ツウになる! チーズの教本




はじめに

「あなたはチーズが好きですか?」

こう質問すると、たくさんの方が「好きです!」と答えてくれます。でも「どのチーズが好き?」と次の質問をすると、ほとんどの方が「ええと……」と、言葉に詰まってしまいます。

「チーズ」という言葉を聞き「好きです!」と答えるまでに、頭の中でイメージするのは、どんなチーズでしょうか。チーズバーガーやピザ、グラタンやチーズフォンデュといった料理?もしくは、チーズタッカルビやのびるチーズドッグといった流行りのメニューでしょうか。

どれもおいしいけれど、まだまだそれはチーズの世界の入り口。

チーズの伝統国では、日常の食卓に欠かせないものとしてチーズが存在していますし、その種類は星の数ほどあります。真摯に、ていねいに造られるチーズには、ほかの郷土の料理やお酒と同じように、ワクワクするような魅力やストーリーがあります。

また「チーズを知る」ということは、その製造工程や原料となるミルクのことはもちろん、そのミルクを搾らせてくれる牛や山羊、羊などの動物のこと、その餌となる草や自然環境……..いろいろなことがつながってきます。ひとかけらのチーズには、自然の恵みと長年積み重ねられてきた英知がギュッと詰まっているのです。

日本におけるチーズの食文化は、まだ始まったばかり。その歴史や造り手については、本書の中でもくわしくお伝えしますが、日本の一般家庭にチーズが普及したのは、戦後のこと。ヨーロッパには1000年単位の歴史があるのに対し、まだ100年も経っていません。

でも、伝統や本質を大切に考え、新たな食やスタイルを生みだすことが得意な日本人。私達ならではのチーズの食文化がこれから花開いていくことは、想像に難くありません。

「チーズが好き!」から一歩進んで、「○○っていうチーズが好き!」「このチーズはこうして食べるのが好き!」「この人の造るチーズが好き!」といった答えが返ってくる“チーズツウ”が1人でも多く増えたらステキだなぁ……そんなことを思い描きながら、本書を執筆しました。

本書は、日本の食卓、そして日本人のさまざまな生活シーンにチーズを定着させるために日々活動を行っているNPO法人チーズプロフェッショナル協会の監修のもと、同協会が手がける公式教本や「チーズ検定」の講習会テキストの内容をベースに、チーズプロフェッショナルである著者が所有する独自の資料を加え、執筆・再編集した内容となっています。

写真素材につきましては、日本各地の工房やチーズに関わるさまざまな団体の方々にもご協力いただき、新たなものも多く使用させていただいております。チーズを愛するみなさんのご協力に、この場を借りて、心より御礼申し上げます。

そうした感謝の思いを胸に、あらためてチーズと向きあうと、なんだかそれだけで自然と笑顔になってしまいます。チーズが特別な食べ物としてではなく、多彩な食べ方とともに日々の暮らしに溶けこんでいきますように、そして、多くの方がチーズから広がる楽しみをたくさん発見してくれますように……やはりそう願わずにはいられません。

まずはページをめくりながら、1つでもよいので“自分のお気に入りのチーズ”を見つけてみましょう。そこからワクワクするなにかが、きっと始まります。

ようこそ、チーズツウの世界へ!

2018年11月
佐野 嘉彦

佐野嘉彦 (著), NPO法人チーズプロフェッショナル協会 (監修)
出版社: 秀和システム (2018/11/20)、出典:出版社HP

目次

はじめに
JCA2018速報!
チーズツウになるための基礎知識

第I部 「チーズ造りツウになろう!

Chapter1 チーズの原料、ミルクを知ろう!
Column 草を食むものく反芻する>

Chapter2 チーズの造り方を知ろう!
Column チーズの各国の呼び名
Column チーズの皮はどれでも食べる?

Chapter3 チーズの歴史を知ろう!
Column チーズの文化史より

Chapter4 世界の品質保証システムを知ろう!
第1回 チーズ造りツウCheckテスト

第II部 日本のチーズツウになろう!

Chapter5 日本のチーズ事情を知ろう!

