目で見てわかる溶接作業―Visual Books




はじめに

溶接は2つの金属材料を加熱して溶かし、両方の金属を融合させて接合する技術です。そこで、材料を加熱し、溶かす熱源として、アセチレンなどの可燃性ガスと支燃性ガスの酸素を混合し燃焼させて得られる炎の熱や最新の電子ビーム、レーザなどが利用されています。

これらの溶接用の熱源の中でも、アーク放電を利用するアーク溶接法は比較的簡便な装置で使い勝手が良く、必要な特性を持つ熱源に制御しやすい特性を持っており、現在だけでなく今後も広く利用されると考えられます。

アーク溶接法は、作業自体を人にゆだねる部分が多く、そのため人の技能が作業結果を大きく左右します。ほかのものづくり作業に比べ、アーク溶接作業の技能伝承の必要性が強く求められる所以です。

溶接技能の伝承に関する教材には、手順を文章としてまとめた本や、連続する画像でまとめ たビデオ、DVD教材などがあります。これらの中で比較的技能伝承に有効とされるビデオ、 DVD教材などでは、作業の流れ全体が的確につかめるものの、作業のポイントとなる部分を把握しにくい問題があります。

また、このポイントとなる点を文章で表現しても、具体的な状況が見えてこないといった問題が残ります。

そこでこれらの問題を解消すべく、本書では、一連の作業ごとにその作業のポイントを写真 画像で示すとともに、作業に関連する図表や技能解析データを配置し、それらに解説を加えました。

なお、文中に?マークが出てきますが、これは「この作業が特に大切!」ということを分かっていただくためです。

本書では、アーク溶接作業の基礎として、広く一般に利用されている炭素ガス半自動溶接や 被覆アーク溶接、ティグ(TIG) 溶接の作業準備の方法やアークの発生、ビード溶接、すみ肉溶接などについて解説します。

なお、本書を参考にいろいろなアーク溶接技能の修得を目指す場合は、作業前に本書に目を通し、作業をやり終わった後に再度本書を見直す。そして、その作業のどこがポイントだったのか、また、そのポイントではどうなれば良かったのかを見つけ出す…。そして作業を繰り返し、そのポイントを確実に身につけるようにしてください。それにより、常に進化する技能、そして技能を技術化に結びつけることで、より高品質な製品を楽に作り出せる方法を考え出せる技能者に導いてくれることと思います。

なお、溶接の技能の修得に当たっては、本書で全てが足りるといったものではありません。 関連の基礎的な本やビデオ、DVD教材を適切に組み入れて勉強すると、より効率的に必要 な技能の習得が可能になると考えています。頑張ってください。

2008年2月
安田克彦

安田 克彦 (著)
出版社: 日刊工業新聞社 (2008/2/1)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 アーク放電とアーク溶接
1-1 アークの特性
1-2 いろいろなアーク溶接法

第2章 安全作業
2-1 溶接での安全とは
2-2 溶接の準備
2-3 溶接用保護具
2-4 溶接用ヘルメット

第3章 炭酸ガス半自動アーク溶接
3-1 炭酸ガス半自動アーク溶接法とは
3-2 溶接機の設定
3-3 溶接ワイヤの設定
3-4 溶接条件の設定
3-5 アークの発生
3-6 ストリンガビード溶接
3-7 ウィービングビード溶接
3-8 すみ肉溶接材の準備
3-9 すみ肉溶接

第4章 被覆アーク溶接
4-1 被覆アーク溶接法とは
4-2 溶接棒の選択、
4-3 アークの発生
4-4 バックステップ法による溶接開始操作
4-5 ビード溶接
4-6 ビード継ぎ溶接
4-7 すみ肉溶接

第5章  TIG溶接
5-1 TIG溶接法とは
5-2 溶接機の設定
5-3 溶接トーチの設定
5-4 タングステン電極の選定と設定(直流TIGの場合)
5-5 タングステン電極の選定と設定(交流TIGの場合)
5-6 アークの発生
5-7 メルトラン溶接、
5-8 ビード溶接

索引

安田 克彦 (著)
出版社: 日刊工業新聞社 (2008/2/1)、出典:出版社HP