証券アナリスト(CMA)試験のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法/対策)
証券アナリスト(CMA)の概要
証券アナリスト(CMA)は、証券投資の分野における専門家として、投資助言や投資管理サービスの提供、企業の経営判断を行ったりすることもあります。受検には講座の受講が必要になります。証券会社などは資格取得を採用の条件としているところもあり、就職・転職・再就職に非常に有利な資格です。どの業界でも金融の知識を持っている人は歓迎されるので、一般企業への就職の際にもアピールできます。
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証券アナリスト(CMA)の公式テキスト
試験は原則、講座を申し込むと発送されるテキストからのみの出題となっているので学習にはそのテキストを使用しましょう。試験は1次が3科目・2次が4科目あり、2次合格と3年以上の実務経験でCMA資格取得をすることができます。テキストは市販のものもあります。ここでは市販の参考書(1次対策証券分析)をご紹介します。
パーフェクト証券アナリスト第2次レベル
パーフェクト証券アナリスト第1次レベル
新・証券投資論Ⅱ
新・証券投資論I
証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 経済 2020年試験対策
証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 財務分析 2020年試験対策
証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 証券分析 2020年試験対策
証券アナリストのための企業分析(第4版) 定量・定性分析と投資価値評価
証券アナリストのための数学再入門
証券アナリストのおすすめ市販テキスト
1.「2019年試験対策 証券アナリスト1次対策総まとめテキスト 証券分析」(TAC出版)
問題を解きながら、証券アナリスト試験の「証券分析」の出題ポイントが整理できるように構成しています。併せて、解答作成に必要な力も身につけることも主眼としています。各章の構成は、「Point」「例題」「解答および解説」となっており、出題傾向と対策に従い、もっぱら計算に重点をおいた問題を通して各論点の核心部分を理解する、という方針でまとめてあります。
2.「2019 証券アナリスト第1次レベル合格最短テキスト『証券分析とポートフォリオ・マネジメント』」(ビジネス教育出版社)
話しかけるような解説と理解を定着させる過去問の類似問題の例題によるスパイラル効果をはっきします。「証券アナリスト試験対策のzip」を運営している筆者が受験者目線でのポイントを解説します。
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目次 – 証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 証券分析 2020年試験対策
はじめに
証券アナリストとは、証券投資において必要な情報を収集し、分析を行い、多様な投資意思決定のプロセスに参画するプロフェッショナルな人たちをいいます。公益社団法人 日本証券アナリスト協会では、証券アナリストとしてのスタンダードを確立するため、通信教育講座を通じて教育を行い講座終了後の試験によって、証券アナリストの専門水準の認定を行い、検定会員の資格を与えています。
証券アナリスト試験は、アナリスト協会が自主的措置として行っている資格制度であり、合格しなくとも、証券分析業務や投資アドバイスといった証券アナリストの業務はできます。それにもかかわらず証券アナリスト試験は、金融の自由化・国際化、資産の証券化、その他さまざまな要因から、金融業界を中心に非常に注目を集めてきました。
近年では、証券業界に携わる方にとっては必須の資格といっても過言ではないでしょう。証券アナリストの社会的役割や責任は、ますます大きくなっているのです。
証券アナリストに求められる知識は極めて広範囲にわたります。ですから、よりポイントを絞った効率的な学習が必要です。本書では、1次試験対策の総まとめとして、TACが過去の出題傾向を徹底分析したうえで厳選した問題を収載しています。その問題を解きながら、証券アナリスト試験の「証券分析」の出題ポイントを整理できるように構成しており、併せて解答作成に必要な力を身に付けることも主眼としています。
したがって、必ず問題を自分の力で解き、理解が不十分であれば本文を読み直し、再度問題にチャレンジしてください。また、十分な知識が身に付いていると思われる方は、解答作成のポイントまでしっかりと把握し、実力をより確かなものとしてください。
本書およびその他2科目の総まとめテキストが、皆さんの証券アナリスト試験合格のためにお役に立てることを、心より願ってやみません。
TAC証券アナリスト講座
CONTENTS
はじめに
証券アナリスト試験とは
出題傾向と対策
本書の使用方法
過去の出題一覧および重要度
重要論点チェックリスト
運用機関の機能と証券分析のテーマ
第1章 ポートフォリオ・マネジメント
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 投資の基礎概念
2 個別証券のリスク・リターン構造
3 投資家の選好
4 ポートフォリオ理論
5 CAPM
6 マーケット・モデル
7 リスク・ニュートラル・プライシング
8 マルチ・ファクター・モデル
9 ポートフォリオ・マネジメントと評価
第2章 債券分析
1. 傾向と対策
2.ポイント整理と実戦力の養成
1 債券の種類
2 債券利回りの計算
3 スポット・レートとフォワード・レート
4 債券利回りの理論
5 リスクと格付け
6 債券価格の変動
7 デュレーションとコンベクシティ
第3章 ファンダメンタル分析
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 産業分析
2 収益性の分析、株式評価のための財務分析
3 財務安全性分析
4 キャッシュ・フローを用いた分析
5 1株当たり指標およびサステイナブル成長率
第4章 株式分析
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 株式の投資尺度
2 配当割引モデル(DDM)
3 成長機会の現在価値(PVGO)
4 その他の株式価値算定法
第5章 デリバティブ分析
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 オプション取引
2 先物取引
3 金利デリバティブ
4 通貨スワップ
5 債券先物取引
6 デリバティブ取引の概要
第6章 証券市場の機能と仕組み
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 証券の種類
2 証券市場の仕組み
3 証券発行市場
4 証券流通市場
5 証券市場のプレイヤー
◆索引
◆参考文献
証券アナリスト試験とは~1次試験の概要~
本試験を受験するためには協会通信教育の申込が絶対条件!
受験資格
証券アナリスト試験を受験する場合には、公益社団法人日本証券アナリスト協会の1次レベルの通信教育を受講することが条件となっています。なお、通信教育の受講に際しては、だれでも受講することができ、年齢や学歴などの制限は一切ありません。
*通信教育講座受講申込期間…例年5月1日~
(詳細につきましては、日本証券アナリスト協会にお問い合わせください。)
*通信講座受講期間…約8カ月間
●1次試験日程…毎年2回、例年4月下旬、9月下旬~10月上旬
●出願締切…例年3月上旬、8月中旬
(日本証券アナリスト協会のマイページから申込)
●合格発表…例年5月下旬、10月下旬~11月上旬
●試験実施場所…<国内>札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、松山、福岡
<国外>ニューヨーク、ロンドン、香港
●試験科目
①証券分析とポートフォリオ・マネジメント
②財務分析
③経済 (科目合格制)
●留意事項…以下のような場合、それまでの1次試験の合格実績はすべて無効となる。
①ひとつの科目の受講開始後、4年間に残りすべての科目を受講しない場合
②受講後連続6回の試験で合格しなかった科目について、直ちに通信教育を再受講しなかった場合
●近年の協会通信および受験状況(1次レベル)
年度 | 検定試験* | ||
受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
2017年春 | 7,379 | 3,559 | 48.2 |
2017年秋 | 5,012 | 2,586 | 51.6 |
2018年春 | 7,698 | 3,951 | 51.3 |
2018年秋 | 3,990 | 2,043 | 51.2 |
2019年春 | 8,269 | 3,909 | 47.3 |
*検定試験の受験者数・合格者数は、科目別の延べ人数
協会通信教育講座に関するお問い合わせは…
公益社団法人 日本証券アナリスト協会
Tel. 03-3666-1511 Fax.03-3666-5843 https://www.saa.or.jp/
●出題傾向と対策
証券アナリスト試験1次レベルは、「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」、「財務分析」、「経済」の3科目からなり、科目ごとの受験が可能である。形式は2003年より、すべてマークシート方式による選択問題となっている。この「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」の内容は大きく6つの分野に分類できるため、出題は大問で全6問、すべての分野から一通り出題される。
