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目次 – 樹木たちの知られざる生活: 森林管理官が聴いた森の声 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

目次

まえがき

友情
木の言葉
社会福祉
愛の営み
木の宝くじ
ゆっくり、ゆったり
木の作法
木の学校
力を合わせて
謎めいた水輸送
年をとるのは恥ずかしい?
ナラはひ弱?
スペシャリスト
木なの? 木じゃないの?
闇の世界
二酸化炭素の掃除機
木製のエアコン
ポンプとしての森
君のものは僕のもの
住宅供給サービス
さまざまな生き物の母艦
冬眠
時間感覚
性格の問題
病気の木

ストリートチルドレン
燃え尽き症候群
北へ!
進化
災害
新参者
森の空気は健康?
森はどうして緑色?
はずれた鎖
有機林業?

謝辞
訳者あとがき
参考文献

ペーター・ヴォールレーベン (著), 長谷川圭 (翻訳)
出版社: 早川書房 (2018/11/6)、出典:出版社HP

まえがき

森林管理の仕事を始めたころ、私は樹木たちの秘密についてほとんど何も知らなかった。その状況は、人間が動物の気持ちをあまり知らないのとよく似ている。現代の林業は木を切り、新しい苗を植える。木材をつくるためだ。専門誌などを読んでいると、林業関係者は利益が出ているかぎり、森林の健康については関心をもとうとしないように思える。

樹木を相手にするのはあくまで仕事にすぎないので、商売に必要なだけ育ってくれればいいというわけだろう。かくいう私もかつては視野が狭かった。毎日のように数百本のモミ、ブナ、ナラ、マツを眺めては、これはいくらになるだろうか、どれだけの板がつくれるだろうか、としか考えていなかったのだから。

二〇年前、私は観光客相手にサバイバル訓練やログハウスのツアーを企画する仕事を始めた。その後、樹木葬のための森の管理や、原生林の保護の仕事が加わった。森を訪れるたくさんの人との会話を通じて、狭かった私の視野が広がりはじめた。幹が曲がっていたり、表面がでこぼこしたりしている木など、以前の私なら価値がないとみなしていたものにこそ、人々が魅了されるとわかったからだ。おかげで私は、木の幹を眺めて値踏みするだけでなく、おかしな形の根っこや曲がった幹、幹を覆う柔らかな苔などにも注目するようになった。子どものころに感じていた自然への愛が、私の心にふたたび芽生えたのだ。

それ以来、奇跡や不思議にたくさん出会った。そうこうしているうちに、私の営林地でアーヘン工科大学の研究が行なわれるようになった。その研究を通じて、それまで私がかかえていたたくさんの疑問に答えが見つかったが、同時に、新しい謎もたくさん生まれることになった。毎日のようにあらたな発見が続き、私の生活は楽しいものに変わっていった。

営林方法も、樹木の習性を尊重したやり方に変えることにした。人間と同じように木も痛みを感じ、記憶もある。木も親と子がいっしょに生活している。そういうことがわかった以上、手当たりしだいに木を切り倒し、大きな乗り物で樹木のあいだを走りまわる気になどならない。二〇年ほど前から、私の営林地では大型の機械を使わないようにしている。木を伐採したときは、作業員が馬を使って慎重に運び出す。健康な森、幸せな森と言ってもいいかもしれない。そうでない森と比べると、はるかに生產的で、そこから得られる収入も多い。

私は、アイフェル山地にあるヒュンメルという地方自治体のために働いているが、この小さな村も私の考えに賛同し、これから先もずっと現在の営林方法を維持しつづけることを決定した。この決定に、木々たち、特に最近になって保護区に指定された場所で誰からも邪魔されずに生きている樹木たちは、きっと安心していることだろう。

彼らは、これからも多くのことを私たちに教えてくれるにちがいない。私がこれまで想像もしなかったことを、樹冠の下でたくさん学ぶことになるだろう。樹木は私たちを幸せにしてくれる。あなたも、次に森を散策するときには、大小さまざまな驚きを見つけるにちがいない。

ペーター・ヴォールレーベン (著), 長谷川圭 (翻訳)
出版社: 早川書房 (2018/11/6)、出典:出版社HP