2021年版 司法試験&予備試験 完全整理択一六法 憲法【逐条型テキスト】<条文・判例の整理から過去出題情報まで> (司法試験&予備試験対策シリーズ)




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はしがき

★令和2年の短答式試験<憲法>の分析
司法試験では、総論・人権分野から12問、統治分野から8問出題されました。

平成28年から、バランスが総論・人権分野に傾いた形となっており、この傾向がが今年も継続されています。そして、主として最高裁判所の判例についての知識・理解を問う問題が8問、基本的事項に関する知識・理解を問う問題が5問、両者の融合問題が3問出題されましたが、特徴的なのは、見解問題(一方の見解が他方の見解の根拠となっているか否かを問う問題)が4問も出題された点です。来年以降も、見解問題が3~4問程度、出題される可能性が高いと思われます。なお、今年の最低ライン(40%)に到達しなかった受験生は47人と、昨年の180人から大幅に減少しています。

予備試験では、全12問出題され、そのうち、予備試験オリジナル問題は4問出題されました。そして、総論・人権分野から6問、統治分野から6問出題されました。昨年は、総論・人権分野から10問、統治分野から2問と、総論・人権分野に出題が集中する傾向にありましたが、今年は、両分野から満遍なく出題されています。憲法で安定した高得点をマークするには、最高裁判例の正確な理解は当然のことながら、代表的な基本書に記載されている重要事項や論点上の見解の対立についても正しく理解しておく必要があります。

★令和2年の短答式試験の結果を踏まえて
今年の司法試験短答式試験では、採点対象者3,664人中、合格者(短答式試験の各科目において、満点の40%[憲法20点、民法30点、刑法20点]以上の成績を得た者のうち、各科目の合計得点が93点以上の成績を得たもの)は2,793人となっており、昨年の短答式試験合格者数3,287人を494人下回る一方、採点対象者の合格率は約76.2%であり、昨年度の合格率約74.2%を約2.0%上回る形となりました。昨年に引き続き、今年も概ね4人に3人が合格するという結果となり、平成29年の合格率66.4%と比較すると、大幅に合格率が上昇しています。

今年の結果において最も注目されるのは、「合格点」です。今年の「合格点」は、司法試験短答式試験が憲法・民法・刑法の3科目となった平成27年から見て、最も低い「93点以上」となりました(なお、合格者の平均点は118.1点、全体の平均点は109.1点)。平成29年から令和元年まで「合格点」は「108点以上」でしたが、一気に15点も下がる形となりました。

短答式試験では、基本的事項を確実におさえておけば十分合格することができますが、「確実」のレベルが相当高いことに注意が必要です。とくに、平成27年から出題科目が憲法・民法・刑法の3科目に絞られていますが、それに伴い、1問あたりの点数割合が増加していますので、依然として短答式試験の対策が重要となるでしょう。

次に、今年の予備試験短答式試験では、採点対象者10,550人中、合格者(270点満点で各科目の合計得点が156点以上)は2,529人となっており、昨年の短答式試験合格者数2,696人を167人下回りました(なお、予備試験短答式試験の採点対象者数は、毎年微増しながら推移していましたが、今年は昨年の採点対象者数11,682人を1,132人下回る結果となり、大幅に減少する形となりました。)。合格率は約23.9%であり、昨年の合格率約23.0%を約0.9%上回る形となりました。

今年の「合格点」は「156点以上」と発表されています(なお、合格者の平均点は173.7点、全体の平均点は128.8点)。平成29年・平成30年はともに「160点以上」、昨年は「162点以上」と2点上昇した形となりましたが、今年は6点も下がりました。合格点が「156点以上」という数字は、受験者数が1万人を突破し、短答式試験合格者も2,000人を超えるようになった平成26年から見て、最も低い数字です。

次に、「合格率」を見ていきますと、今年は23.9%となっており、これは例年通りであるとの評価が妥当と思われます。司法試験短答式試験の今年の合格率が76.2%(採点対象者:合格者数=3,664:2,793)であったことと比べると、予備試験短答式試験は明らかに「落とすための試験」という意味合いが強い試験だといえます。

