知的財産管理技能検定 2級公式テキスト[改訂9版]




はじめに

本書は、厚生労働大臣指定試験機関である一般財団法人知的財産研究教育財団の一部門である知的財産教育協会が編集した『知的財産管理技能検 定2級公式テキスト』です。

知的財産管理技能検定2級は、知的財産に関する業務に携わる者として必ず身につけておきたい知的財産管理の知識と技能が問われる試験です。1級(特許専門業務/コンテンツ専門業務/ブランド専門業務)を目指す方にとっては、それぞれの専門分野に特化した資格を取得する前に、知的財産管理に関する幅広い内容を理解している証明として、取得しておきたい級であるともいえます。

そこで、当協会では、すでに知的財産についての基礎知識はあるけれど、もっと理解を深めたい方や、2級の受検のために勉強している方を対象に本書を制作しました。2008年4月に初版を発行して以来、本書は2級を受検する方を中心に多くの方にご活用いただきましたが、このたび、2019年1月までの法改正に対応した第9版を出版する運びとなりました。本書は、知的財産に関する業務に携わる者にとって必要な知的財産に関する幅広い知識や技能が身につき、業務にも活かすことができます。

本書が知的財産管理技能検定を受検される方に活用され、検定受検へのチャレンジを通じ、より多くの方が知的財産に関する知識と技能を身につけ、知的財産管理技能士となり飛躍されていくことを祈念しています。

2019年2月 知的財産教育協会

※知的財産管理技能検定の試験問題は、「試験科目及びその範囲」に基づいて、検定職種について専門的な技能、技術または学識経験を有する者のうちから選任された技能検定委員から構成される技能検定委員会によって作成されています。試験の公正を図るために、その内容は検定実施当日まで当該委員以外のいかなる第三者に対しても開示されることはありません。本書は、技能検定委員会とは完全に分離独立している知的財産教育協会の教育担当部門が、「試験科目及びその範囲の細目」(P.017 参照)と実施済みの過去問題を分析し、編集したものです。

知的財産教育協会 (編集)
アップロード、出典:出版社HP

目次

はじめに
本書の構成
知的財産管理技能検定とは
知的財産管理技能検定2級とは

Introduction 知的財産とは
Column 1 法律の解釈について

特許法・実用新案法

1 特許法の目的と保護対象
1特許法はなぜ存在するか
2企業経営と特許権の関係
3特許出願による経営上の利益
4特許と営業秘密の関係
5特許法の保護対象である「発明」とは

2 特許要件 [1] 1産業上利用できる発明であること
2新規性があること

3 特許要件[2] 1進歩性があること
2同一の発明が先に出願されていないこと
3その他の特許要件

4 特許調査とIPランドスケープ・
1先願特許を調査する必要性
2先願特許や登録特許の調査方法
3特許マップ(パテントマップ)とは
4IPランドスケープとは

5特許を受けることができる者
1特許を受けられる者とは
2会社の従業者等が発明した場合
Column 2 ビジネスモデル特許

6特許出願の手続き
1 特許出願に必要な書類
2複数の発明でも1つの出願にできる場合
3追加して出願したい発明がある場合
4出願日認定要件の明確化と手続きの補完
5先の特許出願を参照すべき旨を主張する方法による特許出願
6明細書または図面の記載の一部欠落の補完
Column 3 要約書の補正

7 特許出願後の手続き [1] 1出願された発明の公開
2出願審査請求とは

8特許出願後の手続き [2] 1拒絶理由通知とは
2拒絶理由通知への対応

9特許査定と拒絶査定
1特許査定とは
2拒絶査定とは
3拒絶査定に不服がある場合

10 特許権の管理と活用 [1] 1特許権の管理
2特許権の維持

11 特許権の管理と活用[2] 1特許権は何ができる権利か
2発明の実施とは
3特許権の範囲の判断方法
4特許権の範囲の解釈

12 特許権の管理と活用 [3] 1特許権の活用方法
2企業経営とライセンス
3専用実施権と通常実施権
4ライセンスを受ける際の注意事項
5特許権を他人に移転する
6特許権者の許諾なく実施できる場合
Column 4 特許権の価格の算定方法

