Before/After 民法改正
はしがき
債権法の現代化をめざした「民法の一部を改正する法律案」は、本年5月26日に参 議院本会議において可決・成立し、平成29年6月2日法律第44号として公布された。 改正法は、公布の日から3年以内の施行が予定されている。
民法の学習をする学部生・大学院生や、民法を自らの仕事や研究の場で用いる実務家・研究者らが、今回の民法(債権関係)の改正により、民法を用いたこれまでの事件 処理が変わるのか、それとも変わらないのか、変わる場合にはどこがどのように変わるのか、改正前の民法の下での判例は、改正後もその意義が失われないのか、そもそも、 個々の案件を処理するに当たり、改正後はどの条文を用いて処理をすればよいのか、などといった点に強い関心を抱くことは、想像するに難くない。
こうしたニーズが見込まれる中で、本書は、改正の前後で民法の解釈・適用にどのよ うな違いが生じるのかを、簡単な Case を素材として、「改正前の民法の下での問題処 理はどのようなものであったか」(Before) ・「改正後の民法の下での問題処理はどうな るのか」(After)に分けて解説するものである。本書を、改正法に対応する教科書・体 系書等と併せて読んでいただければ、改正法に関する認識がいっそう深まることが期待 できよう。また、改正前の民法に関して知見を有している読者にとっては、本書は、改正前の民法の下で有していた知見を改正後の民法の下へとスムーズに移行するための一助となるであろう。
本書が成るに当たって、執筆に協力していただいた研究者・実務家の先生方には、短期間のうちに多くの文献・資料等を調査していただいたうえに、Case の作成からコンパクトな解説に至るまでの、非常に手間のかかる作業を引き受けていただいた。テーマによっては、手探りに近い状態で執筆するという困難な作業をお願いすることとなった ものも少なくなかった。執筆者各位のご尽力に対しては、ただただ頭の下がる思いである。編者一同、心よりの御礼を申し上げる。
本書の企画は、法制審議会民法(債権関係)部会での審議が大詰めを迎えていた時期に、 編者の1人である潮見が、弘文堂の北川陽子さんと懇談する中で持ち上がったものであ る。その際、潮見の頭にあったのは、2001年にドイツで債務法が大改正された際に、改正法の成立後間もなく刊行された Barbara Dauner-Lieb 編の “Das neue SchuldrechtFalle und Losungen”(Deutscher Anwalt Verlag, 2002)であった。同書は、172 の簡単な ケースを用いて、改正前・後の法の解釈・適用を併記して解説することにより、読者が改正前・後の状況を相互に対比し、把握しやすくすることをねらったものであった。同書は、債務法改正直後の時期を中心に、研究者・実務者・学生その他各層において、多くの支持を得た。この例に倣い、今回の我が国における民法(債権関係)の改正に関しても同様の企画を立てて、多くの方々のニーズに答えてはどうであろうかということから話が始まり、今回の法改正に精通する北居功・高須順一・赫高規・中込一洋・松岡久和の隠しに編者として加わっていただき、今般、一冊の書として刊行することができた次第である。この間、北川さんには、国会での審議の経過をにらみながら、絶妙のタイミングで企画の遂行をしていただいた。この時期に本書を刊行することができたのも、ひとえに北川さんのご尽力の賜物である。