また、公益社団法人日本証券アナリスト協会の通信教育カリキュラム改訂後の試験では、小問数では100問程度となっている。制限時間は180分なので、単純に考えると1問に2分はかけられず、全問をまともに処理することが難しい。とくに計算問題などでは、ある程度スピードが要求され、これに対処するには「過去問」あるいはこの「総まとめテキスト」などで、計算処理に慣れるしかない。
計算問題は面倒ではあるが、それまではっきりしなかった考え方が、計算問題をこなしているうちにだんだん見えてくるということが往々にしてあるので、億劫がらずにとりあえず電卓を叩いてみることをお勧めする。
この科目は冒頭で言及した6分野のすべてから万遍なく出題される。このため特定の分野に偏った知識で臨むのはあまり得策ではなく、また、いわゆる「ヤマ」も張りづらい。したがって、受験する立場としては、まずは基本となるファイナンス理論の根幹を確実に押さえ、あとは枝葉をつけていくといった正攻法の学習方法が、遠回りなようで実は意外と早道であろう。
ただ、現代ポートフォリオ理論や現在価値云々といった、オーソドックスなファイナンスの問題に加え、かなり細かい論点も含まれており、出題量の多さから見て問題の見極め、ひいては取捨選択も重要な合否の要素になっていると言ってよい。大半が選択肢からの択一式なので、いざ本番では、とにかく自分が解答可能な問題から効率よく正確に処理し、何とか解けそうな問題は一応考え、歯が立ちそうもない問題はイチかバチか、といった判断も必要であろう。この意味で、証券アナリスト試験もやはりある種の受験テクニックを身につけておいた方がよさそうだ。
なお「計量分析と統計学」は、1次レベルで母集団および正規分布を扱い、標本および検定については2次レベルで扱われる。こうした背景に鑑み、1次レベルでは正規分布については確実な知識にしておくことが望ましいが望ましいだろう。
(表)過去の問題構成と配点
問題 | 分類 | 2017年(春) | 2017年(秋) | 2018年(春) | 2018年(秋) | 2019年(春) |
第1問 | 日本の証券市場 | 15問(15点) | 15問(15点) | 15問(15点) | 15問(15点) | 15問(15点) |
第2問 | 起業のファンダメンタル分析 | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) |
第3問 | 株式分析 | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) |
第4問 | 債権分析 | 18問(35点) | 18問(35点) | 18問(35点) | 18問(35点) | 18問(35点) |
第5問 | デリバティブ分析 | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) |
第6問 | ポートフォリオ・マネジメント | 20問(40点) | 20問(40点) | 20問(40点) | 20問(40点) | 20問(40点) |
合計 | 98問(180点) | 98問(180点) | 98問(180点) | 98問(180点) | 98問(180点) |
●本書の使用方法
この総まとめテキストの各章の構成は次のようになっている。
Point
例題
解答および解説
前述の出題傾向と対策に鑑み、もっぱら計算に重点をおき、問題を通して各論点の核心部分を理解するという方針でまとめている。
Point
その章の基本的な論点、公式などをほぼ万遍なく網羅している。ここでわかっている事柄について✓点をつけるなり、わからない事柄にマーカーで印をつけるなりして、知識を整理してほしい。基本的には結論のみを列挙し、公式の導出過程などは一切省いているが、必要に応じて式のもつ意味や背後にある考え方について言及している。“単語カード”的に使うのもひとつの方法であろう。
例題
その章の重要・頻出論点について、ほぼカバーできるように配慮して出題している。よくわからない問題や難しいと感じる問題があれば、まずPoint の該当箇所にあたられたい。また解けなかったり、間違えた問題は解答 および解説を参照しながら解き直すことを薦める。なるべく実際に計算を行うことにより、背後にある考え方を把握できるような問題を中心にしている。
解答および解説
解答に至るまでの計算プロセス、考え方などオーソドックスなパターンをなるべく詳細に解説してある。間違えたり、わからなかったところは順を追ってよく確認しておいた方がよい。問題を解くための考え方や公式、計算プロセスの意味については、Pointのところと重複するが、重要なものに関しては敢えて再掲している。
機関投資家など運用機関は、マクロ経済分析から個別企業の業績予測に下りていくトップダウンアプローチを採る場合、経済分析→アセットアロケーション(資産配分)→セクターアロケーション(業種配分)→銘柄選択というような形でポートフォリオの構成を決めていく。それにしたがって運用機関の機能と本書で取り上げる証券分析各章のテーマの関係をみていくと、概ね前記のようになる。
目次 – 証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 財務分析 2020年試験対策
はじめに
証券アナリストとは、証券投資において必要な情報を収集し、分析を行い、多様な投資意思決定のプロセスに参画するプロフェッショナルな人たちをいいます。
公益社団法人 日本証券アナリスト協会では、証券アナリストとしてのスタンダードを確立するため、通信教育講座を通じて教育を実施し、講座終了後の試験によって証券アナリストの専門水準の認定を行うことで、検定会員の資格を与えています。
証券アナリスト試験は、公益社団法人日本証券アナリスト協会が自主的措置として行っている資格制度であり、合格していなくても、証券分析業務や投資アドバイスといった証券アナリストの業務はできます。それにもかかわらず証券アナリスト試験は、金融の自由化・国際化、資産の証券化、その他様々な要因から、金融業界を中心として非常に注目を集めており、証券アナリストの社会的役割や責任は、ますます大きくなっています。
証券アナリストに求められる知識は極めて広範囲にわたります。そのため、よりポイントを絞った効率的な学習が必要です。本書では、1次試験対策の総まとめとして、TACが過去の出題傾向を徹底分析した上で厳選した問題を収載しています。その問題を解きながら、証券アナリスト試験の「財務分析」の出題ポイントが整理できるように構成しており、併せて解答作成に必要な力を身につけることも主眼としています。
したがって、必ず問題を自分の力で解き、理解が不十分であれば本文を読み直し、再度問題にチャレンジして下さい。また、十分な知識が身に付いていると思われる方は、解答作成のポイントまでしっかりと把握し、実力をより確かなものとして下さい。
本書及びその他2科目の総まとめテキストが、皆さんの証券アナリスト試験合格のためにお役に立てることを心より願っております。
TAC証券アナリスト講座
CONTENTS
はじめに
証券アナリスト試験とは
出題傾向と対策
本書の使用方法
過去の出題一覧及び重要度
重要論点チェックリスト
第1章 財務会計総論
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 企業会計原則
2 貸借対照表
3 損益計算書
4 その他の計算書類等
5 日本の会計制度
6 財務諸表の監査
第2章 資産会計
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 金融資産
2 債権の評価
3 有価証券
4 デリバティブ
5 棚卸資産
6 固定資産
7 減価償却
8 リース会計
9 減損会計
10 繰延資産
11 経過勘定
第3章 負債会計
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 金融負債
2 社債の評価
3 引当金
4 退職給付会計
第4章 純資産会計
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 株主資本
2 計数の変動
3 剰余金の配当
4 評価・換算差額等
5 新株予約権
6 包括利益
第5章 損益会計
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 収益・費用の認識と測定
2 販売形態別の収益認識基準
3 外貨建取引の換算
4 外貨建財務諸表の換算
第6章 企業結合会計
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 企業結合
2 合併会計
3 連結財務諸表
4 連結の範囲
5 資本連結
6 成果連結
7 持分法
8 税効果会計
9 連結キャッシュ・フロー計算書
第7章 財務諸表分析
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 財務諸表分析の分析手法
2 財務諸表分析上の資本と利益の概念
3 収益性分析
4 生産性分析
5 安全性分析
6 損益分岐点分析
7 成長性分析
第8章 株式価値評価
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 配当割引モデル(DDM)
2 割引キャッシュフロー・モデル(DCFM)
3 残余利益モデル
附属資料
財務分析の指標
◆索引
証券アナリスト試験とは~1次試験の概要~
本試験を受験するためには協会通信教育の申込が絶対条件!