13 特許権の侵害と救済 [1] 1特許権の侵害とは
2特許権を行使できない場合
3特許権が侵害された場合の対応

14 特許権の侵害と救済[2] 1特許権侵害の警告を受けた場合の対応
2登録前の出願をもとに警告された場合
3特許権侵害にあたるかを確認する
4 発明の実施権があるかを確認する
5侵害することが明らかな場合の対応
6特許異議の申立てとは
7特許無効審判とは
8訂正審判とは

15 実用新案法
1実用新案法はなぜ存在するか
2実用新案制度と特許制度の違い

意匠法

16 意匠法の保護対象と登録要件 [1] 1意匠法はなぜ存在するか
2意匠権取得による経営上の利益
3デザインを保護対象とするその他の制度
4 意匠法の保護対象である「意匠」とは

17 意匠法の保護対象と登録要件 [2] 1意匠登録の要件
2先願意匠の調査、

18 意匠登録を受けるための手続き
1意匠登録出願に必要な書類
2意匠登録を受けられる者とは
3意匠登録出願後の流れ
4特殊な意匠登録出願

19 意匠権の管理と活用
1意匠権の管理と維持
2意匠権は何ができる権利か
3意匠権の範囲
4意匠権の活用方法

20 意匠権の侵害と救済
1意匠権が侵害された場合の対応
2意匠権を行使できない場合
3侵害の警告を受けた場合の対応

商標法

21 商標法の保護対象と登録要件[1] 1 商標法はなぜ存在するか
2商標の機能
3商標権取得による経営上の利益
4ブランド戦略とは
5商標法の保護対象である「商標」とは
Column 5 商号と商標の関係

22 商標法の保護対象と登録要件 [2] 1商標登録の要件
Column6 団体商標登録制度、地域団体商標登録制度と地理的表示保護制度

23 先に出願された商標の調査
1先願商標を調査する必要性
2調査の対象
3類否判断
Column 7 拒絶査定となった商標の調査

24 商標登録を受けるための手続き
1商標登録出願に必要な準備
2商標登録出願後の流れ
3拒絶理由通知への対応

25 商標権の管理と活用
1商標権の管理と維持
2商標権の範囲
3商標権の活用方法
4登録商標の使用方法
Column 8 知的財産権侵害物品への水際措置と真正品の並行輸入

26 商標権の侵害と救済
1商標権が侵害された場合の対応
2商標権を行使できない場合
3侵害の警告を受けた場合の対応
4侵害することが明らかな場合の対応

条約

27 パリ条約
1外国に特許出願するには
2パリ条約とは
3パリ条約の三大原則
4意匠、商標に関するパリ条約

28 特許協力条約(PCT)
1 PCT による国際出願制度

29 その他の条約
1 TRIPS 協定
2マドリッド協定議定書
3ハーグ協定
4ベルヌ条約
5特許法条約(PLT)
6商標法に関するシンガポール条約(STLT)
Column 9 ハーグ協定のジュネーブ改訂協定

著作権法

30 著作権法の目的と著作物[1] 1著作権法はなぜ存在するか
2著作権法の保護対象である「著作物」とは
Column 10 産業財産権法と著作権法の違い

31 著作権法の目的と著作物 [2] 1著作物には何があるか
2その他の著作物
3著作物の認定の判断が難しいもの
4保護対象の著作物とは
5保護対象とならない著作物