本書が世に出るに至った経緯は、以上である。編者一同、本書が学部生・大学院生、実務家、研究者その他民法に関心を寄せる多くの方々に広く活用されることを望むところである。
2017年 7月24日
編者を代表して 潮見佳男
編者
潮見佳男・北居功・高須順一・赫高規・中込一洋・松岡久和
編者紹介
潮見佳男(しおみ・よしお)
1959年生まれ。京都大学法学部卒。
現在、京都大学大学院法学研究科教授。
主著:『新債権総論I・II』(信山社・2017)、『基本講義債権各論 I 契約・事務管理・ 不当利得[第3版]』(新世社·2017)、『詳解相続法』(弘文堂·2018)、「民法(全)(第2版)』(有斐閣·2019)
北居功(きたい・いさお)
1961年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。
現在、慶應義塾大学大学院法務研究科教授。
主著:『契約履行の動態理論I弁済提供論』(慶應義塾大学出版会·2013)、『契約履行動態理論I弁済受領論」(慶應義塾大学出版会·2013)、『法典とは何か』(共編著、慶應義塾大学出版会·2014)
高須順一(たかす・じゅんいち)
1959年生まれ。法政大学法学部卒。
現在、弁護士(高須・高林・遠藤法律事務所)・法政大学大学院法務研究科教授。
主著:『ロースクール民事法」(酒井書店·2009)、「民法から考える民事執行法·民事 保全法」(商事法務·2013)、『判例にみる詐害行為取消権·否認権』(編著、新日本法規・2015)
赫 高規(てらし・こうき)
1969年生まれ。京都大学法学部卒。
現在、弁護士(弁護士法人関西法律特許事務所)。
主著:日本弁護士連合会編『実務解説改正債権法』(分担執筆、弘文堂・2017)、高須
順一編著『Q&Aポイント整理改正債權法』(共著、弘文堂·2017)
中込一洋(なかごみ・かずひろ)
1965年生まれ。法政大学法学部卒。
現在、弁護士(司綜合法律事務所)。
主著:日本弁護士連合会編「実務解説改正債権法」(分担執筆、弘文堂·2017)、高須
順一編著「Q&Aポイント整理改正債権法』(共著、弘文堂·2017)、「実務解
説改正相続法」(弘文堂·2019)
松岡久和(まつおか・ひさかず)
1956年生まれ。京都大学法学部卒。
現在、立命館大学大学院法務研究科教授。
主著:『物権法』(成文堂・2017)、『担保物権法』(日本評論社・2017)、松岡久和 = 潮見佳男 = 山本敬三『民法総合・事例演習[第2版]』(共著、有斐閣・2009)
●執筆者一覧(五十音順・敬称略)
*印:編著者
秋山 靖浩 (あきやま・やすひろ) 早稲田大学大学院法務研究科教授
安部 将規 (あべ・まさき) 弁護士(アイマン総合法律事務所)
荒木 理江 (あらき・まさえ) 弁護士(飯塚総合法律事務所)
飯島奈津子 子 (いいじま・なつこ) 弁護士(よこはま山下町法律事務所)・横浜国立大学法科大学院教授
井砂 貴雄 (いさご・たかお) 弁護士(安達法律事務所)
石川 裕一 (いしかわ・ゆういち) 弁護士(大船いしかわ法律事務所)
石田 剛(いしだ・たけし) 一橋大学大学院法学研究科教授
泉原 智史 (いずみはら・さとし) 弁護士(金融庁総合政策局総務課国際室課長補佐)
一木 孝之 (いちき・たかゆき) 國學院大學法学部教授
稲田 正毅 (いなだ・まさき) 弁護士(共栄法律事務所)・関西学院大学大学院司法研究科教授
