増補新版 薬膳・漢方 食材&食べ合わせ手帖




目次

本書の使い方
漢方・薬膳の基本の考え方
漢方・薬膳がわかる 7つのキーワード
陰と陽
五行説
五性
五味
気・血・津(水)
五臟六腑
帰経

▼自分でできる体質チェック
気虚体質
血虚体質
気滞体質
瘀血体質
陰虛体質
陽虚体質
水毒体質
陽熱体質
●年齢などによる体質

第一章 漢方食材

薬膳における漢方食材の役割
金針菜 きんしんさい
枸杞の実 くこのみ
蓮の実 はすのみ
松の実 まつのみ
陳皮 ちんぴ
なつめ
緑豆 りょくとう
竜眼肉 りゅうがんにく
杏仁 きょうにん
山植子 さんざし
葛くず
黄香 おうぎ
高麗人参 こうらいにんじん
当帰 とうき
紅花 べにばな
ジャスミン
マイカイ花
漢方食材を手に入れるには
column① おうちで楽しむ薬膳茶

第二章 薬味&ハーブ・ スパイス

薬膳における薬味&ハーブ・スパイスの役割
にんにく
しょうが
みょうが
しそ
黒ごま
白ごま
えごま (葉)
ミント
バジル
フェンネル
タイム
セージ
ローズマリー
バーベナ
香菜 しゃんつぁい (パクチー・コリアンダー)
ナツメグ
シナモン
八角 はっかく (スターアニス)
丁字 ちょうじ (クローブ)
ウコン(ターメリック)
クミン
からし (マスタード)
こしょう
とうがらし
花椒 かしょう
column② パッとひとふり 薬膳ミックススパイス

第三章 穀類&豆類

薬膳における穀類&豆類の役割
米 こめ
もち米 もちごめ
黒米 くろまい
あわ
燕麦 えんばく
大麦 おおむぎ
小麦 こむぎ
はと麦 はとむぎ
きび・高きび たかきび
そば
黒豆 くろまめ
小豆 あずき
大豆 だいず
白いんげん しろいんげん
納豆 なっとう
豆腐 とうふ
column③ いつものご飯を薬膳に

第四章 野菜&きのこ

薬膳における野菜&きのこの役割
トマト
なす
きゅうり
ピーマン・パプリカ
かぼちゃ
ズッキーニ
にがうり
とうがん
とうもろこし
オクラ
さやえんどう・ スナップえんどう
えだまめ
そらまめ
キャベツ
レタス
はくさい
ほうれんそう
こまつな
しゅんぎく
なのはな
チンゲンサイ
空芯菜 くうしんさい
豆苗 とうみょう
もやし
あしたば
みずな
セロリ
みつば
にら
よもぎ
せり
うど
ブロッコリー
カリフラワー
アスパラガス
ねぎ
たまねぎ
らっきょう・しまらっきょう
菊花きくか
だいこん
かぶ
ゆりね
ビーツ
にんじん
じゃがいも
さつまいも
さといも
やまのいも
たけのこ
ごぼう
れんこん
こんにゃく
まいたけ
しいたけ
黒きくらげ くろきくらげ
白きくらげ しろきくらげ
マッシュルーム
マコモダケ
column④ 薬膳の調理法

第五章 果物&木の実

薬膳における果物&木の実の役割
りんご
なし
いちご・ブルーベリー
ブラックベリー・ ラズベリー・マルベリー
さくらんぼ
もも
ぶどう
メロン
すいか
バナナ
パイナップル
キウイフルーツ
マンゴー
ライチ
カリン
うめ
あんず
びわ
かき
いちじく
ざくろ
レモン・かぼす・すだち
オレンジ
グレープフルーツ
みかん
ゆず・金柑 きんかん
くり
アーモンド・らっかせい
かぼちゃの種・すいかの種
ぎんなん
くるみ
column⑤ 薬膳果実酒のすすめ

