改訂版 「通関士」合格の基礎知識




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改訂に寄せて

貿易にかかわる税務や通関手続の専門職種である「通関士」は、「通関業法」によってその制度が規定されています。

通関業の憲法ともいうべき「通関業法」ですが、今般大改正が行われました。これは通関業者にとって大きな変革の始まりです。

これまで、通関業を営もうとする場合は、所在地を管轄する税関長の許可が必要でしたが、改正により財務大臣の許可制になりました。そして、通関業者は、全国にあるいずれかの税関長に対し通関業務を行うことができるようになりました。これまでは、原則として許可を受けた税関長の管轄区域内でしか通関業務を行うことができませんでした。

たとえば、東京税関長の許可を受けた通関業者は、門司税関長への輸入(納税)申告は、特別な場合を除いてできなかったのです。しかし、財務大臣が許可権者になり、貨物を搬入した保税地域等を管轄する税関長なら全国どこでも輸入(納税)申告を行うことができるようになったわけです。

さらに、AEOと呼ばれる事業者は、貨物を搬入した保税地域等の所在地にかかわらず、どこの税関長に対しても輸入申告(引取申告)を行うことが可能になりました。この申告官署の自由化は、通関業界では、まさに天地が逆転するぐらいの改革だと言ってよいでしょう。

このような環境の中、通関士を取り巻く環境も大きく変動しています。そして、通関士の立ち位置は、さらに重要なものとなっていくでしょう。

権威ある通関士国家試験は、決して易しくはありません。難解な参考書をいきなり見る前に、あるいは、参考書の横に置きながら本書を開いていただきたいと思います。

通関に関するいろいろな制度の背景にあるものを、できる限り記述しました。これは、理解を深めるための重要なファクターです。本書を通して、読者の皆様が通関士、貿易実務に興味を持っていただき、さらには、貿易実務検定®︎、通関士の試験に役立てていただけたら、この上ない喜びです。

2017年9月吉日
横浜ランドマークタワー44階の事務所にて

片山 立志

片山 立志 (著)
出版社: 日本能率協会マネジメントセンター; 改訂版 (2017/10/28)、出典:出版社HP

はじめに

この本はおもに、通関士国家試験や貿易実務検定®︎の受験をめざす方々、あるいは貿易関連法規を学習しようという方々にぜひお読みいただきたいと考え、書き上げたものです。

「輸入通関」と「関税」を中心的テーマとしていますが、これは、たとえば通関士国家試験では輸入通関及び関税に関する出題が多くを占め、また、受験生から寄せられる質問もこの分野に集中しているからです。

独学で取り組む場合、無味乾燥なテキストや条文だけを頼りに学習していきますので、どうしても学習内容のイメージが掴みきれないことが多いのです。その結果、少し的はずれな疑問にとらわれたり、ちょっとしたボタンのかけ違いに気づかなかったり、ということになりがちです。

なぜこんなことが規定されているのだろうか、実務ではどのように運用されているのだろうか、この規定は輸入者にどのようなメリットがあるのだろうか、など皆さんがわかりづらいだろうと思うところを、これまでの私の経験に基づいてまとめました。

また、ふだんの講義でお話ししているように、できるだけかみ砕いて解説しました。同時に、初学者の方でもイメージが湧き出るように、多くの図や表を用いて具体的にビジュアルに書きました。

しかし本書は、初心者の方々のものだけではありません。ある程度勉強された方にも読みごたえがあるように工夫してあります。今までブラックボックスの中にあった事柄がきっと解決されると思います。知識の確認にも効果を発揮するでしょう。

また、貿易実務検定®をめざす際には、なかなかわかりにくい「通関・関税制度」の分野ですが、本書により間違いなく親しみが湧いてくるだろうと思います。

ところで最近の通関士国家試験の合格率を見て思うことは、乱気流に突入した飛行機のようです。あるときは高く舞い上がり、そしてまた急降下するのに似て、安定性にかけています。しかし受験される方々は合格率の推移に一喜一憂せず、基本となる事項を確実に自分のものにするよう学習していただきたいと思います。

通関士国家試験の合否は、基本事項の習得の度合いによって決まります。本書は、そのための有効な手段になりうるものと自負しています。合わせて、拙著『通関士試勝合格ハンドブック』「通関士試験テーマ別問題集』(いずれも年度版、日本能率協会マネジメントセンター)の活用もおすすめします。

さらに、実務に就かれている方々には、知識の集大成に役立つもの思います。規制の流れを知ることは、さらに新しい発見をするチャンスにつながるのです。

読者の皆様が本書を存分に活用され、それぞれの目標を達せられることを心から祈念いたします。

2004年2月
片山 立志 (台北にて)