32 著作者
1著作者になるには
2著作者が特殊な場合

33 著作者人格権
1著作者人格権とは
2著作者人格権を含む契約

34 著作(財産)権
1著作(財産)権とは
Column 11 肖像権とパブリシティ権

35 著作権の変動
1いつ著作権は発生するか
2いつ著作権は消滅するか
3著作権の移転と活用

36 著作権の制限
1著作物は許諾なく利用できるか
2許諾なく利用できる場合

37 著作隣接権
1著作隣接権とは
2著作隣接権における注意点
3著作隣接権の存続期間
Column 12 商品化権

38 著作権の侵害と救済
1著作権の侵害とは
2著作権侵害とみなされる行為
3著作権が侵害された場合の対応
4著作権侵害の紛争を防ぐには
5著作権を侵害した場合の刑事罰

不正競争防止法

39 不正競争防止法[1] 1不正競争防止法とは
2不正競争行為とは

40 不正競争防止法 [2] 1トレードシークレット(営業秘密)とは
2営業秘密不正取得等行為
3限定提供データ不正取得等行為
4その他の不正競争行為
5不正競争行為に対する制裁
6営業秘密の流出を防止するには

民法

41 民法 [1] 1契約とは
2契約の成立
3契約の有効要件
4契約の締結権限
5瑕疵ある意思表示
Column 13 署名押印と記名押印

42 民法 [2] 1契約内容が履行されない場合の対応
2自力救済の禁止
3契約に潜在的問題があった場合の対応
4帰責性なく契約内容が履行できない場合の対応

独占禁止法

43 独占禁止法
1独占禁止法とは
2独占禁止法の運用
3特許ライセンス等との関係
4パテントプールとは

種苗法

44 種苗法
1種苗法とは
2植物の品種登録の要件
3育成者権の効力と存続期間

関税法

45 関税法
1関税法とは
2輸出または輸入してはならない貨物
3輸出/輸入してはならない貨物に係る手続き
4輸出/輸入してはならない貨物に該当する場合

弁理士法

46 弁理士法
1弁理士とは
2弁理士の独占業務ではない特許庁に対する手続き
3弁理士が業務を行えない事件

知的財産教育協会 (編集)
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本書の構成

本書の特徴と、効率的な学習方法を紹介します。

(1) 「事例とQuestion」「Lesson」「正解と解説」の3部構成
本書は、日々の業務や生活で接する機会の多い身近にある出来事をベー スとした知的財産関連の事例を扱っている「事例とQuestion」、「事例」で 取り上げた内容についての法律知識を解説する「Lesson」、学習成果と Question の正解を確認できる「正解と解説」の3部構成になっており、 法律ごとに全11章・46項目から構成されています。「事例とQuestion」 → 「Lesson」→「正解と解説」と進めることによって、知識をより深く理解 し、着実に習得できるようになっています。

(2) 知的財産の実務で実際にある出来事をベースとした「事例とQuestion」

事例とQuestion

関連する法律
事例 法律の領域別に掲載しています
法律の領域
ポイント この問題を解く鍵です。この項目で学習したい内容でもあります
関連する法律
Question 事例に関する4択問題があります
正解と解説のページ

「事例とQuestion」では、知的財産の実務で実際にある出来事を題材とした知的財産関連の事例をベースとしています。場面を想像しやすい事例か ら入ることで、後の「Lesson」で解説されている知的財産に関する法律 や知識をより理解しやすくしています。本書で学習を進めることで、実際 の知的財産に関するトラブルに対処するための知識や技能、その応用力を 身につけることができます。

(3) 法律ごとの11章に分け、知識を解説した「Lesson」
本書は、法律ごとに全11章・46項目に分けた構成にし、「Lesson」で知 的財産に関する法律や知識を細かく解説しています。

図表 視覚的に把握でき、理解度が高まります
条文 重要な条文を掲載しています

(4) 「Lesson」での学習成果と「Question」の正解確認のための「正解と解説」
「Lesson」で学習した成果と「Question」の正解確認のための「正解と 解説」を掲載しています。一つひとつの選択肢について詳細に解説してい ますので、「Lesson」で学習した成果を確認でき、知識を定着することが できます。