第六章 魚介&海藻

薬膳における魚介&海藻の役割
さけ
あじ
いわし
さば
さんま
かつお
ぶり
たい
たら
いしもち
うなぎ
はまぐり
あさり
しじみ
ムール貝 ムールがい
ほたて貝 ほたてがい
かき
えび
かに
いか
たこ
くらげ
のり
こんぶ
わかめ
ひじき
column⑥ 魚介鍋でアンチエイジング

第七章 肉・卵&乳製品

薬膳における肉・卵&乳製品の役割
牛肉 ぎゅうにく
豚肉 ぶたにく
鶏肉 とりにく
鴨肉 かもにく (合鴨)
羊肉 ひつじにく
鹿肉 しかにく
うずらの卵
卵 たまご
牛乳 ぎゅうにゅう
チーズ
ヨーグルト
バター
column⑦ 洋風料理×薬膳のアイデア

第八章 調味料

薬膳における調味料の役割
しょうゆ
塩 しお
みそ
ワイン・焼酎 しょうちゅう
日本酒・酒粕 にほんしゅ・さけかす
酢 す
砂糖 さとう
水飴 みずあめ
はちみつ
亜麻仁油・しそ油・えごま油・ グリーンナッツオイル
ココナッツオイル・米油・ ごま油・オリーブ油
column⑧ 薬膳風たれ&ドレッシング

第九章 飲み物

コーヒー・ココア・紅茶・緑茶
ウーロン茶・麦茶・ プーアール茶・ジャスミン茶
ルイボスティ・桑の葉茶・ 蓮の葉茶・杜仲茶
ケツメイシ茶・菖蒲根茶・そば茶・ほうじ茶
●おうちで薬膳Q&A:
●「舌診」で 日々の体調をチェック
●用語解説
●食材別索引
●効能別食べ合わせ索引

喩静 (監修), 植木もも子 (監修)
出版社: 西東社; 増補新版 (2018/5/29)、出典:出版社HP

本書の使い方

本書は食材を、野菜、果物など9つの章に分けて紹介しています。食材のページでは、 6 薬膳や漢方、栄養学から見た性質や効能、おすすめの食べ合わせ方がわかります。

 

代表的な効果と食材名

食材の働き
特性の解説 薬膳・漢方の観点から 見た食材の働きと、栄 養学的な特性、健康に 及ぼす影響を解説。

おすすめの食べ合わせ
食材の特性を生かした食べ合わせ例を紹介。

特徴的な栄養成分
食品成分値の一部は 「日本食品標準成分表 2015年版(七訂)」によるものです。1mg(ミリグラム)は1000分の1g、1kg(マイクログラム) は1000分の1mgです。また、ビタミンA(B-カ ロテン)の数値はB-カ ロテン当量、ナイアシンはナイアシン当量です。成分値のデータがないものは、食材に含まれる 栄養成分のみ記載しています。

薬膳データ
薬膳の観点からの区分けと、その食材に合う体質がひと目でわかります。

主な栄養素の働き
●体を作る主成分
たんぱく質
体の組織を作り、生命活動の維持に欠かせない栄養素。約20種類のアミノ酸から構成され、そのうち の体内では作れない9種類を必須アミノ酸といいます。肉、魚、卵 などに豊富です。

●体の主要なエネルギー源
糖質
身体に吸収された後、すばやくエネルギーになります。炭水化物は糖質と食物繊維をまとめて移したもの。穀類、芋類に多く含まれます。

上手な利用方法
食材を有効に活用するための方法 やレシピを紹介しています。
旬・選び方・保存法
旬はその食材が最もおいしいとされる時期を表示。ただし、輸入品や栽培法によって異なるも のもあります。

薬膳豆知識
あまり知られていない、薬膳の観点からの食材の豆知識を紹介しています。

注意ポイント
食べ合わせの悪いもの、体質的に適さないもの、調理で気をつけることなどを紹介。食べ合わせの悪いものには、一緒に調理するだけでなく、一食として一緒に食べるものも含まれています。