稲村 晃伸 (いなむら・てるのぶ) 弁護士(北多摩いちょう法律事務所)
岩田 修一 (いわた・しゅういち) 弁護士(染井さくら法律事務所)
臼井 智晃 (うすい・ともあき) 弁護士(ひびき綜合法律事務所)
大澤 彩 (おおさわ・あや) 法政大学法学部教授
大西 達也 (おおにし・たつや) 弁護士(高須・髙林・遠藤法律事務所)
岡本 裕樹 (おかもと・ひろき) 筑波大学ビジネスサイエンス系教授
沖野 眞巳 (おきの・まさみ) 東京大学大学院法学政治学研究科教授(おくとみ・あきら) 上智大学大学院法学研究科教授
香川 崇 (かがわ・たかし) 富山大学経済学部教授
柿原 達哉 (かきはら・たつや) 弁護士(T&K法律事務所)
笠井 修 (かさい・おさむ) 中央大学大学院法務研究科教授
片山 直也(かたやま・なおや)、慶應義塾大学大学院法務研究科教授
角 紀代恵 (かどきよえ) 立教大学法学部教授
金山 直樹(かなやま・なおき) 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
金子 敬明(かねこ・よしあき) 名古屋大学大学院法学研究科教授
北居 功 (きたい・いさお) 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
窪田 見 (くぼた・あつみ) 神戸大学大学院法学研究科教授
栗本 知子 (くりもとのりこ) 弁護士(弁護士法人関西法律特許事務所)
桑岡 和久(くわおか・かずひさ) 甲南大学法学部教授
後藤 巻則(ごとうまきのり) 早稲田大学大学院法務研究科教授
小松 達成(こまつ・たつなり) 弁護士(篠塚・野田法律事務所)
三枝 健治(さいぐさ・けんじ) 早稲田大学法学部教授
齋藤 由起(さいとう・ゆき) 大阪大学大学院法学研究科准教授
斎藤 芳朗(さいとう・よしろう) 弁護士(徳永・松崎・斉藤法律事務所)
坂口 甲 (さかぐち・こう) 大阪市立大学大学院法学研究科准教授
潮見 佳男(しおみ・よしお) 京都大学大学院法学研究科教授
篠塚 力 (しのづか・ちから) 弁護士(篠塚・野田法律事務所)
下村 信江 (しもむら・としえ) 近畿大学大学院法務研究科教授
白石 友行 (しらいし・ともゆき) 筑波大学ビジネスサイエンス系准教授
水津 太郎 (すいず・たろう) 慶應義塾大学法学部教授
葛尾 慎一郎 (たかお・しんいちろう) 弁護士(梅田中央法律事務所)
高須 順一*(たかす・じゅんいち) 弁護士(高須・高林・遠藤法律事務所)・法政大学大学院法務研究科教授
清沢 昌彦 (たきざわ・まさひこ) 一橋大学大学院法学研究科教授
辰巳 裕規 (たつみ・ひろき) 弁護士(芦屋本通り法律事務所)
千葉 恵美子 (ちば・えみこ) 大阪大学大学院高等司法研究科招聘教授
鶴藤 倫道 (つるふじ・のりみち) 神奈川大学法学部教授
赫 高規*(てらし・こうき) 弁護士(弁護士法人関西法律特許事務所)
德田 琢 (とくだ・たく) 弁護士(德田法律事務所)
中込 一洋*(なかごみ・かずひろ) 弁護士(司綜合法律事務所)
長野 史寛 (ながの・ふみひろ) 京都大学大学院法学研究科准教授
中村 肇(なかむら・はじめ) 明治大学大学院法務研究科教授
西内 康人 (にしうち・やすひと) 京都大学大学院法学研究科准教授
野澤 正充 (のざわ・まさみち) 立教大学大学院法務研究科教授
野村 剛司 (のむら・つよし) 弁護士(なのはな法律事務所)
