第一線のプロがホンネで教える 超実践的 Webディレクターの教科書




この本について

知ってる方も知らない方もはじめまして。2009年頃から「Webディレクターズマニュアル」なる偉そうなタイトルでメディア運営などやらせていただいております、ナカムラこと中村健太です。

まずはこの本を手にとっていただき本当にありがとうございます。
さてこの本の内容についてですが、講演やら執筆やら編集やらやりながら、今も現役の制作ディレクターとしてガンガン動き回っている中村自身の仕事のやり方をベースに「とにかく今すぐ日々のディレクションワークに役立つ情報を」というスタンスで書かれています。
沢山のディレクターさんのやり方を統計的にかき集めたわけでも、業務効率化について学術的に考察された論文でもなく、「こういうとき、僕はこうやってる! だってこう考えるから!」みたいな内容になりますので、人によってはあまり役に立たない情報に見えてしまうかも知れません。
ですが、僕自身多くの人々と時にプロジェクトメンバーとして、ときに友人として関わる中で、彼らの独自の哲学とも言うべき仕事の流儀に多大な影響を受けてきました。
逆に、万人のために書かれた理想論的な本や言葉ってあんまり実務の役にたたなかったんですよね。
なので、誰に何と言われようと、この本はディレクターズマニュアルの中の人、中村健太と、日本ディレクション協会の田口真行、高瀬康次それぞれが、実際の現場でやっている仕事の中身についてとにかく分かりやすく伝えることに終始してみようと思います。
足りない! そーじゃない! という意見は大歓迎。その意見も組み込んで、増刷版(あれば)や、ディレクターズマニュアルWeb版で載っけていきましょう。
さて、そんなこんなでディレクターズマニュアル出張版、はじまりはじまり。

2015年7月
日本ディレクション協会会長株式会社ビットエーCMO
中村健太

本書のコンセプト

明日から使えるかもしれないディレクションスキル解説

もう読んで字のごとくです。小難しい理論とか、どこそこの大学で考えだされた業務効率化のためのウンタラカンタラではなく「なるほど。じゃあちょっと試してみるか」と思っていただくためのちょっとした考え方やTIPSについて、極めて実務的な観点からこの本は作られています。
なので、
●これからWeb業界に行ってみよう! という方や
●今まさにディレクターを任されて困ってる! という方
●ディレクションをもっと効率化したい! という方に
●ディレクションスキルを身につけたいデザイナーorプログラマー
なんて方々にとって、読むだけでなんとなく分かったような気分になる本を目指しているわけです。
あんまり肩肘張らずに楽しみながら読んでいただければと思います。

できればやめてほしい使い方

上記のようなコンセプトの元で書かれているため、この本にはかなり具体的なやり方がガツガツ書かれています。が、それはあくまで情報であり、エッセンスです。なので、本当にそのまんま何のアレンジもせずに真似してみても、読んだあなた自身のスキルは1ミリも向上しませんのでご注意ください。
だれかの考えたイイ感じの仕事術を自分の仕事の中に取り込んで、アレンジして、より使いやすい方法に作り変えて、そうやって初めてスキルアップと言えると、僕自身は考えていますので、できればこの本の情報をそのまんま鵜呑みにしてしまうようなもったいないことはせずに「あ、これは使える。でも自分なら…」なんてことを考えながら読み進めていただけると幸いです。

日本ディレクション協会 会長 中村 健太 (著), 株式会社デスクトップワークス 代表取締役 田口 真行 (著), デジタルマーケティングオフィス DCHS 代表 高瀬 康次 (著)
出版社: マイナビ (2015/8/25)、出典:出版社HP

Contents

Chapter 1 基本スキルのレベルアップ編
1-1 ディレクターのよくある悩みとバッドエンド回避策 CASE 01
やりたいことは盛りだくさん!
なのに「低予算で」というキャップ(制限)が硬い
想定されうるバッドエンドルート
[ルート01] タイミング:会議室で100徳ナイフ案が出た時点
やるべきこと:リスクを提示し、再考を促すようプレゼン
必要になるスキル:リスク想像スキル、ファシリテーションスキル
[ルート02] タイミング:会議室で100徳ナイフ案が出た時点
やるべきこと:リリースタイミングを分割し、ユーザーの反応を解析しながら2回目以降の制作内容を調整し別提案
必要になるスキル:ねじ込み交渉スキル、ユーザー心理仮説スキル
[ルート03] タイミング:現場スタッフへのインプット時
やるべきこと:プロジェクトの影響力と、自分たちチームへの期待値のデカさを煽りつつ、チームプレゼン
必要になるスキル:旗振りスキル

