日経TEST公式テキスト&問題集 2019-20年版




まえがき

日経TEST(日経経済知力テスト)とは、日本経済新聞社が実施している、ビジネスに必要な経済知識と、それを仕事に応用して考える力(知力)を客観的に測り、スコアで示すテストです。2008年秋から、公益社団法人日本経済研究センターとともに実施する「全国一斉試験」を開始しています。

経済はめまぐるしく変動しています。多くのビジネスパーソンの皆さんは、日本経済新聞などを通じて日々、経済情報の吸収に努められていると思いますが、周囲に比べて「どこまでできているか、過去の自分と比べて「どれだけ」成長したかは、客観的に評価しにくいものです。また、これから取り組む方や、就職を控えた学生の皆さんは、「どこから」手をつければよいか、見当がつきにくいと思います。

そうした皆さんに、「自分の力がビジネス社会でどのレベルにあるか」を数値化して示すのが、日経TESTです。受験結果は英語能力のテストなどと同様、項目反応理論(IRT)に基づく統計理を行った1000点満点の「経済知力スコア」で示します。業種、役職、就業年数によりどの程度のスコアが求められるのかの目安も設けています。

スコアで実力が分かり、「どこまで」という目標が設定できるので、レベルアップの必要を痛感されている方、これから学ぼうという方には特に適したテストです。問題形式はすべて択一式で100間、時間は80分。得意分野・不得意分野の診断も提供します。
出題ジャンルは経済・金融産業の動きから、消費、科学技術、国際情勢まで幅広く、皆さんのそれぞれの仕事を掘り下げるうえで必要と思われる分野をカバーしています。また、日経TESTは知識に基づき考える力を測るのが特長で、独自の「5つの評価軸」を設けてその力を測定しています。このような広い分野を対象に、仕事に応用して「考える力」を客観的に測るテスト機能は、日経TEST以外にないものです。

出題の材料は「生きた経済」です。経済・ビジネスの最新のニュースを題材に間題を更新しているので、日々起きる経済ニュースへの感度を高め、そのつど考える習慣をつけておくことが、経済知力(ビジネス知力)のアップに有効です。
そのため本書も毎年、「年版」を発行し、経済の新しい動きを盛り込んだ解説と、練習問題を収録しています。経済の動きを理解するための基本的な知識や考え方は1年で変わるものではありませんが、知識も考え方も「使う」ことで、理解が深まります。

昨年阪(2018-19年版)を、この1年の新しい動きに合わせて全面改訂しました。毎年ご購入いただいてきた方も重複感なく読んでいただけると思います。もちろん今年新たに手にとられた方にとっては、格好の入門書になります。
日経TESTはいわゆる検定試験と異なり、この一冊をマスターすれば合格というものではありません。しかし、本書を読み通すことで、複雑に見える世界経済・日本経済の全体像がつかめ、難しいと感じていた日々の経済ニュースも頭に入りやすくなるはずです。

そのため本書は昨年阪までと同様、練習問題とその解説も含めて、新しい知識を吸収しながら楽しく読めるストーリー性を意識しています。日経TESTを当面受験する予定のない方にとっても、最近の経済のポイントをつかむ一冊として、お役に立つはずです。
日経TESTは全国一斉試験と、企業・団体・大学などが社員・職員・学生向けに随時実施できる「日経TEST企業・団体試験」を実施しています。社員教育・研修の一環としての導入も増えています。人材育成のリーダーとなる皆様もお手にとり、導入の検討材料にしていただければ幸いです。

日本経済新聞社 (編集)
出版社: 日本経済新聞出版社; 出典:amazon.co.jp

 

目次

まえがき
本書の読み方・使い方
ガイダンス日経TESTとはGuldance
1.日経TESTの概要/
2日経TESTの構成/
3.日経TESTの出題ジャンル/
4日経TESTのスコア/
5.個人成績表の見方

