モバイルシステム技術テキスト 第8版 -MCPCモバイルシステム技術検定試験2級対応-




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巻頭言(第8版刊行にあたって)

IoTシステムの実用化が、急速に本格化してきました。これはコンピュータの処理能力とその活用技術の向上、データ処理技術(AI分析)の発達、通信の高速化と低価格化、多様なセンサの出現と低価格化、クラウドインフラの充実などが同時並行的に進んだ結果です。一方、IoTシステムの構築において、モバイルシステムソリューションはその基礎となるものであり、この技術を理解し、活用できなければ、実際のシステム構築は困難です。

モバイル通信の環境は、2020年には第5世代移動通信システム(5G)のサービスが始まります。これは10Gbpsを超える通信速度となり、LTEアドバンスに比べて10倍程度の伝送スピードが確保される予定です。また同時に、低遅延(1ms程度)と多数同時接続が実現されます。一方、近距離無線通信では、Bluetooth、ZigBee等に加えて、スマートメータの情報収集用としてWiSUN(920MHz帯、通信距離500m程度)の活用も始まりました。

このように、IoTシステムの構築、運用にはモバイル(ワイヤレス)ネットワークの機能、性能とその進化を十分に把握しておく必要があります。また、「働き方改革」を支えるツールとして、スマートフォン、タブレットの多面的活用はますます重要となります。従来からモバイルネットワークは、自動車(コネクテッドカー)、建設機械、自販機、昇降機などの稼働状況把握、メンテナンス情報の収集などに活用されてきました。さらに現在は、IoTシステムの普及で通信モジュールの低価格化、機器接続の容易化が進み、医療、製造、農業、畜産分野への適用から、社会インフラの監視、安心安全確保まで、生活や産業、ビジネスの各方面で広範囲に活用されつつあります。

今後のIoTシステムの構築には、これらのプラットフォームとなるモバイルネットワーク、近短距離無線、モバイル端末、セキュリティ、モバイルコンテンツなどの技術が必要不可欠となります。また、モバイルシステムの技術者が、IoTシステムに対する市場のニーズを理解し対応していくためには、これらの技術を踏まえて最適化されたシステムの企画・構築・運用・改善を行えるシステムエンジニアへと成長していかなければなりません。

モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)は、ワイヤレス通信を利用した端末とコンピュータシステムのシームレスな接続によるモバイルコンピューティングシステム(以下モバイルシステム)により、効率的、効果的なソリューションの推進に向けて活動してまいりました。

また、2005年に「MCPCモバイルシステム技術検定制度」を創設し、モバイルシステム関連技術の習得項目・範囲・難易度等のスキル基準を明示し、学習意欲の喚起を図って参りました。教材として「モバイルシステム技術テキスト」(2級対応)、「同・エキスパート編」(1級対応)を発行、定期的に最新技術を盛り込む改定を行い、各方面から高い評価を受けています。2010年には米国・電気電子学会(IEEE)より本検定の制度と内容に対して高い評価と推薦がなされました。

MCPCでは、本検定制度を通じて、引き続きモバイルシステム、IoT(AI)システムに関わる技術者の育成、スキルアップ、活躍の場の拡大と地位向上に貢献してまいります。本検定制度に評価を頂いたIT、ICT、IoT(AI)関係者、並びに本テキストの改訂発行にご協力下さった関係各位に感謝を申し上げます。

2019年3月吉日
MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)会長
東京大学名誉教授・早稲田大学名誉教授
安田靖彦

モバイルシステムコンピューティング推進コンソーシアム (監修)
出版社 : リックテレコム; 第8版 (2019/3/13)、出典:出版社HP

目次

第1章 はじめに
1-1IoT、AI時代に必須のモバイルソリューションシステム

1-2モバイルシステム技術検定制度
MCPC
モバイルシステム技術検定の必要性と狙い
モバイルシステム技術検定制度の概要
最新試験情報
IEEEWCETOAの紹介

1-3本書の目的と構成
本書の目的
本書の構成

第2章 モバイルシステムの概要
2-1モバイルコンピューティング
PCのモバイル利用
リモートアクセス
固定通信からワイヤレスへ
ローカルインタフェースの利用
M2M/IoTとモバイルコンピューティング

2-2モバイルシステムの構成要素
概要
モバイル端末
モバイル接続機器
モバイルネットワーク
サーバ・固定系ネットワーク

2-3モバイルシステムの課題
多種多様な端末と利用形態の選択
無線通信の特性への配慮
セキュリティ管理の重要性

第3章 移動体通信サービス
3-1移動体通信サービスの歴史
第1世代 アナログ方式の自動車電話・携帯電話
第2世代 デジタル方式の導入
モバイルインターネットの急拡大と第3世代(3G)の登場
3Gの高度化とLTEの導入によるモバイルブロードバンドの実現
LTE-Advancedによる本格的な4Gの開始

