二級建築士 はじめの一歩 学科対策テキスト
はじめに
広く、そして奥が深い建築の世界
歴史に名を残すほどの有名な建築物を手掛ける。そんな機会にはなかなか恵まれないかもしれませんが、建築って、その建築物を見たり利用したりする人に刺激や感動を与え、住宅であれば住む人の生活や人生に大きな影響を与えたりします。
そんなとても大きなやりがいのある建築という世界に、これから足を踏み入れる人のために、少しでも早く建築というものに馴染んで頂きたい、また、わかりやすく理解して頂きたい、そんな思いでこの本を書かせて頂くことになりました。
建築という世界は、その中にも意匠(デザイン)や構造、設備、施工(現場)など、いくつか専門の分野に分かれ、さらにその専門分野一つとってみても幅が広く、また奥が深いと言えます。これから建築を学んでいく人にとっては、どこから勉強を始めたらいいかわからないでしょう。そんな中、全然興味がないところで深みにはまってしまうと、一気に「建築って面白くないな」と思ってしまう可能性があるのです。
そうならないために
まずは建築業界にいる人ならほとんどの人が知っている基本的な部分、また、最低限知っておきたい部分について、この本でしっかりと理解して頂きたいと思います。そして、建築の全体像がなんとなくつかめたら、自分の好きな分野、興味が湧きそうな分野について詳しく勉強していくようにしてください。
医療の世界でも、外科や内科など、専門の分野に分かれていますよね、医療のすべてにおいて専門家になる必要はないのです。まずは、各分野の基本的なこと、また、最低限知っておきたい部分を学んでください。専門家になるほど、一つの分野に特化して活躍しています。
これから二級建築士試験に挑戦し、建築士になるという人へ
三角形の面積の求め方がわからないのに、台形の面積を求めることはできません。でも、初めて建築士試験の勉強をする人は、そこを教えてくれる人がいないので、いきなり台形の面積を求めることから始めようとすることがあります。そして、自分には無理だと苦手意識を持ってしまう人が多いです。この1冊で学科試験のすべての範囲を網羅することはできませんが、いきなり分厚い参考書を手にする前に、まずはこの本で基本的なことを身に付けください、
そして、次のステップとして、他の参考書や問題集に取り組んで頂くと、よりスムーズに学習を進めていくことができ、効率良くレベルアップを図ることができます。この本を有効に活用して頂き、あなたの夢を叶える手助けに、少しでもお役に立つことができれば幸いに思います。
最端製図.com神無修二
二級建築士試験について
一級建築士とは、建築物の質の向上に寄与するため、建築士法によって定められた。家資格です。取得することによって、一定規模の建築物の設計や工事監理をすることができます。試験は、一次試験の学科と二次試験の実技(設計製図)があり、一次試験に合格すれば、二次試験を受験することができます。したがって、まずは一次試験の学科を突破する必要があります。
試験の日程
3月~4月受験申込み
7月一次試験
8月一次試験の合格発表
9月二次試験(設計製図)
12月二次試験の合格発表
試験科目と試験時間
一次試験の学科には、I計画_I法規皿構造IV施工の4科目があり、それぞれ25問で合計100問あります(1問1点で100点満点です)。試験時間は、午前中3時間でI計画とⅡ法規、お昼休憩を挟んで、午後3時間でⅢ構造とⅣ施工の試験が行なわれます。なお、学科Ⅱの法規の問題を解くときに限り法令集の使用が認められています。法令集は1冊のみ、また使用が認められないものもありますので注意が必要です。
受験資格
建築士試験を受けるには、建築に関する学歴や建築実務経験などの受験資格が必要です。受験申込時に、卒業証明書や実務経歴書などを申込書と一緒に提出します。
合格ラインと合格率
学科試験の合格点は、各科目13点、合計60点とされていますが、年度によって試験後に多少変更になる場合があります。各科目に点数(足切り点と言います)が定められていますので、万遍なく学習を行なう必要があると言えます。合格率は、概ね30%前後から35%くらいとなっています。ちなみに、二次(設計製図)試験の合格率は、50%から55%くらいです。
二次(設計製図)試験
一次試験に合格すると次は二次(設計製図)試験です。6月にその年の設計課題(建物用途や構造、階数など)が発表され、9月に行なわれます。試験時間は5時間です。5時間の間に設計(エスキース)と製図を行ないます。学科試験に合格すると、その年と翌年、またその次の年と、計3回製図試験にチャレンジすることができます。
二級建築士の業務範囲(建築士法第3条の2)
二級建築士が設計・工事監理できる範囲は、概ね以下の通りです。
・学校、病院、映画館、百貨店などの特殊建築物で、延べ面積が500m以下のもの
・木造の建築物又は建築物の部分で、高さが13m又は軒の高さが9m以下のもの
・木造の建築物で延べ面積が1,000m以下のもの(階数が1の場合は面積の制限なし)
・木造以外の建築物で延べ面積が300m、高さが13m又は軒の高さが9m以下のもの
建築技術教育普及センター(http://www.jaeic.or.jp/)
試験を行なっています。建築技術教育普及センターのホームページでは、試験に関する詳細を調べることができます。
●試験日程
●受験資格要件
●出題科目
●学科試験で使用できる法令集
●製図試験で使用できる製図道具
●過去の試験のデータなど
詳しいことは、ホームページで調べてみてください。
もくじ
はじめに
二級建築士試験について
第一章 快適に住まう編 計画
建築環境
1気候 日本は四季を楽しむことができる国
2日照・採光 日本と赤道付近、夏に暑いのはどっち!?