第1章基礎知識Basic

入門解説経済全体の「つかみどころ」まずGDPと企業業績

経済活動を積み重ねた「方向」が景気/経済全体を見るGDP、「数学でつかみ、語る」の第一歩/
「生産」は「所得」として分配され「支出」される/
GDP、で世界3位、1人当たりでは20位台/
長引くデフレで低迷、総額は2010年に日中逆転、半分以下に/
失業率下がりほぼ「完全用、求人倍率は45年ぶり水準/
「景気回復」は景気動向指数で公式判断/
景気の先行きを読む「短観」、業況判断指数に注目/
円高と円安、立場によりメリット・デメリット/
為替レート、投資マネーで大きく変動/
株価は経済の動きを先取り、全体の動きを示す日経平均存在感増す海外投資家、売買の主役/
米金利上昇念で下落、変動率大きく/
企業を見る基本は決算情報、要点は「決算短信」で本来のもうけは営業利益、株主は純利益を注視/
財政状態はBS、お金の流れはキャッシュフロー計算書/
会社により変わる利益率にも注目/
「取締役」は株主に代わって経営を監視/株主はROEを重視、事業全体の収益力はROA/
広がるCSR経営、ESGの「G」はガバナンス/
「働き方」の実務常識として不可欠/
生産技術、第4次産業革命下のものづくりを考えるにもマーケティング、基本的な用語の概念をまず知る

練習問題・解説

ステップアップ解説―金融政策の全体像まず基礎から理解
金利とお金の量で「緩和」と「引き締め」/
米国の利上げは経済と金融政策の「正常化」/
日銀、デフレに対応し「ゼロ金利」と「量的緩和」/
物価目標と「異次元金融和」、購入を2年で2倍に/
短期政策金利マイナス、長期金利0%前後に/
欧州も量的緩和終了、日本は物価目標達成のメド立たず/
政府と中央銀行の関係、注目集める米国

第2章実践知識Knowledge

入門解説——世界経済と業界を知り企業戦略の背景をつかむ

米国経済
消費が70%を占める、世界最大規模の経済
重視される「雇用」、金融政策の材料に
大型減税が実現、景気を刺激/米中戦争の影響広がる

中国経済
安定成長に転換、「製造国の仲間入り」
打ち出す広域経済圏「一帯一路」を推進
投資主導経済から消費主導経済へ

欧州経済
「EU単一市場」の規模、英国離脱でも存在感
「離脱ドミノ」回避も、独仏の政治も不安定/
日本とEPA、米国の保護主義への対抗軸となるか

アジア・新興国
ASEAN6人の市場/ロシアは原油依存、
「G20」で世界経済の8割

自動車
EVシフトにMass、ここでもデータ覇権/
「車を作る」から「移動サービスを提供」へ

電機・精密・電子部品
「コモディティー化」でBtoBにシフト/
参入相次ぐ「医療」、ポスト・スマホでまず「車」
「銀行マイナス金利が経済圧迫、メガバンクは「海外で稼ぐ」戦略/
地方銀行の構造的苦境続く、「同一県内再編」は動き出す
/IT巡る新たな動き、LINE銀行計画とクラウド活用

小売り
コンビニ頭打ち、ドラッグストアが売り上げ伸ばす/
アマゾン・エフェクト、日本でさらに波及

練習問題・解説
ステップアップ解説データが成長の資源次の焦点は「移動」に
「AI、IoT」×「ビッグデータ」が第4次産業革命
「移動」が生む価値、自動車は「手段」の1つに/
データ覇権争う米中、GAFA対BAT/
国家主導で思い込み、「Ai特区」も脅威に欧州はGAFAに監視の目、日本は国境をまたいだ流通促す

第3章視野の広さSensitive

入門解説「周年」を糸口に経済のつながりを理解
繰り返される自国第一、「新冷戦」も歴史の理解で腑に落ちる
月着後50周年、宇宙開発を巡る動きに関連/
バブルから30年、米中の前は日米経済摩擦/
再編進んだ金融、モバイル・スマホ時代の先駆けも
「東京五輪」と岩戸景気、高度成長を実感/
視野を広げ、大きな流れをつかむ

