医療接遇のおすすめ本 – 基本から事例に沿った応用まで
医療接遇とは?接客との違いは?
医療接遇とは、患者さんの不安や苦しみを想像し、気持ちに寄り添えるような対応であり、医療機関における独特な接遇方法です。一般的な接客と異なり、患者さんと対等な立場で向き合う姿勢が求められます。ここでは、適切な医療接遇を学ぶために役立つ本をご紹介します。
新版 医療の接遇 基本マニュアル&演習
はじめに
医療機関でも、接遇に対する意識が強くなり、向上のための様々な取り組みがなされるようになりました。医療機関が患者さまを顧客ととらえ、患者さまに満足していただけるような医療サービスを提供するべきだという考えが浸透しつつあるからです。
しかし、一般企業で当たり前のように行われている顧客に対する接遇を医療の現場にそのままあてはめることができないというのも現実です。医療機関を訪れる方のほとんどは、心身に痛みや苦痛、不安を抱えた患者さまやご家族ですから、医療スタッフの対応として求められるのは、患者さまやご家族の気持ちに寄り添った思いやりのある言葉や行動、そして信頼される関係づくりです。
本書は単なるハウツー本ではなく、こうした医療現場で求められる接遇という特殊性を踏まえ、患者さまと医療機関で働く方々とのコミュニケーションを良好にしていくための応対のあり方、接遇の基本について、現場での事例をもとにまとめています。医療機関の新人職員のみなさんをはじめ、これから医療に携わる方、医療を取り巻く様々な業種の方々に、医療機関における接遇のスタンダードブックとして幅広く活用していただければ幸いです。
医療機関で働くスタッフのコミュニケーション技術の向上が医療の質の向上に結びつき、患者さまやご家族とスタッフが信頼し合える医療が実現することを願っています。
医療タイムス社教育研修事業部
本書の特徴
本書は医療機関で働く方々が患者さまやご家族と接する際に大切な応対マナーと、社会人として必要なビジネスマナーの基本を章ごとに整理して編集しました。ポイントはコンパクトにまとめ、応対例は見て確認ができるようにイラストを交えて解説しています。
1イラストで分かりやすく解説
スタッフの応対が患者さまの視点からどう見えているかなどについて、分かりやすく説明しています。
2医療現場に即した具体的な注意点を提示
注意したいことや、あらためて注目してほしいことは、さらに詳しく解説しています。
3項目別に学習のポイントを整理
ここでのポイント。それぞれの項目で押さえておきたいポイントを記載しています。
4コミュニケーションのポイントを学ぶ
応対の基本を理解した上で、実際の場面に即したスキルアップのポイントを学習します。
目次
はじめに
本書の特徴
Chapter1 医療機関とは
1-1 医療における接遇とは
1-2 医療機関ってどんなところ?
1-3 医療機関の特性
Chapter2 医療人としての接遇
2-1 第一印象の重要性
2-2 身だしなみ
2-3 表情
2-4 挨拶
2-5 態度・動作
2-6 言葉づかい
2-7 電話応対
2-8 カウンセリングマインド
Chapter3 実践的なコミュニケーション術
3-1 会話のポイント
3-2 応対のポイント
●おさらい こんなときどうしますか?