また、受験者数・採点対象者数は、平成27年から微増傾向にあり、合格者数も同様に微増傾向にありましたが、今年は一転して、いずれも減少する形となりました。とくに注目すべきは「受験率」で、平成27年から継続して80%以上を記録していた「受験率」が、今年は「69.3%」を記録し、10%以上も下落しました。これは、明らかにコロナ禍による影響と考えられるため、来年以降も同様の「受験率」が維持されるかは予想がつきにくいところですが、来年以降も、2,500~2,700人前後の合格者数となることが予想されます。

予備試験短答式試験では、法律基本科目だけでなく、一般教養科目も出題されます。点数が安定し難い一般教養科目での落ち込みをカバーするため、法律基本科目については苦手科目を作らないよう、安定的な点数を確保する対策が必要となります。このような現状の中、短答式試験を乗り切り、総合評価において高得点をマークするためには、いかに短答式試験対策を効率よく行うかが鍵となります。そのため、要領よく知識を整理し、記憶の定着を図ることが至上命題となります。

★必要十分な知識・判例を掲載
憲法では、司法試験・予備試験ともに、判例を素材にした問題が非常に多く出題されます。また、肢ごとに正誤を解答させる問題や、3つの肢の○×を全部正解しなければならない8択の問題など、消去法が使えない問題がほとんどであることから、安定的に点数を取るためには、判例の結論はもちろん、理由付けについて正確な理解が必要となります。そして、判例を理解する際には、判例を1つずつ独立して覚えるのではなく、判例相互の関連性を意識するとより効率的です。

本書では、重要判例については事案をコンパクトに掲載しており、その際には、類似判例との違いを意識できるように編集しています。また、類似判例の関係や判例の流れを表にまとめ、判例相互間の理解を深めることができる工夫も施しています。加えて、近年の司法試験・予備試験の短答式試験では、一般的な学説の整理・要約を問う肢も出題されます。本書では、そうした出題傾向も踏まえ、合格に必要と思われる学説の紹介・整理も収録しています。

★司法試験短答式試験、予備試験短答式試験の過去問情報を網羅
本書では、司法試験・予備試験の短答式試験において、共通問題で問われた知識に〈共マーク、予備試験単独で問われた知識に〈予マーク、司法試験単独で問われた知識に〈司マークを付しています。複数のマークが付されている箇所は、各短答式試験で繰り返し問われている知識であるため、より重要性が高いといえます。

★最新法改正対応
本書では、常に法改正の動向に注目しています。最新の情報をいち早く皆様に提供するために、令和2年9月末日までに公布された法改正を盛り込みました。憲法関連では、公職選挙法の改正が行われたことにより、年齢満18年以上の者も有権者として選挙に参加することができるようになりました。令和元年7月21日に施行された参議院議員選挙においても、18歳・19歳の者に選挙権が認められています。

★最新判例インターネットフォロー
短答式試験合格のためには、最新判例を常に意識しておくことが必要です。そこで、LECでは、最新判例の情報を確実に収集できるように、本書をご購入の皆様に、インターネットで随時、最新判例情報をご提供させていただきます。

2020年10月吉日
株式会社東京リーガルマインド
LEC総合研究所司法試験部

東京リーガルマインド LEC総合研究所 司法試験部 (著, 編集)
東京リーガルマインド (2020/11/19)、出典:出版社HP

司法試験・予備試験受験生の皆様へ

LEC司法試験対策総合統括プロデューサー
反町雄彦 LEC専任講師・弁護士

◆競争激化の短答式試験
短答式試験は、予備試験においては論文式試験を受験するための第一関門として、また、司法試験においては論文式試験を採点してもらう前提条件として、重要な意味を有しています。いずれの試験においても、合格を確実に勝ち取るためには、短答式試験で高得点をマークすることが重要です。とりわけ、司法試験の短答式試験は、科目が憲法・民法・刑法の3科目に絞られたことにより、益々競争が激化することが予想されます。これまで以上に、短答式試験対策の重要性が増してくるといえるでしょう。

