リフォームスタイリストの世界




はじめに――将来性と魅力のあるリフォームスタイリストの仕事

建築・インテリアの専門学校の指導者への取材で、このところ「リフォームの仕事がしたい」と希望して入学してくる学生が増えたという話を頂戴しました。大工さんや設備の施工者など職人さんの志望でも、新築住宅ではなく「リフォームを」という学生が増えたそうです。
これにはテレビ番組の影響などが考えられそうですが、新しい家を求める若い層の中で、「お金をかけなくても満足できる家ができる」「古い家を壊すのはもったいない」「旧家をリニューアルして自分好みに作りかえるのがいまどきのスタイル」といった考えが着実に育っていることがうかがえます。

■巨大だけれど地味なリフォーム市場

リフォーム市場は30年以上前から、6~7兆円規模を推移してきた巨大なマーケットです。それなのにリフォームは新築住宅市場の陰に隠れた存在でした。古くから日本は、持ち家に関して「スクラップアンドビルド」つまり「壊して建て直す」という意識が根づいており、リフォームや中古住宅の流通はあまり発達しませんでした。その上に太平洋戦争からの復興という重大テーマが重なって、昭和から平成にかけていっそうの新築住宅ブームとなり、リフォームは「風呂釜を買い替える」「台風で屋根瓦が飛んでしまったので葺き替える」など「改良・修繕」という地味な役回りを引き受けてきたのです。

新築住宅ブームに乗って住宅業界も、戦後から現在まで一貫して「新築住宅推し」を続けてきました。
住宅会社にとって、言うまでもなく新築住宅の方がリフォームより「うま味のある」商売です。ですから住宅業界は長持ちする立派な家を追求せず、30年もしたら壊して建て替えられる程度の「適当な」家を安価な価格で(それほど安くもないのですが)建ててきたのではないかと皮肉な見方もしたくなります。

■魅力ある家ならリフォームして住み継ぎたくなる

本書の第2章でも紹介しますが、日本の住宅市場に占めるリフォーム市場、また、リフォームにつながる中古住宅の流通市場は、先進諸国と比較して圧倒的な低水準にあります。
日本のリフォーム市場には量的にも質的にも大きな伸び代があるのです。それでもこのところリフォーム市場は頭打ちで伸び悩んでいます。その大きな理由は、さきほど住宅会社が「適当な」家を建てていると冗談めかして述べたように、リフォームしたり買い替えたりしても住み継ぎたい魅力のある家が少ないからです。

江戸時代や明治時代に建てられた旧家には(文化財に指定されるなどの規制もありますが)、取り壊さず移築してでも再利用したいという魅力があります。開国によっていちはやく欧米諸国への門戸を開いた横浜や神戸などの港町には、通商のため来日した欧米人が自邸を建てましたが、いまも住み継がれている家が多数残っています。

これらはもちろん高級住宅だからという理由もあります。しかし西欧では、一般の中級住宅でもリフォームしたり、買い替えたりする住まい方が普通に行われています。「もったいない精神」で知られる日本人が、こと住宅にかけては「使い捨て」を続けているのは残念なことです。

■行政もバックアップに動いている

この状況を憂えた政府もようやく重い腰を上げました。平成4年に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」もそのひとつ。この法律は、世帯数を上まわり量的充足が進んだ住宅ストック(既存の住宅)を最大限活用するため、「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」、すなわち、良質な既存住宅を適切にメンテナンスし、必要に応じリフォームし、多世代にわたり使っていくシステムを構築することをうながすものです。

また、平成4年に国土交通省が発表した「中古住宅・リフォームトータルプラン」では、長期優良住宅の主旨を具体化し、新築中心の住宅市場から、リフォームにより住宅ストックの品質・性能を高め、中古住宅流通により循環利用されるストック型の住宅市場への転換を図り、国の成長戦略に盛り込まれた2020年までの市場規模の倍増という目的の実現を目指しています。
住宅リフォームとリフォームをともなう中古住宅流通市場が、これほどクローズアップされたのは初めてのことといえるでしょう。
これまでかけ声だけで実質がともなわなかったリフォーム市場の活性化ですが、今度こそ本当にリフォームの時代がやってきそうです。

