公務員試験「数的推理」が面白いほどわかる本




はじめに

●インプット→アウトプットの正しい勉強を

「最強のインプット本を作りたい」
講師として書籍・教材を執筆するなかで、このような想いを持っていました。

公務員試験は、大学入試のように少ない科目を深く掘り下げるのではなく、多くの科目の浅い知識を問うてきます。科目数が多く、どこまで知識を学べばいいかわからないので、公務員試験は知識を習得(インプット)してから問題を解く(アウトプット)という勉強がしにくい試験だといわれています。そのため、独学で公務員試験の対策をする受験生の多くは,問題を解きながら知識を覚えるのが現状です。しかし、その勉強法は、スポーツで例えると,練習をまったくしないで練習試合に出続け、試合の中で上達していかなくてはならないようなものです。いかに非効率な勉強法か、おわかりいただけると思います。公務員試験を突破するためには、「正しい勉強法」が必要です。

●「数的処理」とは?

「数的推理」「判断推理」「図形」「資料解釈」の4つを合わせて、「数的処理」とよびます。本書『公務員試験「数的推理」が面白いほどわかる本』と、姉妹本である『公務員試験「判断推理」が面白いほどわかる本』では、特に重要な数的推理・判断推理・図形を扱います。
数的処理は教養試験の約40%を占める重要な科目です。しかしながら、アウトプットから学習を始めるせいで、いくらやっても数的処理が得意にならない受験生を何人も見てきました。
「せめて数的処理だけでも,しっかりとした知識を提供できる教材があるべきだ。」「じゃあ俺が作る!!」
という思いで本書を書き上げました。史上最強の「参考書」だと胸を張っていえます。

●本書で身につけられること

数的処理の問題は次の2つに大別できます。
①知識を要し,過去にも出題されたことがある有名な典型問題
②知識は必要としないが、ひらめきだけで解く非典型的な問題
本書は①を主なターゲットにし、頻出問題を解くために必要な知識をわかりやすく解説しています。すべての問題が次の試験に出てもおかしくない、合格に必要な重要問題です。

本書で扱う数的推理について例を挙げると、「割合」などの小学校の算数レベルの問題でも、定番の解き方をしっかりと理解しておくことが重要です。いざやってみると、意外とできなかったりするものです。信じがたい話かもしれませんが、割合を求めるはずなのに,まったく逆の計算をしてしまう受験生もいます。小学校の算数だからと高をくくらずに,「正しい知識」を「正しい勉強法」で「身につけておく」ことが、合格への第一歩なのです。
本書の到達目標として、「今後のアウトプットを効果的にするための正しい知識を使えるようになる」「有名な典型問題が解けるようになる」の2つが挙げられます。これらの目標に皆さんが達することができるように,最大限の工夫をしたつもりです。ぜひ、本書を使い倒して、試験に臨んでください。
最後に,皆さんの試験場でのご健闘および合格を心よりお祈り申し上げます。

2018年6月吉日
柴崎直孝

Contents

はじめに
目次
公務員採用試験の勉強法

第1章 数的推理の考え方
01 数的推理の考え方①
02 数的推理の考え方②

第2章 数の性質
03 倍数の性質①
04 倍数の性質②
05 掛け算に分解する問題
06 約数の個数
07 最大公約数と最小公倍数
08 最小公倍数と周期性

第3章 余りと不足
09 余りと不足(余り一致)
10 余りと不足(不足一致)
11 余りと不足(余り、不足ともに一致しない)

第4章 割合
12 割合
13 勝手に数値を設定できる問題の
14 勝手に数値を設定できる問題2

第5章 比
15 比の統一
16 比(割合を比に変換する)
17 比の性質①
18 比の性質②
19 比に文字を添えて実際の数値に見立て①
20 比に文字を添えて実際の数値に見立てる②
21 比例式
22 てんびん算

第6章 方程式
23 方程式
24 方程式と「勝手に数値設定」
25 平均算
26 仕事算と方程式
27 ニュートン算.