練習問題・解説
ステップアップ解説―時代変える流れヒット商品に反映
TikTok、スマホペイ、サブスクリプション/
新たな「スター」はデジタルから
身近な食品とアジアドリンク&フードでヒット
新商業施設は脱インパウンド、映画に「ヒットの方程式」

第4章知識を知恵にする力Induction

例題解説経済・ビジネスを動かす共通点を見いだす
「内外」のM&A、国内人口減少・市場が大きな新たな柱と、ビジネスモデル変えるノウハウ取得も担う
「共通するキーワード」を探す/
IoT活用、2025年にタグ1000億枚宣言
「スライド式」など省力化願う/共酒するのは「人手不足」

練習問題・解説
ステップアップ解説働き方の「再設計」シニアが新たな焦点に
生産年齢人口の減少、M字カーブ解消と高齢者の参加が補う「70歳雇用」への環境整備が課題に/
外国人労働者の単純労働に新たな在留資格/「
外国人労働者」は既に146万人

第5章知恵を活用する力Deduction

例題解説仮説をビジネスに適用先を読む力を鍛える
リスクオフとリスクオン
国債は買われると金利は低下/
円は安全資産、リスクオフで資金流入/
背景と理由を考える/
コンビニとPBの拡大が影響
人口減少。市場縮小とは限らず

練習問題・解説
ステップアップ解説—先を読むための前提知識貿易・資源・テクノロジー
機能不全のWTO、新たなは「データ」/
シェール革命で一変、世界の原油巡るパワーバランス/
デジタルディスラプション、経済を変える
まとめ・学習のポイント
日経TESTの実施要項、種類など

本書の読み方・使い方

日経TESTの実際の試験では、このあと説明する「5つの評価軸」に基づき、1つの評価納につき20問ずつ、合計100間を毎回、出題しています。本書はその評価輸を1章ずつ、5章に分けました。
「知識」を問う第1章~第3章では、冒頭でその評価の出題趣旨を説明した後、問題を解くうえで必要な経済知識を獲得する前提となる知識やコツを盛り込んだ「入門解説」を掲載しました。

その後に、実際の日経TESTの出題形式に準じた「練習問題」を20間ずつ掲載。さらにその後に、2019~20年時点でポイントとなるテーマを掘り下げた「ステップアップ解説」を掲載しています。

「考える力」を問う第4章~第5章については、「入門解説」の代わりに、「例題解説」を掲載しました。実際の出題形式に沿ってどのように解答を得るかという考え方に加えて、とりあげたテーマについても解り下げて解説します。
最後に、学習法に関するアドバイスなどを補足した「まとめ・学習のポイント」を掲載しました。「練習問題」は、解答の解説とセットで読んでいただくことで、入門解説では触れられなかったポイントを補足しています。各問題には「キーワード」をつけました。

実際の日経TESTは能力測定が目的です。問題の形式は本書と同じですが、100
間を80分で解いていただくため、短時間で答えられる問題、少し考える問題を取り混ぜ、テンポよく答えられるようになっています。本書内の問題は「学習」が目的なので、印象に取るようにややひねった設問もありますので、ご承知おきください。

また、解説・問題の内容はおおむね2019年2月までの情報に基づいていることをお断りしておきます。

ガイダンス日経TESTとはGuidance

日経TESTとは、ビジネスパーソンが仕事をするうえで必要な「知識」と、それに基づく「考える力」で構成される「経済知力」を、客観的に測るテストです。

日経TESTとは、どのような仕組みなのか。能力を測る「5つの評価軸」と、出題領域となる「6つのジャンル」の内容とともに、問題が異なるどの回のテストを受けても同じ尺度で受験者の能力を測る、IRT(項目反応理論)テストの仕組みをご紹介します。