受験資格
証券アナリスト試験を受験する場合には、公益社団法人日本証券アナリスト協会の1次レベルの通信教育を受講することが条件となっています。なお通信教育の受講に際しては、だれでも受講することができ、年齢や学歴などの制限は一切ありません。
*通信教育講座受講申込期間…例年5月1日~
(詳細につきましては、日本証券アナリスト協会にお問い合わせください。
*通信講座受講期間…約8ヶ月間
●1次試験日程…毎年2回、例年4月下旬、9月下旬~10月上旬
●出願締切…例年3月上旬、8月中旬
(日本証券アナリスト協会のマイページから申込)
●合格発表…例年5月下旬、10月下旬~11月上旬
●試験実施場所…<国内>札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、松山、福岡
<国外>ニューヨーク、ロンドン、香港
●試験科目
①証券分析とポートフォリオ・マネジメント
②財務分析
③経済(科目合格制)
●留意事項…以下のような場合、それまでの1次試験の合格実績はすべて無効となる。
①ひとつの科目の受講開始後、4年間に残りすべての科目を受講しない場合
②受講後連続6回の試験で合格しなかった科目について、直ちに通信教育を再受講しなかった場合
●近年の協会通信及び受験状況(1次レベル)
年度 | 検定試験* | ||
受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
2017年春 | 7,379 | 3,559 | 48.2 |
2017年秋 | 5,012 | 2,586 | 51.6 |
2018年春 | 7,698 | 3,951 | 51.3 |
2018年秋 | 3,990 | 2,043 | 51.2 |
2019年春 | 8,269 | 3,909 | 47.3 |
*検定試験の受験者数・合格者数は、科目別の延べ人数
協会通信教育講座に関するお問い合わせは…
公益社団法人日本証券アナリスト協会
Tel.03-3666-1511 Fax.03-3666-5843 https://www.saa.or.jp
●出題傾向と対策
1次レベルの本試験については、解答方式が全問マークシート方式となっている。2019年度(春)試験の出題形式別の問題数と配点は、次のとおりである
問題 | 出題形式 | 問題数 | 配点 |
1 | 正誤・敵文選択問題 | 17 | 34点 |
2 | 個別計算問題 | 6 | 12点 |
3 | 総合計算問題 | 8 | 18点 |
4 | 財務分析の総合問題 | 26 | 26点 |
財務分析1次では上記のように、4つの出題形式があり、どの論点がどの形式で出題されているのかを確認し、出題形式ごとに対策を立てることが有効であるまた、限られた時間の中で効率的に合格レベルに到達するためには、毎回出題されている論点については、確実に得点する力を身につけることが重要である。
さらに、本試験では90分という短い時間で数多くの問題(2019年度(春)討論は57問)を解かなければならないため、全部の問題に均等に時間を配分していたのでは、時間切れになってしまう可能性が非常に高い。そのため、難易度の高くない問題、言い換えれば他の受験生も確実に得点できる問題を優先的に解いて、難易度の高い問題は後回しにする工夫が必要である。
このような観点から、受験対策に当たっては、毎回出題されている論点や難易度の高くない問題について重点的に学習しておくことが有効であるといえる。
本書では、個別論点ごとに、出題形式に基づいた頻出問題を中心にポイントを解説している。形式別の傾向と対策については、概ね次のようなことがいえる。
1. 正誤・適文選択問題
各論点の基本的事項についての問題が幅広く出題されている。財務諸表の構造、有価証券、棚卸資産、減価償却、リース会計、収益認識、退職給付会計、包括利益、企業結合会計、株式価値評価といった論点は頻出であり、必ず整理しておきたい。ミスを誘発するような表現はあまり見受けられず、正しいもの1つ、正しくないもの1つを選択することから、比較的解答しやすいものとなっている。
反面、数問は、難易度のかなり高いものも出題され、本試験では消去法により、解答を絞り込むことも想定される。この出題形式では、瑣末な内容に固執せず、1点1分のペースを守りたい。
2. 計算問題
大問の出題のうち、第2問及び第3問が計算問題という傾向が続いている。第2問が1論点につき1つの設問、第3問が1論点につき複数(概ね3つ)の設問が出題される形式となっている。有価証券、棚卸資産、減価償却、リース会計、退職給付会計、企業結合会計、株式評価モデルといった論点が繰り返し出題されている。
第2問は、近年6問の出題と多めだが、各問とも問題文がコンパクトにまとめられており、比較的短時間で解答可能となっている。上記論点に絡む計算式については、ぜひとも整理しておきたい。
第3問は、比較的難易度が高いものが出題されている。1論点につき問1~問3の形式が多く、各問が独立していることも多い。本試験では、問1が難問であっても、問2や問3が単独で解答できる場合もあり、視野を広くして冷静に臨みたい。
3. 財務分析の総合問題
例年、最後の第4問に出題される。近年は26点(1点×26問)の配点となっており、高得点を目指したい。
演習段階では、まず、問題文を通読し、ある程度標準化された構成であることを把握したい。この出題形式における“全体量への慣れ”は、時間の短縮化とともにケアレスミスを回避するうえでも非常に重要である。次に、財務指標であるが、計算式を図式化する等、丸暗記の負担を軽減できるよう工夫して整理しておきたい。
具体的な解答手順については、語群選択や財務指標の計算そのものは全体的に容易であるため、問題冒頭よりスムーズに解答できるはずである。計算の指示や検算用の数値、さらには、指標の単位といったヒントが随所に設定されており、解答の手助けになる。他の出題形式同様、難問奇問の類に執着せず、確実に特典を積上げることが肝心である。
総合問題であるがゆえに、時間を要するのはやむを得ない。本試験では、他の問題との兼合いもあるが、配点(26点なら26分)+15分程度が解答時間の上限であろう。解答時間にゆとりを持つべく、試験時間の早期の段階で取り組みたい。
●本書の使用方法
本書は、「財務会計」、「財務諸表分析」及び「株式価値評価」の3つから構成されている。第1章から第6章までは「財務会計」の範囲を扱っており、個別の論点と企業結合会計から構成されている。
また、第7章では「財務諸表分析」の範囲で、財務諸表より、様々な財務指標を算出し、その財務指標を使った企業の財務内容の分析を扱っている。そして、第8章では「株式価値評価」の範囲で、ファイナンスの基礎を扱っている。
さらに、各章は「1.傾向と対策」、「2.ポイント整理と実戦力の養成」に分かれており、「2.実戦力の養成」では、本試験で出題が予想される論点を扱っているので、ポイント整理と併せて、十分に学習しておくことが必要である。なお、ポイント整理と実戦力の養成における構成は、次のようになっている。
Point
例題
解答及び解説
前述の出題傾向と対策に鑑み、各論点の核心部分が理解できるようにまとめている。
Point
その章の基本的な論点や公式などをほぼ万遍なく網羅している。ここでは、わかっている事項について✓点をつけるなり、わからない事項にマーカーで印をつけるなり、知識を整理していただきたい。基本的には結論のみを列挙し、説明などは省いているが、必要に応じて解説を加えている。
例題
その章の重要・頻出論点について、ほぼカバーできるように配慮して出題している。よくわからない問題や難しいと感じる問題であれば、まずPointの該当箇所を再確認するか、あるいは、解答及び解説を参照しながら解き直すことが必要である。
解答及び解説
解答に至るまでの計算プロセスや考え方などをなるべく詳細に解説している。間違えたところやわからなかったところはPointのところと重複するが、基本に立ち返って知識の整理を再確認していただきたい。
目次 – 証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 経済 2020年試験対策
はじめに
証券アナリストとは、証券投資において必要な情報を収集し、分析を行い、多様な投資意思決定のプロセスに参画するプロフェッショナルな人たちをいいます。
公益社団法人日本証券アナリスト協会では、証券アナリストとしてのスタンダードを確立するため、通信教育講座を通じて教育を行い講座終了後の試験によって、証券アナリストの専門水準の認定を行い、検定会員の資格を与えています。
証券アナリスト試験は、アナリスト協会が自主的措置として行っている資格制度であり、合格しなくとも、証券分析業務や投資アドバイスといった証券アナリストの業務はできます。それにもかかわらず証券アナリスト試験は、金融の自由化・国際化、資産の証券化、その他さまざまな要因から、金融業界を中心に非常に注目を集めており、試験合格者も増加の一途をたどっています。
近年では、証券業界に携わる方にとっては必須の資格といっても過言ではないでしょう。金融制度改革[ビッグバン]が進み大きな過渡期を迎えている日本経済において、証券アナリストの社会的役割や責任は、ますます大きくなっているのです。
証券アナリストに求められる知識は極めて広範囲にわたります。ですから、よりポイントを絞った効率的な学習が必要です。本書では、1次試験対策の総まとめとして、TACが過去の出題傾向を徹底分析したうえで厳選した問題を収載しています。
その問題を解きながら、証券アナリスト試験の「経済」の出題ポイントを整理できるように構成しており、併せて解答作成に必要な力を身につけることも主眼としています。
したがって、必ず問題を自分の力で解き、理解が不十分であれば本文を読み直し、再度問題にチャレンジしてください。また、十分な知識が身に付いていると思われる方は、解答作成のポイントまでしっかりと把握し、 実力をより確かなものとしてください。
本書およびその他2科目の総まとめテキストが、皆さんの証券アナリスト試験合格のためにお役に立てることを、心より願ってやみません。
TAC証券アナリスト講座
CONTENIS
はじめに
証券アナリスト試験とは
出題傾向と対策
本書の使用方法
過去の出題一覧および重要度
重要論点チェックリスト
第1章 ミクロ経済
1. 傾向と対策
2. ポイント整理
1 消費者行動の分析
2 企業行動の分析
3 不完全競争市場とゲームの理論
4 市場均衡と市場の失敗
5 金融理論のミクロ的基礎
3. 実戦力の養成
第2章 マクロ経済
1. 傾向と対策
2. ポイント整理
1 国民経済計算
2 財市場と資産市場
3 IS-LM分析
4 総需要・総供給分析
5 物価動向と失業
6 経済成長と技術進歩
3. 実戦力の養成
第3章 金融経済
1. 傾向と対策
2. ポイント整理
1 金融取引と金融市場
2 資金循環と金融システム
3 中央銀行と金融政策
4 財政の機能とその問題点
3. 実戦力の養成
第4章 国際金融
1. 傾向と対策
2. ポイント整理
1 国際収支統計
2 外国為替と為替レート
3 国際資本取引と為替レート
4 国際収支とマクロ経済
5 マクロ政策と外国為替市場
3. 実戦力の養成
◆索引
証券アナリスト試験とは~1次試験の概要~
本試験を受験するためには協会通信教育の申込が絶対条件!