Chapter6 注目したい!日本のチーズの造り手25選!!
01. 鶴居村振興公社酪楽館
02. チーズ工房白糠酪恵舎
03. しあわせチーズ工房
04. 共働学舎新得農場
05. ハッピネスデーリィ
06. 冨田ファーム
07. 伊勢ファーム
08. 町村農場
09. チーズ工房タカラ
10. ニセコチーズ工房
11. 那須高原今牧場チーズ工房
12. CHEESESTAND
13. 高秀牧場チーズ工房
14. チーズ工房【千】sen
15. アトリエ・ド・フロマージュ
16. ボスケソチーズラボ
17. 清水牧場チーズ工房
18. H.I.F.開田高原アイスクリーム工房
19. ILRICOTTARO
20. 吉田牧場
21. 三良坂フロマージュ
22. 木次乳業
23. 糸島ナチュラルチーズ製造所TAK
24. FARMQ
25. ダイワファーム
Column 世界に誇る!日本のプロセスチーズたち|
第2回 日本のチーズツウCheckテスト

第Ⅲ部 世界のチーズツウになろう!

Chapter7 ツウなら知っておくべき!世界のチーズ50選!!

Chapter8 世界のチーズ<キホンのキホン20選>
フロマージュ・ブラン/クリームチーズ/マスカルポーネ/モッツァレッラ/リコッタ/フェタ/カマンベール/ブリ/ラクレット/モン・ドール/ロックフォール/ゴルゴンゾーラ/ブルー・スティルトン/チェダー/ゴーダ/ミモレット/コンテ/パルミジャーノ・レッジャーノ/グラナ・パダーノ/ペコリーノ・ロマーノ
Columnブルーチーズとあわせて飲みたいお酒
Column関税と価格について

Chapter9 世界のチーズ<ツウのキホン20選>
カッテージチーズ/ブルサン/サンタンドレ/シャウルス/サント・モール・ド・トゥーレーヌ/シャヴィニョル/マンステール/ピエ・ダングロワ/タレッジョ/フルム・ダンベール/ブルー・ドーヴェルニュ/ダナブルー/カチョカヴァッロ/テット・ド・モワンヌ/コルビー・ジャック/オッソー・イラティ/ケソ・マンチェゴ/ボーフォール/グリュイエール/エメンターラー
Column シェーヴルチーズの魅力
Column チーズによくあう食材
Column 羊乳製チーズの魅力
Column 孔あきチーズとネズミのストーリー

Chapter10 世界のチーズ <ツウのツウ10選>
ブリア・サヴァラン/ブッラータ/バラカ/ヴァランセ/バノン/ラングル/エポワス/シュロップシャー・ブルー/ルブロション/アジアーゴ
第3回世界のチーズツウCheckテスト

第IV部 チーズのウンチク
Chapter11 チーズの味わい方のコツを知ろう!
Chapter12 飲み物から考えるチーズ
Chapter13 チーズの道具・カット方法・盛りつけのコツ
Chapter14 チーズの保存方法を知ろう!
Chapter15 チーズの栄養と健康効果を知ろう!
Chapter16 チーズの用語集
第4回 チーズのウンチクツウCheckテスト
チーズツウ Checkテスト総合
チーズツウ Checkテスト解答

参考文献
索引

佐野嘉彦 (著), NPO法人チーズプロフェッショナル協会 (監修)
出版社: 秀和システム (2018/11/20)、出典:出版社HP

JCA2018速報!

第3回グランプリは、北海道のハードチーズ「タカラのタカラ」
2014年から隔年で開催されている国産ナチュラルチーズコンクール「JCA(JapanCheeseAwardジャパンチーズアワード)」。2018年10月20日、第3回となる“JCA2018″が東京・大崎ブライトコアホールにて開催された。

翌日開催された国産ナチュラルチーズの展示会「日本の銘チーズ百選」の会場で、結果は発表。その模様とともに、各カテゴリーでNo.1となった部門賞と、“ベスト・オブ・ベスト”として選出されたグランプリを紹介しよう。