片山 立志 (著)
出版社: 日本能率協会マネジメントセンター; 改訂版 (2017/10/28)、出典:出版社HP

目次

改訂に寄せて
はじめに

PartⅠ 通関をマスターする!
第1講 輸入に必要な税関のチェック
第2構 通関の2つの大きな流れ
第3講 輸入通関の流れを見てみよう
第4講 輸入が許可されない場合とは?
第5講 二つの「例外」とは?
第6講 「輸入許可前貨物の引取り承認制度」とは?
第7講 「保税制度」ってなに? ~その1~
第8講 「保税制度」ってなに? ~その2~
◆クイズで学ぶ PartⅠ

PartⅡ 輸入と税金をマスターする!
第1講 輸入の際に課される税金とは?
第2講 関税額を確定するには?
第3講 課税標準を申告するとは?
第4講 過少に申告してしまったときは?
第5講 修正申告と更正の違いは?
第6講 「無申告」はどうなる?
第7講 隠蔽、仮装して関税を免れたときは?
第8講 通関業者が過少申告したときは?
~こんなきまりも見てみよう~
◆クイズで学ぶ PartⅡ

PartⅢ 課税価格をマスターする!
第1講 課税価格の算出の基本とは?
第2講 仕入書価格と「課税価格の決定の原則」
第3講 現実支払価格を調整する!
第4講 課税価格に算入される費用とは?
第5講 続・課税価格に算入される費用とは?
第6講 国際売買契約とインコタームズ
第7講 「課税価格の決定の原則」で計算できないときは?
第8講 課税価格の計算実務Q and A
◆クイズで学ぶ PartⅢ

PartⅣ いろいろな関税率と減免税・戻し税をマスターする!
第1講 関税率とは?
第2講 減免税・戻し税のしくみとは? ~その1・再び輸入する〜
第3講 減免税・戻し税のしくみとは?~その2・再び輸出する~
第4講 特定用途免税とは? 貨物が変質してしまったら?
第5講 ケース・スタディで学ぶ減免税・戻し税
◆クイズで学ぶ PartⅣ

コラム
収容された貨物を公売により買い受けた場合
原産地証明書偽造事件

 

片山 立志 (著)
出版社: 日本能率協会マネジメントセンター; 改訂版 (2017/10/28)、出典:出版社HP

図表目次

PartⅠ 通関をマスターする!
図1-1 関所(税関)を通れば、めでたく日本の市場に流通!
図1-2 輸入税(とりわけ関税)の目的は国内産業の保護にあり
図1-3 輸入申告と関係書類
図1-4 原則として輸入者は輸入申告と納税申告を同時に行う
図1-5 日本版AEO制度
図1-6 輸出通関の原則とAEO輸出通関
図1-7 輸入通関の原則とAEO輸入通関
図1-8 保税蔵置場の許可を受ければ外国貨物を置くことができる!
図1-9 輸入許可で無事「関所」を通過!
図1-10 「輸入してはならない貨物」ってなに?
図1-11 「風俗を害すべき書籍」と通知があったとき
図1-12 育成者権侵害とは?
表1-13 輸入ができなかった食品衛生法不適格品の例
図1-14 フロンガスはオゾン層を破壊する有害物質
表1-15 ワシントン条約により商業取引が規制されている動物の例
図1-16 原産地表示が偽っていたり、誤認を生じさせたりするときには?
図1-17 関税、消費税、地方消費税などが納付されないと輸入許可が受けられない?
図1-18 NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)は国際物流システムのプラットホームだ
図1-19 通関業者と輸入者の間の取決め
図1-20 NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を利用して関税などの納付がされている。
図1-21 特例申告のしくみ
図1-22 BP承認のしくみ
図1-23 審査の開始から輸入許可まで
図1-24 BP承認は、どんな場合に利用する?
表1-25 いろいろな保税地域
図1-26 指定保税地域の例(横浜市の本牧埠頭)
図1-27 従来の部品供給
図1-28 国際的サプライ・チェーン・マネジメントによる在庫管理
図1-29 保税工場の許可
図1-30 保税作業をするには移入承認が必要!
図1-31 保税工場でできた製品の積戻しと輸入
図1-32 関税は原料に対して課税される
図1-33 製品のどの部分に関税がかかる?
表1-34 総合保税地域は全国に4ヵ所
図1-35 総合保税地域である中部国際空港
図1-36 港湾付近の広大なコンテナヤード