受験資格
証券アナリスト試験を受験する場合には、公益社団法人日本証券アナリスト協会の1次レベルの通信教育を受講することが条件となっています。なお、通信教育の受講に際しては、だれでも受講することができ、年齢や学歴などの制限は一切ありません。
*通信教育講座受講申込期間…例年5月1日~
(詳細につきましては、日本証券アナリスト協会にお問い合わせください。)
*通信講座受講期間…約8ヶ月間
●1次試験日程…毎年2回、例年4月下旬、9月下旬~10月上旬
●出願締切…例年3月上旬、8月中旬
(日本証券アナリスト協会のマイページから申込)
●合格発表…例年5月下旬、10月下旬~11月上旬
●試験実施場所…<国内>札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、松山、福岡
〈国外〉ニューヨーク、ロンドン、香港
●試験科目
①証券分析とポートフォリオ・マネジメント
②財務分析
③経済(科目合格制)
●留意事項…以下のような場合、それまでの1次試験の合格実績はすべて無効となる。
①ひとつの科目の受講開始後、4年間に残りすべての科目を受講しない場合
②受講後連続6回の試験で合格しなかった科目について、直ちに通信教育を再受講しなかった場合
●近年の協会通信及び受験状況(1次レベル)
年度 | 検定試験* | ||
受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
2017年春 | 7,379 | 3,559 | 48.2 |
2017年秋 | 5,012 | 2,586 | 51.6 |
2018年春 | 7,698 | 3,951 | 51.3 |
2018年秋 | 3,990 | 2,043 | 51.2 |
2019年春 | 8,269 | 3,909 | 47.3 |
*検定試験の受験者数・合格者数は、科目別の延べ人数
協会通信教育講座に関するお問い合わせは…
公益社団法人 日本証券アナリスト協会
Tel. 03-3666-1511 Fax.03-3666-5843 https://www.saa.or.jp
●出題傾向と対策
証券アナリスト1次レベル試験の経済の最近の出題傾向としては、(1)出題分野の範囲が広まっていること、(2)基礎理論を問う問題が中心的に出題されていること、の2点を大きな特徴として挙げることができる。ただし、最近の1次して試験では、協会指定の基本テキストで扱われている細かい項目までも出題されており、限られた時間内でそれらすべてを学習することは難しいといえる。
このような試験傾向をもつ1次レベル試験に合格するためには、経済における基礎理論およびそれに関連する制度的知識を絞り込んで、その基本的事項の習得に努めることが必要である。
基本的事項を十分に理解することは、経済で合格点をとるための必要条件であること、また、基本的事項に絞って学習することは、時間的にも効率的なものとなること、さらに、先に基本的事項を習得すると、周辺的な理論・知識の理解もしやすくなり、過去問題と少し視点の異なる類題が出題されても対応できるようになることが、その大きな理由である。
これまでの出題傾向を踏まえつつ、新たな分野に対応していくために、本テキストでは経済を、ミクロ経済・マクロ経済・金融経済・国際金融の4つの分野に大きく分けて整理している。証券アナリスト1次レベル試験対策としては、これら4つの分野を軸として、基本的事項について、その知識を整理し、理解を深めることが重要である。
さらに、問題演習をあわせて行うことによって、知識を実戦に結びつけていくことがもっとも効率的な学習方法と考えられる。
●本書の使用方法
この『総まとめ・経済』では、ミクロ経済・マクロ経済・金融経済・国際金融の4つの分野をそれぞれ部として取り扱い、それらに関連した基本的事項を、問題演習を通して確実に習得することを目的としている。各部は、傾向と対策、ポイント整理、実戦力の養成によって構成されている。
傾向と対策では、過去の出題傾向の分析を各分野ごとに行っており、その分析に基づいた対策も示している。過去の出題例や重要度を参考にして、効率的な学習を進めて頂きたい。特に近年何回も出題されている論点は欠かすことなく学習しておかれたい。
ポイント整理では、その分野における基本的な制度的知識、基礎理論、およびその理論の現実妥当性をみるときに有用な考え方・知識を取り上げている。さらに、それぞれの分野におけるもっとも基本的な事項(ないし、典型的な過去問題)を、ポイントチェックのかたちで取り上げている。このポイントチェックは、どれも基本的な内容となっているが、近年の本試験の傾向に合わせた学習ができる問題ばかりを集めてある。ポイントチェックを解いて正解できなかった場合にはポイント解説を参考にして、その内容の理解に努めてもらいたい。
実戦力の養成はそれぞれ、演習問題、解答作成のポイントからなっている。演習問題は、本番の試験問題に非常に近い形式の問題であるが、この演習問題を解くことによって、試験慣れすることができるとともに、さらに理解の達成度を確認することもできる。また、演習問題を解き終わった後には、ポイントチェックと同じように、知識・理解が不確かなところについて、解答作成のポイントを参考にして、その内容の再確認を必ず行うことが大切である。
この『総まとめ・経済』は、試験直前期にあたって、必要最小限の努力で、証券アナリスト1次試験に合格できるだけの実戦力を身につけることを目的としている。したがって、問題数も決して多くはない。むしろ少ないと感じるかもしれないが、どれも厳選されたものである。ここで取り上げている問題は、数多く解くことよりも、ひとつひとつの問題の内容を確実に押さえることによって、その効果が発揮されるように考えられている。
したがって、解けなかった問題には何度でも繰り返しあたってみていただきたい。この『総まとめ・経済』にある問題の内容が十分に理解されていれば、必ずや証券アナリスト1次レベル試験に合格できるものと確信している。
目次 – 証券アナリストのための数学再入門
はじめに
世の中には2種類の人間がいます。男と女ではありません。大人と子供でありません。数学頭人間と文学頭人間です。
この本を手に取っているあなたは文学頭人間でしょう。別にあなたを非難しているわけではありません。文学頭でも日常生活には特に不自由しません。むしろ恋愛をするときなどにはかえって都合が良いかもしれません。
しかし、文学頭は証券アナリスト試験を受験する時にはとても不利になります。私は30年近く生命保険会社でほぼあらゆる資産運用実務を経験しました。この間、ほんの少し数学が苦手なために証券アナリスト資格取得を断念する人をたくさん見てきました。
その後、(社)日本証券アナリスト協会で証券アナリスト教育・試験の運営実務に携わることになり受講生の方がどんな点に悩みまた躓くのかを直接知る機会が増えました。本書はこうした体験を踏まえて証券アナリスト試験合格のためにあなたの頭を改造しようという本です。
文学頭、数学頭と言っても生まれつき固定しているものではありません。誰でも正しい方法論を身に付けてほんの少しの努力をすれば数学頭人間になれます。そう、子供がやがて大人になるように。偉そうなことを書いていますが、この私も典型的な文学頭人間です。
仕事の必要に迫られて渋々数学を勉強しましたが、今から思うと随分遠回りしました。この本では一番の近道を示したつもりです。私が丁寧に道案内しますから一緒に数学頭をつくりましょう。そして証券アナリスト試験に合格し、それぞれの分野で活躍し楽しく充実した人生を送りましょう。
本書は3種類の証券アナリスト試験、すなわち(社)日本証券アナリスト協会が行う証券アナリスト試験、ACIIA®が行う証券アナリスト国際資格試験(CIIA®)およびCFA協会が行うCFA®試験で扱われる数学問題を全てカバーしたつもりです。
逆にこれらの試験で扱われない数学には一切触れていません。読者としては高校であまり数学を勉強しなかった方、高校の数学を忘れてしまった方および統計学を勉強したことのない方を想定しています。