Japan Cheese Award 2018受賞一覧
グランプリ チーズ工房タカラ 北海道 タカラのタカラ
フレッシュ・プレーン部門賞(金賞) らくのうマザーズ阿蘇ミルク牧場 熊本 フロマージュブランリス
フレッシュ・バラエティ部門賞(金賞) プレスキル・フロマージュ 北海道 プレスキル
フロマージュ
オイル漬け
リコッタ・プレーン部門賞(金賞) CHEESE STAND 東京 出来たてリコッタ
リコッタ・バラエティ部門賞(金賞) ナカシマファーム 佐賀 ブラウンチーズ
白カビ部門賞(金賞) アトリエ・ド・フロマージュ 長野 ブリー
ソフト酸凝固(山羊乳) 部門賞(金賞) 三良坂フロマージュ 広島 三次の鵜飼
ソフト酸凝固 山羊乳以外) 部門賞(金賞) フロマージュ・デュ・テロワール 東京 dome(ドーム)
ウォッシュ部門賞(金賞) 共働学舎 新得農場チーズ工房 北海道  酒蔵
パスタフィラータ・モッツァレッラ
部門賞(金賞)
八丈島乳業株式会社 東京 Mozzarella
Dorata
パスタフィラータ・バラエティ部門賞(銀賞)  CHEESE STAND 東京 東京ブッラータ
パスタフィラータ・熟成部門賞(金賞)  チーズ工房乳ぃーずの物語 広島 カチョカヴァロ
青カビ部門賞(銀賞) ニセコチーズ工房有限会社 北海道 ブルーチーズ
二世古【空ku:】
 非加熱圧搾・熟成4ヶ月未満部門賞(金賞) ボスケソ・チーズラボ 長野 SHIRAKABA
非加熱圧搾・熟成4ヶ月以上部門賞(金賞) チーズ工房 那須の森 栃木 森のチーズ
非加熱圧搾・アディティブ部門賞(銀賞) 神津牧場 群馬 神津下仁田ねぎ
非加熱圧搾・ラクレット系部門賞(金賞) チーズ工房タカラ 北海道 タカラのトケル
加熱圧搾・熟成6ヶ月未満部門賞(銀賞) 川瀬チーズ工房 北海道  フリル
加熱圧搾・熟成6ヶ月以上部門賞(金賞) チーズ工房タカラ 北海道 タカラのタカラ

 

JCA(JapanCheeseAward)とは
JCA(JapanCheeseAward:ジャパンチーズアワード)は、チーズプロフェッショナルという呼称資格をもち、品質評価のトレーニングを積んだメンバーが、国産のナチュラルチーズと真剣に向き合い“今、食べるべき日本のチーズ”を選ぶコンクール。

「食べ手・伝え手のプロ、チーズプロフェッショナルだからこそできる応援をしたい!」というみんなの熱い想いが詰まった国産ナチュラルチーズのコンクールだ。

NPO法人チーズプロフェッショナル協会(CPA)は、ヨーロッパの品質評価法をベースに、日本ならではの評価方法を築き、人材を育成していくことを目的とした「専科セミナー」を2012年より本格的に開始。2014年から隔年で、造り手と食べ手をつなぐ国産ナチュラルチーズコンクール「JapanCheeseAward」を開催している。

“ジャパニーズ・ウイスキー”が1つのジャンルとして確立したように、“ジャパニーズ・チーズ”にも国内外で認められる時が将来やってくる!チーズツウなら、注目しないわけにはいかないコンクールといえるだろう。

DATAJCA(JapanCheeseAward)

公式Webサイトhttps://www.japancheeseaward.com/

●JCAの3つの特長

1.専門のトレーニングを積んだ審査員たち「チーズプロフェッショナル」の有資格者で、ティステイング能力(官能評価能力)を向上させる基礎トレーニングや品質評価法の学習からなる「C.P.A.品質評価・専科セミナー」の修了者が審査。そのほか、出品するチーズ生産者からの希望者(※出品したカテゴリー以外のチーズの審査を担当)や、海外のチーズコンクールなどで審査員経験の豊富なチーズの専門家も加わる。

2.きめ細やかな審査方法
チーズのカテゴリーごとに則したC.P.A.オリジナルの評価表を使用。ベースライン評価として「形と外観」「生地と組織」「においと味」の3項目について減点法で細かく審査するほか、特にすぐれた点をメリットとして加点法で評価する。

