1級建築士受験スーパー記憶術 新訂版




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はじめに

試験は暗記だ!

1級建築士受験の合否を左右するのは暗記です。鉄筋のかぶり厚さ、スランプ値などの施工管理の数字、断面2次モーメントや換気の式などの構造や環境の公式などは、暗記していないと手も足も出ません。過去問を解いてみればわかりますが、建築士試験ではその場で考えて解ける問題は少なく、暗記していなければ解けない問題ばかりです。

詰め込みは良くない!思考力を鍛えるべきだ!とはよく言われることで、ある面では正しくはあります。たとえば歴史や地理の細かい事項を無理やり暗記するのは、時間の無駄そのものと筆者は思っています。しかし最低限の建築の基本事項は、建築士として今後活躍するには知っていないと困ります。日常の業務で知らないことをいちいち検索していては、仕事になりません。

筆者の学生時代は法規の授業はなく、構造の計算は退屈でさぼってばかり。製図室で絵や模型をつくることばかりやっていました。建築士試験の前に仕方なく法令集にインデックスを貼りながら法規を頭に入れ、構造でわからないところは構造研の友達に聞きに行きと、設計以外の勉強をようやくやり始めたわけです。建築士試験は、建築全般を勉強するいい機会となりました。

建築士試験をきっかけにして、基本的な専門知識をまるごと一気に、頭にインストールしてしまいましょう!

暗記は語呂合わせ!イメージで暗記!
つらくてすぐに忘れてしまう棒暗記はやめて、あれこれと工夫して覚えましょう。暗記には語呂合わせが一番有効です。なぜなら新しくゼロから覚えるのではなく、すでに頭に入っている語句に関連付けられるからです。頭に入っているものにアンカーするので、忘れかけても、思い出す取っ掛かりがつかめます。

筆者は高校時代に英単語の暗記に苦労し、やってはいけないと言われていた語呂合わせを仕方なく使うことにしました。すると一気に数百の英単語を短期間で覚えられました。英単語で味をしめて、建築士試験でもやっかいな暗記ものを自分で語呂合わせをつくって覚えていきました。

本書ではそんな筆者の体験からつくった語呂合わせや、後から工夫した、指や体の部位や文字の形から連想する方法など、さまざまな記憶術を載せました。たとえばコンクリートの強度は設計基準強度、品質基準強度と調合強度を出すまでにさまざまな強度があり、相互に関係が決められていて覚えるのは大変やっかいです。それを頭から順に体をつたっていくことにより覚えられるようにしました。またコンクリートの6種の検査項目を、左手のパーと右手のグーを使って思い出せるような工夫もしました。

試験が終わって忘れては意味がありません。長く記憶に留めて実務でも使えるようになって、また建築を考える際にサッと思い浮かぶようになって、初めて生きた知識となります。そのためになるべく覚えやすいように、忘れにくいように工夫しました。

本書をひととおり覚えた後に過去問を解くことをおすすめします。何も知らずに過去問を解くと、自信をなくしやる気を失うことになりかねません。暗記する量は膨大なので、試験直前では間に合いません。暗記を先にやってから過去問で記憶を確認し、確実にするという順でやりましょう。

重要度順に覚えよう!似たものを集めて覚えよう!
英単語を、辞書のAから順に覚える暇な受験生はいないでしょう。出る順や重要度順に覚えるはずです。建築士試験対策でも、重要度順に覚えるべきです。建築士試験で暗記の重要度は、鉄筋コンクリート、鉄骨、基礎・地盤、木造の構造、施工関係の順、次に環境、設備で、この順で暗記によって差がつくと筆者は考えています。実際、出題数もその順で多いです。

法規は法令集を引くのに慣れること、計画は多くの有名建築を雑誌などで知るなどの作業が必要となるので、暗記での優先順位は低くなりますが、実務でも重要な寸法、面積関係は、巻末にまとめておきました。まずは鉄筋コンクリートの施工、構造の重要事項から暗記を始めましょう。