第7章 濃度
28 濃度の解法
(食塩の重さに着目して推理するタイプ)
29 濃度と方程式
30 濃度とてんびん

第8章 整数解
31 不定方程式の基本
32 不定方程式の裏技

第9章 速さ
33 速さと方程式(時間の等式)
34 速さと方程式(距離の等式)&ダイヤグラム
35 速さと比(時間が同じ場合)
36 速さと比(距離が同じ場合)
37 旅人算①
38 旅人算②
39 旅人算③
40 旅人算④
41 旅人算⑤
42 旅人算⑥
43 通過算
44 流水算

第10章 その他の文章題
45 変則仕事算
46 和の組合せ(偶数編)
47 和の組合せ(奇数編)

第11章 記数法
48 記数法の変換
49 記数法の応用

第12章 数列
50 等差数列①
51 等差数列②
52 階差数列
53 その他の規則性

第13章 覆面算・魔方陣
54 覆面算
55 魔方陣

第14章 場合の数
56 積の法則
57 和の法則
58 「隣り合う」といわれたら
59 樹形図
60 順列
61 組合せ①
62 組合せ②
63 分配問題(0個の人がいてもいい場合)
64 分配問題(少なくとも1個はもらう場合)
65 平行四辺形の個数
66 最短経路

第15章 確率
67 確率の定義①
68 確率の定義②
69 確率の定義③(じゃんけんの確率)
70 確率の足し算・掛け算
71 余事象の確率①
72 余事象の確率②
73 反復試行の確率
74 期待値

第16章 図形の計量
75 三平方の定理
76 有名な角度の直角三角形①
77 有名な角度の直角三角形②
78 相似比
79 相似比と面積比
80 相似比と体積比
81 底辺分割の定理
82 斜線部の面積
83 立体図形の計量の基礎(切断する場合)
84 立体図形の計量の基礎(展開する場合)

おわりに
索引

柴崎 直孝 (著)
KADOKAWA (2018/7/9)、出典:出版社HP

公務員採用試験の勉強法

ここでは、公務員試験(公務員採用試験)の流れと勉強法を説明します。本書で扱う数的推理だけでなく、公務員採用試験の全般について主に説明します。
公務員採用試験の大まかな流れ
公務員採用試験は「択一試験(マークシート試験)」、「論作文試験」,「面接試験」の3つに大別できます。皆さんが勉強を始めるにあたり、最初に着手するのは択一試験の対策となります。

公務員採用試験の大まかな流れ

択一試験について
公務員採用試験は、大学入試のような「少ない科目の、深い知識を問う試験」とは真逆の「多くの科目の,浅い知識を問う試験」です。教養,専門試験を合わせると30科目前後,教養試験のみの試験種でも約15科目が出題されます。

こんなにあると、どの科目から勉強していいのか迷ってしまいますね。まずは出題数が多い科目から始めましょう。教養試験の数的処理,専門試験の憲法,民法,行政法,経済学はどの試験でも多く出題されるので(公務員試験対策の予備校などでは「主要5科目」とよんでいます)まずはここから始めましょう。近年,教養試験のみの試験種も増えてきています。主要5科目のうち唯一の教養試験である数的処理の重要度が以前よりも増しています。

数的処理の特徴
教養試験はさらに、「知能分野」と「知識分野」に分かれます。数的処理は知能分野に属します。知能分野というだけあって知識だけではなく、発想力、読解力,情報処理能力といった頭の柔軟性が大事な試験です。その思考の仕方は独特で,慣れるまで時間がかかります(下図参照)。日本史や生物といった知識系の科目は基本的に暗記ですので、覚えれば覚えるほどその科目のレベルが上がります。しかし、数的処理は最初のうちは上達した実感が湧かないので、不安になってしまいます。下の図の★の、段々と上達が実感できるようになる時期まで、センスのある受験生でも3か月はかかるといわれています。数的処理が苦手な受験生は、6か月,9か月あるいは試験直前までまったく上達の実感が湧かないこともあります。
そういった受験生は一様に勉強の仕方がよくありません。次のページで正しい攻略法を解説します。

数的処理の攻略法~その1~
公務員採用試験は構造上、満点を取るのがほぼ不可能な試験です。試験によって異なりますが、教養試験は60%の正解率が合格ラインです。とはいえ数的処理で60%を取るのは結構大変です。
合格した受験生全員が数的処理で60%取れるようになっているのか?というとそうでもありません。多くの受験生が半分前後だけ正解し、文章理解と知識系で補っています。
まずは、「正答率50%程度=足を引っ張らないレベル」を目指しましょう。逆にいきなり60%を目指そうとする受験生は、最初から難問を解こうとするので「成長の実感」がいつまでたっても得られません。一歩一歩着実に進めていくイメージで勉強しましょう。

