からだにおいしい魚の便利帳 (便利帳シリーズ)




はじめに

戦後、日本人は体格の向上をめざし、急速に食の欧米化を進めていきました。そして1970年の大阪万博を契機に諸外国の食文化が日本中に広まり、国民に肉の旨みが知れ渡るとともに脂志向が浸透したことで、脂質摂取量が一気に増加したのです。

こうして日本人の平均身長は戦前より10cm以上高くなり、余剰カロリーを脂肪として蓄えて、より欧米人に近い体格になりました。しかし内臓はその変化に対応しきれず、糖尿病などの生活習慣病を患う人が急増しています。

そんななか、低カロリーの野菜に期待が寄せられているのはもちろんですが、日本人が長いあいだ摂ってきた魚に注目が集まっています。魚は優秀なたんぱく源でありながら、悪玉コレステロールなどはむしろ減らしてくれるという頼もしい存在。しかも魚の脂は肉の脂と違い必須栄養素なども含み、過剰な中性脂肪を抑えたり脳細胞を活発にしたりする、うれしい効能もあります。このようなメリットがあるにもかかわらず「魚離れ」が進み、さわったことすらない人が増えてしまったのは、誠に残念です。

四方を海に囲まれた日本では、太古から多くの魚が食べられてきました。もちろん食べ方にも知恵をしぼり、他の国では類をみないほどの多様性を誇ります。ですから魚は、日本人や体に合った食材ともいえます。本書では幅広い視点からこの魚をとらえ、基礎知識から奥深い魅力までをご紹介します。

藤原昌高(ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 主宰) (著)
出版社: 高橋書店 (2010/5/26)、出典:出版社HP

目次

はじめに
この本の使い方・参考文献
魚をもっと楽しむために
おいしい魚を選ぶために
手間をかけない基礎知識
魚料理をおいしく食べる
保存してもっとおいしく

Column 「焼く」

あいなめ
あじ
あなご
あまだい
あゆ
あんこう
いさき・いとより
いぼだい
いわし
えい

Column「全国の名物料理マップ」

かさご
かじか
かじき
かつお
かます
かれい
かわはぎ
かんぱち
きす
きんき
きんめだい
ぐち
こい
こち・めごち

Column「揚げる」

Column 「魚と野菜の相性」

さけ
さば
さめ
さより
さわら

Column 「焼き魚をきれいに食べよう」

さんま
ししゃも
したびらめ
しまあじ
しらうお・しろうお
すずき

Column 「おろし方の基本」

たい
たちうお
たら
とびうお
なまず
にしん
のどぐろ

Column 「養殖魚と天然魚」

Column 「煮る」

はぜ
はた
はたはた
はも
ひいらぎ
ひらめ
ふぐ
ぶり
べら
ほっけ
ぼら

Column「切る」

Column「鮮度・熟成」

まぐろ
むつ
めじな
めばる
めひかり
わかさぎ

Column 「干す」

Column 「魚の脂」

蝦・蟹・烏賊・蛸

Column 「エビとカニの進化の過程」

くるまえび
しばえび
さくらえび
かわえび・おにえび
あまえび
ぼたんえび
いせえび
アメリカザリガニ
たらばがに
ずわいがに
けがに
がざみ
川と淡水のカニ

Column 「ゆでる 蒸す」

こういか
やりいか
するめいか
たこ

Column「日本の旬、早わかり」
春~夏
秋~冬

貝・海藻

あわび
さざえ
えぞぼら
あかがい
ムール貝
とりがい
かき
ほたてがい
しじみ
あさり
はまぐり
あおやぎ
ほっきがい
うに

Column「缶詰味比べ」

こんぶ
わかめ
ひじき
緑藻・褐藻
紅藻
のり

Column 「市場」

名称のさくいん

藤原昌高(ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 主宰) (著)
出版社: 高橋書店 (2010/5/26)、出典:出版社HP

この本の使い方

名称
一般呼称で、主流と考えられる名称を掲載しています。日本で正式名称とされる「標準和名」は、「基礎データ」をご覧ください。

基礎データ
その魚介類の標準和名、科、生息域、呼び名の語源、地方名など、基本となるデータをまとめています。語源や地方名など諸説あるものは、より有力・主流と考えられるものから取り上げています。

