高校数学でわかる光とレンズ 光の性質から、幾何光学、波動光学の核心まで




レンズについて勉強するおすすめ本 – 仕組みと役割も理解!も確認する

高校数学でわかる光とレンズ
光の性質から、幾何光学、波動光学の核心まで
竹内 淳著
ブルーバックス

本書で解説した被写界深度等を計算するエクセルファイルを、ブルーバックス公式サイト内の特設ページに載せています。下記のURL、またはQRコードを読み取 ってアクセスしてください。
http://bluebacks.kodansha.co.jp/special/light_lens.html
もくじ・章扉/中山康子
本文図版/さくら工芸社

はじめに

私たちの身の回りに満ち満ちているもの、それは光です。 目から得られる情報は、多くの生き物にとって日々の生存のために極めて重要です。光によって目の奥の網膜に形成される像によって、対象物の形、色、距離などの情報がもたらされます。

人類は長い間、「見ること」については肉眼が持つ能力そのものに頼ってきました。しかし、16世紀のヨーロッパで レンズを使う拡大鏡、顕微鏡、望遠鏡が発明されてから、人類が見ることができる世界は広がり始めました。従来見られなかったものを見られるように変えること、それは光学と呼ばれる学問が持っている大きな魅力の一つです。また、19 世紀にはカメラが発明されて、映像の記録が可能になりました。記録された映像は、時間と空間の両面に広がり、いまや世界中の人々が同一の映像をほぼリアルタイムで見ることができます。しかも、それを人類の文明が続く限り、かなりの未来まで伝えることも可能です。ここにも、光学が大きく貢献しています。

本書の前半では、光を光線として扱う幾何光学と呼ばれる 分野を解説し、特にレンズの働きを明らかにします。光学機器としては、カメラやメガネ、それに望遠鏡や顕微鏡が大活躍しています。このレンズに関わる物理を基礎から知りたいと思っている方は多いことでしょう。カメラマンにとって重要な被写界深度等を計算するエクセルファイルもブルーバックスの公式サイトに載せています。さらに本書の後半では波動光学に踏み込み分解能を決める要因を明らかにします。

本書は、大学の学部レベルの光学の基本となる知識と体系を、高校数学の知識を身に着けていれば理解できるよう工夫してみました。今、大学で光学を学び始めたばかりの学生のみなさんや、大学の光学を早くのぞいてみたい高校生のみなさん、それに少し本格的に光学を勉強してみたいと思っている社会人のみなさんのお役にも立てることと思います。本書を読み進めるにつれて、光学の知識は一つずつ確実に読者のみなさんの頭脳に吸い込まれていくことと思います。また、 ときには少し難しいところもあって、一瞬つまずくこともあるかもしれません。しかし、それを乗り越えて最後まで読み終えたとき、そこにはきっと新たな世界が見えていることでしょう。

もくじ

はじめに
第1章 光の性質
北斎と逆さ富士
光の性質
光の反射の法則
光の屈折の法則
空気と水の界面での屈折
全反射
光線逆進の原理
光の波の性質
光の粒子説と波動説
電磁波と偏光

第2章 凸レンズと実像の関係
レンズ
ピンホールによる像
凸レンズによる結像
物体と像の関係
角倍率
縦倍率
「コラム」一眼レフカメラの構造

第3章 カメラと目
初期のカメラと写真
映像距離
フィルムから撮像素子へ
画角
被写界深度
焦点深度
レンズの明るさや絞りの大きさを表す数字=F値
被写界深度の大きさを求める
パンフォーカス
人間が持つカメラ、目

第4章 なぜ拡大できるのか一虫メガネ、望遠鏡、顕微鏡一
虚像って何?
虚像の倍率について考えよう
レンズ1枚の究極の拡大鏡
凹面鏡
顕微鏡
望遠鏡の考案
ケプラー式望遠鏡
ガリレオ式望遠鏡
ガリレオ・ガリレイ
天体望遠鏡
正立像望遠鏡
「コラム」 肖像画のない科学者フック

第5章 近軸近似と光線追跡
レンズの形
レンズと光線の関係を数式を使って表そう
近軸光線の近似
光線追跡
移行行列
平面での屈折行列
左に凸の球面での屈折行列
右に凸の球面での屈折行列
薄肉レンズの光線行列
球面の凹面鏡での反射
光線行列の表記方法
2枚の薄肉レンズの合成
2枚の薄肉レンズの合成と主平面
2つの主平面の光線行列の性質
厚肉両凸レンズの光線行列
厚肉レンズの主点と主平面
カール・ツァイスとアッベとショット
「コラム」 光学の巨人たち

第6章 波としての光 一波長、屈折率、光路長(アイコナール)の関係一
波としての光
光が波であるという性質を使ってスネルの法則を導く
光路長
フェルマーの原理
マクスウェルの方程式からスネルの法則を導く
無反射コート

第7章 単色収差
収差
ザイデル収差の導出
第1段階:光学系のモデルを理解し、波面収差が2つの光路長の差として表されることを導く
第2段階:光線収差が波面収差の偏微分で表されることを導く
談3段階:波面収差を表す関数の形を推定し、(7-10)式と(7-11)式を使って光線収差を求める
球面収差
コマ収差
非点収差
像面湾曲
歪曲(ディストーション)

第8章 色収差
色収差
フラウンホーファー線
フラウンホーファー
光学ガラスのアッベダイアグラム
色収差の補正
アクロマートの発明者は誰か

第9章 回折と分解能
分解能の限界とは
複素数で波の式を表す
複素数を座標に表示する方法
オイラーの公式
波を表すのに便利な虚数
レンズによる集光スポット
フラウンホーファー回折
フレネル
レンズによる回折
瞳関数
集光スポット径の計算

おわりに

付録
ラジアンと tandθ≈ θ の近似
三角関数の加法定理
2行2列の逆行列
サイン、コサイン、指数関数のテイラー展開
複素指数関数の微分
√(1+x) ≅ 1+ x/2(x ≪1) の近似
直交座標の積分から極座標の積分への変換
計算ファイル(エクセル)の説明

参考資料・文献
さくいん