1. 日経TESTの概要

日経TESTの正式名称は「日経経済知力テスト」。「TEST」とあえてしているのは、「経済知力テスト」を英訳した「Test   of Economic Senseand Thinking」の略称という意味を込めています。
第1章以降の解説や練習問題にもたびたび登場するように、日本経済は人口減少、特に労働人口の減少という問題に直面しています。ビジネスにたずさわる一人ひとりの人材力が、日本経済の国際競争力を高めるためにも、ますます重要となります。

経済・ビジネスに関する知識・センスが全体的に高いことが日本のビジネスパーソンの強みと漠然と思われてきましたが、その力を客観的に測り、進歩させるのにふさわしい手段はありませんでした。そのためのいわゆる「アセスメントツール」とする狙いで日本経済新聞社が開発したのが、「日経TEST」です。

経済知力をやや抽象的に定義すると、ビジネス上の思考活動に必要な「経済知識」と、その知識を活用するための「考える力」の総合力です。経済の仕組みや流れを理解し、新しいビジネスを生み出す能力を意味します。

日経TESTは、企業で働くビジネスパーソンを中心とした、経済社会にかかわるすべての人を対象に、経済知力(ビジネス知力)がどの程度備わっているかをり、その力を伸ばすことを目的にしています。特に最近、日本企業の中で求められているのが、「イノベーションを起こせる人材」です。日経TESTは、そのための基礎力を測るのに適しています。

「考える力」とは、情報を収集した後に、選別・整理した情報をもとにして、「仮説」を構築したり、因果関係を考え出したりする力を意味します。経済やビジネスの仕組みや流れを理解して、新たな事業を創出するなど、企業であれば若手から中堅社員、幹部まですべてのビジネスパーソンに求められる能力です。

例えば「新商品を開発する」という思考について考えてみましょう。進め方は多様ですが、以下のような流れが一般的と考えられます。

① 日ごろから情報のアンテナを高く立てて、社会の動きや同業他社の動向を十分に知識として押さえておく。
② 複数の知識や情報に共通する「消費トレンド」や「ヒットの法則」を見つける。
③ 見いだした「消費トレンド」や「ヒットの法則」と自社の強みから、自社に最適な商品アイデアを発想する。

このように、知識のストックと、それを活用する考える力(知力)が存在することで、新商品開発というビジネス上の思考活動を円滑に進めることが可能になります。日常業務で問題解決を進める場合でも、経営計画を練る場合でも、ビジネス上の思考活動では必ず「知識」と「知力」を動員します。

仕事にかかわる業種や地域が広がるほど、より多くの知識と提案力が必要になります。また、リーダーや管理職になるほど必要なレベルは高くなります。一つひとつの事例への答えはすべて異なるものですが、適切な答えを導く基礎力と応用力が身についているかどうかを客観的に測るのが、日経TESTの特長です。

2. 日経TESTの問題構成

日経TESTは前項で述べた経済知力を、経済知識に関しては「基礎知識」「実践知識」「視野の広さ」の3つ、考える力に関しては「知識を知恵にする力」「知恵を活用する力」の2つの評価軸で調ります。それぞれの評価軸について、簡潔に説明しておきます。

●基礎知識(Basic] 文字通り、経済・ビジネスを正しく理解するための基礎知識です。「GDP」「金利」「株式会社」など経済・経営に関する基本常識に加え、決算書の読み方やマーケティングなどに関する基礎的な知識も含みます。

●実践知識(Knowledge] 企業を取り巻く経営環境と、現境変化に応じた戦略、対応策(企業戦略)に関する知識です。自社や自社が属する業界だけでなく、他社・他業界の動向にもアンテナを高くしておくことが必要です。

●視野の広さ[Sensitive] 多様な社会現象や国内外の政治、環境、科学技術など、いわゆる経済の枠を超えた幅広い知識を指します。ビジネスの役に立つ視野の広さを問います。

