電気通信主任技術者試験 これなら受かる 法規(改訂3版)
まえがき
現在における通信ネットワークの利用は、日常生活、企業活動の双方において、欠かせないものとなっています。この通信ネットワークを支えている企業は電気通信事業と呼ばれており、利用者がいつでも情報通信を活用できるようにインフラ整備や設備管理を行っています。
電気通信事業者は、事業用電気通信設備を、総務省令で定める技術基準に適合するように維持していくために、電気通信設備の工事や維持及び運用の監督にあたることが義務付けられています。
これらの監督業務を行うのが電気通信主任技術者で、その資格証として、伝送交換設備とそれに附随する設備の工事、維持及び運用に関する監督を行う「伝送交換主任技術者資格者証」と、線路設備とそれに附随する設備の工事や維持及び運用に関する監督を行う「線路主任技術者資格者証」があります。
資格試験では、次の4科目が試験科目になっています。(ただし、受験者が既に有している資格、合格している科目の有無、学歴と実務経験によって受験が免除される科目があります)
・法規
・設備及び設備管理
・専門的能力
・電気通信システム
本書は、上記の試験科目のうち、「法規」で平成27年度から平成30年度第1回に実際に出題された問題の解答と解法の例について解説するものです。なお平成30年度第1回試験は出題形式で掲載し読者が力試しできるようにしています。
本書で扱う「法規」は、電気通信事業法を中心に複数の法律から出題されます。そして過去に出題された条文の範囲は幅広く、覚えるべき内容は膨大です。この法律の試験をなるべく簡易にパスできるように、本書では以下の工夫がされています。
・過去の出題傾向から、頻出する条文をわかりやすく示しています
・条文のどこに注目すべきかを示しています
本書は、「電気通信主任技術者試験必勝テキスト法規」の姉妹書になります。「必勝テキスト」は出題される条文の内容を理解”することに焦点を当てたテキストです。解説と図を取り入れ、さらに試験の出題傾向を踏まえて解説すべき条文を厳選しています。本書と「必勝テキスト」をあわせて活用することで、読者の皆さまの試験対策がより充実したものとなることを期待します。
本書を読み通すことで、読者の皆様が電気通信主任技術者の資格を取得できることを心より願っています。そして、その力をもって、今後も発展が続く通信ネットワークを支える技術者としてのさらなる力を身につけていただきたく思います。
平成 30年9月
オーム社書籍編集局
Ⅰ 試験の概要
「電気通信主任技術者試験」は、一般財団法人日本データ通信協会(JADAC)に属する電気通信国家試験センターが実施しています。ここでは、電気通信主任技術者試験の他に「電気通信工事担任者試験」の二つの国家資格試験が扱われています。
以下では、電気通信国家試験センターホームページに記載されている内容を一部抜粋して概要を示します。詳しくは、電気通信国家試験センターホームページ(https://www。shiken.dekyo.or.jp)を参照してください。
電気通信主任技術者について
電気通信主任技術者は、電気通信事業を営む電気通信事業者において、電気通信ネットワークの工事、維持及び運用を行うための監督責任者です。
電気通信事業者は、管理する事業用電気通信設備を総務省令で定める技術基準に適合するよう、自主的に維持する必要があります。そのために、電気通信事業者は、電気通信主任技術者を選任し、電気通信設備の工事、維持及び運用の監督にあたらなければなりません。
資格者証の種類
電気通信主任技術者資格者証の種類は、ネットワークを構成する設備に着目し て、 「伝送交換主任技術者資格者証」と「線路主任技術者資格者証」の2区分に 分かれています。また、各資格により監督する範囲が次のように決められています。
資格者証の種類 | 監督の範囲 |
伝送交換主任技術者資格者証 | 電気通信事業の用に供する伝送交換設備及びこれに附属 する設備の工事,維持及び運用 |
線路主任技術者資格者証 | 電気通信事業の用に供する線路設備及びこれらに附属する設備の工事,維持及び運用 |
受験資格
特に制限はありません、誰でも受験することができます。
試験の種類