数的処理の攻略法~その2~
では、どうやったら足を引っ張らないレベルになれるのか? 数的処理は大きく分けると、「見たことあるパターン問題」と「非典型のひらめき問題」の2つがあります。どちらが解きやすいか?
当然前者です。パターン問題をマスターすることが50%取るための必要条件です。そこでまずはパターン問題の知識,公式,解法を覚えましょう。その役目を担ってくれるのが本書です。
知識を習得したらすぐに類題を解きましょう。漢字や英単語を10回書いて覚えたのと同じように、似た問題を集中して解くことで知識を焼きつけてください。
パターン問題の習得ができたら、「非典型のひらめき問題」を解きましょう。
この手の問題が解けるようになると数的処理は得点源になりますが、何度も述べている通り、解けるようにならなくても合格の可能性は十分にあります。

柴崎 直孝 (著)
KADOKAWA (2018/7/9)、出典:出版社HP

本書の構成

■重要度
パターンの出題頻度です。時間がない方は、Cランクは飛ばしてもいいです。
■到達目標
本書において最も大事なところです。当たり前ですが、掲載されている問題がそっくりそのまま本番の試験で出題されるのはレアです。皆さんが本書の問題を解くのは、同じパターンの問題を解くための知識を身につけるためです。では何を身につけるのか?何ができるようになればいいのか?
それが「到達目標」に記されています。ほぼすべての到達目標は「○○できるようになる」と書かれていますので,ゴールがイメージしやすいはずです。
■知識
皆さんに覚えてほしい公式,知識,解法を載せています。
問題によっては解説で紹介しています。
■出典
掲載した問題がどの試験で出題されたかを表示しておきます。しかし、本書の問題はどの試験でも出題される良問ばかりですので、出典にはこだわらず解いてください。なお国家公務員に関しては、制度変更前は「国家I種・国家II種・国税専門官・法務教官」,変更後は「国家総合職・国家一般職・国家専門職」と名称を変えて記載しています。
■難易度
数的処理が苦手な方は★1つ2つの問題から始めましょう。★3つは余裕ができてからでかまいません。★4つ以上はやや難問なので、やらなくてもかまいません。

数的推理について

数的推理は算数と数学の要素が含まれる問題が多数出題されます。民間の就職活動を経験した方なら「SPI(非言語分野)」を解いたことがあると思いますが、それに近いです(難易度は数的推理のほうが上です)。
したがって、算数と数学の基礎はある程度必須になります。とはいえすべてをやる必要はありません。以下に挙げるものはできるようにしておきましょう。

【数的推理を解きながらで覚えられるもの】
「最小公倍数・最大公約数の求め方」、「比・割合の計算」、「方程式の立て方」、「数列」、「記数法」、「場合の数・確率」、「三平方の定理」、「相似」

【数的推理を解く以前に知っていてほしい知識】
「分数の四則演算」,「方程式の途中計算」,「平方根」,「図形の面積」
関数や三角比などはめったに出題されないので、学習する必要はありません。冒頭でも書きましたが、数的推理は数学だけでなく算数の要素もあります(むしろ算数に近い)。

多くの受験生が勘違いしているところです(すべての文章題を方程式で解く悪癖がある)。まずは「約数・倍数」「比・割合」で算数の感覚を取り戻しましょう。第2章~第5章は軽視されがちですが、これらの章こそが数的 推理らしい問題の宝庫です。
速さに代表されますが、文章題を解くのに「方程式」と「比」を用います。私はこの2つを「道具」とよんでいます。数的推理の文章題はどちらの道具もバランスよく使える人が点を取れます。片一方に偏らないようにしましょう。

図形の計量はほぼすべての試験で1問は出題される人気分野です。
その半分が 「三平方の定理」と「相似」から出題されます。中学3年生の知識なので久しく忘れているかもしれませんが、有名な問題が多く出ますので、解いた問題は問題文を丸ごと覚える気持ちで習得しましょう。

次によく出題されるのが確率です。確率は計算以上に問題文を読解する力が求められます。公式に頼りすぎる人ほど苦手な傾向にあります。
数的推理は、計算が苦手な受験生にとっては苦痛に感じる分野です。まずは簡単な問題だけ解きましょう。他の科目で補えれば最悪の事態は免れるはずです。余裕ができたら徐々に難しい問題にもチャレンジしてみてください。一歩一歩、着実に行きましょう。
では健闘を祈ります。

柴崎 直孝 (著)
KADOKAWA (2018/7/9)、出典:出版社HP