正解
解説 すべての選択肢について詳細に解説しています
Questionのページ

【各法律の表記について】
本文中に出てくる各法律の略称については、下記のとおり表記しています。
特許法 → 特
TRIPS 協定 → TRIPS
特許法施行規則 → 特施規
特許法条約 → PLT
実用新案法→実
商標法に関するシンガポール条約→ STLT
意匠法 → 意
意匠法施行規則 → 意施規
不正競争防止法 → 不競
商標法 → 商
民法 → 民
商標法施行規則 → 商施規
独占禁止法 → 独
著作権法 → 著
種苗法 → 種
パリ条約 → パリ
関税法 → 関
特許協力条約 → PCT
(例)特許法第29条第1項第1号 → 特29条1項1号
*本書の法令基準日は2019年1月1日現在施行されているものとします。

知的財産教育協会 (編集)
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知的財産管理技能検定とは

(1) 知的財産管理技能検定とは
「知的財産管理技能検定」は、技能検定制度の下で実施されている、「知 的財産管理」職種にかかる国家試験です。知的財産教育協会が2004年より 実施してきた「知的財産検定」が全面的に移行したもので、2008年7月に 第1回検定が実施されました。

「知的財産管理」職種とは、知的財産(著作物、発明、意匠、商標、営業 秘密等)の創造、保護または活用を目的として、自己または所属する企業・ 団体等のために業務を行う職種であり、具体的には、リスクマネジメント に加え、創造段階における開発戦略、マーケティング等、また保護段階に おける戦略、手続管理等、また活用段階におけるライセンス契約、侵害品 排除等のマネジメントを行う職種です。

本検定は、これらの技能およびこれに関する知識の程度を測る試験です。

試験名称:知的財產管理技能檢定
試験形態:国家試験(名称独占資格)・技能検定
試験等級:一級知的財産管理技能士(特許専門業務)
一級知的財産管理技能士(コンテンツ専門業務)
一級知的財産管理技能士(ブランド専門業務)
二級知的財産管理技能士(管理業務)
三級知的財産管理技能士(管理業務)
試験形式:学科試験・実技試験
指定試験機関:一般財団法人知的財産研究教育財団 知的財産教育協会
知的財産管理技能検定 HP:www.kentei-info-jp-edu.org/

技能検定とは
技能検定とは、働くうえで身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価す る国家検定制度で、「知的財産管理技能検定」は、「知的財産管理」職種にかかる検定試 験です。試験に合格すると合格証書が交付され、「技能士」と名乗ることができます。

厚生労働省:技能検定制度について http://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/ginoukentei/index.html

(2)各級のレベル
1級:知的財産管理の職種における上級の技能者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度(知的財産管理に関する業務上の課題の発見と解決を主導することができる技能及びこれに関する専門的な知識の程度)を基準とする。
2級:知的財産管理の職種における中級の技能者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度(知的財産管理に関する業務上の課題を発見し、大企業においては知的財産管理の技能及び知識を有する上司の指導の下で 、又、中小・ベンチャー企業においては外部専門家等と連携して、その課題 を解決でき、一部は自律的に解決できる技能及びこれに関する基本的な知 識の程度)を基準とする。
3級:知的財産管理の職種における初級の技能者が通常有すべき技能及びこ れに関する知識の程度(知的財産管理に関する業務上の課題を発見し、大 企業においては知的財産管理の技能及び知識を有する上司の指導の下で、 又、中小・ベンチャー企業においては外部専門家等と連携して、その課題 を解決することができる技能及びこれに関する初歩的な知識の程度)を基 準とする。

(3)試験形式

一部に3肢択一も含む

等級・試験種 試験形式 問題数 試験時間 受験手数料
1級学科試験 筆記試験(マークシート4肢択一式) 45問 100分 8,900円
1級実技試験 筆記試験と口頭試問 5問 約30分 23,000円
2級学科試験 筆記試験(マークシート4肢択一式) 40問 60分 7,500円
2級実技試験 筆記試験(記述方式) 40問 60分 7,500円
3級学科試験 筆記試験(マークシート3肢択一式) 30問 45分 5,500円
3級実技試験 筆記試験(記述方式) 30問 45分 5,500円

