計測システム工学の基礎(第4版)




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第4版まえがき

第3版の改訂から8年が経過し、計測を取りまく状況も変化した。

最も大きな変化が、2019年5月20日に実施された国際単位系(SI)の改定である。この改定は、SIの7つの基本単位のうち4つの基本単位が改定されたというだけではなく、7つの基本単位が7つの基本物理定数によって定義され、人工物で作られた標準や測定方法と関連付けられなくなったという点で、歴史的な改定であった。本書ではSIに関する説明を全面的に修正した、

本書ではこれまでの構成を生かしつつ、日本産業規格(JIS)の改正に対応し、新しい計測技術の資料・写真に更新し、説明を修正した。また、第3版に引き続き電子版を発行することに加え、フルカラー化を行った。現在の学生は、小学校から高等学校まで、フルカラーのわかりやすい図にあふれた教科書で学習しているが、大学ではモノクロの教科書で学習することにギャップがあると感じていた。今回のフルカラー化で、よりわかりやすく、より学びやすい教科書になったと思う。

本書においても、多くの企業・団体の方々から支援と最新の資料を提供していただき、最新の機器の写真などを掲載することができた、ご提供いただいた方々には、この場を借りて心より感謝申し上げる。

2020年9月
著者

松田 康広 (著), 西原 主計 (著)
森北出版; 第4版 (2020/12/17)、出典:出版社HP

まえがき

計測システム工学は多分野にまたがった学際的な工学であるので、1冊にまとめることが難しく、著書によって機械分野に重点をおいた精密測定技術やセンサを主題とした電気的計測法に分かれている。電気工学分野では、電気装置・電子回路を中心とした電気計測とか電気応用計測がある。本書は機械・電子システム(メカトロニクス)系の計測とデータ処理結果の知新までを含む「計測システム」の入門書と位置づけ、とりわけ正しい測り方と、的確な数値計算処理法について詳しく述べた。

第1章では計測を支える単位と、その換算に力点をおいた。第2章では測定値の確からしい値について解釈の仕方を、第3章ではふさわしい係数関係を与える最小二乗法を扱った。初学生にとっては有効数字の意味、最小二乗法のしくみや、周波数を考えるときに必要なlogスケールが難しいようであるので、さわりをやさしく解説した。第4章では、コンピュータを使って実験データの近辺に曲線を引く手法を解説した。最近は製図もCAD化されてきたので役立つと思う。第5章ではとくに分散分析を取り上げ、やさしく解説した。これは材料の開発過程とか、製品のユーザビリティーに関して、測定したいくつかのデータが互いに本質的に違いがあるかどうかを判定したい要求が強いからである。そのため確率統計学を学んだことのない人にも容易に理解できるように配慮した。

第6章機械的測定では、機械工場のみならず、われわれの周辺で長さ、角度、圧力などの機械量を計器と目で読み取る方法について、第7章では、検出した値を電気信号に変換するセンサについて扱ったが、ページ数の関係で範囲を切りつめざるを得なかった。代わりに、特に初学生にとって難しいとされるホイートストンブリッジによる抵抗計測法と、周波数の概念(ダイナミクスとフィルタの関係)をていねいに解説した。第8章信号の計測法では、OPアンプの利用に関する注意事項と、計測の大敵であるノイズ、およびわれわれができるノイズ対策方法、アナログ・ディジタル変換(ADC)などについて、よく使われる技術を述べた。第9章信号の処理では、ディジタル信号処理法の初歩を述べた。最近では、測定値を直接コンピュータに取り込み、図表にしたりデータ加工を行うソフトウェアが普及している。本章はそれらの機能のうち、簡易フィルタ、時間軸・周波数軸の関係などを理解するのに役立つと思われる。