3.フィードバック&ブラッシュアップ支援
審査結果と内容は、リーダーとなる審査員が「フィードバックシート」にまとめて、チーズづくりの改善ポイントの参考になる製造の手引きも添えて、すべての出品者に送付される。

●C.P.A.(CheeseProfessionalAssociation)とは
C.P.A.とは、チーズの正しい知識と取り扱い技術をもつプロフェッショナルを育成し、チーズの普及啓蒙を行うために、2000年に発足した特定非営利活動法人「チーズプロフェッショナル協会」の略称。

チーズプロフェッショナル協会の会員数は約1,900名(2017年度現在)。飲食業界に従事する方、チーズ製造者、一般愛好家など、職業・年齢層はさまざまだ。
C.P.A.は“チーズを食卓に定着させる”という思いをもとに、「チーズに関わるすべての人を応援する」「チーズの正しい知識・技能を提供する」「日本独自のチーズ文化をつくる」を三本柱として、チーズを食べる人たちの健康増進に寄与する活動を行っている。

「チーズプロフェッショナル資格認定試験」や「チーズ検定」の実施のほか、専門知識を深める勉強会や相性研究、試食会や見学ツアーなど数多くのセミナーやイベントを開催。2009年からは、国産ナチュラルチーズの展示会「日本の銘チーズ百選」を定期的に開催。国産ナチュラルチーズの生産者を食べ手と直接つなげる活動を行っており、「JCA(JapanCheeseAward)」もその一環だ。

NPO法人チーズプロフェッショナル協会
〒101-0047東京都千代田区内神田1-18-1イワカタビル3F(本部)
TEL:03-3518-0102
FAX:03-3518-0103
https://www.cheese-professional.com/

チーズツウになるための基礎知識

チーズとはなにか

そもそもチーズとはなにか。あらためてその定義を尋ねられると困る人も多いはず。CODEXという国際食品規格の定義では「乳や脱脂乳をレンネットやその他の凝固剤によって凝固し、ホエイを分離したもの」となるが、この基礎知識ではもう少し噛み砕いて説明しておこう。

原料となるのは、みなさん知ってのとおりミルク。牛のミルクがもっとも多く使われるが、山羊や羊、水牛のミルクで造られるチーズもある。そのミルクを、乳酸菌やミルクを固める酵素(レンネット)の力を借りて固めて、水分(ホエイ)をある程度切ったもの。これがチーズと呼ばれる最低限の定義となる。いわばこの“チーズの原型”から、さらにさまざまな製法が用いられて、いろいろなタイプのチーズになっていくわけだ。

ナチュラルチーズとはなにか
チーズは大きくナチュラルチーズとプロセスチーズの2種類に分けられる。先に説明したように、乳酸菌や酵素の力でミルクを固めて“チーズの原型”となるものができるわけだが、フレッシュタイプのチーズを除くと、ほとんどのチーズはその後、時間とともに熟成という工程を経ていく。

熟成の変化、その仕組みは本当に複雑で、まるで魔法のようなものなのだが、いわゆる“食べどき”を逃すと、私たちにとっては酸化や腐敗といわれるネガティヴな変化となっていってしまう。

この“食べどき”をできるだけ保つための工夫が施されたものがプロセスチーズ(くわしくはP.78~79を参照)。それ以外の多くのチーズがナチュラルチーズということを、この基礎知識ではまず覚えておこう。

ミルクから生まれるほかの乳製品
図は、牛のミルク(生乳*)から造られる代表的な乳製品を表したもの。ミルクの成分を余すところなく有効利用することで、これらの乳製品が造られている。どれも私達の生活に必要なものばかりだ。

なお、日頃なじみのあるマーガリンは植物性油脂から造られているので、ここには入っていない。

※生乳:牛から搾ったままのミルクのこと。生乳を加熱殺菌し、私たちが飲むために造られたものが牛乳と定義される。

ナチュラルチーズの分類
個性豊かなナチュラルチーズ。日本で流通しているものだけでもその種類は数百種類ともいわれるが、個々の特徴によって整理することができる。

ナチュラルチーズの分類方法は国によって異なる。原料乳の種類、製造方法、製品中の水分や脂肪の含有率、原産国別など、さまざまな分類方法があるのだが、日本では1990年代にフランスの分類をもとにして、ナチュラルチーズを7つに分類し、整理したものが一般化している。

