あなたの日本がもっと素敵になる。8つの和ハーブ物語〜忘れられた日本の宝物〜




人は植物によって生かされている
そして人類の長い歴史の大部分は
生まれ育った土地の植物が
人のいのちを支えてきた

遺伝子に受け継がれた記憶
その土地の風土、環境で育ったものが
私たちの心身にもっともなじむはず

和ハーブとは
日本を故郷にしてきた植物たち
古くからこの風土に育ち
日本人と共に生きてきた植物のこと

日本人の健やかさ美しさ
そして感性の源となり
私たちを光り輝かせてくれる

香 KAORI

ヨモギ
沖縄のフーチバー(ヨモギ)そば
オオヨモギ葉裏の白い毛が伊吹艾(もぐさ)の原料になる
ヨモギの香りはアイヌにとって神聖なもの。葉を揉んで身体に塗り、
茎を儀式の矢に使用した(川村カ子トアイヌ記念館 提供)

廣瀬大社(奈良県)「右近の橘 左近の桜」
タチバナ(12月撮影)
タチバナ・ブレスレット
タチバナのパスタ
タチバナの花は上品な香り

1つめの物語:香
都の恋人たちのアロマテラピー、アイヌ人のデオドラント

酒 SAKE

カヤ
ヤマブドウ
アケビ
ヤマブドウで作られる和の赤ワイン

サルナシ
ガマズミ
ヤマグワ
ハマナス
フッキソウ

2つめの物語:酒
神の山に生まれた“和の赤ワイン”

浴 YOKU

光明皇后大悲願図(法華寺門跡 提供)
からふろ(法華寺)外観
からふろ(法華寺)内観
水辺に生えるセキショウ

石けんとしても使われたサイカチの実
セキショウの花
端午の節供には「勝負・尚武」にあやかりショウブ湯に浸かる
ユズやヒノキで和ハーブお風呂を楽しむ
ムクロジの実も石けん素材になる

3つめの物語:浴
平城京を救った和のハーバル・サウナ

紙 KAMI

黄金色に輝くアサ繊維
アサ繊維を被って紐作り
アサは3カ月で収穫可能
アサの茎から繊維をつくる

コウゾ(5月撮影)
コウゾの樹皮を剥いだもの
採取したコウゾを蒸す
厚みをみながら紙を漉く
伝統の手漉き和紙は和の職人たちの手仕事

4つめの物語:紙
江戸職人の心が繋いだ世界文化遺産への道

茶 CHA

チャノキ
チャノキの花もよい香り
チャノキオイル
ナギナタコウジュ

伊吹山の畑での伝統的な薬草茶スタイル
和ハーブティーをゆっくり味わうひととき
アイヌお父さんのナギナタコウジュティー
在来種のヤマチャ畑は山の斜面に不規則に並ぶ(伊吹山)

5つめの物語:茶
ホッと和む、喫茶のじかん

粧 YOSOOI

<1~4:紅餅作り工程、5~8紅作り工程©外山亮一>
1 日紅花畑
2 花弁洗い
3 花弁の色変化
4 紅餅
5 ゾクを絞る
6 抽出された紅
7 紅刷き
8 紅が乾くと玉虫色に輝きを放つ
紅を唇に重ね塗り玉虫色に輝く化粧法を「笹紅」といい、江戸で大流行「今様美人拾二景てごわそう」渓斎英泉
伊勢半本店紅ミュージアム蔵

アカネ
アカネの根に赤色色素がある
アカネ染め
キブシの実
ヌルデの葉

6つめの物語:粧
“江戸コスメ”の光と影

食 SHOKU

海のミネラル豊富な琉球ハーブたち
ンジャナバー(ホソバワダン)
長命草(ボタンボウフウ)
ハンダマー
珊瑚に直接生える琉球ハーブ

アシタバの天ぷら
ンジャナバーの白和え
ハンダマーと豚肉を使った炒め物
ハーブの滋養を知り尽くした沖縄のおばぁ
八丈島に育つアシタバ

7つめの物語:食
海の和ハーブはスーパーフード

KUSURI 薬

センブリ(日本三大和薬)
ドクダミ(日本三大和薬)
ゲンノショウコ(日本三大和楽)
“THEダイエット和ハーブ”カキドオシ
“和のタイム”イブキジャコウソウは咳止めに向く