本書は、1995年大学機械システム工学系に開設した“計測システム工学”の講義録をまとめ、最新情報を加えたものである、基礎電気電子回路を土台としてこれを学び、センサ工学、制御工学などへつなげる接着剤の役目を果たしている。本書の特徴はできるだけ箇条書きにして斜め読みしやすくしたこと、例題と問題の解答を詳しくしたこと、また、利用が高いと思われる数式アルゴリズムには、C/C++プログラムを添えたことである。

最後に本書の執筆にあたって、数年にわたり森北出版(株)の水垣氏、石田氏には勇気づけられ、多大の有益なアドバイスをいただいたことを記して謝意を表します。

2001年10月
著者

松田 康広 (著), 西原 主計 (著)
森北出版; 第4版 (2020/12/17)、出典:出版社HP

目次

第1章 計測のはじめに
1.1測定と計測
1.1.1量
1.1.2測定と計測

1.2物理量の単位
1.2.1基本量と組立量
1.2.2次元
1.2.3国際単位系

1.3機械力学におけるSI組立単位
1.3.1速度と加速度
1.3.2質量と重量と力
1.3.3周波数と振動数
1.3.4ばね定数1
1.3.5減衰係数(ダンピング係数)

1.4電気工学・熱力学におけるSI組立単位
1.4.1電気工学でよく使う単位
1.4.2熱力学でよく使う単位
1.4.3電気と熱の関係
演習問題1

第2章 測定の誤差と精度
2.1測定の誤差と有効数字
2.1.1誤差
2.1.2数値の丸め
2.1.3有効数字
2.1.4有効数字のしくみ
2.1.5誤差率を考慮した測定

2.2計算過程での誤差
2.2.1四則演算の桁どり
2.2.2計算機での誤差
2.2.3算術の工夫

2.3測定の精度
2.3.1誤差の種類
2.3.2記号とexpの意味
2.3.3誤差の正規分布
2.3.4精密さと正確さ
2.3.5信頼性

2.4精度の表し方
2.4.1ばらつきの程度
2.4.2誤差の定義式
2.4.3確率誤差の計算

2.5間接測定と誤差
2.6測定の不確かさ
2.7計量計測トレーサビリティー
2.8測定精度を向上させる
演習問題2

第3章 最小二乗法
3.1基準の方程式
3.1.1最小二乗法
3.1.2実験式を1次式で近似する
3.1.3 2変数の最小二乗法
3.1.4 2変数1次式の測定例

3.2実験式の簡便な導出方法
3.2.1選定法
3.2.2平均法
3.2.3平均法の計算例
3.2.4対数(log)スケールの問題
3.2.5対数値の平均法の計算

3.32次形式の最小二乗法
3.3.1直接的な方法
3.3.2多項式を1次式に変換する方法
演習問題3

第4章 データの補間
4.1ラグランジュの補間
4.1.1内挿法と外挿法
4.1.2階差
4.1.3ラグランジュの補間公式

4.2スプライン補間法
4.2.1スプライン
4.2.2雲形定規スプライン
演習問題4

第5章 測定量の関係
5.1回帰分析と相関
5.1.1回帰分析
5.1.2線形回帰分析
5.1.3相関関係

5.2分散分析
5.2.1測定と統計処理
5.2.2分散分析のしくみ
5.2.3一元配置法
5.2.4式と表を理解する
5.2.5F分布
5.2.6分散分析の評価
5.2.7一元配置法の計算
演習問題5

第6章 機械的測定
6.1長さの測定
6.1.1ゲージ
6.1.2ノギス
6.1.3マイクロメータ
6.1.4空気マイクロメータ
6.1.5アッベの原理を満たす測長器