これは、多くのチーズショップや本などでも紹介されている方法。またこの基礎知識では、セミハードタイプとハードタイプをひとまとめにして、セミハード・ハードタイプとして紹介しておこう。

1.フレッシュタイプ
ミルクを凝固させ、ホエイを分離してすぐに食べられるチーズをいう。原料乳は、その土地で飼育されている牛、山羊、羊などさまざま。

フレッシュタイプのチーズは一般的に、水分が多く、やわらかいものが主流。成形されていないものが多く、容器に入れて販売されている。成形されていないものでも、熟成させないチーズはフレッシュタイプに属する。

2.白カビタイプ
チーズの表面に白カビを繁殖させ、熟成させるタイプ。白カビが作る酵素によってタンパク質が分解され、表面から内部に向かってチーズの組織がやわらかく変化していき、風味も濃厚になっていく。

原料になるのは牛のミルクが主流だが、山羊乳製や羊乳製のものもあり、最近ではクリームを加えて脂肪分を高くした新しいタイプの白カビチーズも販売されている。

3.青カビタイプ
チーズの内部に青カビを繁殖させ、熟成させるチーズで、総称してブルーチーズとも呼ばれる。青カビの生育には酸素が必要なため、チーズの内部にわざと隙間を作ったり、金串で孔をあけたりして、青カビの繁殖を助ける。

これも原料乳はおもに牛のミルクだが、フランスでは羊のミルクで造るロックフォールがあり、スペインなどでは季節によって数種類のミルクをブレンドするものもある。また、近年開発されたもので、青カビチーズの表面に白カビを繁殖させたチーズもある。

4.ウォッシュタイプ
チーズの表面を塩水、蒸留酒やビールなどのアルコールで洗いながら(拭いながら)、熟成させるチーズ。表面を洗うことで、リネンス菌という微生物が繁殖。このリネンス菌が強いにおいと赤みがかった粘り気のある膜を作るが、菌の活動はチーズの表面だけなので、表皮を取れば、においはさほど強くないものがほとんど。

フランスでは、昔の修道院で生まれたチーズやそれらに由来するウォッシュチーズが今でも多く造られている。

5.シェーヴルタイプ
フランス語で山羊乳から造られるチーズをシェーヴル(Chèvre)という。日本では、フランス以外の国の山羊乳製チーズもシェーヴルタイプと呼んでいる。

山羊乳製チーズの多くは組織がもろく、崩れやすいので、比較的小さな形で造られている。ユニークな形が多いのも特徴の1つ(参照:P.126~127、シェーヴルチーズの魅力)。

6.セミハード・ハードタイプ
長期熟成に向くとして造られたチーズで、硬さ(水分含有量)によってセミハードタイプとハードタイプに分けられる。

セミハードタイプはやや硬く、生地はしっとりとしている。大規模工場製のものはワックスやフィルムが表皮代わりになり、中身を保護していて、熟成期間は1カ月から6カ月程度のものが多く、おだやかな風味が特徴。これらのチーズはブロック状やシュレッド状になって販売されていて、おもにサンドイッチや加熱調理用として広く使われている。プロセスチーズは主として、このタイプのチーズを原料として造られている。

ハードタイプは熟成期間が長く、なかには3年以上の熟成というものも。熟成期間中の手入れによって、硬くしっかりとした表皮が作られる。水分は少なく、熟成によってアミノ酸などのうま味成分が作られるので、時間の経過とともに、濃厚な味わいに変化していく。

セミハードやハードタイプのチーズの原料乳は、牛や羊のミルクが主流。ハードタイプのチーズは、平野部よりも山地で多く造られている。

佐野嘉彦 (著), NPO法人チーズプロフェッショナル協会 (監修)
出版社: 秀和システム (2018/11/20)、出典:出版社HP