日経TEST 公式練習問題集 Part2: 「経済知力」を問う新選200問




まえがき

ビジネスパーソンを取り巻く環境の変化が一段と速くなっています。最 近の日本経済新聞を見ても、「各国が国債の信認を争うソブリン(政府債 務)・ワールドカップの時代に入った」「原子力発電所の事故の後に再生可 能エネルギーの開発が加速している」「少子高齢化による国内市場縮小と 新興国市場の拡大に対応した産業再編の機運が盛り上がっている」「原油 や鉱物など資源を巡る国際企業の攻防が激しい」など、変化の速さを象徴 する重要なニュースが目白押しです。ツイッター、ユーチューブ、フェイスブックなどによりインターネットで飛び交う情報がスピードを加速させ ます。先行きが一段と不透明になり、ビジネスパーソンが当たり前だと思 っていた昨日までの常識は通用しなくなっています。

「先輩社員を見習うな」ある大手自動車部品メーカーでは、幹部社員から新入社員にこんな言葉がかけられます。系列の完成車メーカーから受注し、期限をきっちりと守って高品質で低コストの部品を納入するのが 従来型の社員(先輩社員)でした。いま新入社員に求められているのは、 部品の試作品をかついで中国の電気自動車メーカーに売り込み、ブラジル や南アフリカでも取引先を開拓する熱意と創意工夫にあふれた姿勢です。 性泊のクローバル化が加速し、新興国が台頭するなかで、中国は世界最大 の自動車市場であり、ブラジルは2010年にドイツを抜いて中国、米国、 日本に次ぐ世界4位の自動車市場に浮上しました。将来の姿が見えない時 代に、ビジネスパーソンに必要とされるのは、「知識による情報武装をし たうえで、自ら考えながら道を切り開く力」です。

日本経済新聞社と日本経済研究センターは2008年9月、「日経経済知力 テスト(略称:日経TEST)」の全国一斉試験を始めました。日経TEST は経済の仕組みや流れを理解し、新しいビジネスを生み出す能力である「経済知力(ビジネス知力)」を測定するテストで、毎年2回、全国主要都 市で実施しています。受験者はベテランの編集委員らが生きた経済を題材 に作成した100問を80分で解き、1000点を最高とするスコアを競います。 企業が昇進・昇格試験に採用したり、就職を目指す学生がエントリーシートや面接で高いスコア獲得をアピールするなど利用が広がっています。日本経済新聞社は全国一斉試験のほか、企業・団体が場所・時間の制約を受けずに実施できる日経TEST 企業・団体試験(100問)や、企業の研修用 に開発して新聞記者経験者による問題解説講座を付けた日経TEST研修ドリル(50問)、新聞記者の情報収集スキル伝授や研修ドリルを盛り込んだ企業向けの1日研修(日経経済知力研修)などのラインアップを増やして います。

本書は、日経TEST の受験を考えている人のために2010年3月に発行した「日経TEST 公式練習問題集」の「Part2」です。前著(「Part1]) 同様に、精選した200問を用意しました。欧州のソブリン危機から、身近なヒット商品まで幅広い分野を出題対象にしています。200問にじっくりと取り組むことで「経済に関する知識と、知識を活用する力(知力)の総体」である経済知力(ビジネス知力)を向上させることができます。 「Part1」と「Part2」の両方を活用して、知識と知力を十分に鍛えたうえ で全国一斉試験に挑戦し、高いスコアを目指してください。

2012年3月
日本経済新聞社

日本経済新聞社 (編集)
日本経済新聞出版社、出典:出版社HP

目次

本書の使い方

日経TESTとは――あなたの「経済知力」を測る [Guidance] 1 日経TESTと経済知力
2 日経TEST の問題構成
3 経済知力を高めるには
4 受験者の声
■日経TEST 全国一斉試験実施要項