●知識を知恵にする力(Induction] 知識として吸収した情報から法則・共通性(一般論)を見いだし、応用可能な知恵にする力です。いわゆる「帰納的推論力」で、複数の個別事例提示から共通するもの、異質なものを探すなどの形式の問題です。

●知恵を活用する力[Deduction] 法則・共通性(一般論)を個別の事象に当てはめ、結論を見いだす力を指します。いわゆる「演繹的推論力」で、事象を提示して結論を特定したり、結果を提示して原因を特定したりする形式の問題があります。

以上はやや抽象的ですが、第1章以降の「入門解説」や「例題解説」で具体的に解説します。日経TESTの問題の構成としては、5つの評価の図のように「経済知識」に関して60間、「考える力」に関して40間という構成になります。

3. 日経TESTの出題ジャンル

問題の評価軸は前項の5つに分かれますが、問題が属する出題ジャンル(分野)に着目すると、以下の6つに分かれます。おおむねバランスを考慮して出題しますが、「経営環境・産業動向」「企業戦略」に属する問題がやや多くなります。

●経営環境産業動向[Environment] 世界経済・日本経済の動向や、産業の大きな流れに関する主に基礎知識と、それに基づき考える力を対象にします。「考える力」の評価軸の問題の場合、グラフを読み取る力なども問います。

●企業戦略CorporateStrategy] 主として環境変化に対応した個別の企業の経営・商品の特徴や、経営・マーケチィング戦略などに関する問題です。前者は「実践知識」の評価軸、後者は「考える力」の評価軸に属する問題になります。

●会計・財務(Finance] 企業会計・財務については、基礎知識の評価の中で、実務的な知識を問うことが比較的多いジャンルです。金融商品・金融業界に関する実践知識や戦略なども、このジャンルに属する問題です。

●法務・人事(Law] 知的財産、雇用・労働などに関する知識もビジネスパーソンには欠かせません。働き方に関する法律などは特にそうです。知識を活用して判断する力も含め、「視野の広さ」も問うジャンルです。

●マーケティング・販売「Marketing)
一見、飽和している市場で、どのような新しい需要を開拓し、商品やサービスをどう売るか。マーケティングは経済知力が最も発揮される分野です。課題を共有するには基礎的な知識も必要です。

●生産テクノロジー[Technology] IoT、人工知能(AI)ロボットなどに関する知識・戦略などがこのジャンルの新しいキーワードです。関連業界も広がっています。「トヨタ生産方式」などの生産方式に関する知識も重要です。
評価軸の頭文字「B、K、S、I、D」、出題ジャンルの頭文字「E、C、F、L、M、T」は、評価軸別スコア、出題ジャンル別スコアの記号として個人成績表の表示の際に使用しています。

4. 日経TESTのスコア

日経TESTの結果である経済知カスコアとは、受験者の経済知力(ビジネス知力)の保有量を示します。1000点を「上限の目安」として表示します。
スコアの目安
能力評価のポイント

700点~
幅広い視野と高い知的能力を持った、高度なナレッジワーカー。卓越したビジネスリーダーに成長できる可能性を持つ。
600点〜700点
企業人として必要な知識と知的能力をバランスよく備えた、状況対応力の高い人材。ビジネスリーダーとしての資質を有する。
400点〜600点
日常のビジネス活動を着実にこなすことのできる、実務遂行力を備えた人材。複雑・高度な問題への対応力の強化がカギ。
~400点
ビジネス活動をこなすのに必要な知識・知力が、やや不足、知識の蓄積と思考力の強化への努力が求められる。

経済知力スコアは、項目反応理論(RIT=Item Response Theory)と呼ばれる統計モデルを使って算出しています。項目反応理論を用いることで、各回の受験者全体の能力分布や問題の難易度に影響されず、常に同じ物差しで受験者の能力を測定することができます。これにより他の受験者との客観的な比較と、定期的な受験による個人の能力の継続比較が可能になっています。テスト結果から自分の実力ベルが分かり、次に目指すレベルが明確になります。

