心理学検定 一問一答問題集[B領域編]




本書の刊行に当たって

日本心理学諸学会連合(略して日心連)が主催する心理学検定試験は、2008年に始まりました。2016年には第9回の検定試験が行われます。

受検を希望する方々から、「合格するためには、どのような本で学習したらよいか」「どの程度までの学習が必要か」などの質問が毎年多く寄せられてきました。このような疑問・要望に応えて、心理学検定の公式書籍として『心理学検定公式問題集(年度版)』『同基本キーワード(改訂版)』の2冊を刊行しています。

しかし、特に初学者の方を中心として、「公式問題集と基本キーワードの2冊だけでは、十分な理解ができているか心もとない」「もっと手軽なサイズで、ポイントを絞った学習ができる本が欲しい」という不安や要望を聞くことが増えてきました。

本書はそうした目的に合致した新たな公式書籍です。「A領域編」「B領域編」の2分冊として、全10科目でよく出題される事項、必ずマスターしてほしい事項を中心に掲載し、一問一答形式と○×形式で効率よく学習ができるように構成しています。心理学検定に興味を持ちこれから学習を始める方にも手に取りやすく、また、すでに学習を進め本番に備えて理解度確認をしたいという目的にも使える内容となっています。

心理学検定の資格は、既存の多くの心理学の資格や新たな国家資格「公認心理師」が大学院(修士)修了レベルの能力を必要とするのに対し、大学卒業レベルの能力を保証するものです。すなわち現存する諸資格の基礎資格的役割を果たすものです。

また、就職・転職や大学院進学に役立つような資格になるよう期待されています。心理学を勉強された方々がご活躍できる職場を拡充し、安心して働ける職場を確保するためにも、心理学検定の社会的認知度の高揚と社会的価値の定着を願っております。

読者の皆さんには、本書をはじめとする公式書籍を用いて、心理学の基礎的知識を身につけられ、めでたく検定の資格を取得してほしいと思います。そしてこの資格が、皆さんの充実した人生の一助となりますよう祈っております。

2016年5月
編者代表
心理学検定局顧問 太田信夫
心理学検定局長 藤田主一

日本心理学諸学会連合 心理学検定局 (編集)
出版社: 実務教育出版 (2016/6/7)、出典:出版社HP

目次

本書の刊行に当たって
心理学検定の基礎知識と本書の構成

6 神経・生理
6-1 神経系の構造
6-2脳幹と小脳
6-3 大脳
6-4 神経細胞の構造
6-5 神経伝達
6-6 内分泌系と行動
6-7 自律神経系
6-8 感覚・知覚
6-9 学習・記憶
6-10 言語
6-11 感情・情動
6-12 睡眠・覚醒・意識
6-13 脳の可塑性と発達
6-14 運動とBMI
6-15 精神疾患
6-16 古典的神経心理学
6-17 生理心理学的測定
6-18 動物行動の研究法
6-19 遺伝子と行動
6-20 脳画像研究
○×実力確認問題⑥
Column 1 脳内の位置関係をとらえる表現

7 統計・測定・評価
7-1 測定と尺度水準
7-2 代表値と散布度
7-3変数の変換
7-4相関と連関
7-5母集団と標本
7-6回帰
7-7 統計的仮説検定の論理
7-8 t検定
7-9分散分析
7-10 ノンパラメトリック検定
7-11 重回帰分析・重判別分析
7-12 因子分析・主成分分析
7-13 クラスター分析・MDS
7-14 構造方程式モデリング
7-15 心理学的測定法
7-16 信頼性と妥当性
7-17 テスト理論
7-18 心理検査
7-19 評価の基準
7-20日本における教育評価
O×実力確認問題⑦
Column2 心理統計で用いるギリシャ文字

8 産業・組織
8-1 産業・組織心理学の歴史
8-2 人事労務管理
8-3 ダイバーシティと障害者雇用
8-4 職場環境とハラスメント
8-5 仕事のストレスとメンタルヘルス
8-6 産業カウンセリング
8-7 キャリア発達・開発
8-8 仕事への動機づけ
8-9 組織行動と組織文化
8-10 リスク・マネジメント
8-11 事故モデル
8-12 安全人間工学
8-13 消費者の意思決定
8-14 行動経済学
8-15 マーケティングと広告
8-16 流行と差別化
○×実力確認問題⑧
Column 3 心理学検定の次に取りたい資格