練習問題 I 基礎知識[Basic] 経済や経営に関する基本常識と仕事に役立つ実務性の高い知識を測る40問

練習問題 Ⅱ 実践知識 [Knowledge] 課題の解決に取り組む際に必要となる本質的かつ実践性の高い経済・経営知識を測る40問

練習問題Ⅲ 視野の広さ [Sensitive] 多様な社会現象に対して幅広い関心を持つことが できているかを測る40問

練習問題Ⅳ 知識を知恵にするカ[Induction] 吸収した情報から一般的な法則や共通性を見つけ出し、 応用可能な「知恵」に変える力を測る40問

練習問題 V 知恵を活用するカ[Deduction] 既知のルールや一般論(知恵)を個別の事象に適用し、 何らかの結論を導き出す力を測る40問

本書の使い方

日経TESTは独自に定めた出題指針にのっとり、1つの評価軸につき20 問、計100問の問題を作成して出題しています。本書の問題も全国一斉試 験の出題指針に準じており、1つの評価軸につき40問、計200問を掲載し ています。全国一斉試験では、どれがどの評価軸に属する問題かは明示し ていませんが、本書では日経TESTを受ける人のための練習問題集という 性格を勘案して、評価軸別に章を立て、各評価軸の問題の特色を理解でき るようにしました。それぞれの評価軸については、冒頭の「日経TESTと は」を参照してください。

問題は右ページに掲載し、正解と解説をその裏(左ページ)に掲載して います。

似たような経済事象が、「実践知識」の問題として扱われたり、「知識を 知恵にする力」の問題として扱われたりする例に遭遇すると思います。問 題作成の切り口の違いによって、経済事象が異なった表情を見せることが 分かります。問題の配列は、緩やかなグルーピングを意識したほかは格別 の意図はありません。

本書は日経TESTの出題構造を理解し、問題になじんでいただくのが目 的ですが、200問の問題と解説には日本と世界の経済の現状を理解する ーワード、情報が埋め込まれています。経済とビジネスについての今を死 み解く解説書としても役立つものと思います。本書に収めた問題は 年1月までの報道や公開された資料などを基に作成しました。

1 日経TESTと経済知力

日経TESTは正式名称を「日経経済知力テスト」といいます。TESTは 経済知力テストを英訳した「Test of Economic Sense and Thinking」の略 称です。

初めて耳にする方も少なくないと思いますが、経済知力(ビジネス知 力)を簡単に定義すると、「ビジネス上の思考活動に必要な知識と、それ を活用する力(知力)の総体」ということができます。経済の仕組みを理 解し、新しいビジネスを創出する力と言い換えることもできます。ビジネ スに携わる人々にとっては欠かせない能力です。

例えば、「新商品を開発する」という思考活動について考えてみましょ う。進め方は多様ですが、以下のような流れが一般的と考えられます。

①日ごろから世の中の変化や同業他社の動向に関心を向け、新しい情報を知識として蓄積しておく。
②蓄積した知識の中から、「消費トレンド」や「ヒットの法則」を抽出 する。
③抽出した「消費トレンド」や「ヒットの法則」を自社の経営資源に照 らし合わせ、最適な商品アイデアを発想する。

①は日ごろの情報収集を意味します。②は収集した情報の編集・加工、 ③は加工した法則を現実に応用する過程を示します。このように、「知識」 のストックとそれを活用する「知力=考える力」が存在することで初め て、新商品開発という思考活動を円滑に進めることが可能になります。 ちろん、新たに収集した情報を生かすためには、経済構造や企業を取り巻 く環境、経営実務などに関する知識をある程度は持っていることが前提に なります。

ビジネス上の思考活動は新商品の開発に限りません。顧客の苦情処理、 新たなソリューションの提供、日常業務における問題の解決、新規事業の立案、長期経営計画の策定……。これらも重要な思考活動です。そこでは いつも、意識するとしないとにかかわらず、知識と知力が動員されている はずです。

日経TEST は、ビジネスの遂行に不可欠な「経済知力」を測るテストな のです。

2 日経TESTの問題構成

これまで述べたように、経済知力はビジネス知識と知力=考える力で構 成されます。知識の蓄積がなければ知力は生かせませんし、知力がなけれ ば知識は役に立ちません。両者が有機的に結びついて経済知力が形成され ます。