メイン写真
「名称」に掲げた魚介類のなかで、もっとも多く流通している種、または話題性のある種の写真を大きく扱っています。その種のよいものを選ぶポイントも併記しています。

レシピ
その魚介類のよさをもっとも引き出す、簡単でおすすめのレシピを紹介しています。付記した材料や分量、作り方をもとに、素材の魅力をお楽しみください。

寿司図鑑
その魚介類を使った寿司の写真と、味の特徴や魅力を記しています。生食できないものや一般に生食しないものは省いています。

解説
漁獲状況や食べ方の歴史、現状、値動き、栄養成分や効能など、その魚介類の特徴を説明しています。

おいしいカレンダー
大まかな地域ごとに、獲れる時期、おいしい時期をグラフで示しています。

産地・旬情報
その魚介類の旬や値段、市場での扱われ方について紹介しています。おもな産地は地図にまとめました。

おいしいコツ
おいしさをアップさせる下処理の方法から、冷凍・冷蔵、解凍の方法、上手な調理の仕方まで、ちょっとしたコツやお得な情報をまとめています。

トピックス
おいしい食べ方や知っておきたい豆知識、あっと驚く雑学まで、その魚介類の魅力や注意点などを幅広く取り上げています。

仲間
同じ名称で流通する魚介類の、別の種や仲間の種について紹介しています。一般に流通する際の名称を掲載しているため、標準和名と一致しないものもあります。

参考文献

図鑑
「日本産魚類検索 全種の同定 第二版」(中坊徹次編東海大学出版会)
「原色日本魚類図鑑」(蒲原稔治保育社)
「原色魚類大図鑑」(阿部宗明 北隆館)
「相模湾産深海性盤類」(池田等編著 葉山しおさい博物館)
「原色日本大型甲殻類図鑑II」(三宅貞祥保育社)
「新北のさかなたち」(水島敏博、鳥澤雅ほか監修 北海道新聞社)
「北日本の魚と海藻」 (尼岡邦夫、仲谷一宏ほか北日本海洋センター)
「日本近海産フグ類の鑑別と毒性」 (厚生省生活衛生局乳肉衛生課編 中央法規出版)
「日本の海水魚」(岡村収、尼岡邦夫編・監修 山と渓谷社)
「日本の淡水魚」(川那部浩哉、水野信彦編・監修山と渓谷社)
「日本のエビ・世界のエビ」(東京水産大学第9回公開講座編集委員会編成山堂書店)
「日本近海産貝類図鑑」(奥谷喬司編著 東海大学出版会)
「自然観察シリーズ 日本の貝」(奥谷喬司 小学館)
「学研生物図鑑貝」(波部忠重、奥谷喬司 学習研究社)
「北の貝の仲間たち」(樋口滋雄)
「世界海産貝類コレクション大図鑑」(菱田嘉一 電気書院)
「日本の貝」(奥谷喬司 小学館)
「島根のさかな」(島根県水産試験場 山陰中央新報社)
「東南アジア市場図鑑(魚貝篇)」(河野博編 弘文堂)

動物学
「基礎水産動物学」(岩井保、林勇夫恒星社厚生閣)
「新版水産動物学」(谷田専治恒星社厚生閣)
「甲殻類学」(朝倉彰編著 東海大学出版会)
「魚」(田中茂穂 創元社)
「魚類学下」(落合明、田中克恒星社厚生閣)
「水産脊椎動物 III魚類」(岩井保恒星社厚生閣)
「魚の分類の図鑑」(上野輝覇・坂本一男 東海大学出版会)
「日本産エビ類の分類と生態I 根鰓亜目」(林健一 生物研究社)

海藻
「海藻」(宮下章法政大学出版局)
「海藻のはなし」(新崎盛敏、新崎輝子 東海大学出版会)
「海藻の食文化」(今田節子成山堂書店)

水産
「魚の卵のはなし」(平井明夫 成山堂書店)
「サケ・マスのすべて食材魚貝大百科」 (井田齊、河野博、茂木正人編平凡社)
「魚貝類とアレルギー」(塩見一雄成山堂書店)
「千もの塩もの」(石黒正吉毎日新聞社)
「さかなの干物」(竹井誠 石崎書店)

