心理学検定 基本キーワード[改訂版]




本書の刊行に当たって

日本心理学諸学会連合(略して「日心連」という)が主催する心理学検定試験は、2008年に始まりました。そして本年、第8回の検定試験が行われます。

受検を希望する方々から、「合格するためには、どのような勉強をしたらよいでしょうか」という質問が、大変多くあります。また「どんな本で勉強したらよいか」「どの程度までの勉強が必要か」など、いろいろな問合せがあります。

受検希望者のこのような疑問・要望・不安に、まさに応えるために刊行されたのが、本書『心理学検定基本キーワード』であります。初版刊行から6年を経て、このたび最新の出題傾向および心理学の動向に合わせて全面改訂しました。年度版の『心理学検定公式問題集』とあわせて本書で学習すれば、検定合格への道程は、ぐっと近くなるでしょう。

本書は、書名のとおり、検定試験合格のための基本的なキーワードを用いて、226の重要なテーマについて、それぞれ2ページまたは1ページで簡潔に解説をしています。それらのテーマは、心理学検定試験で出題される10科目において、どれも不可欠のものばかりです。したがって、キーワードをベースにして、各テーマについての解説を理解するようにすれば、検定受検に必要な知識は得られるはずです。

しかし、もちろん本書の内容を完全に学習すれば、それだけで検定試験で満点を取れるというものではありません。心理学の学習内容は広く、本書ですべて尽くされているわけではありません。余裕のある方は、さらに詳しいテキストで勉強されることをお勧めします(『心理学検定公式問題集』の「学習に役立つ基本書ガイド」を参考にするとよいでしょう)。

心理学検定の資格は、現存するさまざまな心理学の資格や、近い将来に期待される心理学の国家資格の基礎資格として位置づけられるものです。また、就職・転職や大学院進学に役立つような資格になるよう期待されています。

心理学を勉強された方々がご活躍できる職場を拡充し、安心して働ける職場を確保するためにも、心理学検定の社会的認知度の高揚と社会的価値の定着を願っております。

読者の皆さんには、本書を用いて、心理学の基礎的知識を身につけられ、めでたく検定の資格を取得してほしいと思います。そしてこの資格が、皆さんの充実した人生の一助となりますよう祈っております。

2015年4月
編者代表 心理学検定局長 太田信夫

日本心理学諸学会連合 心理学検定局 (編集)
出版社: 実務教育出版; 改訂版 (2015/5/19)、出典:出版社HP

心理学検定の出題科目と本書の構成

●出題の10科目
心理学の分野をさらに分けるとすると、どのような心理学があるのでしょうか。すぐに思い浮かぶのは、人によって違いますが、児童心理学、臨床心理学、社会心理学などは多くの人が共通して挙げる心理学でしょう。しかし、書店へ行って心理学の書棚を見ればわかるように、そのほかにもたくさんの「○○心理学」という本が目に入ってきます。また、心理学のカリキュラムを見ても、実に多くの心理学の授業科目があることがわかります。

このような多くの心理学を、学問的立場からわかりやすく分類するために、心理学検定品では多くの心理学者の先生のお考えを統合し、次のような①~⑩の10科目に分けました。

A領域 ①原理・研究法・歴史/②学習・認知・知覚/③発達・教育 /
④社会・感情・性格/5臨床・障害
B領域 ⑥神経・生理/⑦統計・測定・評価/⑧産業・組織 /
⑨健康・福祉 / ⑩犯罪・非行

A領域の5つの科目は、心理学部(学科・コース)がある多くの大学で心理学の授業として教えているものです。①の〈原理・研究法・歴史〉は、「一般心理学」「基礎心理学」「心理学概論」などという授業科目で開講されています。

②の〈学習・認知・知覚〉は、「学習心理学」「認知心理学」「知覚心理学」など、③の〈発達・教育〉は、「発達心理学」「教育心理学」「児童心理学」「青年心理学」などという授業科目が該当する科目です。

④の〈社会・感情・性格〉の授業科目としては、「社会心理学」「集団心理学」「感情心理学」「性格心理学」「人格心理学」などがあり、他の科目に比べややまとまりにくい科目ですが、社会的存在としての人間という観点に立てば、科目内の内容の相互関係は理解できると思います。

⑤の〈臨床・障害〉は、「臨床心理学」「カウンセリング」「心理療法」などという授業科目が該当します。

B領域は、A領域以外の科目で、必ずしも多くの大学で開講しているとは限らない授業科目が該当します。ただし、⑦の〈統計・測定・評価〉は、「心理学研究法」「心理統計学」などの授業科目名で、どこの大学でも開講されていますが、心理そのものを研究対象とすると領域に対し、心理学研究のための道具としての色彩が濃いので、B領域に入っています。