知識は、もう少し詳しく見ると3つの要素に分類できます。「基礎知識」 「実践知識」「視野の広さを示す知識(視野の広さと略します)」です。ま た、知力は「知識を知恵にする力(帰納的推論力)」と「知恵を活用する

経済知力の構造

力(演繹的推論力)」の2つの要素に分かれます。この5つの構成要素こそ 経済知力を測る評価軸ということになります。日経TESTでは各評価軸に つき20問、計100問の問題が出題されます。

(1) 5つの要素=評価軸
それでは5つの要素 =評価軸を詳しく解説しましょう。

1基礎知識 [B = Basic] 文字通り、経済・ビジネスを正しく理解するための知識です。それを知 らないと経済現象が正しく理解できず、仕事に支障をきたす恐れのある知 識を指します。経済や経営に関する基本常識と、仕事に役立つ実務性の高 い知識に大別できます。

デフレ、経済成長率、為替相場、社外取締役の機能、持ち株会社……。 これらは経済や経営に関する基本常識に含まれるものです。実務性の高い 知識とは、例えば損益計算書の読み方、マーケティング手法に関する常識、個人情報保護法や著作権法など、ビジネスパーソンとして知っておき たい基礎的な法務知識などを指します。これらの問題では、キーワードをきちんと理解しているかどうかが問われます。

2実践知識[K = Knowledge] 課題解決に取り組む際に必要となる本質的かつ実践性の高い経済・経営知識を指します。この分野も企業を取り巻く経営環境に関する知識と、環 境変化に対応して講じる戦略や対応策についての知識・理解の2つに分け られます。基礎知識がいわば教科書的で普遍性が高いのに対して、実践知 識は生きた経済や企業行動を反映しており流動的な要素をはらみます。

BRICSの台頭、少子高齢化の進行、環境保護の動き、世界金融危機の影 響などが経営環境に関連する知識です。一方、M&A、アウトソーシン グ、ネットスーパー、排出枠取引などは経営環境の変化に対応した企業行 動を表すものといえます。

この分野の問題は個別的で、同じ戦略をある企業は採用するが、別の企業は選択しないということがあります。ある企業にとっては妥当性が高い と判断された方策が、他の企業では評価されないということがあり得るの です。正答率を高めるには新聞や経済誌などのニュース、解説をしっかり チェックしているかどうかがポイントとなります。

3視野の広さ [S = Sensitive] 知的好奇心が強く、多様な社会現象に対して幅広い関心を持つことによ って得られる知識です。通勤の途中に街角で体験したこと、テレビの海外 ニュースで見た忘れられないレポート、新聞のアンケート調査の記事にあ った意外な報告、趣味の音楽愛好仲間から聞いた面白い話、スーパーの店 頭で出合った新商品などなど、日々の暮らしの中で記憶にとどめた知識 は、いつの日か自分の仕事で役に立つことがあるかもしれません。経済的 な価値の源泉は日々の生活の中にあるからです。出題範囲は広く、受験者 にとっては対策の立てにくい問題分野ですが、アンテナを常に高くしてお くことが重要です。

4知識を知恵にする力=帰納的推論力 [I = Induction] 知識として吸収した情報から一般的な法則や共通性を見つけ出し、応用 可能な「知恵」に変える力を指します。先ほど説明した「新商品の開発」 の事例でいえば、「②蓄積した知識の中から、『消費トレンド』や『ヒットの法則』を抽出する」力が、知識を知恵に変える力です。複数の流行現象 を分析して共通性に着目し、一つの概念へと抽象化する思考作業です。最近、頻繁に唱えられる「仮説構築」はこれに通じるものです。

出題の形式には、個別の事例を複数提示して一般論を推論するケース や、複数の個別事例の中から共通のルールや概念に該当するもの、または 該当しないものを探し出すケースなどがあります。