栄養学
「米養学総論」(飯塚美和子、寺田和子、奥野和子、市川芳江、保屋野美智子 南山堂)
「おさかな栄養学」(鈴木たね子、大野智子共著 成山堂書店)
「五訂増補食品成分表2009」(女子栄養大学出版部)

統計
「水産統計」(農林水産省)

辞典
「さかな異名抄」(内田恵太郎 朝日文庫)
「高知の魚名集」(岡林正十郎 リーブル出版)
「新釈魚名考」(榮川省造青銅企画出版)
「日本産魚名大辞典」(日本魚類学会編 三省室)
「日本貝類方言集 民俗・分布・由来」(川名興編 未来社)
「新釣百科」(佐藤垢石、松崎明治大泉書店)
「水産加工品総覧」(三輪勝利監修光琳)
「商用魚介名ハンドブック」(日本水産物貿易協会編 成山堂書店)
「語源海」(杉本つとむ 東京書籍)
「改訂 調理用語辞典」(全国調理師養成施設協会 調理栄養教育公社)
料理書
「日本の食生活全集」(農山漁村文化協会))

スタッフ

クリエイティブディレクション/ 石倉ヒロユキ
編集・執筆協力/みかんクシロ
デザイン/ 日野洋平、小池佳代、伊藤 愛(regia)
写真/ ぼうずコンニャク、本田犬友、石倉ヒロユキ
DTP 協力/天龍社

協力

市場寿司 たか
築地市場(東京都中央卸売市場)
築地樋長
築地ヤマセ村清
築地斉藤水産
築地近長
東京八王子 魚茂
島根県水産課
国立国会図書館

本書の内容はデータベース「市場魚貝類 図鑑」に準拠し、画像の大半は同データ ベースのものを使用しています。

藤原昌高(ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 主宰) (著)
出版社: 高橋書店 (2010/5/26)、出典:出版社HP

魚をもっと楽しむために

一、いい魚をかしこく選ぶ
多くの人にとって、もっとも身近に魚を買える場所はスーパーの魚売り場かもしれません。そこで扱われている魚介類はどんどん多彩になり、売り方も丸のまま、パック、冷凍、加工品など、さまざまです。そんななかで「いい魚」とはどんなものなのかのポイントを示し、ふだんの買い物に簡単に取り入れられるような、魚のかしこい選び方をご紹介します。

二、手間を省く方法を知る
魚というと「おろせない」「さわるのもいや」など、苦手意識が先に立つ人も多いとか。そうだとしても魚は充分楽しめます。さわれない人は切り身や干物から始めればOK。おろせなくても、下処理はスーパーなどの魚売り場でもしてくれます。手につくにおいは酢や重曹で洗ってから石けんを使えば驚くほど落ちますし、生ゴミのにおいだって熱湯をかけるだけで消えます。ともあれ、栄養豊富で体においしい魚に触れずじまいというのは非常にもったいないことです。

三、ラクしておいしく料理する
臭みや骨が気になる、やや値段が高いなど、魚には手にしづらいイメージがあるかもしれません。でも、ちょっとした知識さえ身につければ、野菜や肉以上に楽しめること間違いなし。栄養豊富な血合いが食べにくいなら揚げれば非常においしくいただけますし、クセのあるものには香辛料やハーブを使うのも手。本書では、それぞれの魚に合った下ごしらえや調理のコツを多数紹介しています。

四、鮮度保持と保存法
魚を買うのをためらう理由のひとつに、鮮度や保存法の問題があるようです。気になさる方にはまず、塩ひと振りで生のままよりはるかに高い鮮度を保ち、味もよくなることを知ってほしいと思います。また冷凍してもほとんど劣化しないイカや、逆に旨みが増すシジミのような食材もあります。魚介類って案外保存に強いのです。

五、もっと知る
四方を海に囲まれた日本では、古来多くの魚が獲れ、主菜とされてきました。ですから魚は日本人の体質に合った食材ともいえます。栄養価の面でも優秀な魚を、日々の食事に活用しない手はありません。まずは魚を、もう少しだけ知ることから始めてみませんか。