※本書で紹介している食材の効能・効果は 一般的なものです。個人の体質や体調によって、効果は異なります。また、病気や体調不良の場合は、医師の診断をおすすめします。

※一部食材は中国での文献が少なく、日本での説を採用しています。また、データのないものは掲載していません。(薬 膳データ、栄養成分等)

※本書はとくに明記しない限り、2018年5 月30日現在の情報にもとづいています。

●細胞膜やホルモンの原料になる
脂質
糖質と同様にエネルギー源になるとともに、細胞膜の成分やホルモンの材料になります。肉や魚、油脂に多く含まれます。

●体の調子を整える
ビタミン
身体の機能を正常に保つ働きをします。代表的なものはビタミンA、B、Cなどで全部で13種類あり、体内での働きはそれぞれ。野菜に豊富で、水に溶ける水溶性、油に溶ける脂溶性に分けられます。

●微量で体を健康に保つ
ビタミンと同様に体の調子を整えるほか、骨や歯を作る役割もあります。カルシウム、カリウム、鉄など16種類あります。野菜や改装などに多く含まれます。

漢方・薬膳の基本の考え方

●漢方とは?
自然とともに生きることが健康につながるという考え方
長い歴史を持つ中国の伝統医学をベースに発展した漢方。本来は漢方医学といい、漢方薬を用いた治療だけでなく、薬膳や鍼灸なども含んだ医学を指します。漢方では、一人一人の体質に合わせて治療法を考えるところが大きな特徴です。

また、漢方には「天人合一」という言葉があります。これは、人間と自然界との相互関連を表す言葉です。環境は人の体に影響を与える一方、人間は自ら体調を調整しながら、環境変化に対応しています。漢方の根底にある考え方です。

●薬膳とは?

身近な食材にも薬と同じ効果がある
薬膳とは、漢方の考えを基本に、季節や体質に合わせて食材を選んで作る料理のこと。「薬膳」という言葉自体は近代になって使われるようになりましたが、もともと中国には「医食同源」「食養生」という考え方があり、食材にも薬と同じように体を治す効果があると考えられていました。今でも健康維持のために、中国では毎日の食事に薬膳が取り入れられています。薬膳の考えを取り入れて食事を作るためには、まず、食材の持っている性質や味を知ることが大切です。

●薬膳と体質
体質に合った食材を選ぶことで 食べものは薬になる

薬膳を取り入れるなら、食材の性質を知るとともに、自分の体質を知ることも必要です。同じ食材でも、体質によって、薬にもなれば毒にもなります。本書では、セルフチェックでわかる、8種類の体質を紹介しています。

また、体質は育った気候風土も関係しています。日本の湿気が多い気候や、気を遣う国民性も、体質に影響を及ぼしていると考えられています。水分代謝をよくする食材や、ストレスを緩和する食材を選ぶなど、日本人としての体質も意識しましょう。

●薬膳の知恵を食卓に取り入れるために
体質、季節、食材の性質をふまえて、食材を組み合わせる

薬膳では、食べる人の体質や体調、食材の性質、季節の特徴などをふまえて食材の組み合わせを考えます。組み合わせによって、効果がアップしたり、強過ぎる効果を抑えたりすることができます。

次ページからは漢方・薬膳の基となる考え方と、食材の性質や体質について詳しく説明します。

漢方・薬膳がわかる 7つのキーワード

 

漢方・薬膳を知る上で大切なポイントを7つのキーワードに分けて紹介します。

キーワード1 陰と陽
相反する関係のバランスをとることが大切

陰と陽とは、もともとは月と太陽のことで、相反する関係を指します。例えば、夜と昼、下と上、寒い暑い、女と男などもこの関係に当てはまります。漢方では、この陰と陽がお互いに協力・抑制し合って、バランスがとれている状態を、よい状態と考えます。

食物も陰のものと陽のものに分けられ、温める性質は陽、冷やす性質は陰と考えられています。このことは、薬膳の観点から体に合う食材を組み合わせるときの大きなポイントになります。

