いちばんやさしい管理栄養士国家試験合格講座[第3版]
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はじめに
管理栄養士は、たくさんある栄養関係の資格の中で最高峰の資格です。管理栄養士の資格を取得した後は、病院に勤務したり、事業所などの食堂で献立を作成したり、保健所などで栄養指導をしたりと活躍することができます。また、管理栄養士の資格そのものを活かさなくても、管理栄養士になるための広範囲な栄養や食品の知識を生かして、一般企業でレシピやメニューの開発、品質管理などを行うこともあります。最近では、フリーの管理栄養士としてブログやYouTubeなどで活躍される方もいらっしゃるようです。
さて、管理栄養士国家試験は年に1回実施されます。マークシートで200問出題されますが、120点以上で合格です。120点以上とれば誰でも合格できるのですから(もちろん出願資格がないといけませんが)、誰かよりも良い点数をとらなくても良い、すなわち、誰かを蹴落とす必要がないわけです。
そこで本書では、合格点(120点)をとるために必要最低限の知識を90講(90日分)にぎゅぎゅっと詰め込みました。そして、いちばんやさしい参考書という名前のとおり、できるだけシンプルにかみくだいて解説しています(ただし、学問的な正確さよりも国家試験で点数をとることに特化していますから、その点にはご留意ください)。
というわけで、本書を手にとっていただきたいのは、「学生時代に勉強したことなど忘れてしまったという働く栄養士さん」「初めて国家試験にチャレンジする働く栄養士さん」「なかなか点数が伸びない学生さん」「国家試験の直前にとりこぼしがないか確認したい皆さん」などです。
まずは、第1章から順番に読み進めてください。「覚える」ことにこだわり過ぎると嫌になってしまいますので、まずは「ふんふんなるほどね」みたいな雰囲気で良いので、最後まで読み切ってみてください。これによって国家試験の全体像がつかめると思います。その後、苦手な章や講を繰り返し勉強することをお勧めします。模試直前や本番直前には、本文中の図表だけをさらっと見直すことも効果的だと思います。
あ、そうだ、スベスベマンジュウガニという人がTwitterで(ほぼ)毎日、国家試験について少しずつ講義をしています。よろしければ訪問してみてください。
それから、もちろん本書だけでも合格ラインに到達できるように執筆しましたが)余裕のある方は、本書を読み進めると同時に、過去問にもどんどんチャレンジしてみてください。本書でも各講ごとに確認問題を用意していますが、過去問は最高の問題集ですよ。過去問を解いて解説を読むことで、記憶の定着が図れます。
管理栄養士国家試験に合格するということは、皆さんにとって、単に「合格する」というだけでなく、「夢への第一歩」であったり「人生のチャレンジ」であったりするのではないかと思います。本書が、皆さんの夢や人生のちょっとした「お手伝い」となりますように願っています。
2021年2月著者
目次
はじめに
プロローグ 管理栄養士の資格と国家試験について確認しよう
1 管理栄養士とは
2 管理栄養士国家試験とは
第1章 生化学基礎栄養学を中心に国家試験の基礎を理解しよう
第1講 糖質って何?
第2講 糖質の代謝①
第3講 糖質の代謝②
第4講 糖質の代謝③
第5講 脂質って何?
第6講 リポたんぱく質
第7講 脂質の代謝
第8構 コレステロール
第9講 たんぱく質って何?