Chapter4 社会人としての常識
4-1 社会人としての心がまえ
4-2 報告・連絡・相談
4-3 遅刻・早退・欠勤
4-4 名刺交換
4-5 来客時のお茶の出し方
4-6 文書マナー
4-7 ビジネスメール
Chapter5 演習問題
付録
挨拶・マナー総合チェックポイント
医療を取り巻く人たち
看護の現場ですぐに役立つ 患者接遇のキホン
はじめに
これまで臨床で接遇・マナー指導の際、「あたりまえのことがどうしてできないの」といった言葉をよく耳にしました。
「あたりまえ」とは何か、そもそも「あたりまえ」と感じていないからその人はそれをしないのではないか、その言葉を耳にするたびに違和感を持っていました。そして、看護の世界をいったん出て、他の学術領域での「あたりまえ」に触れるようになり、視野がいかに狭かったのか気づかされました。
筆者は、精神科看護師、大学教員として働き、その後、子ども虐待予防に関する活動をするため、公衆衛生大学院へ進学、現在は研究所の社会医学研究部に勤めています。「社会医学」というのは、社会が人の健康にどう影響するかを研究する学問です。例えば、格差が大きい社会の貧困家庭で育った子どもは、健康を守る知識やスキルが十分ではなく長期的ストレスに曝されているため、心身の病気にかかりやすいことがわかっています。一方で、ある研究では、貧困地域に住む就学前の子どもに高い社会階層の子どもが親から教わるようなふるまい方等を教えたところ、教えない場合に比べて成人期に病気になりにくいことなどがわかりました。
これらの経験から筆者は、接遇・マナーは「あたりまえ」ではなく、学習して得るものだと考えるようになりました。もちろん、特別に裕福な家庭で育った人は少なく、これらの知識やスキルを大人になってから努力して身につけた方も多くいらっしゃると思います。しかし、それらは「あたりまえ」にできたのではなく、学習し練習することが必要だったはすです。
本書では、接遇・マナーを誰もが学習し、練習できるように、可能な限り具体的に説明し、また会話例を多く盛り込みました。みなさんの良き練習の書として活用されることを願っております。
contents
はじめに
本書の特長
本書の使い方
この本の登場人物
Chapter1 接遇マナーの超キホン
接遇・マナーとは
見ためでトクしよう(あなたは見られている1)
挨拶(あなたは見られている2)
column 最初に「はい」と返事をする
column 優先順位(ゆとりを生む工夫1)
表情、しぐさ(あなたは見られているか)
適切な言葉を使う(話す・伝える技術1)
column 段取り(ゆとりを生む工夫2)
敬語(話す・伝える技術2)
column とにかく丁寧にすればいい?
提案、依頼、尋ねる、説明(話す・伝える技術3)
column NG言葉「先生のご都合で決まります」
違いを観る(相手を知る手がかり1)
column 話し上手なあなたへ
領聴、共感の技術(相手を知る手がかり1)
column 語尾を下げる
あなたの居る場所
column コミュニケーション3つの錯誤
Chapter2 病棟での接遇・マナーのキホン
入退出
column より低い声でゆっくり話す
環境整備
個人情報の守り方(病棟編)
column 動機づけ面接のスキルを使う(目的が合わないとき)
column 同時に複数のナースコールが鳴ったとき
入院オリエンテーション
処置やケア
column 患者を不安にさせる言葉“大丈夫”
“わからない”の伝え方
“患者が嫌なこと”の伝え方
食事
浴室・シャワー
column テレビカードの説明
排泄・お手洗い
column 患者に責任を押しつけない
Chapter3 病棟外での接遇・マナーのキホン
エレベーター、廊下、外来
患者が亡くなったとき
家族やお客様のご案内
どこに座る?(上座と下座)
お茶を出す
Chapter4 ナースステーションでの接遇・マナーのキホン
報告・連絡・相談
ふるまい方
column 看護師のうわさ話は患者や家族に聞かせない
電話
メール
個人情報の守り方(電話、他編)
休暇、遅刻、早退
休憩する
column 家族の帰り際の挨拶への返答
失敗・指導されたとき
あなたの気持ちのおさめ方
column 闘争か逃走か
私の気持ちの伝え方
Chapter5 困ったとき
クレームを受けた
column 請求書の説明を患者に迫られた
先輩によって指導内容が違う
