ビジネス実務法務検定試験3級公式テキスト〈2019年度版〉




まえがき

近時、企業のコンプライアンス(法令等遵守)が強く求められています。個人情報保護法・消費者契約法・公益通報者保護法などの制定はその現れといえます。

このような状況の中で、企業が法的な対応を適正に行うには、法務部門だけでなく、営業や製造等すべての部門で法律的な知識を修得している人材が必要となります。

すなわち、法的な問題が生じたときに適切・迅速な初期動作をとることができ、問題点を整理した上で社内外の専門家に相談して、トラブルの未然防止等ができる人材の育成が不可欠です。

そこで、東京商工会議所では、企業に生じる法的問題の発見能力やコンプライアンスに関する能力を育成することを目的として、1998年3月からビジネス実務法務検定試験を実施し、ビジネスパーソンが理解しておくべき法律知識の普及に努めており、試験開始以来の受験者は76万人に上ります。

本書は、ビジネス活動で日常的に起きる法律実務の基礎的な問題を取り上げ、分り易くまとめていますので、3級検定試験の公式テキストとして、またビジネスの場面における法律問題の基礎的テキストとしてご活用下さい。

2019年度版では、民法(債権法)、民法(成年年齢、相続)、商法、各種の知的財産権法、TPP整備法、消費者契約法、働き方改革関連法(労働基準法等)等の改正施行を盛り込み、より一層、現代の実務に役立つ内容としました。

特に、民法(債権法)の改正は、同時に商法や消費者契約法等、多くの法律の改正も伴っており、ビジネスに大きな影響を及ぼすため、紙面を割いて改正内容を説明しました。これに加え、巻末には、「民法(債権法)改正」を掲載し、ビジネス実務法務検定試験の出題範囲にかかわる主な項目について、民法改正の概要を一覧できるようにしています。

東京商工会議所

東京商工会議所 (編集), 東商= (編集)
東京商工会議所検定センター; 新版 (2019/1/29)、出典:出版社HP

目次

まえがき

第1章 ビジネス実務法務の法体系
はじめに-ビジネス実務法務とは

第1節ビジネスを取り巻くリスクと法律のかかわり
I ビジネスと法律のかかわり
1 ビジネスパーソンと法律とのかかわり
2 ビジネス実務法務の具体例
3 これからのビジネス環境の変化に対する法律の影響
II ビジネス実務法務とコンプライアンス
1 コンプライアンスとは
2 コンプライアンス違反の影響
3 ビジネス実務法務とコンプライアンス、CSR
4 リスクマネジメントとコンプライアンス、CSR
III ビジネスとリスク
1 企業を取り巻く様々なリスク
2 リスクマネジメントの基本的考え方
3 リスクマネジメントとビジネス実務法務

第2節 企業活動の根底にある法理念
I ビジネス実務法務における契約の重要性
1 契約(取引)に関する法律問題
2 法律的に見た契約(取引)
II ビジネス実務と私法の基本原理
1 個人の平等性と権利主体性
2 私的自治の原則
3 私有財産制一財産権の保障
4 過失責任主義
III 財産権の多様化
1 物権とは
2 債権とは
3 その他の財産権

第3節 法律の基礎知識
1 法律の体系
2 法律の分類方法
3 権利の実現方法

第2章 企業取引の法務
第1節契約とは
1 契約と約束との違い
2 契約自由の原則とその修正
3 契約の種類と分類

第2節契約の成立
I 売買契約の成立
1 契約成立に至る過程
2 契約準備段階の信義則
3 契約の成立要件
4 契約の成立と契約書
5 売買目的物と売買代金
6 意思表示の合致
Ⅱ 権利・義務の主体
1 権利・義務の主体となる者
2 意思能力・行為能力
3 制限行為能力者とは
4 制限行為能力者の相手方の保護
II意思表示.
1 意思の不存在(意思の欠缺)
2 瑕疵ある意思表示
IV 代理制度
1 代理とは
2 代理が成立するための要件
3 代理権がない者の代理行為
V契約の効力の発生
1 契約が取消しまたは無効の対象となる場合
2 契約の効力の発生時期

第3節契約成立後の法律関係
I 売買契約の効果と債務の履行
1売買契約の効果
2 債務の履行
I 債務の履行にかかわる諸問題
1 債務不履行責任
2 担保責任
3 危険負担

第4節売買以外の契約形態
I 貸借型の契約
1 消費貸借契約
2 不動産の賃貸借契約
Ⅱ 労務型の契約
1 請負契約
2 委任契約
3 寄託契約
Ⅲ その他の契約
1 クレジットカード契約
2 インターネットを利用した契約(電子商取引)
3 国際取引

第5節 ビジネス文書の保存・管理
I ビジネスにかかわる文書
1 文書とは
2 文書の作成・管理の必要性
3 IT 化の進展と文書の作成・管理
I 契約書および契約関連文書
1 契約書の構成
2 契約書への署名・記名および押印
II その他の法律上重要な文書
1 領収証
2 委任状
3 往復文書
4 稟議書
IV ビジネス文書の保存・管理
1 契約関係文書の保存・管理
2 民事訴訟法上の文書提出義務と文書の管理
3 文書の保存期間
4 収入印紙が必要な文書

第6節 契約によらない債権・債務の発生~不法行為等
I 不法行為
1 不法行為の成立要件
2 損害賠償の方法、範囲および額の算定
3 特殊な不法行為
4 不法行為による損害賠償責任と債務不履行による損害賠償責任との関係
I 事務管理・不当利得
1 事務管理
2 不当利得