■リフォームを極めるならリフォームスタイリスト資格から

住宅リフォームの仕事には、新築住宅にはないおもしろさがあります。
新築住宅の場合、土地や建物の確保が最優先で、資金に余裕があれば設備やインテリアに回すという順番になり、「暮らしやすい家」「自分好みの家」といったテーマは二の次になります。
しかしリフォームでは、土地や家はすでに確保されているわけですから、新築では後回しだった「暮らしやすい家」「自分好みの家」を作ることがメインテーマになります。
リフォームスタイリストの仕事は、そんな消費者の夢や希望を聞くことから始まります。そして理想の生活を実現するために一緒になって計画を進め、完成に導くのです。

冒頭であげた専門学校の学生たちも、リフォームの仕事のそんな魅力に惹かれているに違いありません。
リフォームの世界を極めるなら、まずはリフォームスタイリスト資格の取得をおすすめします。ビジネスとして「リフォーム」をとらえ、リフォーム全般をカバーする資格は他にないからです。

■リフォームのプロの資格、アマチュアにもおすすめ

近年、業界向けの資格を取得する一般ユーザーが増えています。将来に備えて、プロの世界に興味があるから、資格マニア……等々、理由はさまざまですが、リフォームスタイリストの資格はそんな方々にもおすすめの資格です。
次のような方々には、まず3級資格からの挑戦をおすすめします。
・自宅のリフォームを考えている
・リフォームの世界に興味があるが、仕事にすることまではまだ考えていない
・DIYが趣味
・整理収納を極めるために家の改造まで考えている

本書ではリフォームの仕事の魅力と将来性、リフォームスタイリスト資格について紹介します。これからリフォーム業界をめざす学生の方々、現在の仕事に役立て、キャリアップをめざす方々、さらにリフォームに興味のある一般ユーザーのみなさんにも本書を推薦します。

リフォームスタイリスト普及推進協議会 (著)
ハウジングエージェンシー、出典:出版社HP

リフォームスタイリストの世界 目次

はじめに―将来性と魅力のあるリフォームスタイリストの仕事
■巨大だけれど地味なリフォーム市場
■魅力ある家ならリフォームして住み継ぎたくなる
■行政もバックアップに動いている
■リフォームを極めるならリフォームスタイリスト資格から
■リフォームのプロの資格、アマチュアにもおすすめ

第一章 リフォームとリフォームスタイリスト
リフォームの仕事はおもしろい! その理由は?
リフォームとは――ソフトサービスをともなう住まいの改良
消費市場の成熟とリフォーム
リフォーム/リニューアル/リノベーション
こだわりのリフォーム、誰に相談する?
暗い部屋がほしい……? リフォームの希望は千差万別
リフォームスタイリスト登場!
リフォームスタイリストの役割と能力

第二章 リフォームスタイリストの将来性
伸び代の大きいリフォーム市場
■日本のリフォーム市場
■中古住宅とリフォーム
■賃貸住宅のリフォーム
■中古住宅・リフォームトータルプラン
リフォームスタイリストの活躍の場
リフォームスタイリストの仕事と資格のメリット
■資格取得のメリット
■ダブル・トリプル資格の奨め

第三章 リフォームスタイリスト資格のすすめ
リフォームスタイリスト資格とは
■リフォームスタイリストとは
■リフォームスタイリスト資格試験とは
■日本ライフスタイル協会とは
■中古住宅・リフォームトータルプラン
リフォームスタイリスト資格試験
■資格試験の概要
■試験の内容と合格基準
■公式テキストについて
■問題集について
リフォームスタイリスト資格試験の概要
■3級試験
■2級試験
■1級試験
リフォームスタイリスト資格取得をおすすめします

リフォームスタイリスト普及推進協議会 (著)
ハウジングエージェンシー、出典:出版社HP