おいしい魚を選ぶために

表示、ドリップ、切り口を 見るだけで買い物上手に

もっとも手に取りやすい魚は、今ならパック詰めのものでしょう。これを大きく分類すると、

1「生」「鮮魚」(生の魚を丸のままや刺身、切り身にしたもの)
2「冷凍」「解凍」(丸のままや切り身で冷凍されたもの、それを解凍したもの)
3「塩蔵」(塩味のついたもの)

となります。パックものなら、この表示を見ましょ う。表示は目立つところにあるものもあれば、裏に小さく記したものもあり、表示そのものがないものも。いずれにせよ、しっかり表記している店のほうが扱っている魚の質がいいのは確かです。 表側になければ裏側を見ましょう。

まず、鮮度管理をきちんと施した1のものがいちばん美味です。2は、解凍のやり方しだいで味わいが大 きく変わります。ただし冷凍技術の進歩により、鮮度の落ちた生より冷凍もののほうがおいしいこともあります。3は旨みが凝縮され、日もちします。

1や2の切り身の場合、鮮度が落ちるとドリップ(水分)がトレイにたまり、切り口のエッジ(角)が丸くなってきます。こういうものは避けましょう。

1の丸のままの魚は、切り身よりも鮮度の判断が困難。身が硬くて液体が出ておらず、えらの赤いものは基本的に新鮮ですが、さわって身の張りを確かめるのは気が引けるかもしれません。そんなときは「刺身で 食べられますか」などと聞いてみましょう。また、よく「目の白いものはダメ」といいますが、マアジなどこの法則が使えない魚も。氷水に塩を入れると水温は 0℃近くまで下がり、保冷力が高まります。この鮮度保持のための塩分が目を白くするのです。

このほかにも「加熱用」と「刺身用」の表示があります。魚は刺身用のほうが鮮度がよく加熱用のほうが悪い、と明快ですが、カキの場合は鮮度には関係なく、「加熱用」は滅菌処理をしていないだけです。「生食用」は、無菌の海水の中で滅菌処理をしますが、細菌とともに旨みやエキスも失います。だから鍋ものやフライには「加熱用」を選ぶほうが得策なのです。売られ方も多彩となった今、よりおいしい魚を選ぶためのポイントを知り、かしこく選びましょう。

藤原昌高(ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 主宰) (著)
出版社: 高橋書店 (2010/5/26)、出典:出版社HP

手間をかけない基礎知識

魚って意外にカンタンなんです

体にいいのはわかっていても、魚の調理に抵抗があるなら、切り身や一夜干しでも魅力は充分味わえます。おろせなくてもさわれなくても、栄養価が高く不飽和脂肪酸や悪玉コレステロールは少ない、というような魚のいい部分はおいしく取り入れたいものです。

もちろん鮮度の点では、調理の直前におろしたほうが好ましい場合がほとんどです。自分でできなくても、三枚おろしや内臓を取り出すなどの下処理ならたいていのスーパーや魚屋さんでやってくれるので、頼んでしまえばラクです。サッと下処理してもらってから持ち帰れば、キッチンは汚れず鮮度の高い魚を味わえ、しかもゴミも出ません。自分で選んでおろすのは、いろいろな魚を充分楽しんでからでもいいのです。

また、知りたいことがあったら「これ、塩焼きにできますか?」などと、どんどん質問しましょう。最近は魚 に慣れていない人が増えているため、かなり初歩的なことを質問しても大丈夫。驚かれることは、まずありません。

いちばんいいのは、なじみの魚屋さんをつくることです。刺身の盛り合わせなどは、売れ残ったものを翌日盛り直して売っている店も多いのが現実。いい魚を手に入れるには、やはり信用できる店で買うのが理想的です。スーパーなら、前述したように「生」「解凍」などしっかり表示している店がいいでしょう。

魚屋さんとなじみになれば、かしこい買い方や味わい方、本当にいいものを教われる知恵袋になってくれるのも、大きな魅力です。

魚屋さんのつぶやき
スーパーでは量販が前提なので、すべての店とはいわないものの、魚のよし悪しまでを見ずに仕入れせざるを得ないケースも多くあります。それに比べ個人経営の魚屋は、よし悪しを自分の目で見極めて仕入れています。その意味でも、品質には自信あり。

こわがらないで
「今の主婦の方々にとっては、魚屋ってなんとなく敷居が高くて近寄りがたいイメージなんでしょうね。でも、初歩的なこともどんどん聞いてくれてかまわないし、もっと気軽に立ち寄ってほしいですね」。いい魚を手に入れるなら、魚屋さんを味方につけたほうが近道かも。

