現場技術者のための計測技術入門―正しい計測が品質をかえる
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まえがき
日常の暮らしに欠かすことのできない“はかる”、普段は見過ごしている“はかる”が、実は身の周りにたくさんある。熱をはかる体温計、タクシーの走行距離をはかるメータ、体重計、血圧計、騒音計、振動計、このように私たちの生活の中では“はかる”が満ちあふれている。
産業界においても、さまざまな分野で“計測”は行われているが、実際に計測が行われる作業現場では、正しい計測の基本が理解されていないように思われる。また、ISO9001(品質マネジメントシステム-要求事項)として、”7.6監視機器及び測定機器の管理”が定められ、その中で必要な精度をどのように決めて実行するかが求められているが、監視機器・測定機器の管理に確信がもてない、又は十分理解されていないと思われるケースも多々見受けられる。このような状況の中で、計測に関する本は多数出版されてはいるが、あまりにも学術的・専門的で、現場において利用できていないように思われる。
本書は、こうした悩みをもつ現場技術者・担当者に、“どの程度、正確に測定する必要があるのか”という基準を示し、“どのようにしたら、これに満足する結果が得られるのか”について考えるヒントを紹介している。そして、ISO認証取得企業・組織の品質管理責任者・担当者向けに、確信をもって計測管理業務が遂行できるように、難しいと思われる計測の話をやさしく解説した初歩的専門書として、かつ実務に役立つように編集した。また、最近、注目を集めているISO10012(計測マネジメントシステム測定プロセス及び測定機器の要求事項)への対策としても、本書で述べる14対1理論」をベースに、計測精度について確信をもって取り組むことができるように具体的に記述してある。
さらに、実際の現場技術者・品質管理責任者・担当者向けの教材としても利用できるように、図表等を多数用いて、目で見てもわかるように工夫した。本書があなたの座右の銘として末永く活用いただければ、編著者にとって、これ以上の幸せはないと考える次第である。
最後に、本書の出版にあたって貴重なご意見をいただいた日本NCSLI幹事の皆様、財団法人日本規格協会及び株式会社山武*各関係者皆々様の多大なご協力に深く感謝申し上げます。
2008年11月吉日
山口徹
伊林洋志
新陽介
江口忠登美
磨田光夫
*株式会社山武は、2012年4月1日にアズビル株式会社へ社名を変更いたしました。
目次
まえがき
1.計測に関する基本的な疑問
1.1なぜ計測するのか?
1.2高価な計測器を使えば正しい測定ができるか?
1.3適切な計測器を選定しているか?
1.4計測の必要性をどの程度理解しているか?
2.計測における【4対1理論】
2.1[4対1理論]
2.2なぜ、“4対1″で良いのか
2.3合否判定基準をどのように決めるか
3.計測の基本的知識
3.1計測結果には必ず誤差が含まれている
3.2誤差の大きさを考えながら測定することが重要である
3.3精度について
3.4不確かさについて
3.5不確かさの取扱いについて
4.正しい計測
4.1正しく測るための心構え
4.2正しく測れていることの確認
4.3測定原理の理解
4.4測定場所の環境
4.5測定の精度を上げるには
5.計測と品質管理
5.1品質管理の原点は計測にあり
5.2定期的な校正を実施する目的
5.3計測のトレーサビリティ
5.4計測プロセスの構築
5.5現場技術者に求められること
5.6品質管理とコスト
6.まとめ
7.計測管理に関するQ&A
8.補足
8.1精度比とリスクのイメージ
8.2精度比の計算例
8.3精度比の歴史的背景
8.4リスク2%の意味するもの
卷末資料
【4対1理論】に関する補足説明
索引