5知恵を活用する力=演繹的推論力[D=Deduction] 既知のルールや一般論(知恵)を個別の事象に適用し、何らかの結論を導き出す力を指します。問題の原因の特定や結果の予測といった日常的な 思考の多くは、過去の経験則に照らして判断しているという点で、演繹思考の典型ということができます。「新商品の開発」の事例では、他社のヒ ット事例から引き出した法則を自社の経営資源に適用し、自社なりの新商 品を企画する過程がこれに該当します。既知のルールや一般論を適用する だけでは前例踏襲に終わる恐れがあり、本当に競争力のある商品を企画し ようという場合は、「新商品の開発」の事例のように新しいルールを自ら 創出する作業が重要となります。

出題の形式には、事象を提示して結論を推論させるケースや、結果を提 示して原因となった事象を特定するケースなどがあります。「知恵を活用 する力」の問題は知識や知恵が前提となりますので、知識問題や「知識を 知恵にする力」の問題が含まれることもあります。また、グラフの問題などでは知識と推論のウエートの相違によって、分類が異なることもあります。

(2) 成績表について
日経TESTの成績は1000点を上限の目安とするスコアで表示します。 スコアは項目反応理論(IRT)と呼ばれる統計モデルを使って算出しま す。正解1問につき10点のスコアが配点されるわけではありません。ス コアは事前調査を含めた各種のデータを総合して算出しています。スコア が示す値は常に一定です。仮に1回目のテストと2回目のテストに難易度 の差があったとしても、成績表のスコアが2回とも500点であれば、その 人の能力は変わらないということを示しています。テスト間の比較といい ますが、前のテストから能力がどの程度向上したかを客観的に把握できる のが、IRTによる分析の特色です。

成績表ではこのほかに、5つの評価軸別スコア(上限の目安は100点) や順位、テストの結果についての講評なども記載しています。

3 経済知力を高めるには

日経TESTで高いスコアを目指すには、平素どのような準備をすればよ いのでしょうか。テスト事務局で高いスコアを獲得した受験者に対策を伺 ったところ、「日経TESTのためだけの特別な準備は無理です」という声 が多く寄せられました。その理由は出題範囲の広さ。そのため、傾向を読 み対策を講じるのが極めて難しいとのことです。

一方、高いスコアを獲得している受験者がそろって実践していることが あります。それは「普段から経済やビジネスに関する知識を増やしたり、 考えたりする習慣を身に付けておく」ということです。

(1)知識編――どうやってビジネス知識を増やすか
1読む記事を増やす。
いきなり経済やビジネスについて自分なりに考える力、すなわち「経済 知力」を高めようといっても容易ではありません。まずはそのための基礎 体力づくりが必要です。基本的な知識を増やすことです。それには日々接 する新聞の記事を増やし、収集する情報量を増やすことが重要です。

野球選手が打席で好結果を残すには、日ごろの練習が大切です。どれだ け素振りを繰り返しているか。新聞を読むことに置き換えると、日々どれ だけの記事に接し、読みこなしているかということです。

まずは接するニュースを増やしましょう。新聞は毎日発行され届けられ ます。1日の朝刊はおよそ新書2冊分の文字量があります。すべてを読む のは至難の業です。多忙なビジネスパーソンが効率的にニュースを読みこ なすには、記事の構造を知ることが近道です。「新聞記事には重要なこと が書かれているので、最後まで読まないと理解したことにならない」。こ ういう声をよく聞きます。これは誤解です。なぜなら、新聞記事は大事な ことから順に書かれているためです。

大きい記事は主に3つのパートに分けられます。 ①見出し、②前文(リード)、③本文です。

事例の記事(日本経済新聞 2011年12月29日付朝刊1面)を見てくださ い。見出しはその記事にどういうことが書かれているのか、ひと目で読者 に理解してもらう役割を持ちます。読者は見出しを読むことで、自分が読 みたい記事であるかどうかを判断できます。

興味を持ったら、続いて前文を読みます。前文は記事の要約で、概要が

 

コンパクトにまとめられています。

その後に本文が続きます。新聞の1面に出ている記事は、特に重要なこ ュースであるため、本文は長めです。しかし、本文は後になればなるほど 補足的な内容になり重要度が低下します。記事は重要なことから順に書か れているからです。見出しと前文を読めば、記事の大体の内容は分かります。