(4) 法令基準日
知的財産管理技能検定の解答にあたっては、問題文に特に断りがない。場合、試験日の6カ月前の月の1日現在で施行されている法令等に基づくものとされています。

知的財産教育協会 (編集)
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知的財産管理技能検定2級とは

「知的財産管理技能検定2級」(以下、2級)は、知的財産管理技能検定 のうち、知的財産分野全般(特許、商標、著作権等)について、基本的な 管理能力がある者を対象とした試験です。

なお、2級合格に必要な技能およびこれに関する知識の程度は、以下の ように定められています。

2級:知的財産管理の職種における中級の技能者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度(知的財産管理に関する業務上の課題を発見し、大企業において は知的財産管理の技能及び知識を有する上司の指導の下で、又、中小・ベン チャー企業においては外部専門家等と連携して、その課題を解決でき、一部は 自律的に解決できる技能及びこれに関する基本的な知識の程度)を基準とする。

学科試験 実技試験
試験形式 筆記試験(マークシート方式)4肢択一式 筆記試験(記述方式)
問題数 40問 40問
制限時間 60分 60分
受験手数料 7,500円 7,500円

知的財産管理技能検定2級 試験範囲

学科試験 実技試験
試験科目及びその範囲の細目 試験科目及びその範囲の細目
1戦略
知的財産戦略に関し、次に掲げる事項について基本 的な知識を有すること。
1知的財産戦略(特許ポートフォリオ戦略、ブランド戦略、コンテンツ戦略)
2IPランドスケープ
3オープン&クローズ戦略
1 戦略
知的財産戦略に関し、次に掲げる事項について業務上 の課題を発見し、上司の指導の下で又は外部専門家等 と連携して、その課題を解決でき、一部は自律的に解 決できること。
1知的財産戦略(特許ポートフォリオ戦略、ブランド戦略、コンテンツ戦略)
2IPランドスケープ
3オープン&クローズ戦略
2 管理
2-1 法務 法務に関し、次に掲げる事項について基本的な知識 を有すること。
1営業秘密管理
2知的財産関連社内規定(営業秘密管理に関するも のを除く)
2-2 リスクマネジメント リスクマネジメントに関し、次に掲げる事項につい て基本的な知識を有すること。
1係争対応
2他社権利監視
3他社権利排除
イ 情報提供
口無効審判手続
2 管理
2-1 法務
法務に関し、次に掲げる事項について業務上の課題を発見し上司の指導の下で又は外部専門家等と連携してその課題を解決でき、一部は自律的に解決できること。
1営業秘密管理
2知的財産関連社内規定(営業秘密管理に関するものを除く)
2-2 リスクマネジメント
リスクマネジメントに関し、次に掲げる事項につい て業務上の課題を発見し、上司の指導の下で又は外部専門家等と連携して、その課題を解決でき、一部は 自律的に解決できること。
1係争対応
2他社権利監視
3他社権利排除
イ 情報提供
ロ無効審判手続
3 創造(調達)
3-1 調査
調査に関し、次に掲げる事項について基本的な知識 を有すること。
1先行資料調査
2他社権利調査
3 創造(調達)
3-1 調査
調査に関し、次に掲げる事項について業務上の課題を 発見し、上司の指導の下で又は外部専門家等と連携し て、その課題を解決でき、一部は自律的に解決できる こと。
1先行資料調査
2他社権利調査
4 保護(競争力のデザイン)
4-1 ブランド保護
ブランド保護に関し、次に掲げる事項について基本 的な知識を有すること。
1商標権利化(意見書、補正書、不服審判を含む)
2商標事務(出願事務、期限管理、年金管理を含む)
4-2 技術保護
I 国内特許権利化に関し、次に掲げる事項について基本的な知識を有すること。
1明細書
2意見書提出手続
3補正手続
4拒絶査定不服審判手続
5査定系審決取消訴訟手続
Ⅱ外国特許権利化に関し、次に掲げる事項について基本的な知識を有すること。