上の図は「太極図」といい、森羅万象が陰陽で成り立っていることを示す図。1年や1日の中の陰陽も表している。1年では陽は夏至、陰は冬至、1日では陽が午の刻(11~13時)、陰は子の刻(23~1時)がピークとなる。

キーワード2 五行説
あらゆるものは、木・火・土・金・水に分類できる

漢方では、自然界のあらゆるものは、「木、火、土、金、水」の五つの性質(五行)に分類できると考えます。このことを「五行説」といいます。五行には、それぞれ季節、色、味、体の臓器なども下の表のように対応しています。この考え方は食材の性質にもかかわってきます。

五行の間には、お互いにその力を促す関係と、抑える関係があります。例えば、木が燃えることで火が生まれます。これが促す関係と考えられます。一方、木は土から養分を奪います。これが抑える関係と考えられます。このように、五行は それぞれに助け合い、抑制し合いながら、バランスをとっています。

上記は五行の性質を季節、気候、色、味、人 間の臓器など、それぞれ類似した性質を持ったもので分類し、関係性を矢印で示したもの。

キーワード3 五性
食べものの陰陽の性質を5つの段階に分けたもの

食べものには体の機能を促して温めたり、機能を抑えて冷やしたりする性質があります。その性質を五行に従い、熱性、温性、平性、涼性、寒性の5つに分類したものが五性です。体が冷えている人には熱性・温性の食べ物、体が熱っぽい人には涼性・寒性の食材が適しています。平性は身体を温めも冷やしもしません。

旬の食材は、その季節にふさわしい性質を持っているものが多いのが特徴です。例えば暑い夏ならば、体の熱を取って冷やすもの、寒い冬ならば、体を温めるものが多いのです。薬膳では、この意味からも、旬のものを食べることが、体を健康に保つと考えられています。

熱 熱性のものは体を温める力が強いので、体の中の冷えや寒さを取り除く効果がある。気血の巡りをよくして、痛みを止め、冷えや、冷えによる下痢などによい。
食材●シナモン、こしょう、とうがらし、羊肉、日本酒など

温 熱性と同じく冷えや、寒さを取るが、熱性よりも作用は穏やか。疲れを癒したり、冷えによる食欲不振の改善などに適している。気血の巡りもよくする。
食材●なつめ、しょうが、しそ、もちこめ、かぼちゃ、ねぎ、ももなど

平 体を温めも冷やしもせず、常食しても体に偏った影響を与えにくい食材。熱性、寒性の強い性質を緩和する働きもあり、他の性質の食材と組み合わせやすい。
食材●米、キャベツ、にんじん、じゃがいも、しいたけ、ぶどう、牛肉など

涼 体を冷やす性質を持っているが、作用は寒性より穏やか。微熱、のぼせ、ほてりなどの改善のほか、熱中症予防などの暑い季節の体温調節にも役立つ。
食材●あわ、大麦、きゅうり、セロリ、りんご、なしなど

寒 涼性よりもっと強い、体を冷やす性質を持っている。発熱、のどの渇き、顔が赤い、のどの痛み、便秘などの改善や、涼性と同様に、夏の体温調節などに使う。
食材●にがうり、れんこん、すいか、バナナ、かに、こんぶ、わかめなど

キーワード4 五味
五行に基づき導き出された5つの味のこと

五味は、食材の味を五行に基づいて、5種類(酸、甘、辛、苦、鹹)に分類したもの。単純に舌に感じる味だけで分けられているのではなく、その味が持つ機能によっても分類されています。そのため、実際の味と五味が異なる食材もあります。食材によっては一つの味だけでなく、複数の味を持っているものも少なくありません。それぞれの味には、対応する性質(五性)、体の臓腑(帰経)があります。

五味のほかに「渋味」「淡味」という味もあります。「渋味」は酸味の一種と考えられています。「淡味」はほとんど味のないものとして分類されます。

酸 酸っぱい味。引き締める、固めるなどの効能 がある。唾液の分泌をよくしたり、汗や咳を鎮めたり、下痢などの改善にも役立つ。
食材●うめ、あんず、ざくろなど

甘 甘い味。脾や胃の働きを助ける。虚弱体質の改善や食欲増進、痛みを和らげる作用がある。食べ過ぎは、逆に脾や胃に負担をかける。
食材●なつめ、米、 大豆、はちみつなど