6.2角度と面の測定
6.2.1角度
6.2.2オートコリメータ
6.2.3角度標準用多面鏡
6.2.4精密水準器

6.3質量、力、圧力の測定
6.3.1質量計と重量計
6.3.2精密天びん
6.3.3密度の測定
6.3.4力の測定
6.3.5圧力

6.4流速と流量の測定
6.4.1流速と流量
6.4.2ピトー管
6.4.3流量の測定
6.4.4粘度

6.5衝撃と材料硬さの測定
6.5.1衝撃
6.5.2硬さ
6.6振動試験
演習問題6

第7章 センサとセンシング
7.1センサのあらまし
7.1.1センサとセンシング
7.1.2センサと物性現象

7.2機械量「空間量]の計測
7.2.1変位、長さ、距離
7.2.2接触、近接、変位〈静電容量方式〉
7.2.3変位、長さ《ディジタル式〉
7.2.4移動〈ディジタル式)
7.2.5近距離
7.2.6回転角
7.2.7角速度
7.2.8高G高性能加速度計
7.2.9MEMS加速度センサ
7.2.10加速度計の応用
7.2.11流速、流量

7.3機械量[力]の計測
7.3.1力の測定
7.3.2圧力の計測
7.3.3圧電素子

7.4磁界の計測
7.4.1ホールIC
7.4.2磁気抵抗素子

7.5光の計測
7.5.1フォトセル
7.5.2フォトダイオード
7.5.3CCDとCMOSイメージセンサ

7.6温湿度の計測
7.6.1サーミスタ
7.6.2熱電効果
7.6.3測温抵抗体
7.6.4焦電素子
7.6.5湿度センサ
演習問題7

第8章 信号の計測法
8.1信号出力の方式

8.2アナログ前処理
8.2.1前処理の必要性
8.2.2OPアンプの基本回路
8.2.3反転増幅回路
8.2.4電圧フォロワ
8.2.5シグナルコンディショナ
8.2.6電流・電圧変換

8.3高精度の計測用IC
8.3.1高精度OPアンプ
8.3.2計装用差動増幅器
8.3.3アイソレーションアンプ

8.4直流ブリッジによる抵抗の測定
8.4.1ブリッジ電圧
8.4.2抵抗変化

8.5フィルター
8.5.1雑音とフィルタ
8.5.2フィルタの種類
8.5.31次RCフィルタ
8.5.4アクティブフィルタ
8.5.5デシベル(dB)
8.5.6デカードとオクターブ

8.6ダイナミックセンシング
8.6.1加速度計のダイナミクス
8.6.2フィルタの必要性
8.6.3サンプリング周波数
8.6.4接触共振の問題

8.7ノイズ対策
8.7.1アナログ回路の雑音
8.7.2アナログ・ディジタル混在回路

8.8観測機器と記録機器
8.8.1ディジタルストレージオシロスコープ
8.8.2ディジタルマルチメータ
8.8.3ファンクションジェネレータ
8.8.4パソコンによる計測

8.9ADコンバータ
8.9.1AD変換の基礎
8.9.2AD変換方式
8.9.3データ転送方式
演習問題8

第9章 信号の処理
9.1サンプリング
9.1.1時系列信号
9.1.2ノイズの性質

9.2信号のアベレージングとスムージング
9.2.1アベレージング
9.2.2移動平均法
9.2.3単純移動平均法
9.2.4多項式適合法による移動平均

9.3相関関数
9.3.1相関法
9.3.2相互相関関数
9.3.3自己相関関数

9.4周波数領域における信号解析
9.4.1基本となる三角関数の公式
9.4.2単振動の記述
9.4.3フーリエ級数展開
9.4.4周波数スペクトル
9.4.5周期的な実験曲線

9.5離散フーリエ変換
9.5.1離散フーリエ変換
9.5.2フーリエ変換の複素表示
9.5.3高速フーリエ変換
9.5.4離散フーリエ変換の性質
9.5.5高速フーリエ変換の実際
9.5.6エイリアシング

9.6window(窓)関数
9.6.1周波数領域法によるフィルタ
9.6.2ギブスの現象
9.6.3window(窓)関数
演習問題9

付録
演習問題解答
参考文献
索引

松田 康広 (著), 西原 主計 (著)
森北出版; 第4版 (2020/12/17)、出典:出版社HP