IRTとは
日経TESTのように、毎回、問題と受験者が異なる場合、100点満点中何点という「素点」の比較では、難易度やそのときの受験者のレベルに左右されてしまいます。IRTとは、異なるからなるテストの結果を互いに比較するために開発されたテスト理論で、協力機構(OECD)の「PISA」(学習到達度調査)や国際的な「TOEFL」などでも使われています。

5. 個人成績表の見方

日経テスト – スコア・個人成績表の見方を参照。

 

第1章   基礎知識 Basic

●この評価軸の出題趣旨
経済・ビジネス現象を正しく理解するために、「経 済・経営の基本常識」と「実務常識(ビジネスに不可欠 な基礎知識)」の2つの知識を問うのが、この評価軸の 問題です。
新聞の経済記事を読んで理解するための前提とな る知識が前者、実際に仕事をするうえで知っておいて ほしい知識が後者です。この章の入門解説では、「基 本常識」として知っておくべきマクロ、ミクロのキー ワードを絞り込んで紹介した後、「実務常識」として出 題される分野についても触れます。

 

入門解説 経済全体の 「つかみどころ」 まずGDPと企業業績

「経済」というと何かと、「難しい」「苦手」というイメージがつきまといます。 ビジネス経験を積み、日本経済新聞に親しんでいる方でも、自分の仕事と直接関連 しない分野や経済全体の動きのニュースにはいまひとつ実感がわかない、という声 も開きます。それは、「経済」というものの範囲が広過ぎて、「どこから、どこま で」理解すればいいのか、つかみどころがないのが一因だと思います。この章は全 体の入門も兼ね、「どこから」を中心に解説します。

経済活動を積み重ねた「方向」が景気

日々接する経済ニュース、例えば日本経済新聞の記事を読む場合、まずは以下の ように整理できます。 経済の動きは、マクロ(国の経済全体)の動きと、ミクロ(個別の会社や個人)の動きの2つに大きく分かれます。「景気」や「日本経済」「世界経済」という前 者の動きは、後者の一つひとつの企業や個人の経済活動の積み重ねです。一つひと つの企業を見れば、好不調は様々ですが、すべて足すと一定の方向があります。そ れがいわゆる「景気」です。

後者については、「会社」の全体像を最初につかむことです。まず日本の会社の 数はおよそ380万社、その中でいわゆる大企業は約1万1000社、上場企業の数は約 3700社です。大きく分けてBtoC(消費者向けビジネス)と、BtoB(法人向けビジ ネス)の会社に分かれます。

BtoB企業は、製造業であれば素材や部品など、社名を聞いても事業内容が思い 浮かびにくい会社も多い半面、「隠れた優良企業」が多いといわれます。優良企業 とは何かという定義も難しいのですが、前提となるのは、利益を上げていることで す。企業の利益が分かるのが「楽曲」です。一つひとつの企業の動きは、経済全体 につながっています。

経済になじむ最初の一歩として、「景気」と、「企業業績」の仕組みを押さえて おくと、経済に関するニュースが頭に入りやすくなります。新聞に掲載される日々 の経済記事の大半は、この2つに関する基礎知識は既に持っているという前提で、 省いて書かれています。そのため、いきなり新聞を読んでも「難しい」と感じるこ とが多いのだと思います。

以下では、その「前提」となっている部分を丁寧に解説します。2018-19年版 を読まれた方も、新たな情報が加わっていますので、復習も兼ねてお読みいただく と役立つはずです。

経済全体を見るGDP、「数字でつかみ、語る」の第一歩

「景気が良い、悪い」というフレーズは、漠然と使いがちです。ビジネスパーソン であれば、「経済全体の動きの中で、自分に関連する業界・会社の景気がどうなのか」を、具体的なデータ(数字)を伴って解することが大事です。これが「経済 知力」を身につける第一歩です。