9 健康・福祉
9-1 健康のとらえ方
9-2 ストレス
9-3 ソーシャルサポート
9-4 健康生活習慣
9-5 行動変容
9-6 健康教育・健康学習
9-7依存
9-8 心身相関
9-9 健康・医療と社会
9-10 ポジティブ心理学
9-11 高齢者心理学
9-12 老年精神医学
9-13 リハビリテーション
9-14 福祉の視点
9-15 受容と偏見
9-16 精神保健
9-17 子ども家庭福祉
9-18 虐待とDV
9-19 障害児/者の支援
9-20 バリアフリー社会
9-21 ソーシャルワーク
9-22 心理・福祉の専門職
◯×実力確認問題⑨
Column 4 官庁統計の読み方

10 犯罪・非行
10-1 犯罪統計
10-2 犯罪の生物学的原因
10-3 犯罪の心理学的原因
10-4 犯罪の社会学的原因
10-5 犯罪・非行の発達研究
10-6 犯罪・非行と環境
10-7 犯罪予防
10-8 暴力・殺人
10-9性犯罪
10-10 知能犯
10-11 プロファイリング
10-12 ポリグラフ検査
10-13 証言の心理学
10-14 犯罪・非行アセスメント
10-15 少年司法
10-16 少年院と児童自立支援施設
10-17 刑事施設
10-18 更生保護
10-19 裁判と心理学
10-20 犯罪被害と心理学
○×実力確認問題⑩

図版の引用文献
編集委員・執筆者等一覧

日本心理学諸学会連合 心理学検定局 (編集)
出版社: 実務教育出版 (2016/6/7)、出典:出版社HP

心理学検定の基礎知識と本書の構成

■心理学検定の概要
心理学検定は、大学卒業レベルの心理学の学力を証明するものです。この検定に合格することによって、自分自身の心理学の学力を確認するとともに、社会的にも心理学の学力を証明することにもなります。

●試験のスケジュール
例年8月下旬の日曜日に実施。申込期間は5月下旬~6月下旬。

●受検資格
受検は誰でもできます。心理学部や心理学科の所属や卒業に関係なく、希望するすべての人が受検できます。

●出題科目・受検科目数
試験は心理学の10科目(A領域5科目、B領域5科目。p.6参照)について行われます。受検科目は3科目、6科目、8科目の3段階です。

●認定資格
心理学検定特1級:A領域の5科目、B領域の5科目の合計10科目のすべてに合格した場合
心理学検定1級:A領域の4科目を含む合計6科目に合格した場合
心理学検定2級:A領域の2科目を含む合計3科目に合格した場合

●出題形式・出題数・検定時間
問題はすべて4肢選択問題です。各科目から20問が出題され、合計200問からなります。検定時間は1科目当たり20分です。

●合否判定の基準
各科目の合否判定の基準は、約6割の正答率を目安とします。ただし、出題問題の難易度によって基準が変動する可能性があります。
※検定についての詳細は、公式ホームページ(http://jupaken.jp/)および「心理学検定公式問題集」の「心理学検定スタートガイド」で、最新の情報をご確認ください。

■心理学検定の出題科目
心理学には、「○○心理学」という言い方をすると、何十という心理があります。日本心理学諸学会連合に加盟している「○○心理学会」という学会数だけで51あり、そのほかにも、まだ加盟していない心理学の学会は10あまりあります。こうして見ると、実にたくさんの心理学の領域があることがわかるでしょう。

本心理学検定では、この多くの領域を一緒にできるところは一つの領域として、できるだけ少なくてわかりやすい10の領域(検定では「科目」と表記している)にまとめています。その10科目は、次のようになっています。

A領域 ①原理・研究法・歴史/②学習・認知・知覚/③発達・教育 /
④社会・感情・性格/5臨床・障害
B領域 ⑥神経・生理/⑦統計・測定・評価/⑧産業・組織 /
⑨健康・福祉 / ⑩犯罪・非行

A領域は多くの大学で教えている内容の科目であり、B領域は必ずしも多くの大学で教えているとは限らない内容の科目です。ただし心理統計はほとんどの大学で開設されています。

