CFA®受験ガイドブック[レベルII]【改訂版】
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推薦の言葉
金融証券市場と資産運用業界を襲う国際化の波は、ますます高く、そして速くなっています。
投資先市場は多様化し、運用手法も高度化しています。また、日本の金融機関でも海外展開に再び積極的に取り組むところが増えています。こうしたなか、グローバルマーケットに通用するプロの証しであるCFA®プログラムに対する評価が高まっています。
欧米ではCFA®プログラムの高い専門性に対して確固たる評価が確立していますが、中国、インド、香港、シンガポール、韓国などアジアの国々でも投資運用業界におけるデファクト・スタンダードの地位を固めており、ここ数年のCFA®受験者数の急拡大に結びついています。
日本では、重要性に比してそのプレゼンスは十分とはいえませんが、高い職業倫理に裏付けられた国際的なプロフェッショナルとしてのCFA®資格保有者に対するニーズ、期待は今後ますます高まると予想されています。
CFA協会(CFA Institute)のわが国における認可団体である日本CFA協会では、1999年の設立以来、会員に向けての教育・研修事業や学生を対象としたCFA Institute Research Challengeに加え、CFA®資格保有者の育成に意欲的に取り組んできました。具体的には合格者の体験談を含むオリエンテーションの実施、指定電卓ワークショップなどCFA試験対策セミナーの開催や各レベルの受験者によるスタデイグループの組成といったサポートを提供しています。
試験が英語で実施される以上、こうした英語での受験準備は避けることはできません。しかし、日本語の補助教材があれば、学習の効率が高まることもまた事実です。それだけに、日本語で書かれた参考書の重要性を、われわれ自身、痛感しています。
特にCFAレベルII試験は難易度が高いだけでなく出題範囲も広いなか、大野忠士氏が本書を改訂され、最新の試験内容に対応したものとされました。CFA®レベルII試験に頻出する重要なポイント、日本人の不得意な分野を網羅した本書の刊行は、今後のわが国のCFA®資格保有者の寄与するものと考えています。
知識はありながら英語による受験に躊躇されていた実務家のみならず、これから金融・証券および運用業務を目指す若い人も含め、幅広くCFA®プログラムに挑戦していただくための強い味方となるものと思います。本書によってCFA®プログラムが日本で一段と普及し日本の金融業界の質的な向上につながることを期待してやみません。
日本CFA協会 会長 宝田めぐみ CFA
初版はしがき
「CFA®受験ガイドブック」を上梓してから3年が経過した。いうまでもなくCFA® (Chartered Financial Analyst)は国際的に認知された証券アナリスト資格であり、欧米の金融界にあっては会計、株式、債券、デリバティブ、ポートフォリオ・マネジメントに通暁していることの証となるものである。
金融のグローバル化に伴い証券・デリバティブ等の知識のみならずコンプライアンスや職業倫理の面でもグローバルスタンダードが要求されるに至っており、金融機関の中堅社員教育におけるCFAプログラムの有効性、重要性は一段と増しているように見受けられる。
一方で英文会計関連資格・証券関連資格のなかでは群を抜いて難しい資格であり、日本人には引き続き敷居の高い試験となっている。
前著「CFA®受験ガイドブック」に記したように筆者は2000年以降社内のコーポレートファイナンス研修あるいは社外のCFA研究会を通してCFAプログラムに即した勉強会を実施してきた。10名内外のメンバーが毎週集まり2時間程度を使って小テスト、レジュメ解説、質疑応答するというものである。こうしたグループからレベルII合格者、ひいてはレベルII最終合格者もかなり輩出するようになった。本書はこうしたここ数年間のCFA研究会でのレジュメをベースに取りまとめたものである。
CFA試験の守備範囲は広く特にレベルIIはCFA試験の中核ともいえるだけに膨大な知識が試験対象となっている。本書に記した100弱のトピックがすべての試験範囲をカバーしているとはいえないが、主要なトピック、日本人受験生にとって理解が難しい重要ポイントについてはカバーしていると自負している。いずれにせよ日本語での理解は学習のスピードを速めると信じている。4,000ページ弱にのぼる指定教科書を読む場合であれ、1,300ページ強のスタディ・ガイドに従って勉強する場合であれ、本書がよき道案内になることを願っている。