この科目には、「心理測定学(計量心理学)」「教育評価」なども入ります。⑥の〈神経・生理)は、「神経心理学」「生理心理学」「比較心理学」などの授業科目が、⑧の〈産業・組織)は、「産業心理学」「職業心理学」「組織心理学」などの授業科目が該当します。⑨のく健康祉〉は、「健康心理学」「福祉心理学」など、⑩の〈犯罪・非行〉は、「犯罪心理学」「非行心理学」「矯正心理学」などの授業科目が入ります。

これらの10の科目の関係を相関図で示すと、おおよそ次のようになります。

〈原理・研究法・歴史〉や〈統計・測定・評価〉は、他のすべての科目と関係しています。また、図中の点線は、ある視点から見れば対応しているという程度の意味を表しています。10科目の関係をわかりやすくするために、あえて図示しました。

●本書の構成

本書の章立ては、上記の10科目に従っています。そして各章の科目で重要なテーマを「見出しキーワード」として精選し、2ページあるいは1ページの解説をしています。解説の中で特に重要な用語は、「個別キーワード」として太字で示し、さらに右欄外に簡単な説明がしてあります。

なお巻末の事項索引には、その太字で示した用語が載せてあります。また、解説中の研究者名は、すべて人名索引として掲載しました。

読者の方はすでにお気づきのことと思いますが、10科目の分類には、その分類基準の曖昧さや内容の部分的重複など、いくつかの問題点があります。たとえば、1の科目での〈研究法〉は7の〈統計・測定〉などと密接な関係があります。また3の〈教育〉も7の〈評価〉と一部重複するところがあります。

このように科目の分類が完璧なものではありませんので、各章で取り上げる内容が一部重複している箇所もあります。しかし各章(科目)ごとで、独立に不可欠の基礎知識を精選した結果、そのようになっていると考えていただきたいと思います。

引用・参考文献は、各章の最後のページに掲載しましたが、基礎的内容の学習を目的とする本書の性格から、図表の出典を中心として必要な文献のみに限らせていただきました。この点、さらに詳細な情報の欲しい人は、関連の専門書などを参考にしてください。

本書は、検定試験の合格に向けての勉強が効率よくなされるように、重要なことができるだけ簡潔にわかりやすく書かれています。太字で示されているキーワードの理解を中心に勉強されることを願っています。

●編集委員

藤田主一 (日本体育大学教授)
太田信夫 (東京福祉大学教授)
小林剛史 (文京学院大学教授)
今野裕之 (目白大学教授)
沢宮容子 (筑波大学教授)
大坊郁夫 (北星学園大学学長)
出口保行 (東京未来大学教授)
堀毛一也 (東洋大学)
村松健司 (首都大学東京教授)

●科目別執筆責任者

〈原理・研究法・歴史〉 高砂美樹 (東京国際大学教授)
〈学習・認知・知覚〉 太田信夫
〈発達・教育〉 藤田主一
〈社会·感情·性格〉堀毛一也
〈臨床・障害〉村松健司
〈神経・生理〉小林剛史
〈統計・測定・評価〉 服部環 (法政大学教授)
〈產業·組織〉角山剛 (東京未来大学学長)
〈健康・福祉〉山田冨美雄 (関西福祉科学大学教授)
〈犯罪·非行〉出口保行

●執筆者 (五十音順)

青木聡子 (国士舘大学)
安藤清志 (東洋大学)
生駒忍 (川村学園女子大学)
石井京子 (大阪人間科学大学)
市川優一郎 (日本体育大学)
今田純雄 (広島修道大学)
大野太郎 (大阪人間科学大学)
大渕憲一 (放送大学)
岡安孝弘 (明治大学)
岡村達也 (文教大学)
越智啓太 (法政大学)
小野公一 (亜細亜大学)
角山剛
岸太一 (東邦大学)
楠見孝 (京都大学)
樹澤令子 (洗足こども短期大学)
近藤保彦 (帝京科学大学)
況宮容子
島井哲志 (関西福祉科学大学)
大坊郁夫
高砂美樹
高瀬堅吉 (自治医科大学)
高橋登 (大阪教育大学)
武田明典 (神田外語大学)
田中あかり (湘北短期大学)
田村英惠 (立正大学)
柄田毅 (文京学院大学)
出口保行
豊田弘司 (奈良教育大学)
豊村和真 (北星学園大学)
永野光朗 (京都橘大学)
沼初枝 (立正大学)
服部環
浜村良久 (防衛大学校)
藤岡秀樹 (京都教育大学)
藤里結子 (国立精神·神経医療研究七夕一)
船越かほる (日本女子大学)
細田聡 (関東学院大学)
堀毛一也
宮本和彦 (文京学院大学)
村井潤一郎 (文京学院大学)
村松健司
八木善彦 (立正大学)
矢口幸康 (聖德大学)
山際勇一郎 (首都大学東京)
山口正二 (東京電機大学)
山田剛史 (岡山大学)!
山田富美雄
渡邊勉 (福島学院大学)