これらの科目の関係は、p.7の図のようになります。「原理・研究法・歴史」の科目は他の9科目のどの科目とも関係しています。また、同様に「統計・測定・評価」の科目も、他の9科目と関係しているといえるでしょう。

すなわち、研究法や統計などはどの内容の心理学にも関係しているということです。そして、A領域の4科目は、B領域の4科目と、点線のつながりで示したように比較的対応しているといえます。

このような科目の分け方の背景には、次のような考え方があります。心理学のコアとなる基礎的な領域を4つ挙げるとすると、認知心理学、発達心理学、社会心理学、臨床心理学となります。これらの心理学と関係の深い領域の心理学を同じ科目としてまとめたものが、図中A領域の最上段の4科目です。

それらの科目にすべて関係する研究法や統計などの科目を考え、さらに先の4つの心理学ほど基礎的な領域ではないが、領域としてそれらと対等に存在する領域が、B領域の4つの科目です。

しかし、以上の10科目は完全に分けられるものではなく、またこれらの領域から漏れている「○○心理学」もあります。たとえば、数理心理学、交通心理学、環境心理学などです。

心理学は心の学問であり、また行動の学問でもあります。目には見えない感情や意思などの心の働きや、頭の中の知的な働きについてそのメカニズムや法則を明らかにすることが、心理学の課題です。そのためには、実際には目に見える行動や言語表現などを対象として研究が行われます。近年は、コンピュータ関連の機器の進歩により、目に見えない脳部位や神経細胞の働きまで、画面上で確かめることができるようになりました。

この意味で、心理学は脳科学の一部の領域も完全に取り込んで考えるようになっています。こうして考えてくると、心理学の隣接科学である生物学、医学、コンピュータ科学などとの境界がなくなりつつあるのが現状です。学問の領域地図も、時代とともに、研究の進歩とともに、日々、変化していることを忘れてはなりません。

特に、本書で取り上げるB領域は、応用的な色合いが強く、他のさまざまな学問分野や実社会とのつながりが深い科目からなっています。統計調査、法律や制度、社会的実践など、厳密な心理学からはやや離れる話題とも、切れ目なくつながっています。

したがって、心理学検定の出題も、そういった応用的な方向性を含めて行われています。心理学がめざす「心や行動がわかること」が、関連分野や実社会、あるいは日常生活とどのようにつながり、役立っているかにも注目して、関心を広く持って学んでください。

■本書の構成と活用法
本書は「B領域」に該当する5科目を収録しています。「A領域編17冊セットで、全10科目の学習ができます。

①一問一答パート
各科目を16~22のテーマに分類し、1科目116~152問で、左ページに問題、右ページに解答と解説の見開き構成です。
それぞれの問題は、過去の心理学検定の出題内容を分析してエッセンスを抽出したもので、出題頻度の高い事項を掲載しています。
付属の赤シートを使うと、解答と、解説中のキーワードが消えて見えなくなります。重要事項の暗記学習にご活用ください。

②〇×実力確認問題
各科目の末尾に、50問の正誤を○×で答える実力確認問題を掲載しています。
一問一答パートの解答と解説を理解していれば、答えられる内容です。確認のため一問一答の解説参照ページを記しています。特に間違えた問題については、一問一答に戻って復習しましょう。

公式書籍としては、ほかに「公式問題集(年度版)」と「基本キーワード」を刊行しており、併用すると学習効果が高まります。
「公式問題集」は、模擬問題と解説400問、最新の過去問から精選した問題と解説50問、受検情報や学習アドバイス、基本書ガイドなどをまとめた心理学検定スタートガイドで構成されています。実際の試験のレベルと出題傾向を把握するのには欠かせない学習アイテムです。

「基本キーワード」は、各科目で重要なテーマを226の「見出しキーワード」として精選し、2または1ページの解説をしています。解説の中で特に重要な用語は「個別キーワード」として太字で示し、さらに右欄外に簡単な説明を加えています。巻末には事項索引と人名索引を掲載しています。重要事項を精選した基本テキストとして、本書や公式問題集での問演習の前後に参照してください。

日本心理学諸学会連合 心理学検定局 (編集)
出版社: 実務教育出版 (2016/6/7)、出典:出版社HP