試験の種類は、次の二つがあります。
1. 伝送交換主任技術者試験
2. 線路主任技術者試験
試験の科目
「伝送交換主任技術者試験」および「線路主任技術者試験で出題される科目は 次の4科目となります。
・法規
・伝送交換設備及び設備管理(又は線路設備及び設備管理)
・専門的能力
・電気通信システム
なお、一定の資格又は実務経験を有する場合には、申請による試験科目の免除制度があります。
試験時間
試験時間は、次のようになっています。
科目 | 試験時間 |
法規 | 80分 |
伝送交換設備及び設備管理 (又は線路設備及び設備管理) |
100分 |
專門的能力 | 100分 |
電気通信システム | 80分 |
試験実施日と試験実施地
試験は、例年2回実施されます。
第1回:7月の日曜日
第2回:翌年の1月の日曜日
試験実施地は以下の地区です。実施地は変更になる場合があります。
札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、新潟、金沢、長野、名古屋、大阪、広島、松山、福岡、熊本及び西原町(沖縄)
受験申込み
・インターネットによる申込み
ホームページから申請
夏:4月上旬~5月上旬
冬:10月上旬~11月上旬
試験手数料の払込み
夏:4月上旬~5月上旬
冬:10月上旬~11月上旬
・試験申請書による郵送申込み 試験申請書の提出
夏:4月上旬~4月末頃
冬:10月上旬~10月末頃
試験手数料の払込み
夏:4月上旬~4月末頃
冬:10月上旬~10月末頃
試験手数料
全科目受験 18700円 3科目受験 18000円
2科目受験 17300円 1科目受験 16600円
全科目免除 9500円
(インターネット申請の場合は、実務経歴による免除申請はできません)
合格基準
各科目 100点満点で、合格点は60点以上です。
試験科目の試験免除について
資格、科目合格、実務経歴、認定学校修了によって、試験科目の免除を受けることができます。詳細は、(一財)日本データ通信協会にお問い合わせください。
試験についてのお問合せ先
一般財団法人 日本データ通信協会 電気通信国家試験センター
〒 170-8585 東京都豊島区巣鴨 2-11-1 巣鴨室町ビル 6F
TEL:03-5907-6556
Ⅱ 試験の出題範囲と出題傾向
出題範囲(法規)
「法規」における出題範囲は、次のようになっています。
大項目 | 中項目 | 小項目 | |||
1 | 電気通信事業法及びこれに基づく命令 | 1 | 電気通信事業法 | ー | ー |
2 | 電気通信事業法に基づく命令 | 1 | 電気通信事業法施行規則 | ||
2 | 事業用電気通信設備規則 | ||||
3 | 端末設備等規則 | ||||
4 | 電気通信主任技術者規則 | ||||
5 | その他の政省令等 | ||||
2 | 有線電気通信法及びこれに基づく命令 | 1 | 有線電気通信法 | ー | ー |
2 | 有線電気通信法に基づく命令 | 1 | 有線電気通信設備令 | ||
2 | 有線電気通信設備令施行規則 | ||||
3 | その他の政省令等 | ||||
3 | 電波法及びこれに基づく命令 | 1 | 電波法 | ||
2 | 電波法に基づく命令 | 1 | 電波法施行規則 | ||
2 | 無線従事者規則 | ||||
3 | 無線設備規則 | ||||
4 | その他の政省令等 | ||||
4 | 不正アクセス行為の禁止等に関する法律及びこれに基づく命令 | 1 | 不正アクセス行為の禁止等に関する法律 | ||
2 | 不正アクセス行為の禁止等に関する法律に基づく命令 | ||||
5 | 電子署名及び認証業務に関する法律及びこれに基づく命令 | 1 | 電子署名及び認証業務に関する法律 | ||
2 | 電子署名及び認証業務に関する法律に基づく命令 | ||||
6 | 国際電気通信連合憲章及び国際電気通信連合条約の大要 | 1 | 国際電気通信連合憲章 | ||
2 | 国際電気通信連合条約 | 1 | 国際電気通信連合条約 | ||
7 | その他関連する法令など | 1 | その他関連する法令等 | 1 | 電気通信役務利用放送法 |
