畑中敦子の社会人採用決め手の数的処理




はじめに

本書は、公務員試験社会人(経験者)採用枠の受験生を対象に、教養試験(基礎能力試験)の最重要科目である数的処理の対策本として、おそらく初めて出版された書籍になります。

数的処理とは、判断推理(空間把握を含む)、数的推理、資料解釈を合わせた一般知能の非言語分野のことで、教養試験(基礎能力試験)のおよそ3分の1を占めます。
近年、公務員試験の社会人採用枠は拡大の方向にあり、経験の豊富な即戦力を積極的に採用しようとする傾向にあります。しかし、それに伴い、公務員への転職希望者も増えており、依然として狭き門です。その最初の関門が1次の筆記試験であり、重要科目である数的処理をしっかり対策することは、確実に土俵に上がるために必要なこととなります。
そこで、本書では、問題と解法のパターンが効率良く身につくよう、近年の主な社会人採用試験の過去問を徹底分析し、良問を厳選して分かりやすく解説するとともに、必要な公式やルールも余すことなく掲載しました。必ず、受験生の皆様のお役に立てると信じております。
皆様が合格、内定を勝ち取られ、国や自治体で新たなご活躍をされることを、心よりお祈り申し上げます。

2018年7月吉日
畑中敦子

畑中 敦子 (著)
エクシア出版 (2018/8/5)、出典:出版社HP

目次

はじめに
目次
本書の使い方

プロローグ 試験情報と出題傾向
試験 File No.1 国家公務員
試験 File No.2 東京都職員キャリア活用
試験 File No.3 特別区職員経験者
試験 File No.4 地方公務員(県庁,市役所など)

第1部 判断推理
順序関係
位置関係
対応関係
リーグ戦
リーグ戦(応用)
トーナメント戦
数量条件からの推理
真偽
命題と論理
暗号
その他の推理
平面図形の構成
折り紙
一筆書き
移動と軌跡
軌跡の長さ
円の回転
立方体の展開図
正八面体の展開図
立体の切断
積み木
投影図
サイコロ
通過算と流水算
流水算
場合の数
確率
N進法
等差数列
数列
図形の計量
図形の面積
接線の性質と三平方の定理
直角三角形の3辺比
三平方の定理
直角三角形の角度
平行線と線分比
側面の最短経路
立体の体積

第3部 資料解釈
実数のデータ
割合のデータ
構成比のデータ
指数のデータ
増加率のデータ

本書の使い方

試験File No.1 国家公務員

#1 経験者採用試験(係長級)

民間企業等における実務経験のある人を、国の機関の係長級以上の官職に採用するための試験です。事務系(内閣府や各省庁の職員)のほか、外務省、国税庁、農林水産省などの省庁別に試験が実施されます。受験資格などは、試験により異なりますので、ホームページなどで確認して下さい。試験問題は、一般的な社会人対象の採用試験と比べるとレベルが高いので、しっかりとした対策が必要です。

#2 一般職試験(社会人(係員級)

国の機関の係員級の職員を採用するための試験です。2018年度の試験区分は技術や農業土木などで、地方整備局や防衛省の機関、全国の地方農政局、地方整備局での採用になります。2015~2018年度は、事務区分での試験がありません。

数的処理の出題傾向
例年、同日に実施される一般職(高卒)と同じ問題ですが、社会人採用試験の中では問題のレベルはやや高めです。
例年、判断推理7問(うち図形2問)、数的推理4問、資料解釈2問の計13問の出題です(次ページ参照)。
判断推理は、例年、最初に命題と論理が出題され、順序関係、位置関係、対応関係、数量条件からの推理などの問題が続きます。見た目にやや変わった印象を受ける問題もありますので、柔軟な視点で取り組む必要があります。図形分野では、展開図や積み木などの典型的な問題を始め、幅広い範囲から出題されており、やはり変わった問題も結構あります。
数的推理は、確率、比と割合、仕事算、図形(面積など)、速さの問題などが頻出で、多少の応用力を要する問題が多いです。
資料解釈は、図(グラフ)と表が1問ずつで、計算は余りありませんが、図表をきちんと読み取る力が必要となります。

