実践 ビジネス数学検定2級




はじめに

あなたがイメージする“できる”ビジネスパーソンとはどんな人でしょうか。誰にでも愛想がよく、やさしくて、おしゃれでかっこいい人でしょうか?それとも頭の回転が速く合理的に仕事を進めることのできる人でしょうか?

どちらも必要なことかもしれませんが、ビジネスパーソンとしての能力を考えた場合、合理的に仕事を進めることができる人のほうが、“できる”ビジネスパーソンと考えられるのではないでしょうか。

ビジネスで求められる5つの力

ビジネスシーンで求められるビジネス数学力は、大きく5つに分けられます。物事の状況や特徴をつかむ「把握力」、規則性や変化、相関性などを見抜く「分析力」、いくつかの事象から最適な解もしくはアプローチ方法を選ぶ「選択力」、過去のデータから未来を見通す「予測力」、情報を正確に伝える「表現力」の5つです。

本書は入社して3~5年が経過し、リーダークラスを目指す方々を対象にしていますが、そうした方が直面するビジネスシーンのいたるところで、5つのビジネス数学力を発揮しなければならない状況が考えられます。

新入社員レベルであれば、上司から指示されたことをふまえて、ある事象に関してデータを見つけ出し、簡単な分析を行いながら報告をすればよかったものが、リーダーは、複数の関連する事象を俯瞰しつつ、その中で特に気になる現象に焦点を当てながら細かく分析を行い、その情報をわかりやすく社内やお客様に対して伝えなければなりません。

さらに、その考え方が社内で進めている戦略と合致しているのかどうか、そして、いくつかの選択時の中からより良いアプローチ(方法)を見つけ出すとともに将来にわたってどのようなことが会社のメリットになるのかなどを考え、数字として示したり合理的に説明をしたりしながらプロジェクトを進めていかなければなりません。

それでは実際のビジネスシーンではどうなっているのか、具体的な例とともに紹介します。

使えるビジネス数学力

あなたは飲料メーカーに就職し、商品企画部に配属されてようやく5年が経過しました。入社1年目は、右も左もわからずに直属の上司からいろいろと指導してもらいながら、さまざまな資料を整理したり、簡単なプレゼンテーション資料をまとめたりして、少しずつ仕事を覚えていく日々でした。

2年、3年と経過していくうちに、仕事の楽しさにもようやく目覚め、新商品の開発プロジェクトに参加することとなりました。まずは商品のコンセプトをしっかりと固め。社の売れ筋商品のデータを把握しつつ、新たなニーズがどこにあるかなどを分析することにしました。

さて、ここで確かめてもらいたいことは、データに羅列された数値をいかに情報に変えることができるのかということです。このケースであれば既存商品に関するデータはいくつもあるかもしれませんが、新商品を考える上で必要なものもあれば必要でないものも存在します。

もちろん基本的なデータは市場調査やこれまでの商品に対する意見を集約したものから対象として調査した人の性別や年齢、また、場合によっては土地柄も考慮しなければならないかもしれません。ただし、これらの基本のほかに、新商品ということでこれまでニーズとして捉えていなかったものとの相関が見いだせるかどうかは非常に重要です。このようなデータマイニングを行う上でも数学力は大いに力を発揮します。

これらの作業を重ねコンセプトがまとまり、緻密な売り上げ予測を立て、同時に開発コストや営業コストなどを盛り込みながら、上層部に対してのプレゼンテーションを行います。

これらの作業の中では説得力のある情報はやはり数字となります。つまり、その数字の精度が非常に重要であると言えます。現在、ビジネスに生かせるさまざまな統計手法やプレゼンテーション手法が確立されてはいますが、その根本となる考え方はやはり数学的なロジックです。また、新商品を説明する際に誰にでも正しく認識してもらうためには、論理的にも数理的にも正確な表現が求められます。ここにもビジネス数学の役割が存在しています。