2言葉を正しく理解しよう
ニュースを理解するコツは、ニュースに出てくる新しい言葉の意味を正 しく理解することです。特に経済ニュースの場合、やや専門的な用語もあ るのでなおさらです。ここで役立つのは、日本経済新聞の3面にある「き ょうのことば」です。1面の大きなニュースに出ている重要な用語をここ で説明しています。

最近は欧州経済にかかわる問題として「ソブリンリスク」という言葉を よく目にします。普段の暮らしの中ではあまり聞くことがない言葉です。 「ソブリン」には「政府の」という意味があります。欧州の政府が大きな リスクを抱えているということが想像できますが、面倒でもきちんと調べ てみると理解が進み、記事の内容もすんなり頭に入ります。

ソブリンリスクは政府の信認リスクということ。分かりやすくいうと、 政府は財政の不足を補うために国債を発行して借金をしますが、借りたお 金を返せなくなる懸念のことをいいます。いろいろな理由で経済破綻する 個人がいますが、国も同様な危機に直面しているわけです。

3あらすじをつかめば、先を読める
ニュースを追い続けることは、よく長編ドラマを見ることに例えられま す。人気のドラマも途中からいきなり見始めると、ちんぷんかんぷん す。しかし、しばらく見続けていると、登場人物の性格や人間関係が見え てきます。そうなるとドラマの先行きを自分なりに読めるようになってる ます。ニュースでも似たところがあります。

ソブリンリスクにしても言葉の意味だけ理解して分かったと思うのは十分ではありません。また欧州の状況だけ見ていても、世界経済が直面する 問題が見えてきません。2011年は米国の国債格付けが引き下げられました。 日本も深刻な財政事情を抱えています。こうした流れが進めば、欧米との 経済的な関係で好調を持続してきた新興国の景気にも大きな影響が及ぶで しょう。このように流れを追うことは重要です。

4食わず嫌いをなくそう
もう一つ大切なことは、食わず嫌いをなくすことです。この点は就職活 動中の学生の皆さんは特に注意するべきです。若手のビジネスパーソンの 皆さんも参考にしてください。

「自分は鉄道会社への就職を目指しているから、金融業や流通業の知識 は関係ない」。はたして、そうでしょうか。毎日利用している駅の中を見 てください。様々な店舗が増えています。代表的なのは東京駅で、構内は 一つの街を形成しているかのようです。決済手段として電子マネーの普及 も進んでいます。金融や流通の知識なくして、鉄道会社での仕事は難しい でしょう。

毎日の新聞からは、今何が起きているかは確認できますが、歴史的な経 緯や背景までは把握できないことがあります。まとまった情報を吸収する には、本を読むことも必要です。「日経文庫」(日本経済新聞出版社)のシ リーズは経営全般から会計、法務まで幅広いジャンルを網羅しています。 それぞれの本はそう厚くないので、短時間にまとまった知識を学びたいと いうニーズに適しています。各分野についてのさらに詳しい知識を習得し たいという皆さんには「ゼミナール」シリーズ(同)もお勧めです。

(2) 知力編——考える力を付ける
1情報への感度を高める
日経TESTは経済やビジネスの基本的な知識を理解しているだけでは得 点できません。ビジネスチャンスをつかむには、「今何が起こっているか」 という最新のトレンドに対応することが重要です。日経TESTにも、そうした問題が多数出題されています。

こうした問題に対応するには、日ごろから高いアンテナを張っておくこ とが必要です。家族で買い物や食事に出掛けるようなシーンでも実に多く の発見があるものです。

例えば、書店。情報の宝庫です。大きな書店は店内を歩いているだけで 様々な刺激の“シャワー”があります。「あまり本は読まない。書店にも行 かない」というのは論外ですが、「書店ではビジネス書のコーナーにしか 立ち寄らない」というのも、もったいない話です。専門分野以外の本もた まに見てみると、視野を広げるのに役立ちます。