本書の大きな特徴は、証券分析理論の中から数理的分析を必要とするもみを抽出し、これを縦軸に通し、数学と統計学は横軸として必要なつど解説していることです。数学や統計学だけ続けて勉強するととても疲れますし、実際の試験問題は証券分析の問題として出題されるのでこれが最も実践的なアプローチだと思います。説明はできるかぎり具体的な例題形式で行い、学んだ知識をすぐに確認できるように過去問を含む練習問題を豊富に用意しました。
本書は、第I部イントロダクション、第II部収益率の測定、第II部ポートフォリオの管理、の3部構成になっています。イントロダクションでは、最初に「数学学習の方法論」という章で数学への接し方、勉強の仕方を詳しく説明します。つぎに「証券アナリストに必要な数学」という章で、アナリスト試験および教育に含まれる数学と学校教育における数学の関連を確認します。
第Ⅱ部収益率の測定では、証券分析におけるリスク指標としての分散と標準偏差について学んでから、証券価格決定の基礎である裁定取引と収益率決定の基礎である複利利回りについて体系的に学習します。この途中で等差数列、等比数列、対数の計算に習熟し、最後にオプション価格の計算で締めます。
第Ⅲ部ポートフォリオの管理では、視点を個別資産からポートフォリオ全体に転じます。株式ポートフォリオ管理、債券ポートフォリオ管理に固有の問題を検討した後、統計学の諸手法のポートフォリオ管理への応用を実践的に学習します。この途中で分散、共分散、仮説検定、微分、積分等を使いこなせるようにし、最後は回帰分析と多変量解析の基礎で締めます。
ずい分盛り沢山な内容だと思われるかもしれませんが、証券アナリスト試験で用いられる数学は実は特殊なものではなくまた範囲もごく限られています。本書をマスターすれば数学で躓いて不合格になるということはありえません。
それでは、頭の改造の旅へ、いざ出発!
*練習問題のうち、過去問!マークをつけた問題は実際に証券アナリスト試験に出題されたもので、(社)日本証券アナリスト協会の許可を受けて掲載したものであり、無断でこれを複製することを禁じます。
増補改訂版への序
本書の初版を刊行後、早くも8年が経過しました。もともと、数学や統計学が苦手な人のための証券アナリスト試験用受験参考書を意図したものでしたが、既にCMAやCFAを取得している人たちから「目から鱗だった」と言われたり、会計学や経営学を専攻する大学院生の人たちから「修士に入ってから『数学再入門」を勉強した」と言われたり、予想外の方達にも読んでもらえたのは、著者としては大きな喜びでした。
反面、なるべく易しく書いたつもりですが、本来想定していた読者の方には、ちょっと難しく感じられる箇所もあったかもしれないと反省もいたしました。
証券アナリスト講座は2006年~2008年にかけて大きく改訂されましたが、この時の目玉のひとつが、それまで、「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」の1次レベルに3冊あった数学・統計学のテキストが、1次レベル1冊、2次レベル1冊に再編されたことです。
3冊が2冊になったのですから、表面的には比重低下ですが、これは学習者の利便性・負担を考慮しつつも、本当に必要な数学・統計学の知識は1次2次を通して問うという、アナリスト協会の決意の表れと捉えるべきでしょう。協会の決意の背景には、投資実務における数学・統計学の活用が進んでいるという現実があります。
この増補改訂版では、アナリスト講座の改訂に伴って新たに1次レベルのカリキュラムに入った「状態価格」、2次に加わった「信用リスクモデル」の説明を加えるとともに、統計的検定・推定、多変量解析の部分を刷新し、過去問は原則として改訂後のものに差し替えました。テキストが1次・2次に分かれたことに対応し、2次レベルの内容・問題については2次!マークを付けました。
初版に対して、もっと練習問題が欲しいという声がありましたので、本文中の練習問題を増量するとともに、巻末に付録として「1次レベル過去問名作集」を掲載しました。これは証券アナリスト1次試験によく出題される計算問題の名品を選りすぐって収録したものです。結果として練習問題は2割以上増加しています。
増補改訂版には、大阪大学の佐井りさ先生に共著者として加わってもらいました。佐井先生は東京大学大学院博士課程在学中から、アナリスト協会の数量分析入門講座の講師を務め、プログラムの内容や受講生の癖などを熟知している理想的な共著者です。佐井先生には上記の改訂箇所を執筆いただくとともに、その他の部分で説明が曖昧な点などを改善してもらいました。
初版に比べると、より高度な内容も含みますが、説明はより平易に分かり易くなったと自負しています。
この増補改訂版が幅広い読者の方に、従来以上にお役に立てれば幸いです。
2012年3月
金子誠一
目次
第I部 イントロダクション
第1章 数学学習の方法論
第2章 証券アナリストに必要な数学
第3章 <数学基礎 1>
√Σ関数
第II部 収益率の測定
第4章 <統計学基礎 1>
リスクとリターン
第5章 裁定取引
第6章 <数学基礎 2>
色々な数列
第7章 収益率の基礎
第8章 <数学基礎3>
対数
第9章 様々な複利収益率
第10章 債券の利回り
第11章 オプション価格
第Ⅲ部 ポートフォリオの管理
第12章 <統計学基礎 2>
分散と共分散
第13章 株式ポートフォリオの管理
第14章 <数学基礎 4 >
微分・デュレーション・コンベクシティと積分
第15章 債券ポートフォリオの管理
第16章 <統計学基礎 3>
統計学とポートフォリオ管理
第17章 <統計学基礎 4>
回帰分析と多変量解析
第18章 信用リスクモデル
付録1 次レベル過去問名作集
さらに勉強するために
あとがき
練習問題解答
索引
コラム
裁定取引が苦手な3つの理由
ネーピアとオイラー
金融電卓とYield Book
スポットレートとストリップス債
二項モデルとブラック=ショールズ公式
微積分法の発見者
ギネスビールとt分布
Data Snooping Bias
コラム 数学の本
藤原正彦『天才の栄光と挫折』
小平邦彦『ボクは算数しか出来なかった』
サイモン・シン『フェルマーの最終定理』
吉田武『オイラーの贈物』
小川洋子『博士の愛した数式』
藤原正彦『若き数学者のアメリカ』
目次 – 証券アナリストのための企業分析(第4版): 定量・定性分析と投資価値評価
はしがき
本書は、読者が証券アナリストの資本市場における役割を理解したうえで、実際にアナリストが行っている企業分析手法を習得することを目的として執筆されている。
証券アナリストとは狭義には、証券会社(セルサイド)あるいは運用会社(バイサイド)の調査部に所属し、投資対象企業の分析を行い、そのうえで投資推奨を行うリサーチャーを指す。しかし、より広義には、運用会社において資産運用・管理を行うポートフォリオ・マネジャーや投資方針を策定するストラテジストなど、資本市場において多様な投資意思決定プロセスに関与するプロフェッショナルを総称することもある。
狭義の定義をとった場合はもちろん、広義の定義の場合も、日頃の業務を遂行するうえで本書に記載された内容の理解は必須のものである。
さらに本書はより欲張った目的も持っている。本書の執筆者の一人は大学・大学院にて企業分析関連の講義を受け持っているが、証券アナリストの行う企業分析を本書の過去の版(第3版)を用いて学生諸氏に講義を行った。その際、講師が当初に期待した以上に、学生諸氏が非常に興味を抱いてくれたという実感を持っている。
株式投資に興味がある学生の方は当然として、当初はさして興味を抱かなかった学生の方が中途から積極的に授業に参画するケースも多かった。この理由の1つは、学生諸氏にとってさまざまな企業分析あるいは経営分析という手法がある中で、本書の紹介する手法はよりダイナミックな側面を持っているからであろうと推定している。
ダイナミックと言うのは、一般の企業分析が過去の財務諸表分析にとどまるものが大半であるのに対して、過去についても定性分析(なぜそのような業績がもたらされたかという緻密な分析)を行いつつ将来の業績予想を行い、企業の内在価値(妥当株価)を算定するというところに証券アナリストの行う企業分析の醍醐味があるからであると推定される。
授業を行った当初には思ってもみなかった反応であった。改訂された本書を読んでプロフェッショナルなアナリストにならなくとも、証券アナリストの父と称されるベンジャミン・グレアムの言うところのインテリジェント・インベスター(思慮と分別ある投資家)の増加にも寄与できるのではないかというのが本書を著したもう1つの目的でもある。
