キャリアコンサルティング 理論と実際 5訂版




5訂版へのまえがき

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雇用対策法、職業能力開発促進法の改正によって、キャリアコンサルティングが我が国の雇用対策の重要な柱として開始されてから17年、多くのキャリアコンサルタントの方々が学校教育、就職支援、企業の能力開発、さらには医療・福祉、介護、地域活動などの各分野で活躍されています。平成20年度からは、キャリアコンサルタントの技能水準を、国家基準により公証する国家検定制度である技能検定(指導者レベル1級、熟練レベル2級)が開始されました。

さらに平成27年、勤労青少年福祉法、職業能力開発促進法、職業安定法など関係法の一部が改正され、平成28年4月1日より「キャリアコンサルタントの国家資格化」が実現しました。
これによりキャリアコンサルティングの対象者は、企業などで現に働いている人だけではなく、これから働く人となる生徒や学生、失業者、転職を考える潜在失業者、引退後、地域活動や福祉活動をする高齢者など、その活動範囲は、今までとは比べものにならない「厚さと広がり」を持ってきました。制度発足以来これまで制度づくりと普及に関わらせていただいてきた1人としてまことに嬉しく思うとともに、これからの発展を心から期待するものです。

今回の改訂に当たって新たに追加した項目としては、まず次の2点があります。
①「中小企業にこそ『働くこと』と『人材育成』の原点がある」(p345)
我が国の産業を実質的に支えている中小企業に、「働く現場」の原点があると私はずっと思ってきました。4訂版の「あとがき」でも少しふれていますが、人材育成や働く人のキャリアを考えるには中小企業の重要性について再認識すべきという思いから、巻末に附章として小文を追加しました。
②「事業場における治療と職業生活の両立支援」(p177第1部第7章第4節4.3)
働く人は時に、がんをはじめ治療が必要な疾病やメンタルヘルス不調など、様々な事情を抱えることがあります。仕事をしながら治療を続けていくことを支援するために事業場がいかに環境整備などに取り組んでいくかについて厚労省がまとめたガイドラインを紹介しました。拡がりつつある労働者の多様なあり方への対応の1つです。

さらに、行政の新しい施策に関連して
・第10次職業能力開発基本計画(p132~)
・職業能力の評価(職業能力評価基準、ビジネス・キャリア検定試験)(p136)
・セルフ・キャリアドック(p139)
・ストレスチェック制度の実施状況(p195)
・新ジョブ・カード制度(p251~)
・ハローワークインターネットサービスのサイトにおける職業分類と職業解説(p265)
などに記述を追加・変更しました。

また、以下について法律、指針や制度、調査等の改正・更新に伴い最新のものを反映しました。
・職業安定法/労働安全衛生法
・THP指針/労働者の心の健康の保持増進のための指針/心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き/心理的負荷による精神障害の認定基準
・労働者安全衛生調査(実態調査)
・大学等における学生支援の取組状況に関する調査

そのほか、団体・機関、制度、報告書などの更新・修正に加え、現在利用できない旧来の職業相談機関やツール、職業情報源等を削除・整理しました。

最後に、激しく急速に変化しながら多くの新しい事項が登場する状況の改訂の必要性を理解しつつも、気力、体力の衰えを理由に執筆が進まない私に、激励と督促、新しい情報の収集などを続けていただいた(一社)雇用問題研究会の方々に心から感謝申し上げます。