そのためのデータが、いわゆる「経済指標」「景気指標」です。 国の経済全体の動きを示す、最も重要な経済指標が、国内総生産(GDP)で す。GDPは「国内で一定期間に生産されたモノやサービスの付加価値の合計」と 説明されます。もう少し平たくいうと、農業など第1次産業から流通・サービスな ど第3次産業まで、国内のすべての事業者が稼いだ「もうけ」(売上高から原材料 など「中間生産物」を引いたもの)の合計です。

この指標は、政府(内閣府)が3カ月(四半期)ごとに、「年間でいくらになる か」の金額を「推計」して、「前の期(前の3カ月)に比べて何%増減したか」を 発表します。四半期別GDP速報といいます。この「何%増減したか」が、「経済 成長率」です。

次の日本経済新聞の記事は、本書をまとめた時点で最新だった2018年7~9月期 のGDPを報じたものです。GDPは日本では四半期終了後2カ月目の中旬に速報値、 3カ月後の上旬に改定値が発表されます。この期のGDPは速報段階では見出しのよ うに「実質(年率) 1.2%減」とマイナスで、改定値ではさらに下方修正(年率 2.5%減)されました。

この期にGDPが落ち込んだのは、7月の西日本豪雨、9月の台風21号、北海道の 地震など、各地で相次いだ災害の影響です。日本ではGDPのおおむね6割近くが個 人消費です。長雨、台風、地震などの災害が相次ぐと、宿泊や飲食関連の売り上げ が減少します。前の期(4~6月期)の個人消費が前期比0.7%増だったところ、この期は0.1%減でした。

さらに、台風21号で関西国際空港が長期間閉鎖されたことは電子部品の輸出な どに響き、輸出が1.8%減と5四半期ぶりにマイナスとなり、設備投資も0.2%減と 8四半期ぶりにマイナスでした。GDPでは訪日観光客の消費(インパウンド)も 「輸出」にカウントするため、その落ち込みも輸出のマイナス拡大に拍車をかけました。

とはいえ災害で一時的に落ち込んだ需要は次の期には回復するので、10~12月 期はプラス成長に転じ、2018年を通しては1%近い成長率になる見通しです。図表 1-1のようにグラフで見ると、プラス成長、マイナス成長とでこぼこしながら も、おおむねGDPが拡大しているため「景気回復」が続いています。ただし、日 本の場合はその「水準」が低い点は、後ほど説明します。

 

「生産」は「所得」として分配され「支出」される

もう1つ、新聞の記事では「前提」として説明されないことですが、GDPは「総 生産」なのに、内訳が個人消費、設備投資、輸出など需要(支出)であることに違和感があると思います。「生産」した企業の付加価値を一つひとつ積み上げれば 「総生産」になりますが、統計がそろうまで時間がかかります。

このためGDP は、比較的早く公表される「支出」側の統計を積み上げて推計しています。個人消 費であれば「家計調査」、設備投資であれば「法人企業統計」などに基づきます。 「生産」された付加価値は、「所得」として分配され、その所得は「支出」として 消費されます。「生産と所得と支出が等しい」というのが、GDPの統計のもとに なる考え方(三面等価といいます)です。図表1-2は、2017年のGDPの構成を、支 出、所得、生産の3つの面から見たものです。金額は物価変動の影響を取り除く前 の名目額です。

「生産」から見ると、GDPの7割以上を第3次産業が稼いでいる日本経済の姿が改 めて分かります。鉱工業の割合がやや小さいように見えますが、これは、グローバ ル企業と呼ばれる海外での事業の割合が大きい企業が製造業に多いためです。各社 の連結決算で出てくる売上高や利益に表れるほど、国内で生み出した付加価値であるGDPの増加につながりません。 なお、グローバル企業が海外で稼いだ利益は、国民総所得(GNI)という指標に反映されます。

続きは本書で確認いただけます。

日本経済新聞社 (編集)
出版社: 日本経済新聞出版社; 出典:amazon.co.jp