花本 広志 (はなもと・ひろし) 獨協大学外国語学部交流文化学科教授
林 薫男 (はやし・しげお) 弁護士(みなと横浜法律事務所)
平野 裕之 (ひらの・ひろゆき) 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
福井 俊一 (ふくい・しゅんいち) 弁護士(はばたき綜合法律事務所)
福田 誠治(ふくだ・せいじ) 駒澤大学法学部教授
福本 洋一 (ふくもと・よういち) 弁護士(弁護士法人第一法律事務所)
藤原 正則 (ふじわら・まさのり) 北海道大学大学院法学研究科教授
松井 和彦 (まつい・かずひこ) 大阪大学大学院高等司法研究科教授
松尾 弘 (まつお・ひろし) 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
松岡 久和*(まつおか・ひさかず) 立命館大学大学院法務研究科教授
松久 三四彦 (まつひさ・みよひこ) 北海学園大学大学院法務研究科教授
松本 克美 (まつもと・かつみ) 立命館大学大学院法務研究科教授
森田 修 (もりた・おさむ) 東京大学大学院法学政治学研究科教授
矢吹 徹雄(やぶき・てつお) 弁護士(弁護士法人矢吹法律事務所)・北海学園大学大学院法務研究科教授
山城 一真 (やましろ・かずま) 早稻田大学法学学術院准教授
和田 勝行 (わだ・かつゆき) 京都大学大学院法学研究科准教授
渡辺 達徳 (わたなべ・たつのり) 東北大学大学院法学研究科教授
渡邊 力 (わたなべ・つとむ) 関西学院大学法学部教授
contents
はしがき
編者紹介
執筆者一覧
目次
凡例
民法総則
I 法律行為
1 意思能力を欠いた行為の効力 小松達成
2 意思能力の一時的喪失・無効の主張権者 小松達成
3 公序良俗違反 桑岡和久
4 心裡留保 小松達成
5 表示行為の錯誤 篠塚 力
6 動機の錯誤 篠塚 力
7 惹起された錯誤と表明保証 篠塚 力
8 錯誤者の重過失 篠塚 力
9 錯誤取消しと第三者 篠塚 力
10 第三者の詐欺 泉原智史
11 詐欺取消しと第三者 中込一洋
12 意思表示の到達 泉原智史
13 表意者・受領者の能力の喪失 泉原智史
14 意思表示の受領能力 泉原智史
Ⅱ 代理
15 代理人に対する詐欺・代理人の詐欺 飯島奈津子
16 本人の悪意と代理行為の効力 飯島奈津子
17 代理人の行為能力の制限と代理の効力 飯島奈津子
18 法定代理人の行為能力の制限 飯島奈津子
19 復代理人を選任した任意代理人の責任 林 薫男
20 自己契約・双方代理・利益相反 林 薫男
21 代理権の濫用 林 薫男
22 授権代理と越権代理 矢吹徹雄
23 滅権代理と越権代理 矢吹徹雄
24 無権代理人の責任 矢吹徹雄
Ⅲ 無効および取消し
25 無効な売買契約の清算 藤原正則
26 無効な贈与契約の清算 藤原正則
27 取り消すことができる行為の追認 藤原正則
Ⅳ 条 件
28 条件の成就の妨害・不正な条件成就柿原達哉
Ⅴ 時効
29 時効の援用権者 齋藤由起
30 時効の完成猶予および更新 松久三四彦
31 裁判上の請求と裁判上の催告 松久三四彦
32 協議を行う旨の合意による時効の完成猶予 金子敬明
33 協議を行う旨の合意の繰返しと時効の完成猶予 金子敬明
34 物上保証人に対する抵当権の実行 松久三四彦
35 天災等による時効の完成猶予 松岡久和
36 消滅時効期間の短縮と二重期間化 金山直樹.
