情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ




はじめに

本書は、経済産業省が実施する情報処理技術者試験のうち高度試験8区分及び情報処理安全確保支援士試験の午前I・午前II試験の対策書です。基本情報技術者試験や応用情報技術者試験に合格しているか、同等レベルのIT業務経験や知識がある方で,次のステップに進む方を対象としています。

2009年度(平成21年度)から始まった新制度の情報処理技術者試験では,午前Iで全試験区分共通の幅広い知識を,午前IIで試験区分ごとの専門分野を中心とする深い知識を問われます。この10年間で出題傾向が明確になるとともに,過去問題の再出題も頻繁に行われるようになっています。また,2017年度(平成29年度)には,情報セキュリティスペシャリスト試験に代えて、情報処理安全確保支援士制度が創設されて試験が開始されました。

本書では出題傾向を徹底分析し,重要な知識を含む過去問題や、再出題の可能性が高い過去問題を中心に,500問を収録しています。本番の試験に出題された過去問題(新作問題を除く)のうち,半数が本書に収録した問題から出題されています。

これにより、知識を確実に身に付けながら,試験対策としても効果的・効率的な学習ができるようになっています。また,記述式・論述式で行われる午後試験でも,午前の対策で得た知識は役立ちます。本書を活用して,多くの方が合格されることを願っています。
2018年8月松原敬二

松原 敬二(著)
翔泳社(2018/9/12)、出典:amazon.co.jp

本書の構成と活用法

本書の構成
本書には、高度試験及び応用情報技術者試験の過去問題(2009年春期~2017年秋期)から500問を選定し、9のChapter(大分類)と23のテーマ(中分類)に分類して収録しています。

テーマタイトル
出題範囲となっている試験区分と出題レベル(Lv.3又はLv.4)を、右上に表示しています。午前Iについては,全23テーマが出題範囲(学習範囲)となります。午前IIについては,受験予定の試験区分の略称を見て、出題範囲であるかどうかと,出題レベルを確認してください。なお,高度試験の略称は、「試験制度の概要」のページを参照してください。

最近の出題数
最近2年間(4回分)の試験区分別出題数を示しています。

出題傾向,頻出テーマ
一つのテーマ(中分類)は幾つかの小分類に分かれ,さらに小分類には幾つかの知識項目例が含まれます。知識項目例には頻出のものもあれば、出題実績のほとんどないものもあります。そこで,2009年度以降の出題を分析し,試験区分別の出題傾向と,実際に多く出題されているポイント及びキーワードをまとめています。

小分類と問題・解説
問題番号/見出しの上には、問題のレベル,出題時間帯・試験区分,問題タイプを表示しています。午前I受験者は赤色で「全区分」と表示されている問題、午前II受験者は受験する試験区分が赤色で表示されている問題が学習対象です。

問題タイプは,三つに分けて表示しています。不得意な問題タイプを繰り返し学習したり、試験直前にまとめて復習したりするのに利用してください。

それに続き、問題文,出題年度・区分,解説,正解を掲載しています。問題には[AP-H30年秋問10]のように、試験区分の略称,年度・期,問題番号を示しています。
APは応用情報技術者試験午前,AM1は高度共通午前Iを示します。
問題文で直接問われるのは出題範囲に含まれる知識の一部であり,それに対する解説だけでは断片的な知識しか得られません。そこで、類似問題にも対応できるような体系的・本質的な知識が身に付くよう、解答の導き方だけでなく、問題の背景となる知識も広く取り入れて解説するように配慮しました。
なお、正解や重要な用語などは本書に付属の赤いシートによって隠すことができます。効率的な学習を行うために、活用してください。
中分類,小分類,知識項目例の分け方は、「応用情報技術者試験(レベル3)シラバスVer4.0」(平成28年5月)に準拠しています。

本書の活用法

午前I試験から受験する方
午前Iでは全分野が出題範囲ですので、全ての章・節を学習してください。特に、不得意分野や未習分野に重点を置いて学習してください。出題範囲が広い割に出題数が少ないため、取りこぼしのないよう十分な対策をすることが必要です。