ヤマトタケルは伊吹山に生えるトリカブトで絶命したといわれる
伊吹山には280種もの有用植物が生きている
キハダ樹皮は黄色い苦味健胃薬
採取した和ハーブを洗って軒下で乾燥させる
伊吹山麓の村では薬草を畑で栽培・管理する

8つめの物語:薬
「薬局が無い村」にある和ハーブストリート

平川美鶴、石上七鞘 (著), 総合監修・古谷暢基 (監修), 一般社団法人和ハーブ協会 (編集), 辻沙織 (イラスト)
出版社: 産学社; A5判版 (2015/4/18)、出典:出版社HP

目次

はじめに

1つ目の物語 香
2つめの物語 酒
3つめの物語 浴
4つめの物語 紙
5つめの物語 茶
6つめの物語 粧
7つめの物語 食
8つめの物語 薬

和ハーブに突き動かされた“私の日本”
和ハーブ協会の社会活動
あとがきにかえて
著者紹介

平川美鶴、石上七鞘 (著), 総合監修・古谷暢基 (監修), 一般社団法人和ハーブ協会 (編集), 辻沙織 (イラスト)
出版社: 産学社; A5判版 (2015/4/18)、出典:出版社HP

はじめに

はじめまして。和ハーブライフスタイリストの平川美鶴です。
『あなたの日本がもっと素敵になる』……この本の題名は、私の経験に基づくものです。

私と和ハーブの出会いは、2010年春の沖縄でした。その頃の私は、子どものころからの植物好きが高じてアロマテラピーやハーブの魅力や楽しみ方を伝える活動をしていました。けれども素材のほとんどが日本から遠い海外由来のものだったり、ハーブたちの発する香りや味が、不自然に強く感じたり、何か腑に落ちない感覚が拭えませんでした。

そんな折、まだ設立されたばかりの和ハーブ協会で企画されていた沖縄を訪ねるフィールドワーク『琉球ハーブ塾』の文字が目に入ったのです。何かをつかみたい、自分の目で確かめたい、と。あの日、祈るような気持ちで那覇行きの飛行機に乗り込んだのを覚えています。

沖縄の地で出会ったのは、まさに日本の宝物」でした。見事なまでの海や森。見たことも聞いたこともない琉球ハーブたち。それだけではありません。足元の植物を深く信じ、慈しみ、対話をしながら生き生きと、迷いなく自らの人生を楽しむ地元のハーブ名人たち。彼らの植物を通じた“日本人としての生き方”に、心を打ち抜かれたのです。

それからというもの、自分が今まで見ていた風景は一変しました。「ヨモギやドクダミって、こんなすごい植物だったんだ!」「日本の山には、ブルーベリーやキウイフルーツにそっくりな果実がある!」クロモジ、ナギナタコウジュ、カキドオシ。今までほとんど聞いたこともなく、見分けできなかった植物たちにも、世界のハーブに負けない香りや薬効があったなんて。

日本人に寄り添ってきたハーブ……『和ハーブ』。ご先祖様たちもお世話になり、私が生まれたときからきっと足元にあったのに気づかずに見過ごしていた知恵でもあったのです。

以来、私は北海海道から沖縄まで全国各地での和ハーブを訪ね歩き調査や講演に伺わせていただくようになりました。日本の植物たちの饒舌さ、頼もしさ、繊細さにいつも感動し、そこから生まれる発見とインスピレーションを肥やしにして、自分を育てています。

同時にこの知恵を絶やしてはいけない、自分だけに留めてはいけない、日本人として生きる私の目線を変え、“導いてくれた宝物たち”を、より広く、未来へつなげていかなくてはいけない。その思いは、日々深まるばかりです。

南北に細長い国土に豊かな四季をもち、山林・海岸・清流など、さまざまな自然を見せてくれる日本。この国で生きてきた人々の生きる糧は植物でした。

つまり和ハーブを学ぶことは、日本人の生き方そのものを学ぶことだと思います。この本では、“私の日本を素敵にしてくれた”知られざる和ハーブ・ストーリーを、テーマ別に8つ、まとめてみました。

本書に出会ってくださった皆さまが、日本という国、ここに生きる私たち、そして
ずっと以前からいのちをつなげてきた和ハーブたちの素晴らしさに気づき、豊かであなたらしい人生を送るための“種”をみつけてほしい。今、そんなことを願っています。

平川美鶴、石上七鞘 (著), 総合監修・古谷暢基 (監修), 一般社団法人和ハーブ協会 (編集), 辻沙織 (イラスト)
出版社: 産学社; A5判版 (2015/4/18)、出典:出版社HP