37 短期消滅時効の廃止による期間の長期化 香川崇
38 短期消滅時効の廃止による期間の統一・単純化 香川崇
39 商事消滅時効の廃止の影響 金山直樹
40 安全配慮義務違反の時効期間と起算点 金山直樹
41 定期金債権の消滅時効 香川崇
42 契約責任と不法行為責任の消滅時効期間 松本克美
43 不法行為責任の長期期間制限 松本克美
44 人損の場合における時効期間の延長 松本克美
45 人損と物損の消滅時効期間 松本克美
債權
I 債権の目的
46 特定物債権における保存義務
47 種類債権の特定と危険の移転
48 選択債権における不能による債権の特定
Ⅱ 法定利率
49 市場金利の変動 福本洋一
50 利率の固定の基準時 福本洋一
51 後遺障害の場合の中間利息控除 窪田充見
Ⅲ 債権の効力
52 履行期と履行遅滞
53 受領遅滞と保存義務の軽減・増加費用の負担
54 受領遅滞中の履行不能
55 履行請求権と履行不能
56 債務不履行を理由とする損害賠償と免責事由
57 履行補助者の行為と債務者の損害賠償責任
58 確定的履行拒絶と履行に代わる損害賠償
59 履行遅滞と履行に代わる損害賠償
60 合意解除と履行に代わる損害賠償
61 履行遅滞・受領遅滞中の履行不能
62 損害賠償の範囲と予見可能性
63 過失相殺
64 損害賠償額の予定
65 代償請求権
Ⅳ 解除と危険負担
66 催告解除の原則 森田 修
67 催告解除の例外的否定 森田 修
68 無催告解除 森田 修
69 一部不能等による解除 森田 修
70 確定的履行拒絶と解除 白石友行
71 売買契約の目的達成不能と解除 山城一真
72 賃貸借契約の目的達成不能と解除 山城一真
73 付随的義務の違反と解除 山城一真
74 債権者の責めに帰すべき事由による債務不履行と解除 山城一真
75 解除の場合の果実・使用利益の返還 鶴藤倫道
76 解除権の消滅 鶴藤倫道
77 危険負担と反対給付の履行拒絶 潮見佳男
V 債権者代位権
78 債権者代位権における被保全債権
79 代位権行使の範囲
80 債権者の直接請求権
81 裁判外の代位権行使等と債務者の処分権限等
82 直接請求の代位訴訟と債務者の処分権限
83 登記等請求権を保全するための債権者代位権
Ⅵ 詐害行為取消権
84 詐害行為取消権における被保全債権
85 相当価格処分行為の詐害性
86 同時交換行為の詐害性
87 弁済の詐害性
88 担保供与の詐害性
89 過大な代物弁済の詐害性
90 転得者に対する詐害行為取消権の要件
91 詐害行為取消権の請求の内容
92 詐害行為取消権の行使の方法
93 詐害行為取消訴訟の競合
94 取消債権者の直接請求権
95 詐害行為取消しの範囲
96 廉価売却行為の取消しと受益者の反対給付
97 高値購入行為の取消しと受益者の反対給付
98 詐害行為取消しと受益者の債権の復活
99 詐害行為取消しと転得者の反対給付
100 詐害行為取消権の期間制限
Ⅶ 多数当事者の債権・債務
101 不可分債務と連帯債務
102 連帯債務者の1人に対する請求
103 連帯債務における相殺
104 連帯債務者の1人に対する免除
105 連帯債務者の1人についての消滅時効
106 連帯債務者の1人による一部弁済後の求償関係
107 連帯債務者の1人による代物弁済後の求償関係
108 連帯債務における事前通知・事後通知
109 連帯債務における償還無資力者の負担部分のみ
110 連帯の免除
111 不可分債務者の1人について生じた事由の効力
112 連帯債権
113 不可分債権
Ⅷ 保証債務
114 保証債務の内容の付従性
115 主たる債務に関する抗弁の援用
116 委託保証人の求償権
117 保証における事前・事後の通知
118 連帯保証
119 個人根保証契約における極度額等
120 求償権保証契約
121 公正証書の作成と保証の効力
122 公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外
123 保証契約締結時の情報提供義務
124 履行状況の情報提供義務
125 期限の利益喪失に関する情報提供義務
Ⅸ 債権譲渡