午前の出題分野一覧表(xiiiページ)の受験する試験区分で、午前IIIが「O3」となっている分野に重点を置いて学習してください。「Lv.4」の問題は学習する必要はありません。・受験する試験区分の午前IIIが「04」となっている分野は、「Lv.4」の問題を含め、徹底的に学習してください。午後対策と兼ねてもよいでしょう。

午前Iと午前IIの両方で60点を取れるよう、偏りなく学習してください。
専門分野を中心とする出題のため、午後対策と兼ねられますが、細かい知識や用語も問われますので、きちんと試験対策をすることが必要です。

午前II試験から受験する方
午前の出題分野一覧表(xiiページ)の受験する試験区分で、午前IIが「O3」又は「◎4」となっている分野を学習してください。
「O3」の分野は、「Lv.4」の問題以外を学習してください。
「◎4」の分野は、「Lv.4」の問題を含め、徹底的に学習してください。午後対策と兼ねてもよいでしょう。

コラム・午前で何点を目指すべきか
午前(午前I・午前II)試験の基準点は60点です。それでは午前は70点くらいを目標にしておき、後は午後対策に注力すればよいのでしょうか?それは否と考えます。
記憶や認知に関して「再認」と「再生」という言葉があります。再認は、「○○を知っていますか?」と問われて「知っています」と答えられる状態です。再生は,手掛かりだけを与えられて、自らの力で言葉を思い出せる状態です。知らないことは再認できないので、再生もできません。また,再生は再認より難しく、再認できても再生できない(いわれたら分かるが、自分からは思い出せない)ことがしばしばです。

午前試験は,選択肢から正しいものを選べばよいので、記憶を再認できれば正解できます。一方,午後試験は、設問を手掛かりに、自分の言葉で答えますので、記憶を再生できる必要があります。

そうすると、午前が60点ぎりぎりでは、午後で60点を取るのは心許ないといえます。筆者の知人には,多数の高度試験に合格している人が多くいますが、皆さん午前試験は90点前後を取られています。午前は何とか通過できるのに、午後でなかなか60点を取れないという方は、午前で80点,90点を目指して学習してみてください。再認できる知識が増えれば、再生できる知識も増えるので、午後の点数もアップするはずです。

過去問題の再出題

再出題の傾向
午前(午前I・午前II)試験では,積極的に過去問題が再出題(再利用)されています。再出題に当たっては,前回の出題から少なくとも1年半を空ける運用が行われています。つまり、•2019年春期試験では,2017年秋期以前・2019年秋期試験では,2018年春期以前の過去問題から再出題される可能性があります。

最短では1年半前の過去問題が再出題される場合がありますが、全体的には2~4年前の過去問題が多く出題される傾向があります。また,3回以上,再出題されているものもあります。
異なる試験区分の過去問題が再出題されることも多々あります。例えば、プロジェクトマネージャ試験の過去問題が、数年後のシステムアーキテクト試験で再出題されるといったことです。

この出題傾向に鑑み、本書では2009年春期~2017年秋期に出題された過去問題から、再出題の可能性が高い500問を選定して収録しています。2018年春期の過去問題が,2019年秋期に再出題されることはありえますが、その可能性は高くないため、あえて選定対象から外しています。

2018年
過去問題再出題の状況
共通午前1と各試験区分午前IIIの合計155問のうち、過去問題の再出題は91問(59%),新作問題は64問(41%)でした。再出題された91問のうち,本書2018年版に49問が掲載されており、予想的中率は54%に達しています。

2017年
過去問題再出題の状況
共通午前Iと各試験区分午前IIの合計155問のうち、過去問題の再出題は92問(59%),新作問題は63問(39%)でした。再出題された92問のうち、本書2018年版に31問が掲載されており、予想的中率は34%でした(2017年版ではSC試験を収録対象外としたため、その的中率が特に低くなっています)。