“ほんの気持ち”のかわし方
特別対応を頼まれた
話の終わらない患者
セクハラ、パワハラ、モラハラ
column 理不尽なクレームに思えても
column 失敗、クレームは「ただちに」傾聴、謝罪
索引
本書の特長
接遇・マナーは、「相手への気遣い・思いやり」を伝える手段としての「上手なふるまい。えられます。「上手な」ふるまい方ですので、誰もが「あたりまえ」にできることではなくけるためには、繰り返し練習することが必要です。本書は、この「上手な」ふるまい方がか手への気遣い・思いやり」になるのか、行動心理学、特に動機づけ面接に基づいて説明して理論に基づいたふるまい方の練習を通して、あなたも相手も笑顔になれることを目指します。
役立つポイント1 接遇・マナーに共通する知識とスキルについての理解が深まる
接遇・マナーでは、あなたが居る場にふさわしく立ち居振る舞うことで「相手への気遣い・いやり」を伝えます。あなたが居る場にふさわしいとはどういうことか、立ち居振る舞いとは何かを共通する5つの側面で理解します。
役立つポイント2 接遇・マナーの問題が生じがちな場面ごとに学べる
日々の臨床の場面の中で活用しやすいように、病棟や病棟外、ナースステーションの中など「相手への気遣い・思いやり」が求められる場面や看護業務との関連をふまえた構成にしました。
役立つポイント3 なぜそうするのか利点を知った上で練習できる
「あたりまえ」「常識」だからという決めつけではなく、なぜそうした方が良いのか可能な理由を説明しています。また、コミュニュケーションに関する部分では、類似書にはない理学や動機付け面接の理論に基づいた解説をしています。そのようにふるまう利点を知った上で練習することができます。
役立つポイント4 具体的な会話例が豊富
「相手への気遣い・思いやり」を伝える際に重要になる傾聴、共感のスキルや言い方を理解しやすいように、具体的な会話例や言葉例を豊富に盛り込みました。実際の場面を想像しながら理解して練習に活かすことができます。
役立つポイント5 具体的に書かれているので練習しやすい
「優しくする」「敬う」など、抽象的な言葉はできるだけ用いず、どう考え行動したら「相手への気遣い・思いやり」を伝えるふるまいになるのか、できるだけ具体的に述べられています。具体的にどうしたらよいのかがわかるので、練習しやすい内容となっています。
はじめての医療接遇 患者のための心のこもったおもてなし
はじめに
本書は、あらゆる医療職にとって役に立つ、医療接遇に絶対に知っておきたいポイントをわかりやすく、文章化したものです。忙しい医療者のために、必要最小限に絞って説明しています。医療職としてはじめて就職する新人職員のガイドブックやベテラン職員にとっても日々の業務のみなおし、指導者として新人職員への説明にも役立てられる内容をめざしています。
2020年東京五輪の招致活動の中で使われた「おもてなし」という言葉がブレークして以来、あらゆる分野のサービス業で「おもてなし」という日本古来の価値観が改めて見直されました。医療業界も例外ではありません。1995年の厚生白書に「医療はサービス業」と明記されたことを契機に、医療の現場での患者さんに対するおもてなしをいかに充実させるか、すなわち「接遇」のあり方が模索され続けています。
東京大学医学部附属病院に、全国の大学病院に先駆けて「接遇向上センター」が設置されたのは2006年のことです。私立・自治体病院関係でも見られない画期的な試みでした。病院の接遇向上の取り組みにも、人材を配置する必要があるという病院執行部の提案が実行されたのです。初代センター長に任じられたのは当時の副院長、老年病科(現・虎の門病院院長)の大内尉義教授で、顧問として招聘された看護師資格をもつ私との2名で新規立ち上げを担当することになりました。
私たちはまず、東大病院の敷地・各施設・全病棟を、毎週1回3カ月かけてラウンドして回り、各職の職員から接遇を高めるためのニーズについてヒアリングを重ねました。そこから、3つの方針をたてました。医療接遇とは何か?ひとまずその定義をする。O医療における接遇が及ぼす影響を関係図に示しアイコン化する。3民間の接客業のエキスパートの方々から、それぞれの接遇の極意を教示していただく。
こうしたプロセスを経て、他業種の接遇のプロたちの意見を聴き、医療の接遇に必要不可欠と思えるポイントを選択しながら、その内容を職員に発信する。センター長の理想とする医療接遇の定義づけを先にしたものの、その結果、当初に立てた定義が変化するのなら柔軟に対応するという方針です。