3通風・換気・空気汚染 健康で快適に暮らすために
4温度・湿度 空気線図ってなに?
5伝熱 熱を伝えやすい材料とは?
6結露 温度差に注意!
7音 音でこんなに変わる生活環境
8日光・色彩 光や色が持つ効果とは
建築計画
9住宅の計画 住宅の設計が建築の中で一番奥が深い
10住宅の計画 快適な住まいづくり
11集合住宅 タイプ別の特徴を知ろう
12都市計画 暮らしやすいまちづくり
13建築生産 より効率良く、より合理的に
14公共施設1 美術館・博物館・図書館
15公共施設2 学校・幼稚園
16公共施設3 医療施設・社会福祉施設
17商業建築 利便性と収益性
18事務所 快適な執務空間をつくるために
19各部計画 スケール感覚を養おう!
建築設備
20給水・給湯設備 生活に欠かせない水
21排水・衛生設備 使った水はどこへ行く?
22電気設備・照明設備 明かり一つでも考えることはたくさん
23空調設備 目的に応じて効率良く
24日防災・消防設備 いざというときのために
25超省エネルギー 地球のために考えるエコ
第二章 建築の決まりごと編 法規
建築基準法集団規定
26用語の定義 建築って、そもそも何だろう?
27建築手続き・確認申請 家を建てるにはいろいろな手続きが
28面積・高さ どうやって求めるの?
29用途地域 地域によって建てられないものがある?
30建ぺい率 敷地いっぱいに建てられない!?
31容積率 延べ面積にも限度が!?
32高さ制限1 いろいろな条件を複合チェック!
33高さ制限2 ご近隣への配慮も必要です
34日影規制 まだまだあります近隣配慮
35国防火地域・準防火地域 防災機能をより高く
36敷地・道路 敷地と道路との関係
建築基準法単体規定
37採光 窓の大きさにも決まりがあります
38換気 便所からシックハウス対策まで
39一般構造 遮音・天井の高さ・床の高さ
40階段に関する規定 当然あります。階段の決まりごと
41構造計算 建物に影響する力(荷重)には何がある?
42木造の決まり 軸組(耐力壁)は、種類によって強さが違います
43RC造・S造の決まり コンクリートは寒いのが苦手
44防火区画 少しでも燃え広がらないように
45耐火・準耐火建築物 火災に強い建築物に
46避難施設 廊下や階段、実は避難施設です
47内装制限 自由に選びたい仕上材料
その他の法律
48建築士法 建築士の役割と責務
49関連法規 他にもたくさんあります
第三章 丈夫な建物づくり編 構造
一般構造
50木造・補強コンクリートブロック造 日本が世界に誇る木造建築
51鉄筋コンクリート造 鉄骨造高層建築物に適する構造
52荷重・外力 耐震はもちろん重要ですが
53地震力 想像できないほどのエネルギー
54地盤・基礎 まずは足元から
55木造の特徴 日本に適した構造
56木造の建物に必要な壁 実は壁で地震に抵抗しています
57鉄筋コンクリート造の特徴 鉄筋とコンクリートはとても仲良し
58鉄筋コンクリート造の計画 部材の特徴を知って効率良く配置
59鉄骨造の特徴 なんといっても粘り強い!
60鉄骨造(接合) 締めるか固めるか
61構造計画 建物を安全な構造体にするために
建築材料
62木材 木は最もぬくもりのある材料
63コンクリート 自由な形につくれる優れた材料
64鋼材・金属材料 鉄は強いが錆と熱には要注意!
65その他の材料 建築材料は千差万別
構造力学
66力のつり合い 部材は動いちゃいけない!!
67静定梁の応力 いろいろな荷重を支える梁
68力のおきかえと反力の求め方 力のつり合いを具体的に考えてみよう
69曲げモーメントとせん断力の求め方 梁に生じる応力
70トラス 部材の性質を活かした効率の良い形
71断面の性質 部材の力を活かす使い方
72応力度 コンクリートとわら、強いのはどっち?
73座屈 撓んではいけない、材料も、気持ちも
第四章 実際に建てるには編 施工
施工計画
74施工計画 計画なしでは工事は進みません
75工事準備と工事かんり 言われなくても安全第一!
各部工事
76仮設工事 脇役、でも重要な存在
77地盤調査 砂上の楼閣では意味がない
78地業・基礎工事 丈夫な家づくりは足元が大事!
79鉄筋工事 工場で加工、現場で組み立てる
80型枠工事 丈夫に、でも解体しやすいように
81コンクリート工事(運搬から打込み) 時間との勝負!
82コンクリート工事(養生と欠陥) 安心はまだできない
83鉄骨工事 ボルトで留めるか溶接か
84木工事 建材として生き続ける木
85防水工事 雨漏りしては意味がありません
86屋根工事 建物を守る重要な役割
37左官工事 ただ塗るだけではありません
88タイル工事 見た目だけではない、建物を保護する役割も
89塗装工事 種類も目的もいろいろあります
90建具・ガラス工事 玄関扉は内開き?それとも外開き?
91内装・断熱工事 内装一つで部屋の雰囲気は大きく変わる
92設備工事 ガス感知器はどこに付ける?
施工機械・その他
93施工機械 いろいろあります建築機材
94測量 実は建築って測量から始まる
95積算 もちろん重要、お金の管理
96契約・設計図書 もめごとが発生しないように
おわりに