電気に弱い人にもわかるオシロスコープ入門―2現象オシロスコープの簡単操作ガイドブック
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はじめに
本書では、これからオシロスコープの操作を習いたい人、使い始めて間もない人、あるいはみようみまねで取りあえず使っている人々など、いわゆるビギナーを対象にオシロスコープの使い方を説明しています。
それ故、オシロスコープがどのような仕組みで動作しているかなど、ここでは細かく説明していません。オシロスコープそのものはブラック・ボックスであっても、オシロスコープの操作の習得に支障はありません。どのようにすれば波形の観測ができるのか?、交流電圧や周波数を求めるには?精度の高い測定方法は?など、実践的な内容に重点をおいています。
理系の人でないと理解し難いオームの法則やデシベルなど、電気の専門知識が必要な記述は使わず、文系の人にも理解しやすいように別の表現に変えたり、オシロスコープの操作の習得に限れば、急いで知る必要もないと思われるものはあえて省略しました。最初のページから順に読む必要はなく、自分のオシロスコープに対する理解度により、知りたい内容のページへ一気にジャンプして読まれるほうがスキルアップの早道です。ぜひこの機会にプロフェッショナルへの道を目指して頑張ってください。
オシロスコープ(Oscilloscope)とは
オシロスコープとは、時間の経過と共に電気信号(電圧)が変化していく様子をリアルタイムでブラウン管に描かせ、目では見ることのできない電気信号の変化していく様子を観測できるようにした波形測定器です。このブラウン管は、ドイツ人のブラウン(KarlFerdinand Braun)が、大学の学生に電流の波形を見せるための教材として1897年に試作した陰極線管(Cathode Ray Tube)が原型とされ、今では彼の名前で広く呼ばれるようになりました。
現在、テレビジョンに使われているブラウン管は、オシロスコープのものとは仕組みが異なりますが、ルーツを辿れば同じ所へ行き着きます。オシロスコープは、このブラウン管上の輝点の動きの速さや振れの大きさを測ることで、間接的に電気信号の電圧の時間的変化を簡単に測ることができます。ですから、測定しようとする現象が電圧の形に変換できれば、電気信号の変化だけでなく、温度、湿度、速度、圧力・・・・など、色々な現象の変化量を測ることができます。
また、メータ類と大きく異なるところは、単にその電圧の平均的な値を測るためのものではなく、電圧が変化していく様子を時々刻々と目で追いかけたり、突発的に発生する現象も捉えることができます。しかも、非常に高い周波数の電気信号の変化もブラウン管に描くことが可能で、エレクトロニクス分野のエンジニアには必携の波形測定器として重宝がられています。
本書は、ビギナーを対象にしているので、難解な回路構成や信号処理にはあえて触れず、オシロスコープの概念と基本的操作、使い方に絞ってやさしく解説しています。オシロスコープのハードウェアの説明よりも、どのように操作すればオシロスコープの機能を100パーセント活用できるのかを説明することにウエイトをおいてます。ぜひ、皆さんも本書を片手にオシロスコープを操作してみてください。習うより慣れろ・・・・意外に簡単であることがわかってくると思います。
ここでマスターすることはオシロスコープのベーシックですから、その基本的な考え方は将来も変わることはありません。本書が皆さんのオシロスコープによる測定技術の向上に少しでもお役に立てば幸いです。最後になりましたが、執筆に際しご協力頂いた横井俊彦さんをはじめ、出力センター、印刷会社、出版社など、多くの方々のお世話になりありがとうございました。この紙面をお借りして厚くお礼申し上げます。
2000年7月 田中新治
目次
第1章 波形と電圧との関係
直流電圧と交流電圧
代表的な波形正弦波
ノコギリ波
方形波
パルス波
交流電圧計の限界
第2章 ブラウン管の基礎知識
ブラウン管の種類
電磁偏向形ブラウン
静電偏向形ブラウン管
静電偏向形ブラウン管の構造