4年間で行った接遇講座は始回に達し、講師陣は帝国ホテルや椿山荘、航空会社のキャビンアテンダントをはじめ、コーチングなどのコミュニュケーショントレーナー、さらには美容家、警察関係、映画監督まで多岐にわたり、その道の人間関係の育て方(リレーションシップ)の極意を講義していただきました。
この取り組みは、全職員への接遇、意識を高め、各科・部署ごとに接遇向上の取り組みを推進させる刺激には寄与できましたが、医療接遇、と言える共通の骨子を見出すまでには至らなかったのです。そこで、実践から引き出されたノウハウを仮説として、もっとほかの医療職や病院関係者と広く共有できるものに練り上げ、多くの医療現場での医療側と患者側の関係改善に役立てられる内容にしていかなくてはならないという課題を自らに課すことになりました。
そのため、2010年からは大学病院を離れ、全国の医療・介護施設で接遇の講義をしながら、医療接遇の核となるものは何か、模索してきました。この接遇の講義では、画一的にせず、各施設の職員の希望と実態をヒアリングした上で作成したレジュメを使い、オーダーメイドの内容にするよう努めました。その講義も2016年には100施設を達成。ようやく医療接遇に外せないポイントをわかりやすく伝えられるレベルになってきたなと感じてきたころ、2018年3月に、虎の門病院の院長になっておられた大内尉義教授に、虎の門病院新入職員対象に「はじめての医療接遇」と題して、講義させていただく機会に恵まれました。ここに公開した情報はその講義案をもとに加筆構成しています。
患者のための心のこもったおもてなしとは何か、患者も医療者も笑顔になれる病院施設経営や専門職種にとっての接遇とは何かを考えるみなさまの参考になれば幸いです。
2018年9月吉日
近藤和子
目次
はじめに
序章 なぜ、医療に接遇が大切なのか
◆コラム◆ココがポイント
Part1 医療接遇のきほん
この病院を選んでよかった
第一印象は最初の6秒で決まる
医療接遇のきほん5つのキーワードを意識する
「笑顔」のポイント
「挨拶」のポイント
「身だしなみ」のポイント
プロの顔をつくる整容マナー
◆コラム・ココがポイント
「言葉と態度」のポイント
「気づきと配慮」のポイント
Part2 医療接遇に活かすコミュニケーションスキル正しい言葉遣い(丁寧語、尊敬語、謙譲語)を理解しよう
安心と安全を支えるコミュニケーションスキル
思いやりを示すために
具体的な表現の工夫
クッション言葉を使おう
◆コラム◆ココがポイント
カウンセリングマインドをもって接しよう
より適切なコミュニケーションスキルを目指して
よりわかりやすく伝えるには?
クレームがあったときは?
終末期の患者さんとどう接するか
自分のコミュニケーションスタイルを知る(自己理解):発声練習のすすめ
Part3 社会人として知っておきたいビジネスマナー
電話対応のマナー
お茶を出すときのマナー
文書作成のマナー
◆コラム◆ココがポイント
メール連絡のマナー
ケアする人にもケアを!
セルフ・ケアのすすめ
ストレスへの対応・心と身体のセルフケア
Part4 医療接遇に役立つQ&A
おわりに
接遇に関する用語解説
ご購入者様への特別特典
著者プロフィール
医療接遇ワークブック―スタッフと考える“おもてなし”の心とスキル
はじめに
私は「自分で考えられる人材を育てる」をモットーに、新入社員研修やリーダー研修を行う仕事をしています。
人材教育の大きなテーマに、いわゆる「接遇」があります。「接遇」というと表面的な立ち居振る舞いと考えられがちですが、本質は心のありようです。「相手を思いやる気持ちを言葉や行動で伝えること」だと思っています。患者さまやお客さまのように外部の人に対するものが「接遇」と捉えられがちですが、それだけではありません。働く者同士の間でも接遇はとてもたいせつなのです。私は、長年の経験のなかで「地域性や業種に関係なく、互いに思いやりをもって仕事をしている職場はとても元気である」ということを感じさせられてきました。人も組織(経営状態)も元気で安定しているのです。
