カラーコーディネーター検定試験Ⓡアドバンスクラス公式テキスト〈第2版〉
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はじめに
今回、検定試験を取り巻く環境の変化に対応するために、新しい制度をスタートすることになりました。その環境の変化を色彩に関する環境の変化で考えると、日常的に接する色彩は、専門的な知識を持った人たちが作り、選択の範囲が狭い中から、それを消費者である我々が選択する時代が長く続いてきました。最近では、IT技術の発達、特にパソコン、プリンター、スマートフォンの発達により、今までメーカーが作り、それを選んだ時代から、自分で好きな色を作り出すことが可能になってきています。
この自分で色をアレンジする時代に、カラーコーディネーションに関する知識は不可欠になってきています。色は見ている世界が一つの色で覆われると、見えなくなることが知られており、見ている世界には複数の色が必要です。この複数の色をどのように選択、組み合わせるかを考える必要があります。Coordinateとは組み合わせを一定の秩序(関係)に整えるという意味です。カラーコーディネーションとは複数の色を組み合わせて、ある目的に合わせて秩序を作ることです。この秩序とは、組み合わせを行う人が、企業のイメージを表す色の組み合わせを作ることや、個人では自分好みの空間をデザインする等の目的に沿った色の組み合わせから作られるイメージの全体像のようなものです。
このコーディネーションを行うのは、一部専門家の仕事であることは変わりませんが、知識を身に着ければ個人でも可能になり、そのための道具が手に入る時代になってきています。そのためには、カラーコーディネーションに関する基礎知識はますます必要になってきています。また、パワーポイントを使ったプレゼンテーションは、日常業務では欠かせない作業です。パソコンを使いこなす知識はもっていても、それだけで有効なプレゼンができるわけではありません。それには最低限のカラーコーディネーションに関する知識が必要です。高性能のパソコンやプリンターが比較的安価に入手可能になることで、自由に色が組み合わせられ、自分好みの色を作り出し、それを他者に発信できる時代になっていますが、この他者に発信する情報の質が、他者から評価される時代にもなってきています。この質を左右するのが色の使い方(カラーコーディネーション)です。新しい時代を迎え、新しい検定制度は新たな一歩を踏み出し、時代のニーズに応えていくことを目指します。
(カラーコーディネーター検定テキスト編集委員 鈴木恒男)
<本文用語の表記、カラーシステムについて>
①本テキストでは参照した多くの資料に基づき、用語が必ずしも統一されていないものがあります。たとえば、灰色を意味する用語について「グレイ」と「グレー」が使われています。また。色の「鮮やかさ」の漢字交じりと、「あざやかさ」のひらがなのみの双方が使用されています。
②本テキストでは、カラーシステムとしてPCCS(日本色研配色体系)を使用しています。このカラーシステムは配色教育用のシステムとして普及しており、配色実習などを行うためには、PCCSハーモニツクカラー2011(日本色研事業・発行)の併用を強くお薦めします。
目次
はじめに
本書の使い方
Chapter1 カラーコーディネーターの実務
PART1 カラーコーディネーターの実務とは何か?
1 製品づくりのプロセスとカラーに関係する業務
Chapter2 色の見えの多様性とユニバーサルデザイン
PART1 色の見えの多様性
1 色の見えはどのように決まるか?
2 遺伝的要因で現れる色覚
3 色覚異常のある人が経験していること
4 色覚検査とその実施
5 色覚の要因
PART2 カラーユニバーサルデザインの考え方
1 なぜカラーユニバーサルデザインが必要か
2 カラーユニバーサルデザイン推奨配色セットの考え方
Chapter3 色をつくり、形をつくる色材、混色から画像へ
PART1 色をつくる
1 色をつくる材料:色材
2 新たな色をつくる:混色
PART2 形をつくる
1 画像をつくり出す
2 信号値と色の関係
Chapter4 色彩と照明計画
PART1 人工光源の照明と分光分布
1 色知覚の基本要素
2 照明に用いられる人工光源,
3 照明光の違いを表現する分光分布
PART2 照明の明るさと色、そして見え
1 照明の明るさを表現する測光量
2 照明光の色を温度で表す色温度
3 演色評価数
Chapter5 表色系と測色方法および色彩管理の手法
PART1 CIE表色系
1 加法混色の特性
2 CIE表色系
PART2 色差の表示方法
1 色差の表示方法
PART3 色の測定方法
1 分光反射率の測定
2 照明と受光の幾何条件
3 光電色彩計
PART4 色彩管理
1 色彩管理の手法
Chapter6 安全色彩
PART1 視認性・誘目性・識別性に配隠した安全色
1 色の特性
2 安全色
Chapter 7 製品の色彩調査手法—色彩分析と心理評価
PART1 色彩分析と心理評価
1 色のマーケティングリサーチ
2 色の傾向を読む—色彩分析
3 人の心理評価をとらえる—心理調査
Chapter8 さまざまな配色用語と実際
PART1 配色の構成要素
1 配色構成の面積と配置