1-2 ディレクターのよくある悩みとバッドエンド回避策 CASE 02
何回差し戻してんだよ…
時間も予算も足りなくなるし、モチベーションも持たないよ…
想定されうるバッドエンドルート
[ルート01] タイミング:要件定義&見積もり作成の時点
やるべきこと:リテイク制限と、明確な要件定義資料の作成
必要になるスキル:ドキュメント作成・管理スキル
[ルート02] タイミング:フィードバック発生時
やるべきこと:制作スタッフへの変更の理由と意義のプレゼン
必要になるスキル:説明コミュニケーションスキル
[ルート03] タイミング:要件概要についての同意獲得の前段階
やるべきこと:発注側のステークホルダーに直接プレゼン
必要になるスキル:担当の横に寄り添うコミュニケーションスキル

1-3 ディレクターのよくある悩みとバッドエンド回避策 CASE 03
制作のクオリティが低い!
なんとかならんのか、こいつら!
想定されうるバッドエンドルート
[ルート01] タイミング:スタッフへの制作依頼時
やるべきこと:成果物の目的と期待値を明確に提示
必要になるスキル:資料作成スキルと、広い職域の知見
[ルート02] タイミング:プロジェクト本格スタートの前段階
やるべきこと:予告とワクワク感の煽り
必要になるスキル:いらんプライドを捨て去るスキル

1-4 ディレクターのよくある悩みとバッドエンド回避策 CASE 04
みんなカンタンに「コンテンツメディアが欲しい」って
言うけどさぁ…
想定されうるバッドエンドルート
[ルート01] タイミング:初期提案段階
やるべきこと:ターゲット・目的の明確化と共有、実現方法の提案
必要になるスキル:調査・提案スキル
[ルート02] タイミング:数字での成果発生後
やるべきこと:目的を再認識させるプレゼンテーション
必要になるスキル:こじつけ&意味付けトークスキル

1-5 クライアントの満足を引き出す、コミュニケーション
コミュニケーションは、ディレクターの商品価値を決めるポイント
ディレクターが意識すべき、おもてなし
受け身姿勢のディレクションから脱却するために、根本の意識を見直そう
プロと素人との間には、やり方次第で満足を引き出せるキッカケが多数潜んでいる
コミュニケーションのとり方次第で、相手をワクワクさせられる
選ばれるディレクターとして「替えがきかない人材」を目指すため

1-6 Webディレクターの実績を可視化する方法
Webディレクターの実績は分かりづらい?
可視化の必要性
Webディレクターの能力を測る4つの指標
ひとまとめにはできないWebディレクターのカテゴリ
業態の可視化
広域化するディレクターの職能
職能の数値化
職能の可視化
規模の可視化
経歴の可視化
自分の今と未来を知る
八方美人を捨て、鋭く尖る
他者と比較し、適切な役割を知る
実績の視覚化により、見えてくるもの

1-7 ディレクションの適正コストとディレクターのランク
ディレクションに対する予算のギャップ
予算感に大きなズレが発生する要因
Webサイトに求められる機能
Webディレクターに求められる価値
Level 1. 依頼された要求を、最低限に形にするレベル
Level 2. 依頼された要求を、十二分に満たすレベル
Level 3. 依頼された要求から、ビジネスを提案できるレベル
ディレクションに対する適正なコストとは?

1.8 デキるWebディレクターに共通する4つのスキル
Webディレクターの本質とは何か?
デキるWebディレクターになるために
「ビジネスの理解」を深めて、成果にコミットする
「ビジネスの理解」を深めるためにやるべきこと
「人脈」を築いて、実現力を手に入れる
「人脈」を築くためにやるべきこと
「仕事の軸」を見出して、強みを具体化する
「仕事の軸」を見出すためにやるべきこと
「提案力」を磨いて、推進力を身につける
「提案力」を磨くためにやるべきこと

Chapter 2. フェーズ別ノウハウ編
2-1-1 ヒアリング~コンセプト設計①
聞いたつもりで危機に陥る? 正しいヒアリングの手順
ヒアリングシート不要論?
聞きに行くのは依頼者の「課題」と「理想」
「伝えたつもり」と「分かったつもり」
一応正攻法での対策もあるにはあるけど
深読みと、アグレッシブなヒアリング提案
「てことは?」「つまり?」「こうですか?」の返し術

