農業簿記での勘定科目とは? – 商業簿記などとの違いも覚えよう




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農業簿記をマスターするために必ず覚えなければいけないのが勘定科目です。商業簿記で覚えたから大丈夫と思っている人がいるかもしれませんが、農業簿記と商業簿記の勘定科目では少し異なるものが使われているのです。
今回は勘定科目を中心に、農業簿記と商業簿記の違いについてを紹介します。
 
農業簿記
 
農業簿記とは、農業に従事している人やその関係者が、現代にあった農業経営を行うために必要な簿記の知識を評価する資格です。日商簿記と違い、農業に関する問題も出題範囲に含まれているので、農業組合や農業系の学校からの受験者が多いです。

1級・2級・3級があり、誰でも受験することができます。財務会計や原価計算のような簿記の基本問題から農企業の財務諸表など農業簿記ならではの問題が、マークシートで出題されます。農業に携わっている人やその予定の人に注目されており、年々受験者が増えています。

合格率は3級が60%以上、2級が35〜45%、1級が25〜40%です。3級はそれほど難しい試験ではありませんが、2級や1級に合格するためにはしっかりと学習する必要があります。
 
商業簿記との違いはどこか?
 
商業簿記とは一般企業で使用される簿記のことで、「簿記」というと一般的に商業簿記を指しています。それに対して、農業簿記とは農業を行っている人が使用するものです。使用者以外にも商業簿記と農業簿記では違いがあるので、以下では2つの違いについて紹介します。
 
勘定科目
農業簿記では、商業簿記で使用されない勘定科目を取り扱います。例えば、材料費には「種苗費」「素畜費」「肥料費」「飼料費」「農薬費」などがあります。これらは農業簿記特有の勘定科目です。この勘定科目については次の章で詳しく紹介します。
 
棚卸の方法
会計の年度末には棚卸を行い、商品などの在庫数量を確認して会計作業を行います。商業簿記では「商品」という勘定科目が使用される棚卸ですが、農業簿記では「農産物」「仕掛品」「原材料」「貯蔵費」という4つの勘定科目も使用されます。生産して収穫した農産物以外に肥料や未収穫の農産物などがあるため、これらを分けて棚卸を行わなければならないのです。
 
確定申告
農業を行っている人が確定申告をする場合、農業専用の確定申告の書類を利用します。副業として農業を行っている人、農業の他に副業をしている人は書類を分けての申告なので、注意が必要です。
 
勘定科目について
そもそも勘定科目とは、帳簿に記入する際に使用する名称のことです。例えば、生産した商品が売れたら「売上高」の増加、営業のための店舗を購入したら「建物」の増加として帳簿に記入します。勘定科目は何にどのくらいお金を使ったか、どのようにお金を増やしたかをわかりやすくするために必要なのです。
 
農業簿記の勘定科目
農業簿記で使用する勘定科目には、商業簿記にないものや商業簿記とは違う意味を持つものがあります。その例をいくつか紹介していきます。

生物
農業用の減価償却資産である生物のこと。乳を出す牛や毛刈りを行うための羊などのことを指します。
育成仮勘定
農業用の生物の育成による支出のこと。上にある勘定科目の生物を育成するために必要な費用のことで、飼料費などで計上をして、年度末に育成仮勘定として計上しなおします。
農産物売上高
生産した農産物の販売金額のこと。このほかにも、「水稲売上高」「大豆売上高」「野菜売上高」など作物ごとに勘定科目があります。
種苗費
種籾その他の種子、種芋、苗類などの購入費用のこと。
飼料費
飼料の購入費用、自給飼料の振替額のこと。
農薬費
農薬、予防目的の家畜用の薬剤費の購入費用のこと。
農具費
取得価額10万円未満又は耐用年数1年未満の農具購入費用のこと。バケツやほうきなどがあります。
作付助成収入
面積払交付金など国からの作付助成のための交付金による収入のこと。
受取共済金
収穫共済など棚卸資産に対する共済金・保険金のこと。

ここで紹介した勘定科目はほんの一部です。農業簿記の試験で使用する勘定科目は公式ホームページ上に全て掲載されているので、気になる人は確認してみてください。

1級:http://www.jab-kentei.or.jp/agri-boki/pdf/agri_1kyu_kan.pdf
2級:http://www.jab-kentei.or.jp/agri-boki/pdf/agri_2kyu_kan.pdf
3級:http://www.jab-kentei.or.jp/agri-boki/pdf/agri_3kyu_kan.pdf
 
まとめ
 
農業簿記と商業簿記には異なる手続きがさまざまありますが、最も大きな違いが勘定科目です。農業を行ったことがないと想像もつかないような勘定科目があるので、未経験の人が一から覚えるのは少し大変かもしれません。しかし、農業経営には必ず役に立つものなので、農業に携わる人は覚えておくと良いでしょう。