本書の初版は1992年度に日本証券アナリスト協会が提供する教育・試験プログラムが新しいカリキュラムに移行したことを契機に刊行され、その後3版(2004年)まで刊行された。しかし、9年が経過し証券アナリストや産業・企業を取り巻く環境は激変した。企業分析に大きな影響を与える会計・情報開示制度も大きく変貌した。これらを踏まえ第4版刊行の運びとなった。
さて、本書は、導入にあたる序章に加えて4部16章で構成される。第I部は「証券アナリストの機能と役割」と題し5章で構成される。証券アナリスト誕生から今日までの歴史を概観したうえで、資本市場において果たす証券アナリストの役割、長期業績予想の意義など、証券アナリスト業務を始めるうえで知っておくべき基本的事項が4章までで把握できる。それとともに証券アナリストが職業倫理上留意すべき事項にも1章(第5章「証券アナリストとインテグリティ」)を割いている。
第II部「企業分析の基礎」は3章からなる。証券アナリストが個別企業の投資評価に着手するにあたり、マクロ経済・産業等の企業を取り巻く広範な環境の分析が必要となるが、これらの点については2章を割いている。残りの1章は業績予想を行ううえで重要となる企業による重要な非財務の発信情報について述べている。
第Ⅲ部「財務情報の分析」は5章からなる。証券アナリストはアナリスト活動にあたり、分析対象企業の過去の財務諸表の精緻な分析を行わなければならない。主要な財務諸表、財務情報に対し証券アナリストの視点から留意すべき点を丁寧に記述している。さらに、いくつもの会計基準がわが国企業を分析する場合に存在するという現実に対して、どのように対処すべきかについても述べている。それらを踏まえ、財務指標の趨勢分析を行ったうえで、投資分析上で欠かすことのできない重要指標を関連づけて説明している。
最後の第IV部「投資価値評価と投資格付」は3章からなる。証券アナリストが業績予想を行い将来の財務諸表数値を算定し、それらに基づいて自らの投資意見を形成するためには、投資価値評価を行ったうえで投資意見の表明をしなければならない。さまざまな投資評価手法が現実には使用されているが、それらを紹介するとともに、その結果を踏まえた実際の投資格付について触れている。
なお、執筆分担は、北川が序章および第I部(第1章~第5章)、第Ⅱ部(第8章)、第IV部(第16章1節~3節)、加藤が第II部(第12章および第13章)、第IV部(第14章および第15章、第16章4節)、貝増が第II部(第6章および第7章)、第Ⅲ部(第9章~第11章)となっている。
本書の執筆に関しては、構想の段階から東洋経済新報社の村瀬裕己氏には大変お世話になった。遅れがちになった本書の完成は氏の激励があって初めて可能となった。改めて謝意を表したい。
2013年9月
執筆者一同
CONTENTS
目次
はしがき
序章■あるアナリストの1日
第I部 証券アナリストの機能と役割
第1章■証券アナリストの誕生と役割
1 ICFAからCFAIまで~米国の場合
2 CMAの誕生~日本の場合
3 資本市場の変化と証券アナリスト
第2章■証券アナリストが資本市場で果たす役割
1 証券アナリストが資本市場で果たす役割
2 ファンダメンタルズ分析に基づく内在価値の探求
3 適切なる社会資源の資金配分に寄与
第3章■証券アナリスト・投資家に与えられる情報
1 企業情報発信にはどのようなものがあるか
2 企業にとってのIR活動の意味
3 Selective情報開示とDifferential情報開示
4 IR活動の評価
第4章■投資情報の作成~時間軸と業績予想の重要性
1 投資における時間軸を考える意義
2 長期業績推移の変化を見ることの重要性
第5章■証券アナリストとインテグリティ
1 選択的情報開示問題
2 利益相反問題
3 ショート・ターミズム批判
第Ⅱ部 企業分析の基礎
第6章■マクロ環境分析
1 業績と関連の深いマクロ経済指標の特定
2 手がかりは事業別売上や地域別売上
3為替動向と為替感応度の把握
第7章■産業分析
1 業種分類とセクター分析
2 企業分析と同時並行の業種分析
3 需要国の産業構造の分析
第8章■広範な企業価値関連情報の把握
1 企業による中期経営目標をどう把握するか
2 アニュアル・レポートの重要性
3 コーポレート・ガバナンス情報の重要性
第Ⅲ部 財務情報の分析
第9章■並存する4つの企業会計基準
1 一般に公正妥当と認められる企業会計の基準
2 変化を続ける企業会計基準
第10章■主要な財務諸表の理解(1)
1 連結貸借対照表
2 連結損益計算書
3 連結包括利益計算書
第11章■主要な財務諸表の理解(2)
1 連結キャッシュ・フロー計算書
2 セグメント情報
第12章■過去の趨勢分析
1 成長性の分析
2 収益性の分析
3 損益分岐点分析
4 資産効率性の分析
5 安全性の分析
第13章■株式市場からの評価に係わる指標と企業の財務政策
1 利益概念の整理
2 EPS(1株当たり利益)
3 ROEとDOE
4 資本構成が及ぼす影響
5 ペイアウト政策
6証券市場の効率性と過去分析の意義
第IV部 投資価値評価と投資格付
第14章■資本コスト
1 資本提供者が要求するリターンとは
2 負債資本コストの考え方と負債の節税効果
3 株主資本コストの考え方とWACC
第15章■投資評価のさまざまな手法
1 DCFモデル
2 DDM
3 EVAモデル
4 EBOモデル
5 PER
6 PBR
第16章■投資格付
1 株式投資格付とは何か
2 株式投資格付の種類―相対型と絶対型
3 株式投資格付の実際
4 債券格付の実際
索引
図表目次
●図●
図1-1 企業・投資家・証券アナリストの関係
図1-2 機関投資家・個人投資家・年金基金の関係
図3-1 アサヒグループホールディングスのWEBサイト
図6-1 投資データの分析・評価
図8-1 アサヒグループホールディングスによる過去の『中期経営計画2012』の総括
図8-2 アサヒグループホールディングスが公表した新たな『中期経営計画2015』の定量目標
図8-3 アサヒグループホールディングスが示したROE10%以上目標のための具体的方策
図8-4 オリエンタルランドが『アニュアルレポート2012』で示した「独自の競争優位性」
図8-5 Novo Nordisk社の『アニュアル・レポート』に示されている「トリプル・ボトムライン」
図8-6 エーザイの『第100期事業報告書』に示されているコーポレート・ガバナンス・システム(2012年5月現在)
図12-1 小松製作所と日立建機の売上高と営業利益の推移
図12-2 為替レートの推移
図12-3 先進国合計実質GDPの推移
図12-4 小松製作所と日立建機の売上高営業利益率の推移
図12-5 小松製作所と日立建機の売上高経常利益率の推移
図12-6 小松製作所と日立建機のROAの推移
図12-7 小松製作所のROAの分解
図12-8 a社とb社の利益図表
図12-9 小松製作所と日立建機の総資本回転率の推移
図12-10 小松製作所と日立建機の固定資産回転率の推移
図12-11 小松製作所と日立建機の運転資本回転率の推移
図12-12 小松製作所と日立建機の棚卸資産回転率の推移
図12-13 小松製作所と日立建機の売上債権回転率の推移
図12-14 小松製作所と日立建機の買入債務回転率の推移
図12-15 小松製作所と日立建機のインタレスト・カバレッジ・レシオの推移
図12-16 小松製作所と日立建機の自己資本比率の推移
図12-17 小松製作所と日立建機の固定比率の推移
図12-18 小松製作所と日立建機の固定長期適合率の推移
図12-19 小松製作所と日立建機の流動比率の推移
図12-20 小松製作所と日立建機の当座比率の推移
図12-21 小松製作所と日立建機の有利子負債/EBITDA倍率の推移
図12-22 小松製作所と日立建機の有利子負債とEBITDAの推移
図12-23 小松製作所のキャッシュ・フローの推移
●表●
表3-1 平成24年度ディスクロージャー評価比較総括表(食品)
表4-1 業績予想の主体と時間軸
表4-2 経営者予想の開示手段と対象