試験制度の概要

ここでは,本書が対象とする高度試験及び情報処理安全確保支援士試験の午前I・午前II試験について、実施形式を中心に解説します。

試験区分と実施形式
高度試験(高度区分)と総称される上級者向けの8試験区分があり,春期,秋期にそれぞれ4試験区分が実施されます。情報処理安全確保支援士試験は春期,秋期の年2回実施されます。

高度午前Iと応用情報午前の違い
高度試験及び情報処理安全確保支援士試験の午前Iと,応用情報技術者(AP)試験の午前は、シラバスでは出題範囲は同一です。午前Iの問題は、同じ日に実施されるAP試験の午前問題80問から,30問を抜き出したものとなっています。

しかし、ランダムに抜き出しているのでなく、分野によって午前IとAP午前で出題傾向が異なります。本書ではこのような傾向も分析して、午前Iに出題されやすい過去問題を選定していますので、効率良く学習できます。

2019年度試験の実施概要※全て予定であり,今後変更の可能性があります。最新情報は情報処理推進機構(IPA)のホームページで確認してください。

午前I免除制度
条件を満たせば、応募時に申請することにより午前I試験が免除となります。免除申請が認められれば午前II試験からの受験となり、午前I試験は受験できません。
午前1,午前III,午後Iの各試験,及び午後II試験が記述式の試験区分は100点満点で採点されます。午後II試験が論述式(小論文)の試験区分は,A,B,C,Dの4段階の評価ランクで採点されます。

午前Ⅰ,午前Ⅱ,午後I,午後Ⅱの順に採点され,全てが60点以上(午後II試験が論述式の試験区分は、評価ランクA)で合格となります。途中で採点結果が60点に満たなければ、以後の時間帯の試験は採点されずに不合格となります。
午前試験に関しては、午前I(共通知識)と午前II(専門知識)のそれぞれで60点を取るために,偏らないよう両方を学習しておく必要があります。

最新版「試験の分析」の提供について
viii~xiページと同様の「試験の分析」について、2018年秋期試験終了後及び2019年春期試験終了後,最新版をPDFで提供します(2018年秋期試験は2018年10月末,2019年春期試験は2019年5月中旬に提供予定)。
最新版の「最近の出題数」については、下記URLのWebページにアクセスして、データをダウンロードしてください。
ダウンロードページ(2019年12月末まで公開)
※上記期限は予告なく変更になることがあります。
https://www.shoeisha.co.jp/book/present/9784798157931

コラム・過去問題を再出題する理由
過去問題を再出題する目的として,次のようなことが考えられます。
•難易度を一定に保つこと
試験は,受験者の実力を適切に成績に反映できることが必要です。やさしすぎず、難しすぎず、適切な難易度であることが求められます。また,実力のある人ほど、惑わされて誤答するような、珍問・奇問の類も排除しなければなりません。

新規問題は,事前に正答率を予測することは難しいものです。その点、出題実績のある問題なら、正答率や正答・誤答傾向などが分かっています。正答率が高めのものから低めのものまで、良質な過去問題を適度に盛り込むことで,平均点や標準偏差を一定に保つとともに,質のよい試験問題を作成できます。

一般に過去問題は膨大にあり、受験前に全て記憶することは不可能です。再出題しても大部分の受験者にとっては初めて見る問題ですから,母集団のレベルが同じなら正答率はそれほど変わらないことが知られています。

・知識の啓蒙
特にITストラテジスト試験などで顕著ですが、3回4回と繰返し再出題される問題が存在しています。これはIPAが重要と考える事項について,出題をきっかけに受験者に学習させることで,その知識の啓蒙を目指していると考えられます。
このような問題は再出題を予想しやすいため、正答率が高くなる可能性があります。そのため、確実に学習して正解すべき問題であるともいえます。

松原 敬二(著)
翔泳社(2018/9/12)、出典:amazon.co.jp

目次

本書の構成と活用法………………
過去問題の再出題
2018年度春期試験の分析…….
2017年度秋期試験の分析
試験制度の概要。

Chapter01基礎理論
01基礎理論、
1-1離散数学,
1-2応用数学,
1-3情報に関する理論……
1-4通信に関する理論.
1-5計測・制御に関する理論………
02アルゴリズムとプログラミング
2-1データ構造
2-2アルゴリズム。