辛 辛い味。発汗作用を促し、気を巡らせて体の中にたまった寒さや熱、湿気を体の外に出す。 血液、津液も巡らせて、胃の調子も整える。
食材●しょうが、こしょう、とうがらしなど

苦 苦い味。排泄作用や体の中の余計な水分を取り除く効能を持つ。便秘、むくみの解消や咳、 ぜんそくの改善に役立つ。熱を取る作用も。
食材●にがうり、レタス、緑茶など

鹹 鹹味は塩味のこと。かたいものをやわらかくする作用や詰まっているものを正常に戻す作 用があるため、便秘や腫れ物を改善する。
食材●くらげ、のり、 こんぶ、塩など

淡 淡い味で、ほとんど味はない。 体液の代謝を促し、利尿作用でむくみ、下痢を改善する。
食材●はと麦、とうがんなど

渋 渋い味は酸味に含まれる味と考えられる。働きに関しても、酸味と同様。
食材●蓮の実、うめ、ざくろなど

キーワード5 気・血・津 (水)
絶えず体を巡り、体を構成するもの

漢方では人の体は、気・血・津という3つの要素 から成り立っていると考えます。「気」とは生命を 維持し、活動させるエネルギーのこと。体の中の血 (血液)や津(体液)を巡らせているのが「気」です。 この3つは互いに影響し合っていて、全身の「気・ 血・津」のバランスが崩れると、体に不調が起こる 原因となると考えます。

キーワード6 五臓六腑
臓器を体の機能や働きで分けたもの

五臓とは肝、心、脾、肺、腎を、六腑とは胆、小 腸、胃、大腸、膀胱、三焦(体内の空間)を指します。五臓と六腑は表と裏のような関係で、五臓は栄 養を貯蔵して使い、六腑は口から入ったものを仕分 けし、栄養を五臓に送り、不要なものは体外に排出 する働きをします。漢方で臓と腑とは、臓器そのものだけではなく、臓器の働きも指しています。

気や血の流れをつかさどり、消化を助ける機能や、運動機能と深くかかわる。
五臓をコントロールする。血液を全体に送り出し、体を温め、栄養を送る。
消化吸収機能を担い、栄養分を気血に変える。水分や不要物を排除する働きも。
呼吸機能を担当するほか、全身の気や水分の調節を行う。感覚機能にもかかわる。
成長発育、生殖機能と深いかかわりがある。体内の水分代謝と貯蔵を管理する。

 

キーワード7 帰経
五味と対応する五臓六腑の組み合わせのこと

五行に基づき、五味と対応した五臓六腑を帰経といいます。例えば、酸は肝と胆が結びつきのある臓腑になります。それぞれの味はそれぞれの臓腑の機能を助け、影響を及ぼすとされています。

帰経がわからない場合は、色で五行を照らし合わせて判断することもできます。例えば赤い小豆の帰経は心、黒豆は帰経が腎になります。帰経も五味と同じで、食材によってはいくつかの帰経を持つものもあります。

帰経は、五味や色のほかにも季節や気候などとも関係があり、それぞれ作用を及ぼし合っています。

五行によって、食材の味、色、季節、気候などと対応する臓腑が分けられる。これを表に したのが「五行色体表」。

例えば、風邪がはやり始める秋に、しょうが などの辛味のある食材をとると、肺の働きを 助け、予防になると考える。

喩静 (監修), 植木もも子 (監修)
出版社: 西東社; 増補新版 (2018/5/29)、出典:出版社HP

自分でできる体質チェック

気虚体質
気力が無く、疲れやすく いつも横になりたい
呼吸が浅くて、 息切れしやすい
汗をよくかき、 風邪を引きやすい
下痢をしやすい
昼間から眠気がする
顔につやがない