2-1-2 ヒアリング~コンセプト設計②
現場の愚痴で消費NG!
ダメ出しシートをディレクターが作る必要性
プロジェクトを良くするための関係性を意識する
愚痴で消費せずダメ出ししてあげるために
ヒアリングから初期提案段階での提出がベスト

2-1-3 ヒアリング~コンセプト設計③
ディレクターが作らないと始まらない!?
サイトコンセプトの作り方
コンセプトってディレクターが作るものなの?
そもそもコンセプトってなんだっけ?
実際のコンセプトの作り方

2-2-1 情報設計と感情設計①
全部盛りは絶対NG! 商業サイトにおける情報設計の基本
まずは前提となる背景・目的・課題を明確に言語化する
ポジションを把握してコンテンツを設計する
ユーザー像とシチュエーションを仮定する
すべての根拠となるゴールをハッキリ設定する

2-2-2 情報設計と感情設計②
ユーザーの感情を動かすコンテンツの作り方
ユーザーに感じてもらうべき「感情の深掘り」具体的手法
いきなり言語で考える人なんていないから

2-3-1 レイアウト&ワイヤー設計のルールと考え方①
ワイヤーフレーム制作のその前に
コンテンツの設計は誰の仕事なのか
いきなりワイヤーは絶対NG! 現場で使える各種マップと使い方を紹介

2-3-2 レイアウト&ワイヤー設計のルールと考え方②
基本的なワイヤーフレームのお作法
「要素の整理」を抜くとワイヤーは失敗する
色は付けず、ラベルや原稿はリアルに
欄外表示は、番号と片側で管理する
知ってると便利なコンポーネント&パターン
ワイヤーのバージョン管理について
画面別の機能詳細の設計
もしできるならDB設計の草案も作っておこう
ワイヤーなんて作らない! というフローも

2-4-1 失敗しない進行管理とチームビルド①
できて当たり前の部分だからこそクオリティが重要
誰も教えてくれない進行管理とチームビルド
企画するだけして「後はマルナーゲ」ならディレクターなんていらない
モチベーションコントローラーとしてのチケット駆動運用法

2-4-2 失敗しない進行管理とチームビルド②
要件定義~チケット発行の具体的タスクリスト
チケットを切るときのディレクターのタスクを把握する
1. まず何をやればいいのか?~要件の確認
2. 誰に何を依頼するか? 〜スキルセットと内容確認
3. チケット発行作業自体のチケット作成
4. 完了点に関する明確な記載を全チケットに追加

2-4-3 失敗しない進行管理とチームビルド③
チケットの粒度は「小さく・まとめて」
チケットをまとめる粒度
ときには「相談しよう」なんてチケットも
最終的にはクリエイティブの下地にならなければ意味がない

2-4-4 失敗しない進行管理とチームビルド④
プロジェクトにおけるチームビルドの考え方とディレクターのタスク
そもそも「理想のチーム」ってどんなの?
上下左右に垣根がないということ
1. キックオフ飲み会よりグループワークで始める
2. チャットルームも管理ツールでのプロジェクトも、基本は1個しか作らない
3.「提案」ではなくブレストで決める
議事録をコンテンツとして捉える
目指す未来を「完成前」に共有する
走りまくるために必要なディレクションとは?

2-5-1 クリエイティブチェックとQAタスク①
導線設計のチェックポイント
導線チェックのための5つの基本ポイント
感情の変化に沿ってステップを踏めているか
脱線をしていないか
ステップを踏むにあたって余分な情報や脇見要素がないか
アクションするポイントは明示されているか、またフォローアップ導線はあるか
文脈に沿って配置されているか

2-5-2 クリエイティブチェックとQAタスク②
コンテンツ/コピーのチェックポイント
コンテンツ/コピーチェックのための2つの基本ポイント
重複表現・表記ゆれはないか
キャラブレ・主体が途中で変わっていないか