1パリ条約を利用した外国出願手続
2国際出願手続 III 国内特許事務に関し、次に掲げる事項について基
本的な知識を有すること。
1出願事務
2期限管理
3年金管理
Ⅳ品種登録申請に関して基本的な知識を有すること。
4 保護(競争力のデザイン)
4-1 ブランド保護
ブランド保護に関し、次に掲げる事項について業務 上の課題を発見し、上司の指導の下で又は外部専門 家等と連携して、その課題を解決でき、一部は自律的 に解決できること。
1商標権利化(意見書、補正書、不服審判を含む)
2商標事務(出願事務、期限管理、年金管理を含む)
3地理的表示の保護
4-2 技術保護
Ⅰ国内特許権利化に関し、次に掲げる事項につい 業務上の課題を発見し、上司の指導の下で又は外 部専門家等と連携して、その課題を解決でき、一 は自律的に解決できること。
1明細書
2意見書提出手続
3補正手続
4拒絶査定不服審判手続
5査定系審決取消訴訟手続
4.3 コンテンツ保護
コンテンツ保護に関して基本的な知識を有すること。
4-4 デザイン保護 デザイン保護に関し、次に掲げる事項について基本 的な知識を有すること。
1意匠権利化(意見書、補正書、不服審判を含む)
2意匠事務(出願事務、期限管理、年金管理を含む)
Ⅱ外国特許権利化に関し、次に掲げる事項について 業務上の課題を発見し、上司の指導の下で又は外 部専門家等と連携して、その課題を解決でき、一部 は自律的に解決できること。
1パリ条約を利用した外国出願手続
2国際出願手続
III 国内特許事務に関し、次に掲げる事項について業 務上の課題を発見し、上司の指導の下で又は外部 専門家等と連携して、その課題を解決でき、一部は 自律的に解決できること。
1出願事務
2期限管理
3年金管理
Ⅳ品種登録申請に関して業務上の課題を発見し、上 司の指導の下で又は外部専門家等と連携して、その課 題を解決でき、一部は自律的に解決できること。
4-3 コンテンツ保護
コンテンツ保護に関して業務上の課題を発見し、上 司の指導の下で又は外部専門家等と連携して、その課 題を解決でき、一部は自律的に解決できること。
4-4 デザイン保護 デザイン保護に関し、次に掲げる事項について業務 上の課題を発見し、上司の指導の下で又は外部専門 家等と連携して、その課題を解決でき、一部は自律的 に解決できること。 1意匠権利化(意見書、補正書、不服審判を含む) 2意匠事務(出願事務、期限管理、年金管理を含む)
5活用
5-1 契約
契約に関し、次に掲げる事項について基本的な知識 を有すること。
1知的財産関連契約
2著作権の権利処理
5-2 エンフォースメント
エンフォースメントに関し、次に掲げる事項について基本的な知識を有すること。
1知的財産権侵害の判定
2知的財産権侵害警告
3国内知的財産関連訴訟(当事者系審決等取消訴訟を含む)
4模倣品排除
5 活用
5-1 契約
契約に関し、次に掲げる事項について業務上の課題 を発見し、
上司の指導の下で又は外部専門家等と連携 して、その課題を解決でき、一部は自律的に解決でき ること。
1知的財産関連契約
2著作権の権利処理
5-2 エンフォースメント
エンフォースメントに関し、次に掲げる事項につい て業務上の課題を発見し、上司の指導の下で又は外 部専門家等と連携して、その課題を解決でき、一部は 自律的に解決できること。
1知的財産権侵害の判定
2知的財産権侵害警告
3国内知的財産関連訴訟(当事者系審決等取消訴訟を含む)
4模倣品排除
6 関係法規 次に掲げる関係法規に関し、知的財産に関連する事 項について基本的な知識を有すること。
1民法(特に契約関係法規)
2特許法
3実用新案法
4意匠法
5商標法
6不正競争防止法
7独占禁止法
8関税法
9著作権法
10種苗法
1 1特定農林水産物等の名称の保護に関する法律
12パリ条約
13特許協力条約
14TRIPS 協定
15マドリッド協定議定書
16ハーグ協定
17ベルヌ条約
18商標法に関するシンガポール条約
19特許法条約
20弁理士法