これまでさまざまな企業や機関で研修をしてきましたが、その一つに医療機関があります。医療機関の特徴は、目に見えないサービスを提供すること、またサービスを受ける人が「患者さま」という心身に痛みや不安を抱えている人だということです。スタッフ数が少ないクリニックなどは常にface to face で仕事をします。それゆえに、他の業種以上に相手をたいせつにする心が問われます。
今は平成になって生まれた人が仕事の第一線で活躍している時代です。研修で若い人と接して感じることは、「対人コミュニケーションが苦手だったり、自分の感情表現がうまくできない人が多い」ということです。ですが、この一冊をきっかけに、臆病にならず積極的に人とかかわることにチャレンジする方がすこしでも増えればとても嬉しく思います。とくに、クリニックで働く若い世代の皆さんに気づいてほしいことは、「接遇」とは決して特別なことをすることではなく、相手を思う気持ちの小さな積み重ねだということです。最初からうまくいく人などいません。失敗をしながらも「目の前の人にどう接したら安心してもらえるだろう」と自分の心の中にあるやさしさを伝えれば、ちゃんと笑顔が返ってきます。だれの心にもやさしさはあります。そのやさしさをたいせつにしてください。
約8年間書き続けたいろいろな接遇の形を一冊にまとめました。「接遇」は人の和をつくりだし、仕事を活気づけます。そして、人生をも充実したものにします。この一冊が皆さんの接遇のヒントになり、考えるきっかけになれば光栄です。そして最後に、本書をまとめるにあたりお手伝いをしてくださった皆さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。
2014年1月
著者
目次
はじめに
・やさしさを伝える第一歩
接遇・医療接遇とは
社会人は学生のときとどうちがう
ここからスタートしよう
医療機関でなぜ働くのか
・接遇力アップのヒント1
おしゃべりは防げる
・感じのよいクリニックをめざして
あいさつからすべてがはじまる
笑顔で安心を届けよう
中身がわからないから見た目もたいせつ
身だしなみを整えよう 服装
身だしなみを整えよう 髪とメイク
しぐさがやさしさを印象づける
・やさしい言葉があふれるクリニックをめざして
敬語は仕事の基本
話じょうずになるコツ
ちょっとした表現でやさしさを表す
「はい」からはじめるコミュニケーション
患者さまにプラスのストロークを
解答&解説
・接遇力アップのヒント2
電話のじょうずな対応 見えないからこそしっかり対応
・不満のある患者さまへの対応
心の準備をしよう
クレームは怒りを鎮めることがたいせつ
対応の原則と三つのチェンジ
・混んでいるときの対応
患者さまに感謝の気持ちを
患者さまにも仲間にもやさしく
・誰にでもやさしいクリニックをめざして
子どもも患者さまのひとり
これからは高齢者の時代
・接遇力アップのヒント3
モチベーションアップしたいとき
・教えることでステップ・アップ
新人を教えようーみんな最初は新人だった
新人研修はオリエンテーションから
接遇インストラクターになろう
・おわりに
クリニックのサービスを向上するには
著者紹介
看護師のための 医療安全につながる接遇
はじめに
「えっ、接遇が医療安全?」本書のタイトルを見て、あなたは「?」と感じてこの本を手に取ってくださったのでしょう。
本書は、下記のような目的のヒントになる内容です。
・患者さんやチーム間で良好な関係を構築して、安心・安全な医療を提供したい
・ヒヤリハットやインシデントを未然に防ぎたい
・実際にいま、患者さん対応やチーム間(部下育成)で悩んでいて、解決したい
突然ですが、患者さんはあなたが勤務する病院(クリニック)に訪れるとき、どのような状態でしょうか。通りがかりに「立派な建物だ、今度機会があったら行ってみよう」とか、「雰囲気がよさそうだから行ってみたいな」という状態でしょうか。
健康な赤ちゃんを産む産科などの肯定的な状態もあります。しかし、一般的には病院に行くときは、調子が悪い、病気かもしれない……と痛みやつらさ、そして不安や緊張といったネガティブな状態です。「患者さんは「○○に旅行に行く」とか「お給料をもらったからワンピースを買おう」といったワクワクする、楽しい状態ではないのです。人はワクワクするとか楽しいといった感情のときは、前向きで肯定的で、ちょっと気になることがあっても受け入れることができ、許せる心のゆとりがあります。