126 譲渡制限特約違反の債権譲渡後の譲渡人への弁済・相殺
127 譲渡制限特約違反の債権譲渡後の善意譲受人の地位
128 譲渡制限特約違反の債権譲受人による履行請求
129 譲渡制限特約違反の債権譲渡と債務者の承諾
130 債務者の供託権
131 破産手続開始と債権者の供託請求権
132 譲渡制限特約と債権の差押え
133 譲渡制限特約と預貯金債権
134 将来債権譲渡担保の効力
135 将来債権の譲受人に対する譲渡制限の意思表示の対抗
136 債権譲渡の承諾と債務者の抗弁
137 債権譲渡と相殺
138 将来債権譲渡と相殺
139 譲渡制限特約付債権の譲渡と相殺
Ⅹ 債務引受
140 併存的債務引受の要件
141 併存的債務引受の効果
142 免責的債務引受の要件と効果
143 免責的債務引受と担保の移転
Ⅺ 契約上の地位の移転
144 契約上の地位の移転
Ⅻ 弁済
145 第三者の弁済
146 受領権者としての外観を有する者に対する弁済
147 代物弁済
148 特定物の現状による引渡
149 弁済すべき時間
150 預貯金口座への振込みによる弁済
151 弁済の充当
152 弁済の提供
153 自助売却斉藤芳朗
154 任意代位の要件
155 複数の保証人間における求償と代位
156 保証人・物上保証人と第三取得者の代位関係
157 第三取得者または物上保証人からの譲受人の地位
158 一部弁済による代位
159 担保保存義務
ⅩⅢ 相殺
160 相殺適状および相殺制限特約
161 生命・身体侵害による不法行為債権と相殺禁止
162 悪意による不法行為債権と相殺禁止
163 差押えと相殺平野裕之
164 差押え前の原因により差押え後に取得した債権と相殺
165 相殺充当
ⅩⅣ 更改
166 債務者の交替による更改
167 更改の効力と旧債務の帰趨
168 更改後の債務への担保の移転
契約
Ⅰ 契約の成立
169 承諾の延着
170 申込者の能力喪失
171 注文に応じた商品の発送
Ⅱ 第三者のためにする契約・
172 第三者のためにする契約
Ⅲ 定型約款
173 定型約款の定義
174 みなし合意の要件
175 みなし合意から除外される要件
176 内容の表示
177 変更・経過措置
Ⅳ 売買
178 買主の追完請求権
179 買主の代金減額請求権
180 買主の解除権の行使
181 買主の損害賠償請求権の行使
182 権利移転義務の不履行に関する売主の責任
183 買主の権利の期間制限、消滅時効との関係
184 競売における買受人の権利の特則
185 権利取得の不安を理由とする代金支払拒絶権
186 特定物売買における危険の移転
187 種類売買における危険の移転
188 買戻し
V 贈与
189 特定物贈与者の引渡義務等
190 不特定物贈与者の引渡義務等
Ⅵ 消費貸借
191 消費貸借の成立
192 消費貸借の予約
193 利息付消費貸借
194 貸主の引渡義務等
195 期限前弁済
Ⅶ 賃貸借
196 存続期間
197 対抗力ある不動産賃借権と賃貸人の地位の移転
198 賃貸不動産の譲渡と賃貸人の地位の留保
199 合意による賃貸人の地位の移転
200 不動産の賃借人による妨害排除請求権等
201 敷金返還請求権
202 敷金の充当
203 賃借物の一部滅失による賃料の減額・解除
204 転貸の効果
205 賃借人の原状回復義務
206 損害賠償請求権に関する期間制限
Ⅷ 使用貸借
207 使用貸借の諾成化
208 終了事由
Ⅸ 請負
209 仕事未完成の場合の割合的報酬
210 契約不適合の場合の請負人の責任
211 契約不適合の場合の注文者による解除
212 契約不適合の場合の注文者の権利の期間制限
213 注文者の破産による解除
X 委任
214 受任者の自己執行義務、復受任
215 受任者の報酬請求
216 任意解除と損害賠償
Ⅺ 雇用
217 労務提供の不能と報酬請求
218 期間の定めのある雇用の解除
219 期間の定めのない雇用の解約申入れ
Ⅻ 寄託
220 寄託の諾成化
221 寄託物に対する第三者の権利主張
222 混合寄託
223 消費寄託
ⅩⅢ 組合