表4-3 経営者予想の問題点
表4-4 大手医薬品企業A社の主要財務指標
表6-1 景気指標の分類
表6-2 建設機械大手メーカー2社(小松製作所と日立建機)の地域別売上高(2011年度)
表6-3 日立建機の予想為替レートの推移(2010~11年度)
表7-1 東証業種別株価指数の分類項目
表7-2 アナリスト・ランキングの27業種
表7-3 中国の石炭消費・生産・輸入(2010年暦年)
表8-1 会社提出議案に対する賛成・反対・棄権・白紙委任の議案件数(2012年度)
表9-1 決算短信に掲載される主要な4つの連結財務諸表
表9-2 有価証券報告書に掲載される個別財務諸表
表10-1 小松製作所の2012年3月期の連結貸借対照表〔米国基準〕
表10-2 日立建機の平成24年3月期の連結貸借対照表〔日本基準〕
表10-3 日本板硝子の平成24年3月期の連結貸借対照表〔IFRS〕
表10-4 小松製作所の2012年3月期の連結損益計算書〔米国基準〕
表10-5 小松製作所の第143期(2012年3月期)の連結財務諸表に関する注記〔米国基準〕抜粋
表10-6 日立建機の平成24年3月期の連結損益計算書及び連結包括利益計算書〔日本基準〕
表10-7 日本板硝子の平成24年3月期の連結損益計算書及び連結包括利益計算書〔IFRS〕
表10-8 日本板硝子の平成24年3月期の連結財務諸表注記〔IFRS〕抜粋
表10-9 小松製作所の第143期(2012年3月期)の損益計算書〔単独・日本基準〕
表10-10 小松製作所の第143期(2012年3月期)の製造原価明細書〔単独・日本基準〕
表11-1 小松製作所の2012年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書〔米国基準〕
表11-2 日立建機の平成24年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書〔日本基準〕
表11-3 日本板硝子の平成24年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書〔IFRS〕
表11-4 小松製作所の2012年3月期のセグメント情報【種類別】〔米国基準〕
表11-5 小松製作所の2012年3月期のセグメント情報【地域別】〔米国基準〕
表11-6 日立建機の平成24年3月期のセグメント情報〔日本基準〕
表11-7 日立建機の平成24年3月期の関連情報〔日本基準〕
表11-8 日本板硝子の平成24年3月期のセグメント情報〔IFRS〕
表11-9 日本板硝子の平成24年3月期の個別開示項目前営業利益までの主な項目〔IFRS〕
表11-10 日本板硝子の平成24年3月期のネット・トレーディング・アセットと資本的支出〔IFRS〕
表11-11 小松製作所と日立建機の地域別売上高比較(2010年度・2011年度)
表13-1 日立建機の平成24年3月期の連結包括利益計算書〔日本基準〕
表13-2 株式分割が行われた場合のEPSへの影響
表15-1 定額モデルを用いた継続価値の計算例
表15-2 EVAモデルを用いた継続価値の計算例
表16-1 アナリストX氏によるカバレージ企業15社の妥当株価と投資評価
序章 あるアナリストの1日
Aさんは、X証券会社の日本の医薬品セクター1)担当の証券アナリストである。種々の外部機関が行うランキング評価でも、最近10年間は常にトップランクに位置している。彼の大学時代における専攻は薬学部である。さらに修士課程まで進み、大学院修了と同時に証券会社の調査部に入社した。
今年で入社20年になる、最初の3年間は先輩アナリストのアシスタントとして活動していたが、入社4年目に希望が叶い、所属する企業から2年間米国のビジネススクールに派遣されてMBAを取得している。なお、証券アナリスト資格(CMA)は入社3年目に取得している。
ビジネススクール修了後の6年目からは、日本の医薬品セクター担当として一人立ちすることになった。振り返ってみて、証券アナリストの資格を獲得し、そのうえでビジネススクールにおいて勉強する機会があったことは、現在、非常に貴重な財産になっていると彼は思っている。
薬学部出身で薬剤に関する知識が多少あったとしても、アナリストとして本格的活動をするうえでは、1先輩についてアシスタント業務に従事しアナリストとしての基礎をマスターしたうえで、2資本市場、財務分析、コーポレート・ファイナンス、証券投資の基礎理論などを体系的に学ぶ必要があるからだ。開発品の薬剤の評価をある程度できたとしても、対象となる企業の投資価値を冷静に分析するにはこれらの知識は欠かせないからだ。
さて、Aさんの役割は、日々、ユニバース2)対象の企業についての新たな情報をウオッチし、投資意見を形成することである。
Aさんは平日は、早朝午前5時には起床し、自宅のPCから会社のPC環培にリモートアクセスを用いて入り、自分宛に入ってきたメールをチェックする。もちろんQUICK社やブルームバーグ社などの投資情報サービス会社の端末から得られる最新情報を一覧し、朝食をすませた後に5時45分発の通勤電車に飛び乗る。
幸い、朝早いため毎日の通勤では座っていける。その間、新聞4紙のチェックをくまなく行う。時は1月の中旬である。今日の彼の一日を追ってみよう。
会社には午前6時30分には到着する。東京の冬の朝は寒くまだ暗い。社内営業部門との会議は7時45分の開始である。それまでに考えをまとめて、会社内のデータベースに7時20分くらいまでには必要なコメントを打ちこむことになる。今日は大手企業B社の新薬開発のニュースが米国から飛びこんできた。
B社が米国大手企業C社と共同開発している化合物についての米国における臨床試験の結果(データ)が、専門の学会で公表された。それについてC社をカバレージの対象としているニューヨーク在住のアナリストが、さまざまな意見をすでに顧客(機関投資家など)に披瀝している。もちろんAさんのカウンターパート3)であるニューヨークのアナリストの携帯電話には、会社に到着してすぐに連絡を入れていた。
これらの結果は、Aさんの元々の予想を大きく上回るものであった。Aさんは早速、大手企業B社に関する自らのこれまでの業績予想モデルの修正を行い、目標株価を3,200円から3,650円へと上方修正した。昨日のB社の終値は3,080円であった。また、投資格付をイコール・ウエイトからオーバー・ウエイト4)に変更した。
これらを30行程度の本日の速報レポート(ある証券会社ではFLASH REPORTと称している)としてまとめ、会社内のデータベースにインプットする。そして、7時45分からの社内営業部門との会議において概要を報告する。RTビル内ではあるがフロアが異なるため、実際の会議ではアナリストそれぞれが自席からテレコンファレンス用の電話機を用いて簡単にコメントすることになる。
そこで営業部門からの質疑応答があり、コンプライアンス部門の迅速なチェックを受けたうえで、所属するX証券会社の顧客である機関投資家に8時20分前後にはAさんのまとめたレポートが配信される。
幸い現在は決算発表シーズン5)ではないので、てんてこ舞いするほどの忙しさではない。しばらく会社にいて、医薬品関係の専門誌の新刊に目を通している時間が今日はある。投資判断に影響を与えるものは、企業からの発信情報だけではない。
医薬品会社の企業価値に大きな影響を与えるものの1つに、将来の業績を大きく左右する開発品目に関する評価がある。過去の例を見ると、大手企業であっても1品の開発品の成功によって会社全体の利益が5倍~10倍になったという例も珍しくない。株価も連動して上昇するケースが通例であり、それゆえに開発品の評価をどのように行うかはアナリストにとって重要な仕事である。
もちろん専門誌や学会において発表(リリース)された事象について、当該企業のWEBサイトでダウンロードできるようになっている場合もある。しかし、他社(海外企業であることが多い)の競合する開発品にまで目を配るには、広範な最先端の情報に目配りをしていなければならない。専門誌に目を通している合間にも、機関投資家のファンド・マネジャー6)、バイサイド・アナリスト7)からは頻繁に電話が入ってくる。