知的財産管理技能検定2級 受検資格
2級には受検資格があります。なお、複数ある受検資格のうち、いずれか1つに該当していればよいとされています。

試験区分 選択作業 受験資格
学科試験
実技試験
管理業務 ・知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する者・3級技能検定の合格者(※1)
・学校教育法による大学又は大学院において検定職種に関する科目について 10単位以上を修得した者
・ビジネス著作権検定上級の合格者(※2)
・2級技能検定の一部合格者(学科または実技いずれか一方の試 験のみの合格者)(※3)

※1 合格日が試験の行われる日の属する年度及びその前年度並びに前々年度に属するものに限る。
※2 ビジネス著作権検定とは、サーティファイ著作権検定委員会が実施する「ビジネス著作権検定」を指す。合格日が技能検定が実施される日の属する年度及びその前年度並びに前々年度に属するものに限る。
※3 当該合格したほうの試験の合格日の翌々年度までに行われる技能検定についてに限る。

※本書の検定情報は、2019年2月現在の知的財産管理技能検定のウェブサ イト情報に基づいて執筆したものです。最新の情報は下記ウェブサイト をご確認ください。

知的財産管理技能検定ウェブサイト
http://www.kentei-info-ip-edu.org/

知的財産教育協会 (編集)
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Introduction 知的財産とは

1. 知的財産と法律

(1) 法律
知的財産権の活用を考えるうえで、知的財産権は「財産権」の一種であ る、という認識は重要です。知的財産権が財産権の一種であることは、「法 律」によって規定されています。したがって、「知的財産」と「法律」は 極めて近い関係にあります。

また、その知的財産権の譲渡等に関して、民法や独占禁止法をはじめと したさまざまな「法律」が影響します。そういった観点からも、「知的財産」 と「法律」は密接であるといえます。

ここで、そもそも「法律」とは何かを確認しておきましょう。 「法律」とは、一般に、「国家権力によって強制する力を持つ社会ルール のうち、国会によって制定されたもの」を指します。法律を実施するため に、法律の委任を受けて行政機関が制定するものを「命令」といい、命令 のなかでも、内閣が定めるものは「政令」、各省庁が定めるものは「省令」 といいます。法律と命令をあわせて、「法令」と呼ぶのが通例です。

(2) 審査基準
では、知的財産に関する業務(特に権利化業務)にあたっての指針とさ れ、特許庁が公開している「審査基準」は、「法令」の一種なのでしょうか。

結論からいえば、特許庁が公開している審査基準は、特許庁としての法 令の解釈を示したのにすぎず、いわば特許庁内の取扱要領という性質であ るため、法令ではありません。

実際の裁判においては、審査基準の内容は考慮されず、むしろ審査基準自体を否定する判決が出た場合に、審査基準が変更になることはあります。これは実務上知っておくべき大切な事柄です。

(3)判例
「判例」も、よく耳にする単語でしょう。判例は、先例として機能してい る裁判所の判断であり、法解釈における最終的判断ともいえる最高裁判所 の判断のみを指すこともあります。

判例は法律ではありません。しかしながら、判例が後の裁判に影響を与えることは事実ですので、実質的には法律と同様の機能を果たしていると いえます。

その意味において、知的財産に関する業務を行う際に、どのような判例 があるかを知っておかなければなりません。

2.知的財産法と他の法律(民法等)との関係

知的財産法では、知的財産権のライセンスをした後、そのライセンス料 が約束どおりに支払われなかったときに権利者がどのような対応を取れる のかについては、規定していません。これらは原則として、民法の規定に よることになります。