224 契約総則の規定の不適用の
225 組合員の1人の意思表示の無効・取消し
226 組合債権者による権利行使可能性
227 組合員債権者による権利行使可能性
228 業務執行
229 組合代理
230 組合員の加入
231 組合員の脱退
232 解散事由
事項索引
判例索引
条文索引
凡例
1 本書は、232 の設例(Case)について、各設例を見開き2頁で、「旧法での処理はどうだったか」(【Before】)、「新法での処理はどうなるか」(【After】)の順序で解説を行っている。
2 法令は、2017年8月1日現在による。ただし、本書の解説 (【After)) においては、民法の一部を改正する法律」(平成 29年法律第44号)および「民法の一部を改正する法 律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成29年法律第45号)による改正 の施行日(一部の規定を除き、公布日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定 める日)の前ではあるが、改正を反映して解説した。
3 判例の引用については、大方の慣例に従った。引用中の[ ]は、項目担当執筆者 が補った注記である。判例集等を略語で引用する場合には、以下の例によるほか、慣例に従った。
民錄 大審院民事判決錄
民集 最高裁判所(大審院)民事判例集
集民 最高裁判所裁判集民事
高民集 高等裁判所民事判例集
裁時 裁判所時報
判時 判時判例時報
判タ 判例タイムズ
金判 金融・商事判例
金法 金融法務事情
新聞 法律新聞
4 法令の表記についての略語は、以下の例によるほか、慣例に従った。ただし、民法 典については、2017年8月1日現在の法令を、改正の前後を通じ変更されなかった条文を含めて「旧法」と表記し、改正法が反映された民法典を(変更されなかった条文を含めて)「新法」と表記した。
整備法 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号)
民施 民法施行法
不登 不動產登記法
動産債権譲渡特 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律
消契 消費者契約法
特商 特定商取引に関する法律
借地借家 借地借家法
品確 住宅の品質確保の促進等に関する法律
自賠 自動車損害賠償保障法
商 商法
商旧 整備法(平成29年法律第45号)による改正前の商法
会社 会社法
民訴 民事訴訟法
非訟 非訟事件手続法
非訟旧 整備法(平成29年法律第45号)による改正前の非訟事件訴訟法
民執 民事執行法
民保 民事保全法
破產 破產法
5 以下の文献引用については、略称を用いた。
部会資料1~88-2 法制審議会民法(債權関係)部会資料1 88-2 主示(LC),
法務省のウェブサイトにて公開されている)
第1回~第99回会議議事録法制審議会民法(債権関係)部会第1回から第99回までの議事録(いずれも法務省のウェブサイトで公開されている)
基本方針 民法(債権法)改正検討委員会編「債権法改正の基本方針」別冊 NBL126号(商事法務・2009)
検討事項 商事法務編「民法(債權関係)改正に関する検討事項一法制審議会民法(債権関係)部会資料詳細版』(商事法務・2011)
中間試案 商事法務編「民法(債權関係))改正に関する中間試案(概要付)」別冊NBL 143号(商事法務・2013)
中間試案補足説明 商事法務編『民法(債権関係)改正に関する中間試案の補足説明』
(商事法務・2013)
注釈民法(1)~(26) 「注釈民法(1)~(26)」(有斐閣.1964 ~ 1987)
新版注釈民法(1)~(28) 「新版注釈民法(1)~(28)」(有斐閣·1988 ~ 2015)
潮見·概要 潮見佳男「民法(債權関係)の改正法案概要」(金融財政事情研究会2015) 我妻・債権総論 我妻栄『新訂債権総論,民法講義Ⅳ』(岩波書店,1964)
我妻・債権各論上・中一・中二 我妻栄『債権各論上巻,中巻一,中巻二 民法講義1~3』(岩波書店、1954・1957・1962)