第10講 アミノ酸の代謝
第11講 インスリン
第12講 脂溶性ビタミン
第13講 水溶性ビタミン
第14講 酵素
第15講 消化と吸収、
第2章 色々な臓器と病気について勉強しよう
第16講 肝臓の働き①
第17講 肝臓の働き②
第18講 肝臓の病気
第19講 黄疸
第20講 肝臓が悪い時の食事
第21講 腎臓の働き①
第22講 腎臓の働き②
第23講 腎臓の病気と腎臓が悪い時の食事
第24講 浸透圧と浮腫
第25講 甲状腺ホルモンと副甲状腺ホルモン
第26講 副腎皮質ホルモン
第27講 副腎髄質ホルモン
第28講 副腎皮質・副腎髄質の病気
第29講 血圧
第30講 逆流性食道炎
第31講 胃
第32講 大腸の病気
第33講 貧血
第34講 心臓
第35講 肺の病気
第36講 痛風
第37講 熱中症と脱水
第38講 糖尿病
第3章 栄養バランスとライフステージごとの身体の特徴を勉強しよう
第39講 基準値を覚えよう①
第40講 基準値を覚えよう②
第41講 栄養バランスの基本を覚えよう
第42講 メタボリックシンドローム
第43講 脂質異常症
第44講 妊婦さん
第45講 先天性代謝異常
第46講 授乳と離乳
第47講 幼児期から思春期まで
第48講 更年期
第49講 高齢期
第50講 ストレス環境での栄養
第51講 基礎代謝とメッツ
第52講 病気と薬
第53講 透析
第54講 アシドーシスとアルカローシス
第55講 水溶性ホルモンと脂溶性ホルモン
第56講 活動電位
第57講 免疫のメカニズム
第58講 免疫とアレルギー
第59講 核酸とその代謝
第4章 栄養バランスや給食のこと栄養指導のことを勉強しよう
第60講 食事摂取基準①
第61講 食事摂取基準②
第62講 特定給食施設
第63講 給食のシステム
第64講 大量調理施設衛生管理マニュアル
第65講 食中毒①
第66講 食中毒②
第67講 感染症
第68講 行動変容
第69講 学習形態
第70講 栄養教育における色々な評価
第5章 食品成分など暗記するだけで点数になる項目を勉強しよう
第71講 健康増進法と健康日本21(第二次)
第72講 人口静態統計と人口動態統計
第73講 保健機能食品と特別用途食品
第74講 食品の表示
第75講 褐変反応
第76講 味や香りの成分
第77講 食品の物性
第78講 色々な糖の構造
第79講 色々な脂質の構造
第80講 油脂と油脂の酸化
第6章 ちょっと理解しにくい項目や栄養政策などを勉強しよう
第81講 食事バランスガイド
第82講 健康のための色々な政策①
第83講 健康のための色々な政策②
第84講 特定健診・特定保健指導
第85講 疫学や調査の進め方
第86講 危険度とオッズ比
第87講 敏感度と特異度
第88講 食事摂取量の測定法
第89講 損益分岐点
第90講 細胞のお話
用語索引
プロローグ
管理栄養士の資格と国家試験について確認しよう
まず、お勉強を始める前に、管理栄養士がどういう資格で、どんな試験が行われるのかを確認しておきましょう。「そんなの知っているよ!」という方は読み飛ばしていただいても結構ですが、見落としたり勘違いしたりしていることがないか、念のため確認してくださいね。もちろん、この内容は試験に出題されるわけではないので、暗記しなくても大丈夫ですよ。
1 管理栄養士とは
2 管理栄養士国家試験とは
1 管理栄養士とは
そもそも、皆さんが目指している「管理栄養士」ってどんな資格なのかご存じですか?なんとなく「栄養士の上級資格でしょ!」というくらいのイメージしか持っていない方もいるかもしれませんね。でも、「管理」の文字が付くか付かないかで、ずいぶん違う資格なんです。
◉管理栄養士は栄養系では唯一の国家資格
管理栄養士は、栄養士法で定められた資格です。栄養士法では、管理栄養士は、厚生労働大臣の免許を受けて、以下の①~③に従事することを業とする者のことであると定められています。
①傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導
②個人の身体の状況、栄養状態等に応じた高度の専門的知識及び技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導
③特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設における利用者の身体の状況、栄養状態、利用の状況等に応じた特別の配慮を必要とする給食管理及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導
ちなみに、栄養士は栄養士法で「都道府県知事の免許を受けて、栄養士の名称を用いて栄養の指導に従事することを業とする者である」と定められています。つまり、栄養士は都道府県知事の免許を受ける公的資格、管理栄養士は厚生労働大臣の免許を受ける国家資格という点が、大きく違います。
管理栄養士は栄養系では唯一の国家資格ですから、管理栄養士は栄養のプロフェッショナルなんですよ。
◉管理栄養士が活躍する場所
それでは、管理栄養士の資格を取ると、具体的にどんな仕事ができるようになるんでしょうか?
