除額の計算はどうするのか
(7) 控除を受けるための手続きはどうするのか
(8) 所得税額から控除しきれない場合どうなるのか
3 認定住宅を新築等した場合の特別控除(認定住宅新築等特別税額控除)
4 特定増改築等住宅借入金等特別控除
5 特定の改修工事をした場合の特別控除(住宅特定改修特別税額控除)
6 耐震改修をした場合の特別控除
7 政党等寄附金特別控除
8 認定NPO法人等または公益社団法人等に対する寄附金特別控除
9 外国税額控除

第6章 申告と納税

1 所得税はどこで納めるのか

2 申告の種類にはどのようなものがあるか
1 確定申告の種類
2 財産債務調書等の添付

3 確定申告
1 確定申告をしなければならない人とは
(1) 一般の人の場合
(2) 給与所得のある人の場合
(3) 退職所得のある人の場合
(4) 公的年金等のある人の場合
2 確定申告をすれば税金が還付される人とは
3 損失が生じたときの確定申告とは
(1) 白色申告をする人の場合
(2) 青色申告をする人の場合
(3) その他の損失
4 e-Tax(電子申告)による確定申告
5 住民票の写し等の添付省略

4 死亡した人、出国する人の確定申告は
1 死亡した人の確定申告
2 出国する人の確定申告

5 納税の方法は
1 税金納付のあらまし
2 予定納税とは
3 延納の制度(分割払い)とは

6 期限後申告とは

7 確定申告が誤っていたときの是正方法は
1 修正申告とは
2 更正の請求とは

8 更正・決定とは
1 更正・決定とは
2 過少申告加算税とは
3 無申告加算税とは
4 重加算税とは
5 延滞税とは

第7章 所得税の天引き(源泉徴収)制度とは

1 源泉徴収の対象となるものは
1 利子所得
2 配当所得
3 給与所得
4 退職所得
5 公的年金等
6 報酬・料金等
7 源泉徴収関係書類の保管・提出
8 源泉徴収税額の納付
9 特定口座内保管上場株式等の譲渡所得等
10 生命保険契約等に基づく年金等

2 給与の年末調整とは

第8章 青色申告と白色申告の記帳制度

1 青色申告制度とは
1 青色申告のできる人
2 青色申告者が備える帳簿とは
3 帳簿の保存期間は何年か
4 青色申告者の特典とは
(1) 所得計算上の特典
(2) 純損失の取扱いの特例
(3) 更正の特例
5 青色申告の取りやめと取消し
(1) 青色申告の取りやめ
(2) 青色申告の承認の取消し

2 白色申告者の記帳は

第9章 災害にあったとき所得税は

1 災害による損失の取扱いは
(1) 商品などの損失
(2) 店舗、備品などの事業用固定資産の損失
(3) 山林の損失
(4) 不動産所得、雑所得の業務用資産など
(5) 別荘などの生活に通常必要でない資産
(6) 前記(1)から(5)に該当しない住宅や家具などの資産

2 雑損控除

3 災害減免法による減免

4 予定納税の減額

5 源泉徴収税額の徴収の猶予と還付

6 納税の猶予

7 申告などの期限の延長

8 東日本大震災に伴う所得税の臨時特例

9 復興特別所得税
1 復興特別所得税額の計算
2 基準所得税額

第10章 税務署長の処分に不服があるときは

1 再調査の請求とは
2 審査請求とは
3 裁判所への提訴
4 不作為に対する不服申立て

[付録]

1 主な有形減価償却資産の耐用年数表
2 主な無形減価償却資産の耐用年数表
3 減価償却資産の償却率表(抄)
4 令和元年分簡易給与所得表(一部抜粋)
5 給与所得の速算表
6 公的年金等にかかる雑所得の速算表
7 所得税額の速算表
8 所得控除の一覧表
9 確定申告書の様式
10 確定申告書記載例

藤本 清一 (著)
税務研究会出版局、出典:出版社HP