Chapter02
コンピュータシステム
03コンピュータ構成要素,
3-1プロセッサ….
3-2メモリ………..
3-3バス..
3-4入出力デバイス…
3-5入出力装置、
04システム構成要素。
4-1システムの構成…
4-2システムの評価指標..
05ソフトウェア…..
5-1オペレーティングシステム…
5-2ミドルウェア….
5-3ファイルシステム..
5-4開発ツール
5-5オープンソースソフトウェア.
06ハードウェア
6-1ハードウェア.

Chapter03技術要素
07ヒューマンインタフェース、
7-1ヒューマンインタフェース技術
7-2インタフェース設計…
08マルチメディア
8-1マルチメディア技術…
8-2マルチメディア応用…
09データベース
9-1データベース方式..
9-2データベース設計
9-3データ操作………………
9-4トランザクション処理
9-5データベース応用………
10ネットワーク
10-1ネットワーク方式.
10-2データ通信と制御
10-3通信プロトコル
10-4ネットワーク管理
10-5ネットワーク応用
11セキュリティ
11-1情報セキュリティ…..
11-2情報セキュリティ管理.
11-3セキュリティ技術評価.
11-4情報セキュリティ対策…
11-5セキュリティ実装技術….

Chapter04脚凳技術
12システム開発技術。
12-1システム要件定義…..
12-2システム方式設計………….
12-3ソフトウェア要件定義…….
12-4ソフトウェア方式設計・ソフトウェア詳細設計…..
12-5ソフトウェア構築
12-6ソフトウェア結合ソフトウェア適格性確認テスト
12-7システム結合・システム適格性確認テスト
12-8受入れ支援
12-9保守・廃棄物
13ソフトウェア開発管理技術、
13-1開発プロセス・手法……
13-2知的財産適用管理…
13-3構成管理・変更管理.

Chapter05プロジェクトマネジメント
14プロジェクトマネジメント…
14-1プロジェクトマネジメント….
14-2プロジェクト統合マネジメント…
14-3プロジェクトステークホルダマネジメント…..
14-4プロジェクトスコープマネジメント
14-5プロジェクト資源マネジメント…..
14-6プロジェクトタイムマネジメント…….
14-7プロジェクトコストマネジメント….
14-8プロジェクトリスクマネジメント.
14.9プロジェクト品質マネジメント..
14-10プロジェクト調達マネジメント…..
14-11プロジェクトコミュニケーションマネジメント

Chapter06サービスマネジメント
15サービスマネジメント………..
15-1サービスマネジメント…
15-2サービスの設計・移行…
15-3サービスマネジメントプロセス…..
15-4サービスの運用
15-5ファシリティマネジメント…
16システム監査….
16-1システム監査…..
16-2内部統制…………….

Chapter07システム戦略
17システム戦略
17-1情報システム戦略…
17-2業務プロセス
17-3ソリューションビジネス..
17-4システム活用促進・評価….
18システム企画
18-1システム化計画…
18-2要件定義
18-3調達計画・実施

Chapter08経営戰略
19経営戦略マネジメント……..
19-1経営戦略手法….
19-2マーケティング…
19-3ビジネス戦略と目標・評価…
19-4経営管理システム……..
20技術戦略マネジメント………
20-1技術開発戦略の立案、
20-2技術開発計画.
21ビジネスインダストリ…
21-1ビジネスシステム
21-2エンジニアリングシステム
21-3e-ビジネス…..
21-4民生機器…..

Chapter09
企業と法務
22企業活動…………..
22-1経営・組織論……
22-2OR・IE………
22-3会計・財務…
23法務…..
23-1知的財産権
23-2セキュリティ関連法規..
23-3労働関連・取引関連法規..
23-4その他の法律・ガイドライン・技術者倫理..

索引

松原 敬二(著)
翔泳社(2018/9/12)、出典:amazon.co.jp