民法は、その名の通り、市民間の一般的なルールです。ゆえに、民法は、 特定の人や特定の事項に限定していない「一般法」であるといえます。

これに対し、知的財産法は、知的財産権という権利を持つ特定の人と、 知的財産権という特別な権利に限って定めた「特別法」です。

法律の世界では、「特別法は一般法に優先する」という原則があります。 すなわち、知的財産権について、特別法である知的財産法と一般法である民法が異なる規律をしている場合には、知的財産法が優先します。他方、 知的財産法に規定がない事項については、民法が適用されます。

そのため、知的財産に関する業務を行う際には、知的財産法のみならず、 民法についての知識も必要とされるのです。

3.知的財産を扱う業務上、必要な民法の知識

民法には「基本三原則」があります。民法の基本三原則とは、一般に、①権利能力平等の原則(市民はすべて平等に権利を保有する資格を持つこ と)、②所有権絶対の原則(所有権は誰に対しても主張できる完全不可侵 な権利であること)、③私的自治の原則、以上の3つをいいます。そのな かでも主要な「私的自治の原則」について、ここでは説明しましょう。

私的自治の原則というのは、市民個人はその自由な「意思」に基づいて、 自律的に法律関係(権利・義務の関係)を形成でき(これを「契約自由の 原則」ともいいます)、一方、自らの「意思」に基づかないで責任を負う ことはない(これを「過失責任の原則」ともいいます)、という意味です。

ここでのポイントは、例外の存在です。法律の世界では「例外」が認め られており、むしろ「例外のないルールはない」といわれるほどです。

具体的には、契約自由の原則では、誰とどのような内容の契約をするか は、個人の意思を尊重する趣旨から本来は自由ですが、公序良俗に反する 契約や強行法規(当事者が合意してもそれとは無関係に当然として適用さ れる法律)に違反する契約は許されない、という重要な例外があります (民90条、91条)。

また、過失責任の原則では、故意や過失がなければ、なんらかの結果と して損害が発生しても責任を負う必要はありません。しかし、例えば、実 用新案権を行使したことで相手方に損害が発生した場合は、無過失で賠償 する責任(無過失賠償責任、実29条の3)を負います。特許権侵害による 損害については、侵害者の過失が推定される(特103条)、などの例外もあ ります。

Column1
法律の解釈について

制定された法律は、大枠を定めているにすぎません。詳細まで法律で決めることは不可能であり、日々変化する社会に対応する柔軟性も 必要なためです。よって、細部については解釈に委ねられています。

法文の文字、文章の意味を文法的に明らかにする解釈手法を「文理解釈」といいますが、文理解釈だけでは他の条文との関係や法律の目的、その制定された沿革等を明らかにすることはできません。そこで、 論理を用いて法律を解釈する「論理解釈」により、法目的などを考慮 しながら、文理解釈を補います。

例えば、ある橋に「車馬通行禁止」という法律の規制があったとし ます。ここで、ロバならよいのか、牛はどうかなどという問題が発生 します。

この法律を文理解釈すれば、文字どおり、「車」と「馬」はこの橋を 通ってはいけない、となります。しかし、論理解釈すれば、ロバも同 様に通行してはいけないと「馬」の意味を拡大したり、「車馬」のみし か規定されていないから人は通行してよいと反対に考えたり、「馬」と 牛は似た動物であるから、牛も通行してはいけないと類推したりでき ます。

以上のように論理解釈をするにあたっては、「立法の目的」を考える ことが重要です。先の事例でいうと、問題となっている橋が古くて重 みに耐えられないという理由で通行不可だとすれば、「車馬」だけでは なくロバも牛も象も通行してはならないと解釈すべきです。一方、近隣住民の騒音防止が目的であれば、自転車ならば静かに通行できるので認められると解釈できます。

知的財産教育協会 (編集)
アップロード、出典:出版社HP