血虚体質
不安、動悸が起こりやすい
寝つきが悪く、夢が 多くて睡眠が浅い
髪や肌がパサついたり、爪が割れやすい
目が疲れやすい (ドライアイ)
手足の引きつりやしびれを感じる
顔色が白っぽく、めまいを起こしやすい

気滞体質
イライラしやすい
脇腹や胸が張る し(女性は生理のときなど)
頭や体の節々が痛む
おなかが張りやすく おならが多い
ため息やげっぷが多い
胸がつかえることがよくある

瘀血体質
顔にくすみやシミが出やすい
首や肩がこりやすく 決まった所に痛みがある
生理痛がひどく、 月経血に固まりがある
静脈りゅうがある
手足に冷えがある
慢性的な痛みや痔・ ガンなどの持病がある

陰虚体質
のどが渇きやすい
のぼせやすい
手足がよくほてる
便秘しやすく、ウサギのふんのような便が出る
舌が赤くて細い
よく眠れない、または寝汗をよくかく

陽虚体質
寒さに弱い
あたたかい飲み物や食べ物が好き
夜尿症、またはトイレが近い
下半身がむくみやすい
寝ても疲れがとれず朝に弱い
顔色が青白い

水毒体質
体が重く、だるい
吐き気をもよおしやすく、食欲が無い
むくみやすい(とくに足)
体が全体的に冷たい
下痢気味で、尿が少ない
雨の日、くもりの日に具合が悪くなる

陽熱体質
顔が赤い
イライラしていつも怒りっぽい
目が充血している
喉が渇き、冷水を好む
血圧が高い傾向
尿、痔、おりものなどの分泌物の色が濃く、臭いが強い
寒さに弱い
体が重く、だるい
顔が赤い

気虚体質

「気」が足りず、体力が落ちている

人間の活動のエネルギー源である「気」。この気の量が不足しているのが「気虚」体質です。

気は、食べ物が五町で消化吸収されて作られます。気虚体質は胃や腸が弱く、消化吸収機能が低下しているため、上手に気が作れない状態のこと。過労も気虚の原因となります。その結果、風邪などのウイルスに対する抵抗力も落ちてしまいます。

胃腸を冷やす食べ物や消化しにくい生ものは、できるだけ避けるようにしましょう。また、食べ過ぎも禁物。温かく消化の良いものを適度に食べるようにしてください。

血虚体質

「血」が不足し、体が栄養不足になっている

「血虚」は体のさまざまな部位に栄養を行き渡らせる「血」が不足した体質です。肌荒れや抜け毛、爪がかけたり、こむらがえりといった不調が起こりがちで、集中力の低下や不眠のほか、精神的にも不安定になりやすくなります。

女性は整理があるため、男性よりも血虚になりやすいといわれています。また、血虚の状態が慢性化すると、妊娠しにくくなる可能性があるので要注意。

食事の偏りが無理なダイエット、寝不足や過労は、血が不足する大きな要因となるので、注意しましょう。

気滞体質

「気」の流れが悪くなって、不調を起こしている

体や心がストレスを受けると気の流れが悪くなって滞り、気滞体質に陥ります。のどが詰まったり、おなかや胸が張るといった症状のほか、眠れない、怒りっぽくなるといった精神的な不調が現れやすくなります。

ゆっくり休養をとって、ストレスを上手に発散すれば、気の巡りはよくなります。また、薬味やハーブ、スパイスには、気の流れを促す効果があるのでおすすめです。

なお、気滞の状態を放置していると、気とともに体内を巡る血と津液の流れも悪くなりがち。早めに対処しましょう。

瘀血体質

「血」の流れが滞って、汚れがたまっている

血液そのものと、血液が運ぶ栄養素や酸素、ホルモンなどを含めた「血」の巡りが悪くなったり、汚れがたまって滞っている体質を指します。「瘀血」の原因はストレスや冷えが多く、更年期でホルモンバランスが乱れても起こりやすくなります。また、生理や閉経、妊娠・出産は、すべて血の機能にかかわっているため、女性は瘀血になりがちなので気を付けましょう。