実践ビジネス数学

繰り返しになりますが、本書『実践ビジネス数学検定2級』は入社して3~5年が経過してリーダークラスを目指すビジネスパーソンを対象としています。今さら、数学を学びたくないと考えている方もいらっしゃると思いますが、本書で知ら内容は学校数学とは全く異なるものです。

これまでにも触れている通り、ビジネス数学をいくつかの要素に分解すると「把握力」「分析力」「選択力」「予測力」「表現力」という5つの力となります。本書では、これら5つの力をビジネスシーンに置き換えて、実際にビジネスの中で使える数学の問題を出題し解説をしています。

また、実践的なビジネス数学の活用方法を紹介するとともに、『ビジネス数学検定2級』の公式テキストにもなっていますので、PDCAのチェックとして『ビジネス数学検定』を受検いただくことをおすすめいたします。

最後になりますが、現在日本が置かれている状況は大変厳しいものがあります。企業が生き残るためにイノベーションは欠かせませんが、それを実践するために、根拠ある数字はあなたにとって強力なアイテムなることは間違いありません。ビジネス数学力を身につけ、「できる」ビジネスリーダーを目指しましょう。

2017年5月吉日 公益財団法人 日本数学検定協会

(公財)日本数学検定協会 (編集)
出版社: 日経BP (2017/5/11)、出典:出版社HP

本書の読み方、使い方

本書は「ビジネス数学検定2級」の合格レベルに達するためのテキストです。リーダークラスで必要とされるビジネス数学力を身につけることができます。

ビジネス数学力を構成する5つの力「把握力」「分析力」「選択力」「予測力」「表現力」のそれぞれについて8問ずつ、全40問の問題を掲載しています。問題はそれぞれ1問完結型になっているので、解く順番は自由です。

それぞれの問題は、「問題」「考え方」「解説」「ポイント」の4ステップで構成されています。数学が苦手な人でも、本書に記された「考え方」や「解説」を読むことで、ビジネス数学力の基礎となる思考プロセスを身につけることができます。

ステップ1=問題
「ビジネス数学検定2級」で出題される問題の類似問題です。1問あたりの制限時間を2分として、まずは自力で問題を解いてみましょう。

ステップ2=考え方
正解に至るまでの考え方を示しています。空欄になっている部分に数字や用語を書き込みながら、問題を解くための思考プロセスを身につけてください。

ステップ3=解説
問題の正解と考え方の空欄にあてはまる数字や用語をチェックしてください。本書に示した考え方とは別の考え方で解いた場合は、本書のような考え方もあるのだということを理解するとよいでしょう。正解にたどり着くまでの考え方は、たくさん知っておきましょう。

ステップ4=ポイント
問題に関わる数学的な背景、問題に関する周辺知識、実際のビジネスシーンでの活用方法など、知識をさらに深め、活用する方法を示しています。

本書をひと通り読み終えたら、あなたのビジネス数学力は、飛躍的に高まっているはずです。自身のスキルレベルを把握するためにも、ぜひ、「ビジネス数学検定2級」を受検してみましょう。検定に合格することは、あくまでもスキルアップの一つのステップにすぎません。身につけたビジネス数学力を、実際のビジネスの現場で生かせるようにすることが、みなさんの最終ゴールです。「できる」ビジネスパーソンを目指し、早速、ビジネス数学力を高める一歩を踏み出しましょう。

(公財)日本数学検定協会 (編集)
出版社: 日経BP (2017/5/11)、出典:出版社HP

「ビジネス数学検定」のご案内

「ビジネス数学検定」とは、実用技能数学検定「数学検定」を運営する公益財団法人日本数学検定協会が開発した、ビジネスパーソンに必要な数学力・数学技能を測定する検定です。ビジネスで特に必要とされる数理的な考え方を「把握力」「分析力」「選択力」「予測力」「表現力」の5つの力に分類し、さまざまなビジネスシーンを想定した問題を通して測定します。