しかし、その反対の痛みやつらさがある、不安や緊張といった負の感情のときは、ささいな一言、ちょっとしたことが気になります。そんな状態の患者さんをサポートする医療現場のスタッフ、とくに看護師のみなさんに少しでもお役に立ちたいと思い、この本を書きました。私は、福岡かつよと申します。20年以上、医療・介護現場に特化した医療接遇コンサルティング、研修、講演活動を行ってきました。
10万人を超える医療現場を支える医療者の皆さんとともに、安心・安全な医療環境のために接遇力向上に取り組んでいます。本書では、そのなかで培ってきた医療現場に求められる接遇について紹介しています。相手の心の中は手に取るように見えるわけではありません。いくら看護師として患者さんへの考えや想いがあったとしても、伝わらなければもったいないのです。持っている技術や知識、人間力は言葉と行動で伝達されるのです。この伝達こそが「医療接遇」なのです。
「接遇」と聞くと、接客マナーをイメージする人が多いでしょう。「おじぎの角度は何度」「挨拶は笑顔で」などが代表的です。確かにこれらも接客マナーとして大切なことではあります。しかし、医療機関での接客マナーは接遇のごく一部にしか過ぎないと私は考えています。ですから、本編には一般的な接客スキルやビジネスマナーは出てきません。看護師に求められるのは、高い看護技術で早期回復に努めること、患者さんの痛みやつらさに寄り添うことなど、安心安全な医療の実践ではないでしょうか。
私の伝えたいことは、「医療接遇は医療安全につながる」ということです。医療接遇は、これが正解、不正解といった、明確に数値化できるものではありません。本書を読み進めるなかで、「これも接遇のひとつなのか」といった新しい発見もあると思います。私はクライアント先の看護師のみなさんに、「あなたはどんな医療人になりたいですか?」と訊ねています。本書を通じて医療現場での接遇が重要な理由、継続することの大切さなどを理解することで、医療者としてのあなたの理想に近づく、その成長の一助になれば幸いです。
2020年10月
福岡かつよ
目次
はじめに
part1 「医療」の差は「接遇」の差で決まる
あなたの接遇力はどのくらい?
患者さんの医療評価のポイントは?
医療接遇は医療安全の柱
医療行為は「言葉」と「行動」である
なぜ、ヒヤリハットが起きる
高いスキルが発揮できる職場をつくる
医療接遇=マナーの理由
医療接遇の答えは現場にある
現場で活かす医療接遇
「伝え方」で結果が変わる
「思考」と「感情」が「言葉」と「行動」に現れる
看護師としての「適切な言葉づかい」確認シート
看護師としての「医療安全につながる身だしなみ」チェックリスト
接遇の振り返りができますか
part2 医療現場で起こるコミュニケーション・ギャップの正体
自分とのコミュニケーションで「言葉」と「行動」が変わる
自分を理解し、他者を理解する看護とは
チーム内の対人コミュニケーション
看護師が「笑顔」で患者に接する理由
コミュニケーション・ギャップを生む「コミュニケーション特性フィルター」とは?
自己理解・他者理解のヒント「認識スタイル」
相手に伝わるコミュニケーション術
part3 好循環・悪循環のケース・スタディ
言葉がひとを動かす!
ナースコールに慌てないで行動したい
採血が苦手で、患者さんや他の看護師に迷惑をかけてしまう
問診が苦手で、患者さんの訴えを丁寧にくみとることができない
上司や医師の目が気になり、患者さんの安全・安楽に気がまわらない
一人で集中して仕事をしたいと言う部下
他部署との関係が悪く、憂うつになる
仕事の評価は高いが、チームになじめない同僚がいる
もっと余裕をもって、患者さんに対応したい
検査説明が苦手なため、患者さんが聞いてくれない・イライラされる
管理者として、目先の仕事に追われている
どこからはじめていいのかわからない
患者さんになれなれしい言葉づかいをする新人ナースを、上手にたしなめたい
遅刻常習の(時間、期限にルーズな)後輩をうまく注意したい
言われたことしかやらない部下の意識を変えたい
きちんと申し送りをしたのに、同じことを聞いてくる
文句や否定的な言葉ばかり言う部下をどうにかしたい
患者さんに納得してもらえる看護をするには
part4 看護力を高める「接遇」&「コミュニケーション」
なぜ、申し送りに時間がかかるのか
傾聴だけで医療は達成できるのか
「なぜ」を考えると看護は変わる
・culmun
人気のある病院は、玄関に入った瞬間が違う
感染対策マニュアルはコピーすれば安心?