魚料理をおいしく食べる

調理法も調味料も大胆にアレンジできる

魚料理にまつわるマイナスイメージの代表的なものに「生臭みが取れない」「骨が気になる」などがあ ると思います。では魚好きの人たちは、どんなふうに食べているのでしょう。
まず、工夫しているのは調理法。クセのないものは塩焼き、クセの強いものや血合いの気になるものは揚げてしまうなど、結構大胆に変えています。血合いはにおいが気になるものの、鉄分が豊富で女性はぜひ摂りたいもの。揚げれば臭みはまったく気にならなくなるので、おすすめです。

「揚げる」という調理法は小骨の気になる魚にも使えます。あらゆる魚において、小ぶりのものは揚げ物が得策と覚えておきましょう。余すところなく食べられ、カルシウム摂取にも効果的です。

また、調味料やハーブも強力な助っ人です。グルタミン酸という旨み成分を含んだしょうゆやみそは、魚のもつイノシン酸と合わせることで5倍以上の旨みを感じさせてくれます。砂糖の甘みは魚のクセを抑え、臭みを消す料理酒とバターは魚料理の必需品。

ハーブでは、こしょうはもちろん、オレガノ、バジル、ちょっと趣向を変えるならコリアンダーなどもおすすめです。とくにタイムは、生臭みを消すのに絶大な効果があります。いろいろな香りのハーブがまざったミックスハーブのようなものを常備しておくのもいいかもしれません。

みそ汁にするのも、じつは簡単でおいしくて、かしこい食べ方。サッと湯通しすれば臭みも取れ、だしを取らなくてもおいしくできます。しかも、みそ汁にすると、栄養たっぷりだけど堅くて捨てがちな部位まで食べられるため、ゴミも減らせてお得です。「魚通のおすすめは、刺身のしゃぶしゃぶ。日本人の生食信仰から、いまや多くの魚が刺身にされていますが、刺身にできる魚イコール高級というわけではありません。熱を通すことで旨みが増す魚も多いため、刺身を買って最初は生、その後しゃぶしゃぶと、食べ方を変えて楽しむのもいいかもしれません。

刺身
しょうゆで食べるほか、漬け丼、揚げ物、しゃぶしゃぶなど、楽しみ方はかなり多様。ほかにもフレンチドレッシングを使えばカルパッチョに。トッピングをにんにくやゆずこしょうにするなど、アレンジしても楽しい。

ハーブ類
タイムがあれば臭みはほぼ気にならなくなる。コリアンダーは、ひと振りで一気にアジアンテイストにアレンジできて楽しい。黒こしょう、バジル、オレガノなどのほか、セージ、ディル、フェンネルなども好相性。

保存してもっとおいしく

じつは意外に 保存が利く

生の魚でも、塩さえ振っておけば冷蔵庫で3~4日は軽くもちます。塩を振って3分以上おき、出た水分 をふくだけでOK。このほうが塩が脂となじんで味もよくなり、身が締まるため骨離れもよくなるのです。

魚は「冷凍するならよく加工してから」が原則。つまり、生のままより下処理後、下処理だけより調味後 のほうがよいのです。これは、手を加えてから冷凍するほうがアミノ酸の変化が少ないため。塩、こしょうを振るだけでも劣化を長時間防げます。また「急速冷凍、ゆっくり解凍」も大切なポイントです。身の組織の破壊を食い止められ、劣化が防げます。

そして解凍ものを買うなら、冷凍ものを自宅で解凍したほうが得策。なぜなら解凍後は急激に鮮度が落ちるため、時間がたつほど臭みが増すからです。このように、ちょっとしたコツさえ押さえれば、魚の保存は簡単なんですよ。

冷凍で旨みが 増すものも!
なんとシジミは冷凍したほうが旨みが増す。ダイエット、美肌、肝臓増強効果のあるオルニチンもアップ。 アカイカも冷凍したほうが旨みが増すといわれている。家庭での解凍は、6~7分水をかけておけばOK。

藤原昌高(ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 主宰) (著)
出版社: 高橋書店 (2010/5/26)、出典:出版社HP