ビジネスに必要な5つの力

把握力 物事の状況・特徴を理解するカデータやグラフの意味を正確に把握する力
規則性・変化・相関を見抜く力
分析力 データを高い精度で加工する力
選択力 いくつかの事象から最適なものを選ぶカ数理的な根拠をもとにして選ぶ力
予測力 過去のデータから未来を予測するカ事業の将来像を見抜く力
表現力 情報を正確に表現する力
物事をわかりやすく伝える力

これら5つの力を測定することで、数理的な能力の強みや弱みを認識し、「ビジネスパーソンとしてさらに活躍するには、どのようなスキルを磨けばよいのか」を把握することができます。自分自身のスキルアップのために個人で受検するだけでなく、企業における内定者研修や新人研修、リーダー研修などでも利用されています。

ビジネス数学検定は、インターネット上で受験できるWBT(WebBasedTesting)方式を採用しています。そのため、自宅や会社などご都合に合わせた場所で、ご自身の都合に合わせて早朝や深夜などの時間帯でも、受験することができます。
合否判定や分析結果は受検直後に画面上に表示されるので、検定結果をすぐに活用できる利点もあります。

検定概要

ビジネス数学検定は、「ビジネス数学検定3級」「ビジネス数学検定2級」「ビジネス数学検定1級」の3つの階級が用意されています。

ビジネス数学検定3級
対象:エントリークラス(新入社員や学生など)
問題数:30問(5者択一問題)
検定時間:60分
合格点:70点
検定料:2,000円(税抜き)

ビジネス数学検定2級
対象:リーダークラス(中堅社員など)
問題数:30問(5者択一問題)
検定時間:60分
合格点:70点
検定料:4,000円(税抜き)

ビジネス数学検定1級
対象:マネジメントクラス(管理職など)
問題数:30問(5者択一問題)
検定時間:90分
合格点:70点
検定料:6,000円(税抜き)

出題範囲
各階級の出題範囲は次の通りです。

階級 出題内容
3級 把握力 グラフ(折れ線グラフ・棒グラフ・円グラフなど)の把握
労働時間の把握・給料の把握・簡単なデータの把握
平均値の把握・時差の把握・集合の把握など
分析力 定価・利益の計算・売上高の計算・割合を用いた計算
金利の計算・為替差益の計算・仕入原価の計算
債券利回りの計算・税額(所得税など)の計算など
選択力 交通機関の選択・数値の比較による選択
スコアシートによる選択・割合を用いた選択
期待値による選択など
予測力 到着時刻の予測・平均を用いた予測
加重平均を用いた予測
一次関数・連立方程式を用いた予測など
表現力 折れ線グラフでの表現・棒グラフでの表現・円グラフでの表現
図表の適切な使用法・関数のグラフ表現
バブルチャートによる表現など
2級 把握力 簡単なデータの把握・平均値の把握・時差の把握 集合の把握・論理的な文章把握
グラフからの相関関係の把握・商品の位置づけの把握など
分析力 金利の計算・為替差益の計算・仕入原価の計算
債券利回りの計算・税額(所得税など)の計算
損益分岐点分析・財務諸表分析など
選択力 スコアシートによる選択・割合を用いた選択
確率や期待値による選択・株式投資
財務諸表分析や投資指標を基にした選択など
予測力 平均変化率を用いた予測
一次関数・連立方程式を用いた予測
データに基づいた業績の予測など
表現力 図表の適切な使用法・関数のグラフ表現
バブルチャートによる表現・レーダーチャートによる表現
三角グラフによる表現・べん図による表現など
1級 把握力 集合の把握・論理的な文章把握
グラフからの相関関係の把握・高度な統計処理
作業工程の把握・品質管理など
分析力 損益分岐点分析・財務諸表分析
キャッシュフロー現在価値分析(DCF法・NPV法)
クリティカルパス分析・ポートフォリオ分析など
選択力 確率や期待値による選択・株式投資
財務諸表分析や投資指標を基にした選択
デシジョンツリーを用いた選択・ゲーム理論
予測力 加重平均を用いた予測・相乗平均を用いた予測
統計に基づく予測・複数のデータに基づく予測
マクロ経済学による予測・ミクロ経済学による予測
表現力 バブルチャートによる表現・べん図による表現
対数グラフによる表現・統計分析の結果の表現
三次元グラフによる表現など

