看護の現場ですぐに役立つ 患者接遇のキホン




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はじめに

これまで臨床で接遇・マナー指導の際、「あたりまえのことがどうしてできないの」といった言葉をよく耳にしました。

「あたりまえ」とは何か、そもそも「あたりまえ」と感じていないからその人はそれをしないのではないか、その言葉を耳にするたびに違和感を持っていました。そして、看護の世界をいったん出て、他の学術領域での「あたりまえ」に触れるようになり、視野がいかに狭かったのか気づかされました。

筆者は、精神科看護師、大学教員として働き、その後、子ども虐待予防に関する活動をするため、公衆衛生大学院へ進学、現在は研究所の社会医学研究部に勤めています。「社会医学」というのは、社会が人の健康にどう影響するかを研究する学問です。例えば、格差が大きい社会の貧困家庭で育った子どもは、健康を守る知識やスキルが十分ではなく長期的ストレスに曝されているため、心身の病気にかかりやすいことがわかっています。一方で、ある研究では、貧困地域に住む就学前の子どもに高い社会階層の子どもが親から教わるようなふるまい方等を教えたところ、教えない場合に比べて成人期に病気になりにくいことなどがわかりました。

これらの経験から筆者は、接遇・マナーは「あたりまえ」ではなく、学習して得るものだと考えるようになりました。もちろん、特別に裕福な家庭で育った人は少なく、これらの知識やスキルを大人になってから努力して身につけた方も多くいらっしゃると思います。しかし、それらは「あたりまえ」にできたのではなく、学習し練習することが必要だったはすです。

本書では、接遇・マナーを誰もが学習し、練習できるように、可能な限り具体的に説明し、また会話例を多く盛り込みました。みなさんの良き練習の書として活用されることを願っております。

三瓶舞紀子 (著)
秀和システム (2018/12/27)、出典:出版社HP

contents

はじめに
本書の特長
本書の使い方
この本の登場人物

Chapter1 接遇マナーの超キホン
接遇・マナーとは
見ためでトクしよう(あなたは見られている1)
挨拶(あなたは見られている2)
column 最初に「はい」と返事をする
column 優先順位(ゆとりを生む工夫1)
表情、しぐさ(あなたは見られているか)
適切な言葉を使う(話す・伝える技術1)
column 段取り(ゆとりを生む工夫2)
敬語(話す・伝える技術2)
column とにかく丁寧にすればいい?
提案、依頼、尋ねる、説明(話す・伝える技術3)
column NG言葉「先生のご都合で決まります」
違いを観る(相手を知る手がかり1)
column 話し上手なあなたへ
領聴、共感の技術(相手を知る手がかり1)
column 語尾を下げる
あなたの居る場所
column コミュニケーション3つの錯誤

Chapter2 病棟での接遇・マナーのキホン
入退出
column より低い声でゆっくり話す
環境整備
個人情報の守り方(病棟編)
column 動機づけ面接のスキルを使う(目的が合わないとき)
column 同時に複数のナースコールが鳴ったとき
入院オリエンテーション
処置やケア
column 患者を不安にさせる言葉“大丈夫”
“わからない”の伝え方
“患者が嫌なこと”の伝え方
食事
浴室・シャワー
column テレビカードの説明
排泄・お手洗い
column 患者に責任を押しつけない

Chapter3 病棟外での接遇・マナーのキホン
エレベーター、廊下、外来
患者が亡くなったとき
家族やお客様のご案内
どこに座る?(上座と下座)
お茶を出す

Chapter4 ナースステーションでの接遇・マナーのキホン
報告・連絡・相談
ふるまい方
column 看護師のうわさ話は患者や家族に聞かせない
電話
メール
個人情報の守り方(電話、他編)
休暇、遅刻、早退
休憩する
column 家族の帰り際の挨拶への返答
失敗・指導されたとき
あなたの気持ちのおさめ方
column 闘争か逃走か
私の気持ちの伝え方

Chapter5 困ったとき
クレームを受けた
column 請求書の説明を患者に迫られた
先輩によって指導内容が違う
“ほんの気持ち”のかわし方
特別対応を頼まれた
話の終わらない患者
セクハラ、パワハラ、モラハラ
column 理不尽なクレームに思えても
column 失敗、クレームは「ただちに」傾聴、謝罪

索引

三瓶舞紀子 (著)
秀和システム (2018/12/27)、出典:出版社HP

本書の特長

接遇・マナーは、「相手への気遣い・思いやり」を伝える手段としての「上手なふるまい。えられます。「上手な」ふるまい方ですので、誰もが「あたりまえ」にできることではなくけるためには、繰り返し練習することが必要です。本書は、この「上手な」ふるまい方がか手への気遣い・思いやり」になるのか、行動心理学、特に動機づけ面接に基づいて説明して理論に基づいたふるまい方の練習を通して、あなたも相手も笑顔になれることを目指します。

役立つポイント1 接遇・マナーに共通する知識とスキルについての理解が深まる
接遇・マナーでは、あなたが居る場にふさわしく立ち居振る舞うことで「相手への気遣い・いやり」を伝えます。あなたが居る場にふさわしいとはどういうことか、立ち居振る舞いとは何かを共通する5つの側面で理解します。

役立つポイント2 接遇・マナーの問題が生じがちな場面ごとに学べる
日々の臨床の場面の中で活用しやすいように、病棟や病棟外、ナースステーションの中など「相手への気遣い・思いやり」が求められる場面や看護業務との関連をふまえた構成にしました。

役立つポイント3 なぜそうするのか利点を知った上で練習できる
「あたりまえ」「常識」だからという決めつけではなく、なぜそうした方が良いのか可能な理由を説明しています。また、コミュニュケーションに関する部分では、類似書にはない理学や動機付け面接の理論に基づいた解説をしています。そのようにふるまう利点を知った上で練習することができます。

役立つポイント4 具体的な会話例が豊富
「相手への気遣い・思いやり」を伝える際に重要になる傾聴、共感のスキルや言い方を理解しやすいように、具体的な会話例や言葉例を豊富に盛り込みました。実際の場面を想像しながら理解して練習に活かすことができます。

役立つポイント5 具体的に書かれているので練習しやすい
「優しくする」「敬う」など、抽象的な言葉はできるだけ用いず、どう考え行動したら「相手への気遣い・思いやり」を伝えるふるまいになるのか、できるだけ具体的に述べられています。具体的にどうしたらよいのかがわかるので、練習しやすい内容となっています。

三瓶舞紀子 (著)
秀和システム (2018/12/27)、出典:出版社HP