事例を使い、情報への感度をどう高めていくかを見てみましょう。

次の3つに共通するのは何でしょうか。
・東京都足立区
・早稲田大学競走部
・石原軍団
答えは「レシピ本」です。

「日本一おいしい給食を目指す」足立区については『日本一おいしい給 食を目指している一東京・足立区の給食室』という本があり、家庭向けの 調理法が紹介されています。2011年の箱根駅伝を制するなど強豪校の一角、 早大競走部。『早稲田大学競走部のおいしい寮めし』という書籍には寮の 栄養士によるレシピが満載です。『石原軍団の炊き出しレシピ33 つくっ てあげたいこだわりごはん』という本は、東日本大震災直後に被災地で炊き出しをした石原軍団の活動の模様をレシピとともに伝えています。

書店で料理本のコーナーに立ち寄ることがある人は即答できたのではないでしょうか。低カロリーでも満腹感を実感できる、健康機器メーカーの タニタの社員食堂のレシピ本がヒットして以来、同様な企画が相次いでい ます。ここで大切なのは、「レシピ本」という共通のキーワードを発見し て終わるのではなく、なぜこのような本に注目が集まるのかという理由や 背景を考えることです。背景としては、様々な食への関心が格段と高まっていることが指摘できます。

ビジネスチャンスも考えられます。タニタにしても早大にしても、この 本のためにレシピを作ったのではありません。それらはすでにありまし た。食への関心の高まりにより、注目を集めるようになったわけです。食 に限らず、ある企業や団体が昔から所有してきた資源が「お宝」に様変わ りするということも読み取れます。全国で注目を集めるB級グルメや横 浜、川崎の工場夜景も、「すでにあるもの」の価値が再認識され人気を集 めています。自社や地元にも意外な資源が眠っているかもしれません。

2大きな流れに注目する
新聞を読みこなすのが上手なビジネスパーソンがいます。共通するの は、個々の記事を理解し「はい終わり」というのではなく、複数の記事の 関係を読もうとしていることです。1日の新聞にはたくさんの記事が掲載 されます。複数の記事を読みこなし、自分なりに共通するキーワードを見 付けることで、単なる現象ではなく底流にあるトレンドをつかみとること ができます。

自動車についての記事を見てみましょう。2011年12月21日の日経MJ には「カーシェア会員急増」という記事が掲載されています。業界大手の パーク 24とオリックス自動車を合わせた会員数が10万人を突破しました。

一方で2011年の東京モーターショー。自動車への考え方が少し変わる イベントになりました。車は単に移動のためのツールではなく、IT(情報 技術)を駆使し情報端末としての機能を果たしたり、家庭での電源に利用 したりするなど、従来とはまったく違う役割が期待されています。これは 2011年11月16日の日本経済新聞に記事が出ています。

自動車への考え方、ニーズが大きく変化しています。従来の自動車愛好 家ばかりでなく、幅広い消費者に新しい車の魅力を訴求することが重要に なります。そのためには、新たな販路も検討する必要があるということ で、三菱自動車はテレビ通販のジャパネットたかたと組み、電気自動車 (EV)の通信販売に乗り出します。EVへの関心を高めるには、幅広い客層にアピールしやすいテレビ通販が有効と見ての取り組みです。

以上に共通するキーワードは自動車です。ただ、自動車が直面する問題 の背景には、商品としての位置付けが様変わりしていることがあります。

そのため、
・シェアリングとしての利用法
・新たな機能の提案
・従来は想定しなかった販路

という違った角度から考えてみることが必要になってくるわけです。家 電量販店のヤマダ電機が住宅の販売に力を入れるなど、商品としての住宅 の性格も変わってきています。他の商品分野でもこうした流れは一段と進 むことが予想されます。

3自分・自社に置き換えて考える
自動車のような大きな存在感を示してきた商品がそうなのですから、ほ かにも同様な商品は多々あるでしょう。

もう一点、高スコア獲得者に尋ねた際、多くの人が指摘したのは、記事 に出ていることを「分かった」で終わらせず、「自社の立場ではどうなる か?」など、具体的に考えることを心掛けるということでした。