 

受検の際に必要な持ち物
検定はインターネット上で行われますが、受検の際には以下の持ち物をご用意ください。
・筆記用具
・計算用紙
・電卓または関数電卓
・表計算ソフト(1級のみ)

検定結果
検定終了直後に、合否判定などの検定結果が画面上に表示されます。「合格」「不合格」のほか、総得点、「5つの力」のそれぞれの得点、「5つの力」のレーダーチャートなどが、検定結果として表示されます。

受検方法
ビジネス数学検定の受検方法は、個人で受検できる「個人受検」と企業や大学・高等学校で一括申し込みを行って受検する「団体受検」があります。「個人受検」は年6回(変動することがあります。最新情報は公式サイトでご確認ください)の実施です。同一の検定期間で複数の階級を受検することも可能です。「団体受検」は随時受付中です。

詳しいお申し込み方法は「ビジネス数学検定公式サイト」をご覧ください
ビジネス数学検定公式サイト→http://www.su-gaku.biz/

お問い合わせ先
公益財団法人日本数学検定協会
〒110-0005東京都台東区上野5-1-1文昌堂ビル6階
TEL:03-5812-8340
受付時間9:30~17:00(土日祝を除く)
FAX:03-5812-8346
URL:http://www.su-gaku.biz/

(公財)日本数学検定協会 (編集)
出版社: 日経BP (2017/5/11)、出典:出版社HP

目次

はじめに
本書の読み方、使い方
「ビジネス数学検定」のご案内

第1章 把握力
問題1B社の売上高は?
問題2エネルギー量の多い製品は?
問題3ドバイとの会議が可能な時間は?
問題4全資格の取得者は何人?
問題5取引状況から何が言える?
問題6品質管理が得意な人は誰?
問題72年後の減価償却額はいくら?
問題8標準偏差から何が読み取れる?

第2章 分析力
問題9単利と複利どちらが得?
問題10MMFで2年運用して得た金額は?
問題11利付債券の最終利回りは?
問題12損益分岐点売上高はいくら?
問題13限界利益率に基づく損益分岐は?
問題14税引前当期純利益はいくら?
問題15売上高営業利益率は?
問題16自己資本比率は何%?

第3章 選択力
問題17総合評価の高い提携先はどこ?
問題18都市アメニティの高い市は?
問題19期待売上高の高い営業先は?
問題20暑さ予測に基づく最適計画は?
問題21株価収益率が最も低い会社は?
問題22ROEが最も高い会社は?
問題23営業利益率が向上した会社は?
問題24ハービッツの基準で判断するとどれ?

第4章 予測力
問題25製品の納品日はいつになる?
問題26月次売上高が上回るのは何カ月後?
問題271年後に会員数が多くなる店舗は?
問題28需要量の傾向を示すグラフはどれ?
問題29来年の売上高はいくらになる?
問題30年間売上高を上回るのは何年?
問題316カ月稼働したときの営業利益は?
問題324年後の売上高は?

第5章 表現力
問題33どのグラフが適切?
問題34このグラフは何を表している?
問題35正しいバブルチャートは?
問題36複利の受取金額は?
問題37正しいローソク足はどれ?
問題38べん図で表すとどうなる?
問題39三角グラフの読み方は?
問題40簡略化した正しいネットワーク図は?

(公財)日本数学検定協会 (編集)
出版社: 日経BP (2017/5/11)、出典:出版社HP