2 配色構成のリズム
3 配色構成の単一性と多様性
PART2 色彩調和と配色用語
1 秩序の原理と配色
2 親近性(なじみ)の原理と配色
3 共通性(類似性)の原理と配色
4 明瞭性(明白性)の原理と配色
Chapter9 ファッションカラーと色彩計画の諸条件
PART1 ファッションビジネス
1 ファッションの定義とファッションの特質
2 ファッションビジネスにおける商品企画
PART2 ファッションにおける色彩業務
1 ファッション産業における色彩計画
2 アパレル企業のカラー・デザイン展開方法
3 ファッションにおけるイメージ分類と配色類型
Chapter10 メイクアップ製品の色彩設計・管理とカラーコーディネーション
PART1 メイクアップ製品の色彩
1 メイクアップと色彩
2 メイクアップ製品の色彩的特徴と色材
PART2 メイクアップ製品の色を創る
1 メイクアップ製品の色彩設計
2 メイクアップ製品の色彩管理
PART3 メイクアップ製品の色を選び、コーディネートする
1 メイクアップ製品の色選び・カラーコーディネーション
2 色選びをサポートするデジタルテクノロジー
Chapter11 インテリア製品の色彩の特徴とカラーコーディネーション
PART1 インテリア製品の色彩の特徴
1 インテリア製品の色彩の考え方
2 インテリアデザインのスタイル
PART2 インテリアにおけるカラーコーディネーション
1 インテリア空間のカラーコーディネーション
2 ブラウン系、無彩色系の色みの方向とトーン(色調)
3 質感に関するコーディネーション
Chapter12 プロダクツの色彩的特徴
PART1 プロダクツにおける色彩の魅力と流行との関係
1 プロダクツの色彩の魅力・優劣とは
2 プロダクツ・カラーデザインの全体的傾向
3 カラーアベイラビリティーの考え方
PART2 プロダクツのカラーデザイン実例とその考え方
1 プロダクツカラーのデザイン:実例
2 プロダクツのカラーデザインの考え方
Chapter13 環境色彩
PART1 建築環境における色彩デザインの考え方
1 はじめに
2 建築物等の色彩計画の歴史
3 日本の環境色彩基準づくり
4 環境色彩分野のカラーコーディネーション
5 市民がつくるまちの景観
Chapter14 効果的なプレゼンテーションを生み出すカラーコーディネーション技術
PART1 ビジュアルコミュニケーションとスライド制作
1 ビジュアルコミュニケーションをめぐる今日的状況
2 スライド制作におけるカラーコーディネーションの基本
3 スライド制作におけるカラーコーディネーションの留意点
PART2 グラフィック制作物におけるカラーコーディネーション
1 グラフィック制作物におけるカラーコーディネーションの基本
2 グラフィック制作物におけるカラーコーディネーションの留意点
3 これからの展望
Chapter15 近現代のデザインとカラーの歴史
PART1 19世紀末から20世紀初頭にかけてのデザイン
1 産業化・機械化とデザイン
2 19世紀末から20世紀の芸術運動と装飾
3 機能とデザイン
PART2 抽象・前衛、アールデコ、モダンデザイン
1 抽象・前衛の始動
2 アールデコ
3 新造形主義からモダンデザインへ
4 消費社会とデザイン
PART3 価値観の転換、ポストモダン、ニーズへの対応、創造と調和
1 価値観の転換とデザイン
2 創造と調和を求めて
Chapter16 ファッションカラーの変遷と時代背景
PART1 所有することがステータスだった時代の色彩—1945年ごろ~1970年代初期—
1 きれいな色彩の商品を手に入れることが憧れ—戦後~1950年代—
2 高度経済成長と原色の時代へ―1960年ごろから1970年代初期—
PART2 生産者主導型から生活者主導型の市場へと変わっていく時代の色彩―1970年代中期~1990年代—
1 自然志向が台頭。保守的な生活者主導型市場が始まる—1970年代中期~1980年代—
2 情報化社会の到来とシンプル志向の台頭 そして「個」の時代へ—1980年代—
3 バブル崩壊がもたらした平成不況と自然回帰、エコロジー意識の定着—1990年代—
PART3 多様化、複雑化した時代の色彩―2000年代~現代—
1 グローバリズムが進展し、多くの事象が複雑化する時代へ―2000年代—
COLUMN
人工光源の歴史は60年周期!
現職RGBとXYZ
測色の実際
肌と赤
サーキュラーエコノミーと色彩
「わかりやすいプレゼン」のためにひと手間を!
参考・引用文献
用語解説
索引
検定試験のご案内
本書の使い方
この本は、カラーコーディネーター検定試験アドバンスクラス受験者の皆さんに、より効果的に学習を進めていただけるよう、以下のような構成になっています。
1 Chapterの各PARTの冒頭に1ページを設け、PARTごとに学ぶ内容とポイント、そしてキーワードを示しました。
2 本文中の重要語句、用語解説、索引の語句は、黒の太字になっています。
3 内容をより詳しく理解していただくために、巻末に用語解説を設けています。
参考・引用文献も巻末にまとめて掲載しています。
4 巻末の索引には、重要語句と用語解説の語句が掲載されています。(用語解説の語句は本文中*:アスタリスクをつけました)。