PartⅡ 輸入と税金をマスターする!
図2-1 関税・消費税・地方消費税はどのように計算する?
図2-2 賦課課税方式をとる関税
図2-3 税関長が税額を確定する場合
図2-4 従価税、従量税、従価従量税の例
図2-5 入国時に提出する携帯品・別送品申告書
図2-6 申告した関税額に不足があると
図2-7 修正申告と法定納期限、納期限
図2-8 附則で定める延滞税率
図2-9 やはり自主的な修正申告の方がトク!?
図2-10 自主的に修正申告したとはいえない場合
図2-11 更正に対する不服申立てのしくみ
図2-12 延滞税は法律により自動的に確定する!
図2-13 決定処分と延滞税、無申告加算税
図2-14 特例輸入者の期限後特例申告
図2-15 修正申告ができるのは?
表2-16 重加算税の税率
図2-17 関税を不正に免れると
図2-18 通関業者に意見を述べる機会を与えるのは?
図2-19 更正の請求
図2-20 税関長が税額を確定できる行政処分とは?
図2-21 更正、決定、賦課決定のできる期間
図2-22 時効の中断
図2-23 いったん関税額が確定したら国は請求権を行使できる!
図2-24 法定納期限、納期限、法定納期限等の違いを見てみよう

PartⅢ 課税価格をマスターする!
図3-1 (逆)委託加工貿易の場合
図3-2 特別な事情があるときには?
図3-3 計算の基準を見分けよう
図3-4 <公式2>の加算費用と控除費用を見てみよう
図3-5 相殺のしくみ
図3-6 肩代わり弁済のしくみ
図3-7 手数料のしくみ
図3-8 買付手数料は課税価格に算入しない!
図3-9 無償で材料を売手に提供したときには?
図3-10 無償提供した鋳型代金も課税価格に算入する!
図3-11 買付手数料が課税価格に算入される場合とされない場合の区別
図3-12 課税価格に算入されるものは?
図3-13 売手が負担した仲介手数料はなぜ加算されない?
図3-14 デザイン料は課税価格に算入される?
図3-15 課税価格に含まれる特許権等の対価とは?
図3-16 「広告宣伝費用」という言葉だけでは、決められない!
図3-17 検査費用が課税価格に含まれるのは?
図3-18 インコタームズと課税価格の関係は?
図3-19 FOB価格をCIF価格にする!
図3-20 EXW(現地引渡し)価格とCIF価格の関係は?
図3-21 課税価格の決定方法の優先度は?
図3-22 課税価格決定のための「同種の貨物」「類似の貨物」とは?
図3-23 国内販売価格から課税価格を算出する!
図3-24 貨物Zの国内販売価格の単価はどれを選択?
図3-25 製造原価から課税価格を算出する!
図3-26 納期に間に合わせるため航空機で運送!

PartⅣ いろいろな関税率と減免税・戻し税をマスターする!
表4-1 携帯品の簡易税率表(上)と少額輸入貨物に対する簡易税率表(下)
図4-2 事件当時の特恵受益国と特別特恵受益国
図4-3 実行関税率表のカッコはどういう意味?
表4-4 経済連携協定の原産地の証明方法等
表4-5 原産地証明書が不要な場合
図4-6 条件に注目して分類すると
図4-7 貨物の流れから減免税を見てみよう
図4-8 関税定率法11条と暫8との違いは?
図4-9 再輸入減税のしくみ
図4-10 製品のうちどの部分が減税される?
図4-11 この陶磁器には再輸入減税が適用される!
図4-12 陶磁器の減税額はどうなる?
図4-13 再輸入減税の対象となるのは?
図4-14 再輸出免税の流れを見てみよう
図4-15 再輸出免税が適用される貨物とは?
図4-16 「再輸出免税」が適用されるのは、どのような原料品のどのような加工?
図4-17 ATAカルネを使うと、物品の一時輸入が簡便にできる!
図4-18 輸入時と同一状態で再輸出される場合の戻し税とは?
図4-19 払い戻しが受けられるのは?
図4-20 無条件免税の適用貨物と特定用途免税の適用貨物
図4-21 輸入貨物が変質、損傷したときは?(従価税品の場合)
図4-22 見本品の免税輸入の方法は?
図4-23 学術研究用品の免税輸入の方法も3つある!
図4-24 通信販売の物品を返送するとき、関税の払い戻しを受けられるのは?

片山 立志 (著)
出版社: 日本能率協会マネジメントセンター; 改訂版 (2017/10/28)、出典:出版社HP