日本心理学諸学会連合 心理学検定局 (編集)
出版社: 実務教育出版; 改訂版 (2015/5/19)、出典:出版社HP

心理学検定 基本キーワード[改訂版] 目次

本書の刊行に当たって
心理学検定の出題科目と本書の構成
編集委員・科目別執筆責任者・執筆者一覧

第1章 原理・研究法・歴史
1.1 心理学の科学的方法論
1.2心理学の研究法と変数
1.3 質的研究と量的研究
1.4 信頼性と妥当性
1.5 仮説検定法
1.6 実験法
1.7調査法
1.8 観察法
1.9 検査法
1.10 面接法
1.11 心理学研究の倫理
1.12 心理学の前史①:哲学の影響
1.13 心理学の前史②:生理学の影響
1.14 精神物理学
1.15 ドイツ心理学の展開
1.16 比較心理学の誕生
1.17アメリカ心理学の展開
1.18 行動主義・新行動主義
1.19 精神分析
1.20 ゲシュタルト心理学
1.21 社会心理学
1.22 発達心理学
1.23 認知心理学
1.24 臨床心理学
1.25 人間性心理学
1.26 日本の心理学史
第1章 参考文献

第2章 学習・認知・知覚
2.1 古典的条件づけ
2.2 オペラント条件づけ
2.3 行動療法
2.4強化と罰
2.5 強化スケジュール
2.6弁別学習
2.7 運動学習
2.8 自由再生の基本現象
2.9 記憶の区分
2.10 ワーキングメモリ(作動記憶)の構造
2.11 2つのプライミング効果
2.12 再生と再認の規定要因
2.13 意味記憶のモデル
2.14 記憶と感情
2.15記憶の発達
2.16 パターン認識のメカニズム
2.17 推論(推理)の区分
2.18 批判的思考
2.19 言語(文字・単語・文章)の理解
2.20 視覚の神経生理学的基盤
2.21 明るさとコントラストの知覚
2.22色の知覚
2.23 形の知覚
2.24奥行きの知覚
2.25運動の知覚
2.26 錯視と恒常性
2.27 注意
2.28 聴覚
第2章引用文献

第3章 発達・教育
3.1発達の仕組み
3.2初期経験と臨界期
3.3発達の研究法
3.4ピアジェの発達理論
3.5 ヴィゴツキーの発達理論
3.6 心の理論
3.7 アタッチメント
3.8社会性の発達
3.9 思春期・青年期
3.10 発達検査
3.11 学習と動機づけ
3.12 学習性無力感
3.13 原因帰属
3.14 知能と学力
3.15ビネー式知能検査
3.16ウェクスラー式知能検査
3.16 いじめ・不登校・非行
3.17社会的学習
3.18 効果的な学習法
3.19 教育評価
3.20 発達障害と特別支援教育
3.21 スクールカウンセリング
第3章引用文献

第4章 社会・感情・性格
4.1 対人的自己
4.2 社会的影響
4.3 対人コミュニケーション
4.4 対人認知
4.5 帰属過程
4.6 ステレオタイプ
4.7 援助とサポート
4.8 協同と競争
4.9 攻撃
4.10 対人魅力
4.11 集団のダイナミズム
4.12 マスコミの影響
4.13 集合行動
4.14 文化心理学
4.15 感情の理論
4.16 感情とその機能
4.17 感情の生理過程
4.18 感情の障害
4.19 感情の発達
4.20 感情と文化
4.21 情動知能
4.22 ポジティブ心理学
4.23 パーソナリティ理論
4.24 パーソナリティの測定
4.25 パーソナリティと健康
4.26 主要(特性)5因子モデル
4.27 パーソナリティの一貫性・統一性
第4章引用・参考文献

第5章 臨床・障害
5.1 精神分析と精神分析療法
5.2心的装置論(局所論・構造論)
5.3自我の防衛機制
5.4心理(精神)-性的発達理論
5.5 分析心理学
5.6精神分析学の発展
5.7行動療法①:レスポンデント・オペラント条件づけ
5.8 行動療法②:社会的学習、SST
5.9 認知行動療法
5.10 自律訓練法
5.11 人間性心理学
5.12 自己実現
5.13 クライエント中心療法
5.14 エンカウンターグループ
5.15 フォーカシング
5.16 心理検査①:性格検査
5.17 心理検査②:知能検査
5.18 心理検査の妥当性と信頼性
5.19 行動観察と面接法
5.20 操作的診断基準
5.21 子どもの発達障害
5.22 精神疾患
5.23 心身症と摂食障害
5.24 認知症とせん妄
5.25 解離症と身体症状症
5.26 子どもの問題行動
5.27 コミュニティ・アプローチ
5.28 子どもの心理療法
5.29 システムを生かした心理療法
5.30 集団精神療法、集団療法、グループ・セラピー
5.31日本で生まれた心理療法
第5章引用・参考文献