3-2移動体通信事業者
NTTドコモ(NTTDOCOMO)
KDDI(ケーディーディーアイ)
ソフトバンク
UQコミュニケーションズ
楽天

3-3電話サービス
音声通話サービス
テレビ電話サービス

3-4モバイルインターネットサービス
インターネット接続サービス
アプリケーションのダウンロード機能

3-5SMS
通信事業各社のSMS
SMSの事業者間接続
プラスメッセージ

3-6電子メール
電子メールサービスの概要
電子メールの特徴
迷惑メール

3-7ワイヤレスデータ通信サービス
回線交換通信
パケット通信

3-8国際ローミング
国際ローミングの仕組み
国際ローミングの動向

3-9位置情報サービス
測位方式
位置情報を利用したサービス

3-10その他サービス
地上波デジタルテレビ放送とワンセグ放送
おサイフケータイ
安心安全の提供のために
移動体通信と固定通信との融合(FMC)

3-11MVNO
MVNOの役割
MVNOの状況
SIMロック解除

第4章 無線アクセスネットワーク技術
4-1無線アクセスネットワークとコアネットワーク

4-2伝送方式の基礎
無線伝送の仕組み
変調(Modulation)と復調(Demondulation)
音声・画像データ符号化(情報源符号化)と復号
誤り訂正符号化(通信路符号化)と復号
適応変調と適応スケジューリング
デュプレクス(複信)方式と多重化、多元接続方式

4-3モバイル機器で利用される周波数帯と電波特性
電波の特性と利用状況
移動体通信等に利用される周波数帯

4-4電波伝搬特性と伝送技術
移動体通信における電波伝搬
マルチパス伝搬環境下の伝送技術
遠近問題と送信電力制御

4-5無線アクセスネットワークの構成と無線アクセス制御
セルラー方式とセクタ化セル
モバイル端末の状態遷移
位置登録とハンドオーバ
無線アクセスネットワークの構成要素

4-6無線アクセス方式
第1世代システムと第2世代システム
第3世代システムから第4世代システム(IMTファミリーシステム)
各種の移動体通信システム

4-7無線アクセス技術の将来動向
第5世代移動通信システム(5G)の利用シーンとシステム要件
第5世代移動通信システム(5G)の無線アクセス技術
第5世代移動通信システム(5G)の発展に向けた国際協調と業界連携

第5章 コアネットワーク技術
5-1コアネットワークの概要
コアネットワークの概念
第3世代携帯電話(3G)のコアネットワーク
LTE
VoLTE
第5世代移動通信システム(5G)

5-2加入者移動管理
認証
位置登録
発信
呼出し
着信
ハンドオーバ

5-3ローミング
発信
着信

5-4ナンバーポータビリティ

5-5MVNOとの接続

5-6NFV/SDN
NFV(NetworkFunctionsVirtualisation)
SDN(SoftwareDefinedNetworking)

第6章 インターネット基盤技術
6-1TCP/IP
コンピュータ通信のプロトコル
標準化組織
OSI参照モデルとTCP/IPプロトコルセット

6-2物理層/データリンク層
物理層/データリンク層の例「イーサネット」
MAC(MediaAccessControl)アドレス
イーサネットフレームの構成
LANのアクセス制御技術
VLAN(VirtualLAN)による仮想ネットワーク
イーサネット以外のデータリンク層プロトコル

6-3ネットワーク層(IP)
IPv4
IPv6
ルーティング
その他のネットワーク層プロトコル

6-4トランスポート層(TCP、UDP)
ポート番号
TCPとUDP

6-5アプリケーション層
DNS(DomainNameSystem)
WWW(WorldWideWeb)
電子メール
VoIP(VoiceoverIP)
映像配信
WebRTC

第7章 モバイル端末・機器のハードウェア技術
7-1モバイル端末・機器の種類
情報処理端末
情報通信端末
その他の端末
モバイル接続機器
モバイル端末の省電力技術

7-2モバイル端末を構成するデバイス
プロセッサ
ディスプレイ
キー入力デバイス
メモリ
アンテナ
バッテリー
カメラ
外部記憶メディア
マイク、スピーカー
SIM、USIM、UIM
デュアルSIM
eSIM
センサ
生体認証デバイス
RFID