電子銃部(ガン)
カソード
制御グリッド
第2グリッド
第1陽極
第2陽極
後段加速電極
偏向部(ヨーク)
ブラウン管の偏向部
偏向板の構造
垂直偏向板(Y軸偏向板)
水平偏向板(X軸偏向板)
偏向板の機能
偏向感度
蛍光面(スクリーン)
残光時間
目盛
第3章 オシロスコープの動作原理
基本的な動作
同期方式
同期掃引方式
トリガ掃引方式
トリガ掃引方式オシロスコープの回路構成
入力減衰器
垂直プリアンプ
遅延回路(ディレーライン)
垂直メイン・アンプ
トリガ発生器
掃引ゲート回路
掃引発生器
ホールドオフ回路
水平軸増幅器
アンブランキング回路
電源/高圧回路
校正電圧回路
ブラウン管
2現象オシロスコープの回路構成
2信号の切替方式
ALT(オルタ)方式とは
CHOP(チョップ)方式とは
第4章 ノブ(つまみ)やスイッチの説明
SCREEN(蛍光面)
POWER(電源スイッチ)
SCALEILLUM(目盛照明調整)
INTENSITY(輝度調整)
FOCUS(焦点調整)
TRACEROTA(輝線傾き調整)
VERTICALPOSITION(垂直位置調整)
CHIINPUT/CH2INPUT(信号入力端子)
AC-GND-DC(入力結合切替)
VERTICALMODE(垂直入力切替)
CH2INV(CH2反転)
X-Y(X-Yモード切替)
VOLTS/DIV(垂直感度調整)
VARIABLE(垂直感度微調整)
リアパネルにある機能
CHIOUT(CH1信号出力)
ZAXISINPUT(輝度変調入力)
SWEEPTIME/DIV(掃引時間切替器)
VARIABLE(掃引時間微調整)
HORIZONTALPOSITION(水平位置調整)
×10MAG(10倍掃引拡大)
CAL(校正用電圧端子)
EXT.TRIG(外部トリガ入力端子)
GND(接地端子)
TRIGGERINGMODE(トリガ・モード選択)
TRIGGERINGSOURCE(トリガ信号選択)
TRIGGERINGSLOP(トリガ・スロープ設定)
TRIGGERINGLEVEL(トリガ・レベル調整)
第5章 オシロスコープの操作方法
電源をONする前にあらかじめ基本ポジションにセット
基本ポジションにセットしたら電源ON
ノブやスイッチのセットが完了したら信号を入力.
①波形の位置を上下に移動させる
②波形の位置を左右に移動させる
③波形の振幅を連続的に変える
④大信号や微少信号を適当な大きさ(振幅)にする
⑤波形の周期を連続的に変える
⑥波形の周期を適当な数にする
第6章 2現象オシロスコープの操作方法
電源をONする前にあらかじめ基本ポジションにセット
二つの信号を同時に観測する
AUTOとNORMを切り替えてみる
VERTMODE/CHI/CH2を切り替えてみる
スロープの+と-を切り替えてみる
入力信号を切り替えて表示波形を確かめてみる
第7章 オシロスコープの基本測定
電圧の測定
時間の測定
リサジュー図形による測定
電圧の基本測定
交流電圧の測定
直流電圧の測定
交流分を含んだ直流電圧の測定
「直流電圧分の測定」
「交流電圧分の測定」
時間の基本測定
時間の測定
周波数の測定
リサジュー図形による基本測定
振幅の比較
位相差の算出
周波数の比較
第8章 リサジュー図形の仕組み
同じ周波数によるリサジュー図形
「リサジュー」と言われる由縁
リサジュー図形の例
第9章 プローブ(Probe)
プローブの種類
プローブの仕組み
プローブの仕様
プローブの校正
第10章 測定時の誤差
読み取り誤差を少なくする(電圧測定)
読み取り誤差を少なくする(時間測定)
周波数特性による測定誤差
立上り時間(パルス)の測定誤差
定格で定められた許容誤差
第11章 スキルアップ・テクニック.
電源をONする前にあらかじめ基本ポジションにセット
基本ポジションにセットしたら電源ON
トリガソースの選択方法
VERTMODEがトリガ信号を自動選択
[LINE]は電源同期(50Hzor60Hz)専用
[EXT]は外部信号でトリガ
×10MAGの測定
×10MAGとSWEEPTIME/DIVの測定は同じか?