◆短答式試験対策のポイント
司法試験における短答式試験は、試験最終日に実施されます。論文式試験により心身ともに疲労している中、短答式試験で高得点をマークするには、出題可能性の高い分野、自身が弱点としている分野の知識を、短時間で総復習できる教材の利用が不可欠です。また、予備試験における短答式試験は、一般教養科目と法律基本科目(憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法)から出題されます。広範囲にわたって正確な知識が要求されるため、効率的な学習が不可欠となります。本書は、短時間で効率的に知識を整理・確認することができる最良の教材として、多くの受験生から好評を得ています。

◆短答式試験の知識は論文式試験の前提
司法試験・予備試験の短答式試験では、判例・条文の知識を問う問題を中心に、幅広い論点から出題がされています。論文式試験においても問われうる重要論点も多数含まれています。そのため、短答式試験の対策が論文式試験の対策にもなるといえます。先ほど述べましたように、司法試験短答式試験の科目は憲法・民法・刑法に絞られました。しかし、それ以外の科目も論文式試験では条文・判例知識が要求されます。短答式試験過去問を踏まえて解説した本書を活用し、重要論点をしっかり学んでおけば、正確な知識を効率良く答案に表現することができるようになるため、解答時間の短縮につながることは間違いありません。司法試験合格が最終目標である以上、予備試験受験生も、司法試験の短答式試験・論文式試験の対策をしていくことが重要です。短答式試験対策と同時に、重要論点を学習し、司法試験を見据えた学習をしていくことが肝要でしょう。

◆苦手科目の克服が肝
司法試験短答式試験では、短答式試験合格点(令和2年においては憲法・民法・刑法の合計得点が93点以上)を確保していても、1科目でも基準点(各科目の満点の40%点)を下回る科目があれば不合格となります。本年では、憲法では47人、民法で435人、刑法で376人もの受験生が基準点に達しませんでした。本年の結果を踏まえると、基準点未満で不合格となるリスクは到底見過ごすことができません。試験本番が近づくにつれ、特定科目に集中して勉強時間を確保することが難しくなります。苦手科目は年内に学習し、苦手意識を克服、あわよくば得意科目にしておくことが必要です。

◆本書の特長と活用方法
完全整理択一六法は、一通り法律を勉強し終わった方を対象とした教材です。本書は、司法試験・予備試験の短答式試験における出題可能性の高い知識を、逐条形式で網羅的に整理しています。最新判例を紹介する際にも、できる限りコンパクトにして掲載しています。知識整理のためには、核心部分を押さえることが重要だからです。本書の活用方法としては、短答式試験の過去問を解いた上で、間違えてしまった問題について確認し、解答に必要な知識及び関連知識を押さえていくという方法が効果的です。また、弱点となっている箇所に印をつけておき、繰り返し見直すようにすると、復習が効率よく進み、知識の定着を図ることができます。

このように、受験生の皆様が手を加えて、自分なりの「完択」を作り上げていくことで、更なるメリハリ付けが可能となります。ぜひ、有効に活用してください。司法試験・予備試験は困難な試験です。しかし、継続を旨とし、粘り強く学習を続ければ、必ず突破することができる試験です。

皆様が本書を100%活用して、試験合格を勝ち取られますよう、心よりお祈り申し上げます。

東京リーガルマインド LEC総合研究所 司法試験部 (著, 編集)
東京リーガルマインド (2020/11/19)、出典:出版社HP

CONTENTS

はしがき
司法試験・予備試験受験生の皆様へ
本書の効果的利用法
最新判例インターネットフォロー

憲法綜論
序章 憲法総論(上諭・前文)
上諭

前文
第1章 天皇(1条~8条)
第1条〔天皇の地位、国民主権〕
第2条〔皇位の世襲・継承〕
第3条〔天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認〕
第4条〔天皇の権能の限界、天皇の国事行為の委任〕
第5条〔摂政〕
第6条〔天皇の任命権〕
第7条〔天皇の国事行為〕
第8条〔皇室の財産授受〕