平成30年9月
木村周

木村 周 (著)
出版社: 雇用問題研究会; 5訂版 (2018/11/1)、出典:出版社HP

もくじ

第1部 キャリアコンサルティングに関連する諸理論

第1章●キャリアコンサルティングに関連する諸理論
第1節 キャリア、キャリア・ガイダンス、キャリアコンサルティング、キャリア・カウンセリングの定義
第2節 キャリア・ガイダンスの諸理論
第3節 キャリア・カウンセリングの諸理論
第2章●組織キャリアの諸理論
第1節 職務満足の理論
第2節 組織内キャリアの諸次元と組織内キャリア発達
第3節 キャリア・アンカー
第4節 社会的・経験的学習
第5節 キャリア・ストレス
第3章●自己理解の意義と内容
第1節 自己理解の意義
第2節 自己理解の内容
第3節 自己理解の方法
第4節 測定と評価
第4章●職業理解の意義と内容
第1節 職業理解の意義
第2節 職業・産業・事業所の理解
第3節 職業情報のための分析手法
第5章●キャリアコンサルティングと職業能力開発
第1節 新たな職業能力開発施策体系の整備
第2節 事業主が行うキャリア形成支援
第3節 キャリアコンサルティングの効果的普及と資質の確保
第4節 働く者を育てる環境の再構築
第6章●キャリアコンサルティングと人事・労務管理
第1節 人事・労務管理の目標と内容
第2節 キャリアコンサルティングと人事・労務管理
第3節 キャリア形成支援と人事・労務管理の接点
第7章●キャリア形成支援に関連する労働法と雇用政策
第1節 労働法と労働政策の体系
第2節 職業安定関係の法規、雇用政策
第3節 職業能力開発関係の法規、能力開発政策
第4節 労働条件、安全衛生関係の法規、政策
第8章●キャリアコンサルティングとメンタルヘルス
第1節 労働者の健康とストレス
第2節 ストレス反応と要因
第3節 健康保持増進措置とメンタルヘルス
第4節 快適職場の形成のための措置(快適職場づくり)

第2部 キャリアコンサルティングの実際

第1章●キャリア・ガイダンス、キャリアコンサルティングの具体的内容
第1節 キャリア・ガイダンス、キャリアコンサルティングの具体的内容
第2節 キャリア・ガイダンス、キャリアコンサルティングの6分野
第3節 実践面からみたキャリア・ガイダンス、キャリアコンサルティングの重点
第2章●キャリア・ガイダンス、カウンセリング、キャリアコンサルティングの基本的知識・スキル
第1節 キャリア・カウンセリングに必要なカウンセラーの基本的態度
第2節 キャリアコンサルティングにおけるカウンセリングに必要な基本的スキル
第3節 キャリア・ガイダンス、カウンセリング、キャリアコンサルティングに必要な実践上の能力
第3章●自己理解の実際
第1節 自己理解のプロセス
第2節 キャリア・ガイダンス、キャリアコンサルティングに使用するテスト、心理検査
第3節 キャリア・シート作成による自己理解
第4章●職業理解の実際
第1節 職業理解のための情報
第2節 職業情報伝達のタイプ
第3節 職業探索ツール
第5章●キャリアコンサルティングにおけるキャリア・カウンセリングの実際
第1節 いろいろな包括的・折衷的カウンセリング
第2節 キャリア・カウンセリングのシステマティック・アプローチ
第3節 キャリア・カウンセリング手法の基本
第6章●キャリア・ガイダンス、キャリアコンサルティングにおけるグループ・アプローチ
第1節 キャリア・ガイダンス、キャリアコンサルティングにおけるグループ
第2節 構成的グループ・エンカウンター
第3節 職業紹介におけるグループ・ワーク
第4節 ジョブ・クラブ
第5節 再就職支援プログラム
第7章●公共職業安定所等のキャリアコンサルティング(職業紹介と職業指導)
第1節 職業紹介、職業指導の基本
第2節 求職者の特性と状態に応じた相談・援助

附章●「働く現場」に想う
中小企業にこそ「働くこと」と「人材育成」の原点がある

巻末資料
1 「キャリア・コンサルティング実施のために必要な能力体系」
2 キャリアコンサルタント養成講習(基準)

あとがき
索引
項目
人名

「キャリアコンサルタント」及び「キャリアコンサルティング」の表記について
平成13年「職業能力開発促進法」改正に基づく「キャリア・コンサルタント」及び「キャリア・コンサルティング」は、平成27年9月の「勤労青少年福祉法の一部を改正する法律」(平成27年法律第72号)の成立により、従来の名称が「キャリアコンサルタント」及び「キャリアコンサルティング」と変更されました。
本書では、原則、「キャリアコンサルタント」「キャリアコンサルティング」を使用していますが、平成28年3月までに出版、公表された書籍、報告書等のタイトル (明らかな引用部分)、固有名詞については、従来どおり「キャリア・コンサルタント」「キャリア・コンサルティング」と表記しています。

木村 周 (著)
出版社: 雇用問題研究会; 5訂版 (2018/11/1)、出典:出版社HP