また試験で計画、環境・設備、法規、構造、施工と分かれているからといって、暗記もそのとおりに分類してやる必要はありません。似たような事項は分野にこだわらず一緒に覚えると能率が良くなります。たとえば弾性、塑性、靭性、脆性といった類似する用語、降伏比、幅厚比、細長比という靭性にかかわる比などを一緒に暗記するなど、似たようなものを一緒に記憶するとよいでしょう。英単語でも派生語、類似語、反意語、政治用語、経済用語などと分類して覚えるなどしますが、そのまねをすればよいわけです。

暗記はなるべく短期間に、なるべく多く繰り返そう!
各項目はすべてQ&A方式とし、繰り返しのチェックがしやすい構成としています。次に囲みで記憶術を入れ、なるべくイラストも付けました。その下に解説も加えています。むやみに暗記するよりも理屈を覚えた方がよい場合は、その理屈の説明や理屈から覚える記憶術も載せました。各項目には可能な限り解説、イラスト、図を載せるようにしましたが、説明で足りない部分は拙著「ゼロから「はじめるシリーズ」(彰国社)を参照してください。

暗記はなるべく短期間に、なるべく多く繰り返すのがポイントです。忘却曲線では暗記したての頃は負の傾きが急です。暗記してすぐの時がもっとも忘れやすいので、頭から抜ける前にすぐに繰り返すのが効果的です。1週間後に繰り返すよりも1時間後、1時間後よりも5分後に繰り返すことです。

本書を電車の中やトイレ、風呂の中で見るようにすれば、毎日必ず繰り返せます。ベッドの横に置いて寝る前に必ず見るようにすれば、繰返し回数は増え、記憶は定着します。ちなみに筆者は毎日、風呂で下半身浴しながら本を読んでいます(暗記ではないですが)。暗記はこういった短い時間を活用する方が、飽きずに長く続けられます。とにかく短期間になるべく繰り返すのがポイントです。試験ばかりでなく、実務でもきっと役に立つはずです。試験が終わっても忘れないように、体に沁み込ませるように覚えてしまいましょう!

「1級建築士受験スーパー記憶術」の歴史は25年
「1級建築士受験スーパー記憶術」は1994年から版を重ねて25年が経ち、このたび全面改訂をすることになりました。こんな本があったら、面白いし役に立つのではないかと、当時の編集担当者と軽い気持ちで始めた企画です。出版してすぐに反応があり、読者のみなさまにも好評で、結果的にロングセラーとなりました。1級建築士受験の成否を決めるのは暗記、記憶であることは、今でも変わりありません。それどころか、ますます重要度が増しているようです。

各々の分野については、拙著「ゼロからはじめるシリーズ」の各本を、法規については拙著『建築法規スーパー解読術』(彰国社)で法令集にインデックスを付けながら並行して勉強されることをおすすめします。またブログ(原口秀昭五≒原田ミカオの建築×不動産日記https://plaza.rakuten.co.jp/mikao/)や授業動画や拙著をまとめたウェブサイト(ミカオチャンネル@建築×不動産https://mikaoinvestor.com)も参考にしていただければ幸いです。

本書を作成するにあたり、多くの専門家のご教示、学生からの意見、たくさんの専門書、ウェブサイト、1級建築士試験の過去問などを参考にしました。また彰国社編集部の尾関恵さんには、面倒な編集をしていただきました。本当にありがとうございました。
2020年3月 原口秀昭

原口 秀昭 (著)
出版社: 彰国社; 新訂版 (2020/3/31)、出典:出版社HP

目次

1. RC造 コンクリート・型枠・鉄筋ほか
2 S造 鋼材・高力ボルト・溶接ほか
3 構造設計
4 地盤・基礎・反設
5 環境
6 設備
7 各種工事
8 寸法・面積ほか

原口 秀昭 (著)
出版社: 彰国社; 新訂版 (2020/3/31)、出典:出版社HP