7-3外部インタフェース
オーディオ端子
シリアルバス・インタフェース
IrDA
Bluetooth
車載インタフェース

モバイルシステムコンピューティング推進コンソーシアム (監修)
出版社 : リックテレコム; 第8版 (2019/3/13)、出典:出版社HP

第8章 端末周辺技術
8-1無線インタフェース
無線LAN
Bluetooth
NFC
IrDA

8-2周辺機器
プリンタ
スキャナ
モデム
ネットワーク
バーコード・2次元コードリーダ
その他の周辺機器

第9章 モバイル端末のソフトウェア技術
9-1ソフトウェアの構成
オペレーティングシステム(OS)
ミドルウェア
アプリケーションソフトウェア

9-2PC用OS
MicrosoftWindows
モバイル端末用OSとしてのWindows

9-3スマートフォン/フィーチャーフォンOS
フィーチャーフォンとスマートフォンのOSの特徴
フィーチャーフォン向けOS
スマートフォン向けOS

9-4音声・画像の圧縮と伝送
可逆圧縮と非可逆圧縮
音声の圧縮技術
静止画像の圧縮技術
動画像の圧縮技術
ファイルの圧縮

9-5ソフトウェアアップデート機能

第10章 モバイルインターネット技術
10-1モバイル端末のインターネット接続
モバイルインターネットサービスと事業者網
モバイル端末単体からの接続(事業者サービス)
PCからモバイル接続機器を用いたモバイルインターネット接続
モバイルインターネット接続とネットワーク階層
無線LANを用いたインターネットへの接続

10-2モバイルWeb技術
モバイルコンテンツとHTTP/HTML
Webのシステムの構成
マークアップランゲージとHTML
Webアプリを実現するHTML5
User-Agentによるコンテンツの判断

10-3モバイルクラウド技術
クラウド概論
モバイルクラウドの構成要素
クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングの技術要素
モバイルクラウドの端末技術

第11章 モバイルコンテンツ技術
11-1コンテンツサービスの概要
コンテンツサービス
コンテンツ定額制サービス
マルチデバイス連携
DRM(DigitalRightsManagement)
コンテンツの課金方法
コンテンツの提供方法

11-2アプリケーション技術
スマートフォン向けアプリケーションの開発環境
Javaの実行環境
アプリ審査と端末サーティフィケーション
アプリケーション開発技術

11-3モバイルコンテンツの技術
静止画
動画
位置情報

第12章 情報セキュリティ管理
12-1モバイル環境のセキュリティ
情報システムへの脅威と情報セキュリティ
情報セキュリティマネジメント
リスク分析
モバイルシステムから見たセキュリティ

12-2セキュリティの機能、サービス、運用
スマートフォン等の情報保護機能
ノートPC、スマートフォン等のセキュリティ対策について
無線LANのセキュリティ
ネットワークのセキュリティ

12-3セキュリティの要素技術
暗号化
デジタル署名
PKI(PublicKeyInfrastructure:公開鍵基盤)
認証方式と認証強化
FIDO認証
アクセス管理技術

12-4情報セキュリティの標準と法制度
セキュリティガイドライン
個人情報保護
国内の法制度

第13章M2M/IoTシステム
13-1M2M/IoTシステムの概要
IoTシステムの仕組み
IoTシステムの共通プラットフォーム導入のメリットと展開

13-2IoTシステム概要
IoTシステムの構成
IoTアプリケーション
IoTサービスプラットフォーム
基幹ネットワーク
IoTゲートウェイ
IoTエリアネットワーク
IoTデバイス
IoTアーキテクチャとプロトコル

13-3IoTシステムの導入事例
運輸分野における導入事例
農畜産業分野における導入事例
医療分野における導入事例
建設分野における導入事例
製造業分野における導入事例

13-4IoTシステムの動向と展望
垂直統合型ビジネス形態から水平方向の展開へ
ネットワーク最適化に向けた動向と展望
IoTシステムセキュリティ確保に向けた取り組み
IoTシステムの構築と運用
AI(人工知能)によるIoTデータの活用と課題

第14章 モバイルシステムを利用したアプリケーション
14-1モバイル商取引
モバイルシステムで利用される提供者と利用者の商取引関係の分類

14-2モバイルシステムにおけるアプリケーション
クラウドコンピューティングサービスの利用
グループウェア
営業支援システム(SFA:SalesForceAutomation)
フィールド業務を支援するシステム

14-3モバイルシステムの効果を高める要素技術
モバイル検索エンジン
ソーシャルメディア(SocialMedia)
Webサービス
Wakeup機能

14-4モバイルシステムのIoT活用
モバイルコマースに用いられる決済手段の選定
医療支援でのモバイル活用
災害現場でのモバイル活用
見守りシステムとしての活用
企業へのBYODの導入

参考文献
索引
監修・執筆及び協力者一覧

モバイルシステムコンピューティング推進コンソーシアム (監修)
出版社 : リックテレコム; 第8版 (2019/3/13)、出典:出版社HP