2 | 個人情報保護に関する法律 | ||||
3 | 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法 | ||||
4 | 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 | ||||
5 | 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律 | ||||
6 | 携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認及び携帯音声通信役務の不正な利用防止に関する法律 | ||||
7 | 労働安全衛生法 | ||||
8 | 建設業法 | ||||
2 | 関連するガイドライン | 1 | 情報通信ネットワーク安全・ 信頼性基準 | ||
2 | 公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン | ||||
3 | 電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン | ||||
4 | 電気通信事故に係る電気通信事業法関係法令の適用に関するガイドライン |
出題傾向
平成27年から平成30年第1回までの間に実施された計7回の出題傾向(法規のみ)は次のとおりです(表内の表記は、「問番号(小問番号)」を表します)。
Ⅲ 本書の使い方
紙面構成
問題に関連する条文の内容で す。覚えるべき重要な部分を太文字で強調しています。
過去に出題された問題を法規ごとに整理して示しています。
各条文の学習について注意すべき点を、アイコンで補足しています。
問題の解説です。どの部分に注目すべきかをていねいに解説しています。
条文の頻出度(高・中・低)をアイコンで示しています。
本書で使用しているアイコン
【頻出度を示すアイコン】:過去3年間の出題傾向からの条文の頻出度を表します。
超重要!
頻出度【高】です。 必ず覚えよう!
大事!
頻出度【中】です。 覚えておくとよい!
アイコンなし
頻出度【低】です。 余裕があれば覚えましょう。
【注意を促すアイコン】:各条文についての補足説明です。
覚えよう!
学習のポイント部分です。
注意しよう!
問題を解く上で注意すべき 部分を示します。
参考
理解を助ける情報です。
条文の構成の読み方
条文の構成は3構成からなっており、大きい方から「条」「項」「号」となっています。
注意点として、第1項は「1」の数値が省略されている点に注意してください。
また、「号」の下には「イ、 口、ハ、 」や「(1)、 (2)、 (3)、」などの番号付きで各条文が記載されていることもあります。
注意しよう!
本書の「解説」では、
「条」「項」の数字をアラビア数字
「号」の数字を漢数字
でそれぞれ示しています。
「参照するポイント」ではもとの条文のまま示しています。
目次
Ⅰ 試験の概要
Ⅱ 試験の出題範囲と出題傾向
III 本書の使い方
1章 電気通信事業法関連
1-1 電気通信事業法、電気通信事業法施行規則
1-2 電気通信主任技術者規則
1-3 事業用電気通信設備規則
1-4 端末設備等規則
2章 有線電気通信法関連
2-1 有線電気通信法
2-2 有線電気通信設備令、 有線電気通信設備令施行規則
3章 その他の関連法規
3-1 電波法
3-2 国際電気通信連合憲章
3-3 不正アクセス行為の禁止等に関する法律
3-4 電子署名及び認証業務に関する法律、
4章 平成30年度第1回試験問題にチャレンジ!
平成 30 年度第1回試験問題
平成30年度第1回試驗問題解答・解説
付録 関係法令条文
付-1 電気通信事業法
付-2 電気通信事業法施行規則
付-3 電気通信主任技術者規則
付-4 事業用電気通信設備規則
付-5 端未設備等規則
付-6 有線電気通信法
付-7 有線電気通信設備令
付-8 有線電気通信設備令施行規則
付-9 電波法
付-10 国際電気通信連合憲章
付-11 不正アクセス行為の禁止等に関する法律
付-12 電子署名及び認証業務に関する法律
索引