第3章債権の管理と回収
第1節 通常の債権の管理
I 債権管理の必要性と信用調査
1 取引に重要な信用調査
2 信用調査の方法
I 日常的な債権の管理回収
1 日常的な債権の管理
2 債権の消滅
3 消滅時効とは
4 債権の管理回収の手段

第2節取引の決済(手形・小切手等
I 手形と小切手
1 手形・小切手の経済的役割
2 手形・小切手の種類
3 取引における手形・小切手の利用
4 手形・小切手の法律的特徴
Ⅱ手形による取引
1 手形受取り時の注意点と記載事項
2 白地手形
3 手形の譲渡
4 手形による支払い
III 小切手による取引
1 小切手の振出
2 小切手の記載事項
3 特殊な小切手
IN 手形・小切手のトラブル等
1 手形・小切手の不渡りとは
2 手形・小切手を紛失した場合の問題
3 手形の偽造とは
4 手形訴訟とは
V その他の支払方法
1 振込みと電子資金移動(EFT)
2 クレジットカード
3 プリペイドカード
4 電子記録債権

第3節 債権の担保
I 担保の必要性
1 担保が必要とされる理由
2 担保の種類
3 債権回収における物的担保の重要性
4 物的担保の種類
5 担保の有する性質
Ⅱ 法定担保物権
1 留置権
2 先取特権
III 約定担保物権
1 質権
2 抵当権
IV 非典型担保
1 譲渡担保
2 仮登記担保
3 所有権留保
V人的担保
1 保証
2 連帯債務とは

第4節 緊急時の債権の回収
1 裁判所に対する手続による債権の回収
2 債務者の倒産
3 強制執行の手続

第4章 企業財産の管理と法律
第1節 企業の財産取得にかかわる法律
1 売買契約による財産の所有権の移転時期
2 所有権の移転を第三者に主張するための要件
3 即時取得とは
4 財産としての債権の譲渡

第2節企業財産の管理と法律
1流動資産の管理と法律
2 固定資産の管理と法律

第3節 知的財産権
1 知的財産の保護
2 特許権とは
3 実用新案権とは
4 意匠権とは
5 商標権とは
6 著作権とは
7 営業秘密 (トレードシークレット)とは

第5章 企業活動に関する法規制
第1節取引に関する各種の規制
Ⅰ 経済関連法規
1 独占禁止法の規制
2 大店立地法による大規模小売業者の立地の調整
Ⅱ消費者保護関連の規制
1 消費者保護法制の概要とその必要性
2 消費者契約法による消費者の保護
3 割賦販売法による消費者の保護
4 特定商取引法による消費者の保護
5 各種の業法による消費者の保護
6 製造物責任法による消費者の保護
Ⅲ その他の取引に関する規制
1 個人情報の保護
2 マイナンバー法
3 食品の表示に関する規制
4 環境保全にかかわる規制

第2節 ビジネスと犯罪
1 所属企業に対する犯罪
2会社法上の犯罪
3その他の企業に関連する犯罪

第6章 企業と会社のしくみ
第1節 法人と企業
I 法人
1 法人の権利主体性
2 法人の分類
Ⅱ 企業の種類と機能一個人企業と共同企業
1 個人企業
2 共同企業
3 企業形態選択の自由
II企業が行う取引の特徴
1 企業の取引活動と商法
2 商業登記制度
3 商号

第2節 会社のしくみ
I 会社の種類
1 株式会社
2 合名会社
3 合資会社
4 合同会社
I 株式会社
1 株式会社のしくみ
2 株式会社の機関
3 会社従業員の法的立場
4財務諸表の作成・承認・報告

第7章企業と従業員の関係
第1節 従業員の雇用と労働関係
1 労働契約
2 労働基準法とは
3 労働組合法とは
4 労働関係調整法とは
5 その他の労働関係法規

第2節 職場内の男女雇用にかかわる問題
1 男女雇用機会均等法とは
2 男女雇用機会均等法の特徴
3 男女雇用機会均等法の内容
4 職場におけるセクシュアル・ハラスメントの問題

第3節 派遣労働における労働形態
1 派遣労働者の雇用問題
2 労働者派遣事業とは
3 派遣元・派遣先・派遣労働者の間の法律関係

第8章 ビジネスに関連する家族法
第1節 取引と家族関係
1 夫婦間の法律関係
2 夫婦間の財産関係

第2節相続
1 相続とは
2法定相続人と法定相続分
3 法定相続以外の相続方法(遺言による相続)
4 相続の承認と放棄
5 遺産分割

■民法(債権法)改正・ 索引
■ビジネス実務法務検定試験について
■ビジネス実務法務検定試験公式通信講座のご案内

誤植等の修正についてはホームページ(https://www.kentel.org/)で公開しています。

民法(債権法)の改正について
民法(債権法)の改正に関して、2017年5月26日に、「民法の一部を改正する法律」および 「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が成立し、同年6月2日に公布された。この2つの法律は、2020年4月1日から施行される。

本書では、近時の法改正と制定された新法については、「法改正・新法制定」として取り上げ説明している。ただ、民法(債権法)の改正およびこれに伴い成立した整備法については、内容が非常に多岐にわたるため、「民法(債権法) 等の改正」という別項を設けて説明している。

東京商工会議所 (編集), 東商= (編集)
東京商工会議所検定センター; 新版 (2019/1/29)、出典:出版社HP