#3 刑務官採用試験(社会人)

刑務所、少年刑務所、拘置所に勤務する職員を採用するための試験です。男女別、かつ地域別に区分があり、北海道、東北、関東甲信越静、東海北陸、近畿、中国、四国、九州に分かれています。2018年度の採用予定者数は、関東甲信越静が最も多く、男性20名、女性10名です。ほかはそれぞれ、若干名~10名の予定となっています。

例年、一般職(社会人)と同様、判断推理7問(うち図形2問)、数的推理4問、資料解釈2問の出題で、傾向もやや似ていますが、レベルは一般職よりやや易しめです。
判断推理は、やはり、最初に命題と論理が出題され、他には、順序関係、位置関係が頻出ですが、割と幅広い範囲から出題されています。図形分野では、近年は、移動と軌跡、展開図が最頻出で、いずれも基本的な問題です。

数的推理は、場合の数、速さの問題、図形の面積、整数問題などが頻出で、基本的な問題が中心です。資料解釈は、図(グラフ)と表が1問ずつで、シンプルなデータが中心です。

過去3年間の出題内容

試験File No.2 東京都職員キャリア活用

専門的知識・スキル・経験へのニーズが高い分野ごとに区分を設定し、学歴区分に応じた職務経験のある人を採用します。合格者は主任級職として採用されますが職務経験や能力・専門性によっては、課長代理級での採用もあります。

2017年度実施結果

受験者数(人) 合格者数(人)
736(152) 153(26)
(注)()内の数字は女性を内数で示す。

例年、判断推理、数的推理、資料解釈、空間概念(判断推理の図形分野)が各4問という構成で出題されます(次ページ参照)。
判断推理(No.9~12)では、例年、No.9に集合算、No.11に確率と、4問のうち2問が実質的に数的推理の問題であることが多く、純粋な判断推理(図形除く)の問題は2問程度となります。集合算はやや面倒な問題もありますので、注意が必要ですが、確率は基本的な問題が多いです。判断推理では、順序関係の出題が多く、次いで、対応関係、位置関係などで、典型的な問題が中心ですがやや変わった! 題も時折あります。
数的推理(No.13~16) は、方程式の文章問題、速さの問題、整数などが頻山 最近は、数列もよく出題されています。4問のうち、図形が1~2問を占め、面積の問題が多く出題されています。いずれも難易度は標準的で、基本ができていれば解けるレベルです。
資料解釈(No.17~20) は、出題される図表のパターンが決まっています。過去問をしっかり研究して、図表の特徴を把握し、選択肢の内容についても、トレーニングしておくことをお勧めします。尚、過去3年分の試験問題は、東京都のホームページで公開されています。
空間概念 (No.21 ~24)は、例年、最後(No.24)に、移動と軌跡(図形の移動、軌跡の長さ、円の回転など)の問題が出題されています。その他では、図形の構成、展開図などが頻出で、やはり典型的な問題が中心ですが、面倒な問題も時折あります。

試験File No.3 特別区職員経験者

民間企業等で培った有用な経験を、即戦力として特別区政に生かすことを目的に実施されています。職務経験年数に応じて、主任での採用枠も設けられています。

数的処理については、経験者2級職、3級職とも同じ問題です。
東京都と同様に、例年、判断推理、数的推理、資料解釈、空間把握(判断推理の図形分野)が各4問という構成で出題されます(次ページ参照)。
判断推理(No.9~12)は、例年、No.9に試合(リーグ戦、トーナメント戦など、No.10に暗号の問題が出題されており、暗号は難問が多いので注意が必要です。その他には、マイナー分野を含む幅広い範囲から出題されていますが、近年は、関係、位置関係、対応関係などメジャー分野からの出題が中心で、いずれも基本な問題です。
数的推理(No.13~16)は、方程式などの文章問題、速さの問題、確率、数列などが頻出ですが、幅広い範囲からバランスよく出題されています。また、問題が例年1問出題され、相似、三平方の定理、日の問題など様々な問題か出されています。
資料解釈(No.17~20)は、例年、表と図(グラブ)が2問ずつ出題され、東京都と同様に、図表のパターンがある程度決まっています。過去3年分の話は、特別区のホームページで公開されていますので、過去問を研究しておいたほう