このような思考を巡らす際に注意すべきことは、自分なりに仮説を立 て、事態の推移を見ながら検証すること、そして経営者や幹部の立場にな って考えてみることです。一般社員の裁量範囲は限られていますが、トッ プの立場で考えてみることは、柔軟な思考力を鍛えるトレーニングになり ます。

4 受験者の声

■福城和也(ふくしろ・かずや)氏(45歳) 802点
株式会社ヤナセ 秘書・広報宣伝室 広報宣伝課 課長

情報を読むセンスが磨かれ、新しい洞察が生まれます
日経TEST挑戦の動機は、普段から新聞をよく読んでいるのでそれなり にできるだろうという軽い思いでした。腕試しのつもりで2010年6月に 初挑戦したところ想像以上に難しくスコアは732点。成績表を見て経済の 基礎知識が弱いのとテクノロジー関連の知識が乏しいことに気づきまし た。そこで800点超えを目標に再挑戦を決意しました。

まず、日本経済新聞、日経産業新聞、日経MJ各紙の読み方と活用法を 見直しました。私にとって日経新聞は経済全体を見る“鳥の眼”、日経産業 新聞は現場を見る“虫の眼”、日経MJは世の中の流れを見る“魚の眼”です。 弱点のテクノロジーの知識増強策として特に産業新聞を熟読しました。

心掛けたのは、情報を完全に記憶することより、分からないことや疑問 に思ったことを絶対にそのままにしないことです。テスト対策用ノート以 外にもスケジュール帳などに書き込みをして自分なりにポイントを整理しました。

その甲斐あって11年6月に挑戦した2回目は何とか800点を突破しまし た。最もうれしかったのは前回苦手だったジャンルの正答率が大幅に上が ったことです。テスト対策プランをきちんとマネジメントして思った通り の成果が出せたことは自信になりました。

情報を読むセンスが磨かれて、経済の様々な現象が起こる仕組みを改め て理解できたため、新しい洞察ができるようになった気がします。さらに 短い時間に多くの問題に取り組むこのテストは知的な瞬発力がつき、ビジ ネスに生きると思っています。

■矢部 功(やべ・いさお)氏(38歳) 774点
総務省 兵庫行政評価事務所 評価監視官室 評価監視調查官

経済を学び、考える力が養われたと感じています

国の行政機関の業務が効率的・効果的に行われているかを調査し、必要な行政運営の改善を勧告する仕事をしています。予算に無駄が生じていな いか、費用に見合った効果が得られているか、さらに効率的・効果的に業 務を進められないかという観点から調査する案件が多くなっています。「世の中から何が求められているか」「将来のためにどうあるべきか」。視 野の広さや思考の柔軟性が求められます。

日経TEST はそうした視点を認識し、自分の力を確認するツールといえ ます。受験した印象は、知識を持っていれば比較的スムーズに正解に至る 問題が多い一方、大局的な流れをしっかりと把握していれば、知識がなく ても考えることで解答できる問題も目立つということです。あまり手掛か りがないような問題も、「経営者であればどう判断するか」「消費者は何を 求めているか」「世の中はどのような方向に動いているか」と落ち着いて 考える。すると解答の糸口が見えてきます。

出題範囲は極めて広範なので、一夜漬けのような対策は通用しません。 とにかく毎日の新聞を丹念に読み、分からない用語などは忘れずに調べ、 理解するようにしています。平日昼間のニュース番組も、帰宅後に録画で 見るようにしています。

私は走るのが好きで、ほぼ毎夜7、8キロを走り、大会にもよく参加し ます。マラソンと日経TESTには共通点があります。一つは数字で結果が 出る点。もう一つは、どちらも頑張れば頑張っただけ成果が上がるという 点です。これからも心身を共に磨き、挑戦を続けていきたいと思います。

■日経TEST 全国一斉試験実施要項
図表(IMG_4125.JPG.xlsx)
*詳しくはホームページ(http://ntest.nikkei.jp/) をご覧ください。

日本経済新聞社 (編集)
日本経済新聞出版社、出典:出版社HP