CFA受験ガイドブック同様、重要用語の日英併記、英文の例題を使っての解説を心がけた。簡潔さを心がけたが各トピックの解説がレベルⅠに比較して長くなってしまった。内容の深さに徴しやむをえないものとご理解いただきたい。
本書執筆の過程で多くの方の指導と助力を得た。者者が通った筑波社会人大学院で指導をいただいた椿広計先生(筑波大学大学院教授)、小倉昇(同教授)、牧本直樹先生(同助教授)、山田雄二先生(同助教授)からは統計、会計、ファイナンス理論、におけるさまざまなコンセプトに対する深い理解と示唆をいただいた。いうまでもなく仮に本書に誤りがあれはひとえに筆者の責に属する。
草稿段階では石濱圭一氏(CFA)、花田信彦氏(CFA)、西澤隆一氏(CFA)から助言を頂戴した。CFA研究会の仲間である指宿廉夫氏(CFA)、吉川絵美氏(CFA)、高橋均政氏、小松雅尚氏、西本徳幸氏、村田雅志氏、宝田めぐみ氏、鈴木靖広氏、石倉充氏、石萍氏、池谷誠氏、岩村伸一氏、佐藤靖子氏、渡辺彩子氏、与田秀二氏らからはつど適切かつ鋭い質問をいただきおかげで私自身の理解がいっそう深められたことを告白する。
さらに折に触れアドバイスをいただいた望月衛氏(CFA)、仲倉修氏(CFA)、伊藤文彦氏(CFA)にもこの場を借りてお礼申し上げる。本書出版のための支援をいただいた菱川精記氏(日本CFA協会前事務局長)、石山行忠氏(日本CFA協会現事務局長)、井辻友一氏(Stalla Seminars Japan日本代表)、Mr. Vucinic(Becker Professional Review, Managing Director)、Mr. Steven Chou(Becker Professional Review, Director)、また、1年以上脱稿が遅れたにもかかわらず温かく見守っていただいた谷川治生氏(金融財政事情研究会「週刊金融財政事情」編集部副編集長)、佐藤友紀氏(金融取政事情研究会出版部)、社内でのコーポレートファイナンス研修を許可し本書執筆を快諾いただいた独立行政法人日本貿易保険の今野秀洋氏(独立行政法人日本貿易保険理事長)、板東一彦氏(日本貿易保険前総務部長、経済産業省現大臣官房審議官)、三井住友銀行の藤井順輔氏(三井住友銀行常務、前人事部長)にもあらためて感謝申し上げる次第である。
2006年8月ニューヨークにて
大野忠士
改訂版はしがき
初版を出版してから13年あまり経過し、レベルII試験内容もかなり変遷を遂げたので、今般改訂することとした。Fintechや機械学習などの最近のトピックが試験範囲に入った一方、フリー・キャッシュフローをベースとするDCF法等は引き続きValuationの中心トピックであり続けている。
CFA試験のレベルI~レベルIIIを通して、レベルII試験が最も覚えるべき内容が広く深いというのは昔もいまも変わらない。英文教科書を読み込むために長時間の勉強を要する試験ではあるが、この本が一助になり日本人の合格者が増加することを願っている。
荒木謙一氏、柴田祐介氏、山本哲氏、杉山豪氏、高井太児氏、堀元子氏、木村圭佑氏には草稿段階で精読いただいたうえで貴重な助言をいただいた。また、きんざい出版部の堀内駿氏からは丁寧な校正と励ましをいただいた。ここにあらためてお礼申し上げる次第である。
2020年1月 茗荷谷にて
大野忠士
目次
第1章 計量分析
1.1 相関係数と共分散
1.2 仮説検定
1.3 回帰分析
1.4 回帰分析における分散分析表
1.5 回帰分析 その2
1.6 時系列分析(ARモデル)
1.7 時系列分析(ランダムウォーク、単位根)
1.8 時系列モデル(ARMA,ARCH)
1.9 機械学習、フィンテック用語
第2章 経済
2.1 外国為替
2.2 為替フォワード契約の価値(フォワード価格を使ったポジション計算)
2.3 為替フォワード契約の価値(スポット価格からのポジション計算)
2.4 為替決定理論
2.5 国際収支(Balance of payments, BOP)と為替レート
2.6 キャリー・トレード
2.7 マンデル=フレミング・モデル その1
2.8 マンデル=フレミング・モデル その2(実務的理論)
2.9 為替介入と通貨危機
2.10 経済成長理論 その1(成長会計式)
2.11 経済成長理論 その2(新古典派成長理論)
2.12 経済成長理論 その3(収斂仮説)
2.13 経済成長理論 その4(内生的成長理論ローマー・モデル)
第3章 会計・財務分析
3.1 投資有価証券の会計処理
3.2 買収合併・連結会計 その1
3.3 買収合併・連結会計 その2(暖簾の処理)
