公認内部監査人試験問題集3(3)(合格への1、800問シリーズ)




はじめに

資格としてのCIA(公認内部監査人)

世の中には多くの資格がありますが、大きく分類すると次のようになります。もちろん、資格を取得する目的は千差万別ですので一概に評価するのは乱暴ですが、ビジネスマンとしてのキャリアアップの観点で分類しています。

 

試験の難易度は高い が、資格取得によるメ リットは大きいもの 試験の難易度は高い が、難易度の割には 資格取得によるメリッ トは大きくないもの 試験の難易度は低い が、資格取得によるメ リットは大きいもの
司法試験         公認会計士試驗 弁理士      不動産鑑定士 中小企業診断士  社会保険労務士  1級建築士 日商簿記検定2級 初級シスアド

 

しかし、現在難易度の高い資格が、必ずしも当初から難易度が高かった訳ではありません。多くの資格は、最初は難易度が低かったのですが、 時とともに受験者は増え難易度が増していったのです。従って、将来人気が出そうな資格を難易度の低い間に取得しておくことは非常に重要です。

勿論、資格の目的が一定の能力を担保するものであれば、受験者の増加と難易度の相関関係は存在しません。とはいうものの、検定試験のレベルも受験者数に引っ張られる形で変化しているのが実態でしょう。

そして、CIAは現時点ではマイナー資格であり、従って、受験者数も非常に少なく難易度も高くありません。言い換えれば、将来性があるのであれば、まさに狙い目の資格です。

では、将来性はどうでしょう。将来性を考えるポイントは、『内部監査人を取巻く環境』と『内部監査人に期待される役割』について理解しておく必要があります。

オークスリーコンサルティング (著)
出版社: ブイツーソリューション (2007/8/30)、出典:出版社HP

CIA(公認内部監査人)の将来性

内部監査人を取巻く環境

内部監査人とは、文字通り企業活動が正しく行われているかを確認する役割を持った人の事であり、通常は組織に属する(雇われている)従業員です。(現在は、内部監査活動を一部アウトソースする動きもありますが、 監査実施の主体が組織内部にある限りは、外部監査ではなく内部監査となります。)

言い換えれば、組織の自浄作用を確実にするためのお目付け役です。企業および従業員のモラルが高い、あるいは不正に対する外部の目が緩い社会では重要性は低いのです。

実際、賄賂が横行しまたそれを容認するような社会では、内部監査自体 必要がないでしょう。

内部監査人の必要性が高まる要素

企業および従業員のモラルの低下 × 社会的不正への厳しい視線

 

更に、この状況を後押しするかのごとく企業改革法(SOX法)が成立し、一層内部監査人の必要性が高まっています。SOX法により、焼太りする対象としては、外部監査会社やコンサルティング会社だけでなく、内部監査人も含まれます。

内部監査人に期待される役割

以上は、これまでの一般的な内部監査人の役割でした。しかし、近年は内部監査人に高度なコンサルティング機能も求められつつあります。具体 的には、企業活動が効率的に行われているかを評価し、効率的でなければ効率的に行われるように勧告する役割のことです。これまでは、たとえ効率的でなくとも、不正がなければ良しとされて来たのですが、今後は不正が行われていないだけではなく、企業活動自体が効率的に実施されていることまで監査、勧告する必要があるのです。

これまでの役割 今後の役割
企業活動が正しく行われているか 企業活動が正しく行われているか
企業活動が効率的に行われているか

 

すなわち、これまで外部のコンサルティング会社に依頼していた内容の一部を内部監査人に求めるようになって来ているのです。 これは、内部監査の専門性があれば、事業会社からコンサルティング会社へ、あるいは反対に、コンサルティング会社から事業会社の内部監査部門へとキャリアチェンジすることも比較的容易であることを意味しています。

以上より、CIAの将来性は非常に高いのではないかと想定されます。(疑心暗鬼の方は、インターネットで『内部監査』『CIA』『転職』『求人』等のキーワードで検索して見て下さい。

CIA(公認内部監査人)試験の実際の難易度
CIA(公認内部監査人)試験は、4択です!

CIA試験は、受験者数が少ないことから狙い目の資格である旨を述べて おりますが、実際の難易度はどうでしょうか。正直、問題自体、それ程難しくはありません。更に、4科目に分かれ科目合格が認められている上 (しかも合格科目は、不合格の残りの科目を受験し続ける限り有効です)、4択問題です。具体的にイメージして頂くために以下の例題を見てみましょう。

例題(PartIIの出題範囲より)

金融業A社は、新たに採用した職員に対し、入社後一定期間カリキュラムに基づいた研修を実施している。当該研修を行うにあたってもっとも適切な研修形態はどれか

a.集合研修
b.OJT
c.ジョブローテーション
d.e-learning

上記の問題は、一定の常識で判断可能な問題と言えるでしょう。CIA試験では、このような常識で回答可能(あるいは選択肢を絞り込むことが可能)な問題が相当数あります。

また、次のような問題はどうでしょうか。

例題(PartIIの出題範囲より)