×10MAGとSWEEPTIME/DIVの動作の違いは?
「×10MAG」と「SWEEPTIME/DIV」それぞれの波形表示
方形波やパルス波の測定
方形波、パルス波の各部分の定義
スクリーンの目盛
立上り時間の測定
立下り時間の測定
パルス幅の測定
2信号の時間差と位相差の測定
2信号の時間差の測定
2信号の位相差の測定
2信号の和と差の測定
2信号の和の測定
2信号の差の測定
映像信号(ビデオ信号)の観測
ビデオ信号の観測
第12章 FAQ(よく聞かれる質問)
●他の場所にオシロスコープを移動したら輝線が傾いてしまった
●波形の輝度が普段より暗い
●電源スイッチをONしたがブラウン管に何も現れない
●輝度が暗く波形というよりは斜線(または円弧の一部)に見える.
●波形の輝度が暗くスクリーンの左右外側にも波形が続いている。
●輝線が太く滲んでいるように見える
●TRIGGERINGMODEスイッチがNORMの時に輝線が見えない
●TRIGGERINGMODEスイッチがAUTOでも輝線が見えない
●信号を入力しているが輝線しか見えない
●CH1に信号を入れても波形が見えない
●CHIとCH2に同時に信号を加えているがCH1の波形しか見えない」
●電源スイッチをONしたが輝点しか見えない
●CHIに信号を加えたが縦に輝線が1本見えるだけ
●リサジュー図形がHORIZ.POSITIONノブで横方向に移動できない
●リサジュー測定の時に図形の縦と横が説明と違う
●CH2の信号がTRIGGERINGSLOPの設定と逆にトリガする
●VERTICALMODEをADDにしたが予想した波形と異なっている
●HORIZ.POSITIONノブを回しても輝線がスクリーンから外へ出ない
●TRIGGERLEVELノブが中央付近にあっても波形が静止しない
●波形の振幅を小さくすると波形が静止しない
●波形の振幅が1div位から小さくなると静止しなくなる
●TriggeringModeスイッチがNORMでも波形が静止しない.
●波形の立ち上がり部分から見たいのに立ち下がり部分からになる
●低周波(50Hz以下)になると波形が時々動いてしまう
●ビデオ信号が静止しない
●X10MAGスイッチをONにすると波形が左右に揺れ動いている
●低周波を2現象表示している時に波形がちらついて見にくい.
●2現象表示している時に表示波形が細切れになる
●信号(直流電圧)を加えたが輝線が動かない.
●直流分を含んだ微少交流電圧を測定したいが波形が見えない
●同じ信号源からの測定で前回と全然違う測定値となった
●測定波形に交流雑音が混じっている
●高い周波数で測定した電圧は誤差が大きいようだ?
●パルス波の立上り時間を測定したが測定値が大き過ぎる?
●プローブを使用したら測定値が一桁小さくなってしまった
第13章 定格の読み方
「ブラウン管」
形式
加速電圧
有効面
「垂直軸」
動作樣式
感度、減衰器
周波数特性
入カインピーダンス
最大入力電圧
CHOP周波数
「水平軸」(CH2入力)
動作樣式感度
入カインピーダンス
周波数特性
X-Y間位相特性
「掃引」
掃引時間
掃引拡大
直線性
「同期」
トリガ・ソース
トリガ・モード
トリガ感度
「その他」
校正電圧
輝度变調
CHI信号出力
第14章 オシロスコープの用語集
インデックス
Appendix遅延掃引(Delayed Sweep)
SWEEPTIME/DIVスイッチによる波形拡大
「×10MAG」による波形拡大
遅延掃引とは
遅延掃引の特徴
主掃引と遅延掃引
A&BSWEEPTIME/DIV(A&B掃引時間切替器)
遅延時間
拡大する部分の設定
「×10MAG」との相違
連続遅延と同期遅延
連続遅延(Starts After Delay)
同期遅延(Triggerable After Delay)