証券アナリストのための数学・統計学入門




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はしがき

証券アナリスト試験では文系の人にとって数学・統計学の要素が難関になっているという状況は,いつも変わらない風景のように思えます。

他方,金融証券業界の専門職に占める理系の人の割合が他の職業と比較して高いことを示す統計もないようです。高校・大学での文系の人の割合がおよそ8割だとすると,証券アナリスト試験に関する限り,大多数の人が数学を苦手にしたまま何とかして合格しているということになります。証券アナリスト試験に合格した後も、証券アナリストとしての仕事の中で疑問を抱え続けている人が少なくないでしょう。

しかし,数学・統計学を正面から学習することは、容易なことではありません。学習時間の確保が難しい実務家にとってはなおさらです。

そのため、株式会社ビジネス教育出版社刊の「証券アナリスト合格最短テキスト」シリーズでは、数学・統計学の学習を別途しなくても済むように,必要最小限の範囲で各科目のテキストに含めています。数学・統計学の本式の解説は,しかるべき分野の先生方におまかせする,ということでもありました。

そうした中で、せっかく証券アナリスト試験の学習をするのだから数学・統計学の知識も向上させたい、という人も少なくないようです。そのようなニーズに対応するために、本書を執筆することにしました。

本書は,証券アナリスト試験合格の準備を目的としているというよりもむしろ,文系の人を読者として想定し、証券アナリスト試験に関係する数学・統計学の総合的な理解に役立つことを目指しています。この分野の他のテキストとの違いがあるとすれば,文系の視点からそのままとらえた数学・統計学の姿をまとめてある点と,数式の変形を最大限丹念に展開している点でしょう。

最後になりましたが,本書の企画の発案から原稿の細かなミスの訂正までを通じてお世話になった,株式会社ビジネス教育出版社編集部の小林さんにお礼を申し上げます。

2015年11月
佐野 三郎

佐野 三郎 (著)
出版社: ビジネス教育出版社 (2015/12/1)、出典:出版社HP

目次

第1章 実数と指数,Σ
1.1 実数の便利さ
1.2 実数の演算法則
1.3 一次式の2乗の公式
1.4 指数と指数法則
1.5 Σの約束事

第2章 利子率と現在価値・将来価値,連続複利
2.1 現在と将来のお金を交換する取引
2.2 金額ではなく率を用いる理由
2.3 現在価値と将来価値
2.4 割引ファクター
2.5 複利計算
2.6 連続複利

第3章 関数
3.1 関数の定義
3.2 一次関数と一次方程式
3.3 二次関数

第4章 関数の微分
4.1 微分とは
4.2 微分の計算
4.3 微分の公式
4.4 微分の表記と偏微分
4.5 関数の最大値と最小値

第5章 積分
5.1 定積分の考え方
5.2 計算例と補足事項

第6章 その他の数学の項目
6.1 等比数列の和の公式
6.2 事後的な収益率の計算方法
6.3 利付国債の価格評価
6.4 対数

第7章 数学の応用
7.1 テイラー展開
7.2 対数の微分と対数近似

第8章 確率変数
8.1 確率変数
8.2 確率変数の期待値と確率の意味
8.3 確率変数の期待値の性質
8.4 確率変数の分散と標準偏差
8.5 2つの確率変数の間の共分散と相関係数
8.6 複数の確率変数の一次式で表現される確率変数
(ポートフォリオの将来の結果)の期待値と分散

第9章 正規分布
9.1 確率分布と正規分布
9.2 標準正規分布表と確率変数の標準化

第10章 統計的推測
10.1 統計的推測と標本
10.2 標本平均,標本分散・標本標準偏差等
10.3 標本平均の分布と点推定
10.4 母集団平均の区間推定(その1)
10.5 母集団分散の推定
10.6 母集団平均の区間推定(その2)とt分布

第11章 仮説検定(正規分布の場合)
11.1 仮説検定の枠組み
11.2 片側検定と両側検定
11.3 母集団標準偏差が未知のケースにおける(t分布の下での)母集団平均の仮説検定

第12章 回帰分析(最小二乗法)
12.1 回帰分析の身近さと近寄りにくさ
12.2 回帰分析の計算
12.3 回帰分析に基づく統計的推測
12.4 回帰分析に基づく仮説検定等
12.5 CAPMとマーケット・モデル

付録 平均分散アプローチの目的関数と期待効用理論との間の数学的関係

佐野 三郎 (著)
出版社: ビジネス教育出版社 (2015/12/1)、出典:出版社HP