メインフレームで基幹システムを運用してきた食品製造業 A社は、システムの更新を計画している。経営幹部は、可能な限り初期費用ならびに運用費用を抑えようと考えている。このような状況の中で、情報システム部門長のBは、システムベンダーに対し、見積もりの依頼を行うが、どのような方向性で依頼するのがもっとも適切であるか

a.処理速度の速い、最新のメインフレームを中心としたシステムの導入
b.オープンシステムへの移行を前提とした再設計
c.現行のメインフレーム資産を活用したオープンシステムへの移行
d.メインフレームを前提としつつ、仕様の見直しによる移行

上記の問題は、情報システム部門の経験のある方、システム関連企業の 経験のある方、あるいはコンサルティング会社等の経験のある方であれ ば、容易に解答が分かるでしょう。しかし、そういった経験のない方は勉強しておかなければ解答するのは困難と思われます。

CIAは4科目に分けて出題されますが、社会人として次のような実務経験があれば相当有利(学習時間を大幅に削減可能)と言えます。従って、次 のような経験のある方は是非資格取得を真剣に考えられては如何でしょうか。(内部監査業務経験者は、基本的に全てを網羅していますのでは 倒的に有利な実務経験です。)

・IT関連業務(コーダー、システムエンジニア、システム監査、システムコンサルティング)
・財務・会計業務(財務、経理等)
・購買業務
・人事業務

CIA(公認内部監査人)試験合格までの勉強時間

CIA試験合格に必要な勉強時間は、個人差に加え実務経験等により異な ってきますが、おおよその目安として100~600時間程度と考えられます。

・上記のような実務経験をお持ちの方:100~300 時間
・上記のような直接の実務経験はないが、数年の社会人経験等がある 方:250~400時間
(社会常識で解答可能な問題があります)
・社会人経験が浅いもしくは学生で、上記に関連する学位等を全く持たない方:500 時間超

さいごに

CIA試験はかなりの正答率を求められていますが、全問正解する必要はありません。言い換えれば、合格最低点(詳細は公表されていませんが)を取れば良いのです。従って、全く未知の問題にぶつかった場合は、後回しにして、確実に解ける問題から片付けることをお勧めします。

また、問題は4択のためあてずっぽうで解答すれば正答率は25%に過ぎませんが、もし明らかに正答ではないものを2つ排除できれば、正解の可能性は50%となります。従って、可能な限り正答率があがるよう粘り強く問題に取り組むことが重要です。それでは、本書を活用され試験に合格されるよう祈念致します。

オークスリーコンサルティング (著)
出版社: ブイツーソリューション (2007/8/30)、出典:出版社HP

目次

ビジネスプロセス:100問
財務会計と財務:100問
管理会計:50問
規制、法律、経済:50問
情報技術:150問

ビジネスプロセス

問題1
バランススコアカードの視点として、適切なものはどれか。
1.財務の視点
2.顧客の視点
3.業務プロセスの視点
4.人材と変革の視点」
a.1と2
b.1と3
c.1と2と3
d.全て

問題2 バランススコアカードの構築におけるステップを正しく並べているものはどれか。 1.ターゲットの設定
2.戦略マップの作成
3.重要成功要因の洗い出し
4.ビジョンの策定
a.1→3→4→2
b.4→2→3→1
c.4→1→3→2
d.1→4→2→3

問題3
バランススコアカードの視点を構成する項目として適切でないものはどれか。
a.戦略目標
b.重要成功要因
c.アクションプラン
d.従業員満足度

解答1
全てバランススコアカードの視点である。よって、正解はd。人材と変革の 視点は、イノベーションと学習の視点や学習と成長の視点と表現されることも多い。

解答2
バランススコアカード構築は、①ビジョン・戦略の策定②戦略マップの作成と戦略目標の設定③重要成功要因の分析④業績評価指標の設定⑤数値目標(ターゲット)の設定⑥アクションプランの作成となる。よって、正解はb。

解答3
バランススコアカードの視点を構成する項目は、戦略目標、重要成功要 因、業績評価指標、ターゲット(数値目標)及びアクションプラン(戦略プロ グラム)である。従業員満足度は、各項目の構成要素かもしれないが、構成項目ではない。よって、正解はd。

問題4
バランススコアカードについて、適切ではない記述はどれか。
a.ターゲットとする顧客に望まれる斬新な製品やサービスを提供すること。
b.バランススコアカードは、戦略志向の経営システムである。
c.バランススコアカードは、PDCA サイクルを確実なものとする。
d.バランススコアカードは、戦略やビジョンをアクションプランまで落とし込む。

問題5
バランススコアカードにおける財務の視点の業績評価指標として適切でないものはどれか。 a.キャッシュフロー
b.従業員一人当たり売上高
c.製品一つあたりのコストの
d.増収率

問題6
バランススコアカードにおける顧客の視点の業績評価指標として適切で ないものはどれか。
a.顧客満足度
b.納期遵守率
c.新製品の売上高比率
d.新規提案の実施件数

問題7
バランススコアカードにおける業務プロセスの視点の業績評価指標としい もっとも適切なものはどれか。
a.キャッシュフロー
b.受注から納品までのリードタイム
c.離職率
d.従業員あたりの教育コスト

オークスリーコンサルティング (著)
出版社: ブイツーソリューション (2007/8/30)、出典:出版社HP