管理栄養士が活躍できる場所は、病院・診療所、食品企業、福祉施設、給食センター、保健所・保健センター、学校、寮、研究施設、スポーツ施設などです。特に病院でのNST(栄養サポートチーム)における管理栄養士の役割は大きく、その重要性は年々増していくものと考えられています。
こうした施設の栄養指導のお仕事は、採用が管理栄養士に限られることもあります(栄養士ではなく国家資格である管理栄養士を取得している必要があるんです)。管理栄養士は仕事に直結する資格なんです。
2 管理栄養士国家試験とは
管理栄養士の資格を取るには、国家試験を受験して、合格しなければなりません。管理栄養士国家試験は厚生労働省の管轄なので、試験の詳細は厚生労働省のホームページで公表されています。ここでは、そのポイントについて確認しておきましょう。
◉毎年1回3月初めに試験が行われ、3月終わりに合格発表される
管理栄養士国家試験は毎年1回3月初めに試験が行われ、3月終わりに合格発表されます。その実施スケジュールは、毎年、だいたい以下の様になっています。
・受験願書配布時期……9月中旬〜
・受験願書受付期間……12月上旬〜中旬
・受験票郵送時期………2月中旬
・試験日…………………3月初め
・試験結果発表時期……3月終わり
なお、受験手数料は6,800円です。また、試験は、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、岡山県、福岡県、沖縄県の各会場で行われます。全国すべての都道府県に受験会場があるわけではないので、注意してくださいね。
試験結果は、厚生労働省のホームページにて発表されるほか、合格者には厚生労働省から合格証書が合格発表後に送付されます。
ただし、こうした情報は、今後変更になる可能性もあります。最新の情報は以下の厚生労働省のサイトで公表されていますので、必ずご自身で確認してください。
https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/kanrieiyoushi/
◉試験はマークシート形式で120点以上で合格
管理栄養士国家試験の内容は、マークシート形式のペーパーテストです。実技や面接はありません。
問題は全部で200問出題され、120点以上で合格です。試験科目は、以下の9科目となっています。
・社会・環境と健康 ・人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
・食べ物と健康 ・基礎栄養学
・応用栄養学 ・栄養教育論
・臨床栄養学 ・公衆栄養学
・給食経営管理論
なお、本書では、各講で扱う内容について、上記のどの科目に属するかをアイコンで表示しています(複数の科目にまたがる内容の場合は、複数のアイコンを表示してあります)。ただし、要は全部で120点取れば合格できるのですから、特に科目について意識する必要はありませんよ。
◉受験するには資格が必要
管理栄養士国家試験は、残念ながら誰でも受験できるわけではありません。以下のいずれかの受験資格を満たしている必要があります。
①修業年限2年の栄養士養成施設(短大など)を卒業し、栄養士の資格を取得した後、決められた施設で3年以上栄養の指導に従事した者。
②修業年限3年の栄養士養成施設を卒業し、栄養士の資格を取得した後、決められた施設で2年以上栄養の指導に従事した者。
③就業年限4年の栄養士養成施設を卒業し、栄養士の資格を取得した後、決められた施設で1年以上栄養の指導に従事した者。
④就業年限4年の管理栄養士養成施設を卒業し、栄養士の資格を取得した者。
⑤修業年限が3年である栄養士養成施設であって、厚生労働大臣が栄養士法及び栄養改善法の一部を改正する法律(昭和60年法律第73号)による改正前の栄養士法第5条の4第3号の規定に基づき指定したものを卒業して、栄養士の免許を受けた者。
つまり、いずれにせよ栄養士の資格は事前に取得しておく必要があります。
その上で、4年制の大学を卒業した方であれば、上記1に該当することが多いでしょう(大学が管理栄養士養成施設となっているかは、大学に確認してくださいね)。
あるいは、既に学校を卒業され、栄養士として働いている方であれば、①〜③のいずれかに該当するでしょう(お勤めの施設が「決められた植設」に該当するかどうかは、その施設に確認してください)。この場合、就業年数の条件を満たしているかに注意してくださいね。