2-5-3 クリエイティブチェックとQAタスク③
デザインモックのチェックポイント
ディレクターもデザインモックについて確認すべき
色数を使いすぎていないか
写真を「目的に沿って」補正・加工しているか
フォントを使いすぎていないか、使用フォントがコンセプトに合っているか
強調するべきところを強調しているか
装飾にレギュレーションを設定しているか
レギュレーションの優先度がユーザビリティを超えていないか
「流行り」を意識できているか
ワイヤーで定義した目的を達成しているか
オペレーターになっていないか
すべてのデザインに根拠を持っているか

2-5-4 クリエイティブチェックとQAタスク④
プロダクトの価値を高めるQAの理解
QAがなってないとどうなるのか?〜リスクの把握
ユーザーのニーズ・期待・要求を満たす4つの要素
可用性(アベイラビリティ)チェック
保守性(メンテナンサビリティ)チェック
利便性(ユーザビリティ)チェック
効果性(ビジネサビリティ)チェック

2-6-1 リリース後の運用とグロースの考え方①
リリース後の解析と運用
今、サイトを運営する人に求められている能力とはなにか
まず前提としてWebサイトは完成しない
CからAのナイスパスを通すために必要な「チームの力」
解析の意味とメリット・目的について
PDCAを加速させるチームを作るにはまず全員で考えてみること
レストでやってみよう、具体的思考ワークフロー

2-6-2 リリース後の運用とグロースの考え方②
グロースハックって結局何? 基本の考え方と具体的フロー
グロースハックとは何か? ちょっと具体的な概要
仮説観点設計をラクにする単純ストラクチャ
単純化のコツは「欲しい結果」から考えること
瞬間的なシチュエーションをUXとして捉えて導線を考えれば、「改善するべき画面」が見えてくる
とりあえずユーザーを「感情」で分類してみる
各行動を特定する画面と条件を決める
キーになる画面のヤバさ定義と改善仮説
成果が出るまで止まれない! PDCAが目指すもの

2-7-1 コンテンツマーケティングとSEOの基礎①
ディレクターが知っておくべきコンテンツマーケティングの基礎
コンテンツマーケティングの基本
メディア戦略“超”具体的思考ステップ
ターゲットに合わせた切り口の調整方法
ネタ探しに便利なツール紹介
記事ネタ&編集観点のチェックリスト
あらゆるコンテンツの基本はテキストだから

2-7-2 コンテンツマーケティングとSEOの基礎②
ディレクターのためのSEO基礎講座
そもそもSEOは集客手段の1つ
ルールを意識しつつ設計するときのコツ
結局勝つために何をすれば良いのか
情報が充実した良質なサイトとは?
人気・集客のあるサイトとは?
さすがに「よく分からない」ではもう通用しない

Chapter3田口式ディレクション トレーニングメソッド
3-1 田口式トレーニングメソッド①
アイデア発想を活性化させるトレーニング
トレーニングの効果
トレーニング応用例 ——「こんな○○はいやだ!」逆説からアイデアを導きだす方法

3- 2田口式トレーニングメソッド②
企画力を磨く! 視点強化トレーニング
トレーニングの効果
トレーニング応用例 —— あの看板に、どんな広告を入れるか?

3-3 田口式トレーニングメソッド③
ブレストを活性化させる! ファシリテーショントレーニング
トレーニングの効果
ワンポイント —— 否定から生まれるアイデアもある

3-4田口式トレーニングメソッド④
デザインイメージ 共有トレーニング
トレーニングの効果
トレーニング応用例 —— 単体のパーツデザインでのトレーニングもおすすめ

3- 5田口式トレーニングメソッド⑤
積極的に企画提案する力を養う!
勝手にリニューアル案を考えちゃうトレーニング
トレーニングの効果

3-6 田口式トレーニングメソッド⑥
プレゼンの印象を司る「話し方・喋り方」を磨く!
プレゼン魅力アップトレーニング
トレーニングの効果
現場で使えるプレゼンテクニック
まとめ ——プレゼンにおける究極の勝利とは“戦わないこと”

3- 7田口式トレーニングメソッド⑦
ヒアリングの切り口を増やすトレーニング
トレーニングの効果
ワンポイント —— デキるディレクターと、使えないディレクターの分かれ目となるポイント
ワンポイント —— ヒアリングシートの落とし穴

終わりに
INDEX
著者プロフィール

日本ディレクション協会 会長 中村 健太 (著), 株式会社デスクトップワークス 代表取締役 田口 真行 (著), デジタルマーケティングオフィス DCHS 代表 高瀬 康次 (著)
出版社: マイナビ (2015/8/25)、出典:出版社HP