第6章 神経・生理
6.1脳の構造と機能①:概要
6.2 脳の構造と機能②:視床、視床下部、延髄、小脳
6.3脳の構造と機能③:大脳基底核、大脳辺縁系
6.4 脳の構造と機能④:大脳新皮質と感覚処理
6.5 脳の構造と機能⑤:大脳半球機能と言語処理、分離脳
6.6神経細胞の構造と機能①:脳の細胞
6.7神経細胞の構造と機能②:神経伝達物質
6.8 神経細胞の構造と機能③:活動電位
6.9神経内分泌機能:ホルモンと行動
6.10 自律神経系機能①:交感神経系と副交感神経系
6.11 自律神経系機能②:ポリグラフ
6.12 動物の行動と心理学:動物実験の方法
6.13遺伝子と心理学
6.14 感情の機能
6.15 学習・記憶の神経機構:長期増強、長期抑圧
6.16 睡眠と覚醒
6.17脳の可塑性①:可塑性、幻肢
6.18 脳の可塑性②:バイオフィードバック、ブレイン・マシン・インターフェース
6.19 脳機能測定法
6.20 精神障害と脳機能
第6章引用・参考文献

第7章 統計・測定・評価
7.1 代表値と散布度
7.2 変数の変換
7.3 2変数の記述統計
7.4 母数の推定
7.5 検定(統計的仮説検定)
7.6 単回帰分析
7.7 実験計画と分散分析
7.8変数間の予測と影響の分析:外的基準がある場合
7.9変数間の構造と構成の分析:外的基準がない場合
7.10 構造方程式モデリングと一般化線形モデル
7.11 心理テストの信頼性と妥当性
7.12 心理学的測定法
7.13 心理テストの分析
7.14 目標に準拠した評価と集団に準拠した評価
7.15 心理検査の種類と特徴
7.16 教授 = 学習過程における評価
7.17 進路指導と教育評価
第7章引用・参考文献

第8章 産業・組織
8.1 人事心理学とその人事・ 労務管理への貢献
8.2 職務態度と ディーセント・ワーク
8.3 メンタルヘルス
8.4 多様な働く人々と 雇用の多様化
8.5 キャリア発達と能力開発
8.6 産業・組織心理学の概観
8.7 リーダーシップ
8.8 仕事への動機づけ
8.9 組織行動
8.10 安全人間工学
8.11 組織の安全文化と
リスクマネジメント
8.12 技能の熟達化
8.13 事故モデル
8.14 消費者の心理的メカニズム
8.15 マーケティングと消費者行動
8.16 広告と消費者行動
8.17 流行と消費者行動
第8章 参考文献

第9章
9.1 ストレス
9.2 健康生活習慣
9.3 健康教育
9.4 行動変容モデル
9.5主観的健康観
9.6 ソーシャルサポート
9.7 健康関連自己概念
9.8 レジリエンス
9. 9 ポジティブ心理学と健康
9.10 仕事習慣:エンゲージメント
9.11 ソーシャルワーク
9.12 共生と障害受容
9.13 偏見と差別
9.14 障害者基本法と障害の定義
9.15 児童福祉施設
9.16 乳幼児の健康診査
9.17 障害児通所支援
9.18 福祉施設の心理職と関連する職員
第9章引用・参考文献

第10章
10.1 犯罪統計(犯罪動向)
10.2 財産犯(窃盗・詐欺)
10.3 殺人 324 10.4 性犯罪
10.5 ストーキング
10.6 犯罪の古典的研究
10.7犯罪の社会的要因
10.8 犯罪の人格要因
10.9 非行・犯罪の発達的研究
10.10 犯罪の統制理論
10.11 犯罪性の遺伝と環境
10.12 環境犯罪学と防犯3
10.13 プロファイリング
10.14 ポリグラフ検査
10.15 少年司法の流れ
10.16 非行アセスメント
10.17 家庭裁判所
10.18 少年鑑別所
10.19 少年院
10.20 刑事施設
10.21 更生保護
第10章 引用文献

事項索引
人名索引

日本心理学諸学会連合 心理学検定局 (編集)
出版社: 実務教育出版; 改訂版 (2015/5/19)、出典:出版社HP