ストレスをためないよう、趣味や運動で発散を。体を冷やす冷たいもののとり過ぎや、薄着も控えて。体を温めることが瘀血解消につながります。

陰虚体質

「陰」の気が足りず、潤い不足になっている

陰虚体質とは、体に潤いをもたらす「陰」の気が足りず、体内の津液も少ない体質です。陰の気は年を取るごとに減るため、更年期が近い40歳以降によく見られます。寝汗をよくかき、のどや口、目が乾きやすく、血液中の水分も少なくなって、血液がドロドロになりやすいのが特徴。秋の感想に弱く、咳が出たり、乾燥肌になりがちです。

体に潤いを与える、陰を補う食べものを積極的にとりましょう。十分な睡眠をとることも大切です。ストレスや疲労、喫煙なども、陰の気を減らす原因となるので注意してください。

陽虚体質

「陽」の気が少なく、体が冷えている

体を温める「陽」の気が足りないのが「陽虚」です。体が冷えやすく、そのために腰や間接に痛みを感じたり、下痢をしやすいなどの症状があります。

寒さに弱くて、冬になると不調になりがち。寝ても疲れがとれません。やる気が出ず、声に力がないといった特徴があり、体がむくんだり、尿の量が少ないといった症状も見られます。

夏場でも体を冷やさないように注意し、胃腸を冷やす生ものや冷たい物、脂っこい物や消化しにくい食べ物は避けること。また、塩分も控えめを心がけて。

水毒体質

「水」の代謝が悪く、体内に水分がたまっている

津液の代謝が悪くて、体内に水分がたまった体質です。水分の代謝には脾、肺、腎臓が関係していますが、とくに腎臓の働きが低下していると、水分が体にたまりやすくなってしまいます。また、肺と脾に異常があると、むくみや喘息などの症状も現れてきます。

脾、肺、腎の働きを正常にするために、気をめぐらす作用のある食材をとりましょう。さらに水分代謝をよくする欲罪で不要な水分を体外に排出します。この体質の人は冷え性の場合が多いので、体を温めるものをとり、運動をして代謝を上げましょう。

陽熱体質

ストレスなどで体に「熱」がこもっている

ストレスや飲酒、カロリーの高い食事などで体に熱がこもり、不調になっている体質です。ストレスにより肝がダメージを受け、この状態が続くと、脾や胃も弱くなり、心にも影響を及ぼすように。放置すると胃腸炎などの消化器系の病気や、脳卒中、心筋梗塞など循環器系の病気に陥るおそれがあります。

まずは、飲酒を控え、カロリーの高い食事をやめましょう。涼性、寒性の野菜をたくさん食べて、体の余分な熱を取り除いたり、気の巡りをよくする食材をとるなど、食生活から見直してください。

年齢などによる体質

高齢者
胃腸の働きが弱っているので、消化にいいものを
加齢によって、胃腸の働きが弱くなり、消化能力も落ちているので、生ものや体を冷やすもの、消化が悪いものは避けましょう。肥満型の人は脂っこいものは控えます。やせ型の人は香辛料をとり過ぎるとのぼせることがあるので注意を。

子ども
成長を妨げない胃腸にやさしい食事を
成長や発育を促すため、胃腸を守る食事を心がけて。香辛料は刺激が強いので控えめに。甘いもののとり過ぎは、食欲不振を引き起こすので、ほどほどの量に抑えましょう。カフェインを含む飲み物は✕。飲み物は白湯(お湯)が最適です。

妊婦
流産につながるような食材は避ける
妊婦は暑がりになりがちなので、熱を取る野菜や果物を食べるといいでしょう。また、アロエのような気を降ろす性質のある食材は、流産につながる可能性があるので摂取は禁物。辛すぎるものやお酒類、甘いものの食べ過ぎもよくありません。

喩静 (監修), 植木もも子 (監修)
出版社: 西東社; 増補新版 (2018/5/29)、出典:出版社HP