試験File No.4 地方公務員(県庁、市役所など)

近年、道府県庁、政令市のほとんどで民間経験者を対象とする社会人採用試験が行われ、全国の市町村役場でも、UIJターン希望者を歓迎し、公務員採用する傾向が高まっています。
採用試験は各自治体で行われ、6月下旬〜10月頃に1次試験を行う場合がほとんどです。
自治体によっては、主に民間企業で採用しているSPI3を実施するところや、教養試験を行わず作文や面接だけで採用するところもありますが、多くの場合、1次で教養試験が課せられます。
試験問題は自治体によってはオリジナルの問題を作成する場合もありますが、ほとんどは専門の公益法人が作成する問題を採用しています。問題にはいくつかの種類があり、どこの試験を採用するかは各自治体が決めますが、一般的な大卒者採用試験より難易度の低い問題を採用する場合が多いです。
ここでは、その中でも新しいタイプの試験である「社会基礎試験」と、以前から実施されている平均的なタイプの試験についてご紹介します。

#1 社会人基礎試験

2013年に登場した新しいタイプの試験で、これまでに多くの自治体や団体が採用しています。
試験は、「職務基礎力試験」と「職務適応性検査」から成り、一般的な教養試験に当たる「職務基礎力試験」は75問、90分、4肢択一で行われ、「社会的関心と理解を問う分野」「言語的な能力を問う分野」「倫理的な思考力を問う分野」の3分野で問題が構成されます。

数液処理は「倫理的な思考力を問う分野」として25問出題されており、内容は、判断推理、数的推理、資料解釈の一般的な問題ですが、難易度はかなり易しめです。
問題は易しいですが、1問当たり1~2分で処理する必要がありますので、早く正確に解く練習が必要です。
判断推理は、命題と論理、順序関係、位置関係、対応関係などが中心です。与えられる条件もわずかで、複雑な要素はほとんどありません。
数的推理は、速さの問題、仕事算、比と割合、確率など、頻出分野から出題が多 いですが、基礎学力を問うようなやや変わった問題も見られます。
資料解釈は、資料から選択肢の正誤を検討するという一般的な問題もありますが、資料から簡単な数値の計算をさせる問題も結構あります(本編の過去問参照)。

#2 県庁,市役所などの経験者採用試験

一般的な教養試験は、5肢択一で(50問, 150分) (40問, 120分) (30問, 90分)などの型があります。自治体や試験区分によっては、大卒採用と同じ試験問題の場合もありますが、ほとんどは、高卒採用と同じ問題や社会人向けの易しめの問題を採用しており、受験生の負担を軽減する方向にあります。

数的処理は、どの試験型でも教養試験のうちの約1/3を占め、10~16問程度の出題です。
判断推理は、5~8問程度で、そのうち2〜3問が図形の問題です。命題と論理、対応関係、順序関係、真偽、移動と軌跡、積み木などが頻出で、いずれも基本的な問題が中心です。

数的推理は、4~6問程度で、整数問題、速さの問題、図形(面積など)などの頻出分野からの出題も多いですが、マイナー分野も含め幅広い範囲から出題されています。
資料解釈は、1~2問で、実数や割合のデータが中心ですが、ややレベルの高い問題もありますので、時間配分に注意が必要です。
※道府県庁、市役所などの採用試験(社会人基礎試験を含む)の問題は、非公開(持ち帰り不可)となっています。本書に掲載されている過去問は、受験された方の情報を元に再現したもので、実際の試験問題とは一部異なる場合があります。

※試験情報は、2018年7月5日時点のものです。

畑中 敦子 (著)
エクシア出版 (2018/8/5)、出典:出版社HP