会社への直通電話のこともあるし、携帯電話のこともある。PCメールによる問い合わせもあるAさんは、これらの問い合わせには迅速に答えることにしている。顧客の問レベルはさまざまである。もちろん今日話題になった化合物について、B社のIRオフィサー8)に内容を確認することも怠らない。
ヘルスケア関連のテーマ型ファンド9)を運用しているベテラン・ファンド・マネジャーの場合は、相当な知識がある。経験年数の長いバイサイド・アナリストの中には、Aさんとほぼ同等の知識も持つ人もいる。彼らとの会話は、投資格付の変更にこだわったものではないことが多い。
なぜなら彼ら自身が投資判断を行うため、むしろ議論の焦点は純粋な開発中の薬剤の可能性について論議することが多いためである。これに対して経験年数の浅いファンド・マネジャーを相手にした場合には、投資判断そのものを議論することも多い。
そうこうしているうちにお昼になる。何もなければ自席で同じビルの中にあるコンビニで買ってきた弁当を広げながらカンパニー・レポート10)を書くことが多いが、今日は、あるがん専門病院の医師であるDさんとランチをすることになっている。がん関連の学会で質問した際に知己を得て、その後、医薬品専門誌の座談会において対談をすることによって交流が深まった人である。
今日は、抗がん剤治療の最前線で何が起こっているのかをDさんから教わる絶好の機会である。Aさんはそこでの話の内容を踏まえ、顧客である機関投資家を集めたスモール・ミーティング11)での講演をDさんに依頼し、講演日を決めることとした。
ランチの後は、担当している医薬品企業を1社(E社)と、顧客の機関投資家を訪問することとなった。現在、E社の場合には業績等の取材についてはクワイアット・ピリオド12)に入っているため、IRオフィサーに依頼し最新の研究開発状況についてインタビューすることになっている。E社の場合、IR担当者は3人おり、そのうちの1人は研究開発の部署出身である。今日は彼を訪問することになっている。
結局、Aさんが会社に戻ったのは午後7時であった。各社の株価動向、出来高についてチェックし、気になる動きがないか見る。そのうえで、営業部門から依頼のあったロンドンの機関投資家のファンド・マネジャーとテレコンファレンスを1時間弱行い、会社を出たのは9時ごろであった。
以上がAさんのある1日である。これ以外にもさまざまな仕事があるが、ここでは典型的な例を示している。読者の方々はどのようにお感じになったであろうか。医薬品セクターのアナリストの例をあげたが、他のセクターの場合には「働き方」が異なるかもしれない。小売業セクター担当の場合には実際に店舗を訪ねて状況を見たりすることは必須であろうし、自動車セクターの場合には新車の乗り心地を発表会の時に試さなければならないであろう。
しかし、ここで重要なことは、アナリストにとって、新たな情報に対して資価値を算定することが重要な仕事の1つであるということである。そのために専門的な知識を養い、好奇心を持って仕事にあたることが必要であろう。
かつて一世を風靡した著名な医薬品アナリストが「実はコミュニケーション能力、人柄が重要なのです」と述べていた。この意味するところは、薬学部出身で薬剤の知識が豊富であっても、学生時代に学んできたことは狭い領域にとどまる。
しかも、日進月歩の世界では自らが相当な努力を毎日怠らないとともに、企業サイドおよびアカデミック・サイドからのインプットあるいは刺激を吸収する柔軟性を持たなければならない。そのためには、人と円滑にコミュニケーションしていくための能力が備わっていなければならないということなのであろう。
一方では、必ずしも薬学部出身でない医薬品セクターのアナリストの方も多い。アナリストになってからの努力と資質が大事である、ということであろう。
アナリストの中には、20年程度のキャリアのある人が珍しくない。さまざまなキャリアの人が自らの強みを生かしている世界でもあると言える。また70歳近くで現役のアナリストの方もいらっしゃるし、アナリストをリタイアしてコンサルタントや関連分野の企業の幹部社員として活躍されている方もいる。
本書をお読みいただき、プロフェッショナルなアナリストを志していただくことを期待したいと思う。
1)アナリストが調査する業種を「担当セクター」という言い方をする。例えばアナリストは顧客である投資家に「私は自動車セクターを担当しています」という自己紹介をする。
2)アナリストは専門の担当業種を持つが担当業種のすべての上場企業をカバーして投資意見を開示するとはかぎらず、重要な投資対象企業を選択する。それらの投資対象企業をユニバースと通常呼ぶ。
3)グローバルに業務を展開する証券会社や運用機関の場合、ロンドン、ニューヨーク、香港、東京などに拠点を持ち、同一セクターを担当するアナリスト同士で意見交換をすることは必須である。特に医薬品セクターやITセクターなどの場合には、意見文代が頻繁になることが想定される。
4)アナリストの投資格付の設定方法は第16章で示すようにさまざまである。Aさんの場合は、当該B社銘柄を「時価総額ウエイト並に保有すべし」(イコール・ウエイト)という意見から「時価総額ウエイト以上に保有すべし」(オーバー・ウエイト)というより積極的な投資意見に変えたということを意味している。例えばB社が医薬品セクターの時価総額ウエイトで12%を占めている時、それ以上のウエイトを機関投資家のポートフォリオ構成上では保有することを勧めるという意味になる。
5)日本企業の場合、年次については3月決算が多いため5月上旬が決算発表シーズンとなる。年次決算の発表にあたっては、非常に詳細な決算概要の説明および次年度の経営者予想の開示が行われるため、最も重要な時期となる。もちろん7月下旬頃、10月下旬頃、1月下旬頃にある各四半期決算の発表も、アナリストにとって多忙なシーズンである。
6)機関投資家においてファンドを運用する専門家をファンド・マネジャーと呼ぶ。ポートフォリオ・マネジャーという名称が使用されることもある。
7)アナリストという時、一般には、証券会社に所属するアナリストを意味することが多い。セルサイド・アナリストと呼ばれることもある。これに対して機関投資家に所属し、社内のファンド・マネジャーの投資意思決定に大きな影響を与えるのがバイサイド・アナリストである。本書ではたんにアナリストという場合、特に断りのないかぎりセルサイド・アナリストを意味することにする。
8)上場企業において、投資家・アナリスト向けにIR部門(Investor Relations Division)が設置されていることが多い。そこでのIR担当責任者は通常IRオフィサーと呼ばれる。
9)日本株式運用においては、TOPIXをベンチマークとして運用するオーソドックスなファンドがある一方、グローバルなセクターに着目した、例えばヘルスケア産業のみに特化して投資をするファンドも存在する。このようなファンドを通常、テーマ型ファンドと呼ぶ。
10)アナリストはさまざまな種類のレポートを作成する。日々生起した問題に対していち早く作成するという速報性に重きを持つレポート(本文前述の「速報レポート」などがそうである)がある一方で、新たに調査担当をした企業に対して沿革も踏まえて詳細なレポートを作成することもある。こういったレポートは「ベーシック・レポート」と称されることもある。その間に、定期的に決算状況をフォローしたり、ある特定のテーマ(研究開発の状況や中期経営計画説明会等)に焦点をあてて作成されるポートは「カンパニー・レポート」と称される。もちろんレポートの名称は各証券六社でさまざまである。また担当するセクター全体の動向をフォローする「セクターレポート」と呼ばれるレポートを作成することもある。
11)第3章で示されるように、企業のIR活動の一環として、証券会社において、顧客で
ある機関投資家のファンド・マネジャー、バイサイド・アナリストを招いて行うミーティングのことである。このケースのように、専門の研究者をプレゼンテーターとする場合もあるし、企業のトップマネジメントをプレゼンテーターとする場合もある。
12)企業は、決算発表の数週間前からは、業績に関連する情報のリークを避けるため、セルとパイの両サイドのアナリストやファンド・マネジャーの訪問あるいは電話取材を受け付けないことが通例となっている。
目次 – 証券アナリストのための数学・統計学入門