「○○さん」のひと言が価値を高める
ミスが起きたときの対応で組織の信頼がつくられる
少しの気遣いが相手の心に響く
問診力を高める3つのポイント
オンライン診療でも満足度の高い接遇
院内のルールを守ってもらえない!
「すみません」は便利な言葉!
「これくらい……」が全体を乱し、医療事故につながる
自信がなかった看護師が変われた理由は
今すぐできる! 患者が集まる接遇術
医療経営ブックレットとは
◆コンセプト
本書は、医療経営における様々な問題や課題を解決するために、効索的な学習を進めるためのブックレットです。必要とされる知識や思考法実践能力、備えるべき価値観等を習得することを目的としています。
◆テーマ設定
日常業務に役立つ実践的なテーマから、中長期的な視点や幅広いアプローチが必要となる経営手法、さらには医療のあり方や社会のあり方といった倫理・社会学的なテーマまで、医療経営に必要とされる様々なテーマを取り上げています。
◆読者対象
医療経営士をはじめ、医療機関に勤める方や医療機関と関わりのある他業種・団体の方、さらに医療経営について学んでいる方を主な読者対象としています。
◆使い方
勉強会や研究会の教材としての利用が効果的です。示された事例や課題について、グループワークや討論を重ねながら、問題解決に向けた具体策と能力を習得し、医療経営に役立てられることを期待しています。
・医療経営士とは
医療機関をマネジメントする上で必要な医療および経営に関する知識と、経営課題を解決する能力を有し、実践的な経営能力を備えた人材として、一般社団法人日本医療経営実践協会が認定する資格です。
はじめに
・「患者様」から「患者さん」へ
「患者様」という呼称は、厚生労働省の「国立病院、療養所における医療サービスの質の向上に関する指針」(2001(平成13]年)の通達の中に、「患者を呼称する際、原則として姓名に『様』を付けることが望ましい」という記載によって、全国的に広がりました。その後の医療界の環境変化は目まぐるしく、特にここ数年は団塊の世代のリタイアが現実のこととなり、医療も介護も「在宅」がキーワードになっています。超高齢社会を迎え、今後、医療と生活がますます密接になることが予想されます。
そのような状況の中で、最近、医療機関では「患者様」という呼び方を見直す動きが広がっています。その主な理由は、次のとおりです。
1 「患者」という名称は「患った者」という意味であるため、この言葉に尊敬語である「様」をつけるのは、日本語として問題がある。(2006(平成18)年、京都大学病院)
2 患者へのアンケートによると「患者さん」で十分という意見が7割に上る。(2007(平成193年、西日本新聞)
3 ホテルにおける客と従業員との関係とは異なり、患者と医療者は対等な関係であるべきである。(2009(平成21)年、群馬保険医新聞)
4 一部の人から「誤った権利意識」「強い消費者意識」を助長していると指摘があった。
患者さんに接するときにもっとも大切なのは、ホスピタリティ精神だと私は思います。相手と対等な関係で寄り添うという意味においても、「患者さん」という表現が適切なのではないでしょうか。これらを考慮し、本書では「患者様」ではなく「患者さん」と表記しています。
2013年11月
白梅英子
目次
はじめに
1 医療従事者に求められる接遇
医療従事者に求められる接遇の要点
医療従事者としてのプロフェッショナルの条件
2 患者さんに信頼される接遇のポイント
ポイント1 身だしなみ
ポイント2 表情
ポイント3 挨拶
ポイント4 立ち居振る舞い(態度、動作)
ポイント5 言葉遣い
3 医療従事者に必要なコミュニケーションスキル
スキル1 聴き方
スキル2 話し方とコミュニケーション
4 電話応対の基本
基本1 電話の受け方
基本2 電話のかけ方
基本3 電話の取り次ぎ方
5 医療機関の接遇事例
事例1 身だしなみで組織がわかる
事例2 マスクをしたまま「こんにちは」?!
事例3 取引業者に対する接客態度(事例)
事例4 おもてなしの心を伝える
事例5 訪問時の留意点
事例6 名刺交換はさりげなく
事例7 廊下、階段でのご案内
事例8 エレベーターでのマナー
事例9 メールのマナー違反に要注意
おわりに