3.4 買収合併・連結会計 その3(持分法)
3.5 買収合併・連結会計 その4(Joint venture)
3.6 特定目的会社
3.7 年金会計 その1(基本概念、U.S.GAAP)
3.8 年金会計 その2(IFRS)
3.9 年金会計 その3(TPPC)
3.10 株式報酬(Share-based payment)
3.11 外貨換算会計
3.12 粉飾・会計操作
3.13 粉飾発見モデル(会計発生高モデルほか)
3.14 金融機関分析(銀行)
3.15 金融機関分析(保険会社)
3.16 財務比率分析、DuPontシステム
3.17 国際会計基準(IFRS)と米国会計基準(U.S.GAAP)
第4章 コーポレートファイナンス
4.1 資本コスト
4.2 資本予算 その1
4.3 資本予算 その2
4.4 資本構成とレバレッジ その1
4.5 資本構成とレバレッジ その2
4.6 配当政策
4.7 自己株買収
4.8 買収・合併
4.9 プリンシパル・エージェント問題と倫理的行動
4.10 ビジネス倫理に関係する哲学用語
4.11 コーポレート・ガバナンス
4.12 ESG
第5章 株式分析
5.1 競争の戦略
5.2 マルチ・ファクター・モデルによるリターン、調整ベータ
5.3 配当割引モデル(DDM)
5.4 配当割引モデル(二段階成長モデル)
5.5 配当割引モデル(Hモデル)
5.6 サステイナブル成長率
5.7 フリーキャッシュフローと企業価値
5.8 フリーキャッシュフローと株主価値
5.9 株価マルチプル
5.10 残余利益モデル
5.11 EVAとMVA
5.12 非上場企業の価値算定
第6章 債券分析
6.1 債券価格
6.2 スポットレートとフォワードレート
6.3 金利の期間構造
6.4 金利モデル
6.5 デュレーション
6.6 コンベクシティ
6.7 二項過程モデルによる債券価格評価
6.8 二項過程モデルによるコール・オプションの価格評価
6.9 スプレッドとオプション調整後スプレッド(OAS)
6.10 転換社債
6.11 信用リスク
6.12 CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)
第7章 デリバティブ
7.1 フォワード取引 その1
7.2 フォワード・ポジションの価値
7.3 FRA(Forward Rate Agreement)
7.4 フューチャー取引 その1
7.5 フューチャー取引 その2
7.6 二項モデルによるオプション価格評価
7.7 キャップとフロア
7.8 プット・コール・パリティ
7.9 ブラック=ショールズ価格式
7.10 オプションのリスク感応度
7.11 デルタヘッジ
7.12 スワップ
7.13 エクイティ・スワップ
7.14 通貨スワップ
7.15 スワプション
7.16 オプション戦略
第8章 オルタナティブ投資
8.1 不動産投資
8.2 不動産の評価(インカム・アプローチ)
8.3 不動産の評価(コスト・アプローチ、取引事例比較法)
8.4 不動産価格の指数と不動産の財務比率
8.5 上場不動産証券
8.6 REITの価値評価
8.7 プライベート・エクイティ投資 その1
8.8 プライベート・エクイティ投資 その2(分配金計算)
8.9 プライベート・エクイティ投資 その3(ベンチャー・キャピタル)
8.10 コモディティ投資 その1
8.11 コモディティ投資 その2
第9章 ポートフォリオ・マネジメント
9.1 投資政策
9.2 アクティブ運用 その1(パフォーマンス要因分析)
9.3 アクティブ運用 その2(情報比)
9.4 リスク測定(VaR)
9.5 アルゴリズム取引
第10章 CFA協会倫理規範および職業行為基準(参考資料)
はじめに(PREAMBLE)
倫理規範(THE CODE OF ETHICS)
職業行為基準(STANDARDS OF PROFESSIONAL CONDUCT)
Code of Ethics and Standard of Professional Conduct
PREAMBLE
THE CODE OF ETHICS
STANDARDS OF PROFESSIONAL CONDUCT
第11章 あとがきにかえて-CFAレベルII勉強法-
【ICFAレベルII試験】
【英語力】
【参考書・教科書】
【夏・秋の過ごし方】
【勉強時間数】
【スケジュール】
【予想問題・模擬テスト】
【倫理規範・職業行為基準対策】
【スタディ・グループ】
【ブログ、インターネットによる情報交換】
【自己啓発投資】
事項索引