第2章 戦争の放棄(9条)
第9条〔戦争放棄、戦力及び交戦権の否認〕

人権
第3章 国民の権利及び義務(10条~40条)
第10条〔日本国民の要件〕
第11条〔基本的人権の享有、永久不可侵性〕
第12条〔自由・権利の保持責任とその濫用禁止〕
第13条〔個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉〕
第14条〔法の下の平等、貴族制度の禁止、栄典の授与〕
第15条〔公務員選定罷免権、公務員の性質、普通選挙・秘密投票の保障〕
第16条〔請願権〕
第17条〔国及び公共団体の賠償責任〕
第18条〔奴隷的拘束及び苦役からの自由〕
第19条〔思想及び良心の自由〕
第20条〔信教の自由〕
第21条〔集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密〕
第22条〔居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由〕
第23条〔学問の自由〕
第24条〔家族生活における個人の尊厳と両性の平等〕
第25条〔生存権と国の使命〕
第26条〔教育を受ける権利、教育を受けさせる義務〕
第27条〔勤労の権利・義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止〕
第28条〔労働基本権〕
第29条〔財産権〕
第30条〔納税の義務〕
第31条〔法定の手続の保障〕
第32条〔裁判を受ける権利〕
第33条〔逮捕に対する保障〕
第34条〔抑留・拘禁に対する保障〕
第35条〔住居侵入・捜索・押収に対する保障〕
第36条〔拷問及び残虐な刑罰の禁止〕
第37条〔刑事被告人の権利〕
第38条〔自己に不利益な供述の強要禁止、自白の証拠能力〕
第39条〔遡及処罰の禁止・一事不再理〕
第40条〔刑事補償〕

統治
第4章 国会(41条~64条)
第41条〔国会の地位・立法権〕
第42条〔両院制〕
第43条〔両議院の組織〕
第44条〔国会議員及び選挙人の資格〕
第45条〔衆議院議員の任期〕
第46条〔参議院議員の任期〕
第47条〔選挙に関する事項〕
第48条〔両議院議員兼職の禁止〕
第49条〔議員の歳費〕
第50条〔議員の不逮捕特権〕
第51条〔免責特権〕
第52条〔常会〕
第53条〔臨時会〕
第54条〔衆議院の解散及び特別会、参議院の緊急集会〕
第55条〔議員の資格争訟〕
第56条〔定足数及び表決〕
第57条〔会議の公開、会議録の公表、表決の記載〕
第58条〔役員の選任、議院規則及び懲罰〕
第59条〔法律案の議決、衆議院の優越〕
第60条〔衆議院の予算先議及び衆議院の優越〕
第61条〔条約の承認についての衆議院の優越〕
第62条〔議院の国政調査権〕
第63条〔閣僚の議院出席の権利と義務〕
第64条〔弾劾裁判所〕

第5章 内閣(65条~75条)
第65条〔行政権と内閣〕
第66条〔内閣の組織、文民資格、国会に対する連帯責任〕
第67条〔内閣総理大臣の指名、衆議院の優越〕
第68条〔国務大臣の任免〕
第69条〔衆議院の内閣不信任と解散又は総辞職〕
第70条〔内閣総理大臣の欠缺・新国会の招集と内閣総辞職〕
第71条〔総辞職後の内閣の職務執行〕
第72条〔内閣総理大臣の職務〕
第73条〔内閣の職務〕
第74条〔法律及び政令の署名〕
第75条〔国務大臣の訴追と内閣総理大臣の同意〕

第6章 司法(76条~82条)
第76条〔司法権・裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立〕
第77条〔最高裁判所の規則制定権〕
第78条〔裁判官の身分の保障〕
第79条〔最高裁判所の裁判官、国民審査、定年、報酬〕
第80条〔下級裁判所の裁判官・任期・定年、報酬〕
第81条〔法令審査権と最高裁判所〕
第82条〔裁判の公開〕

第7章 財政(83条~91条)
第83条〔財政処理の基本原則〕
第84条〔租税法律主義〕
第85条〔国費支出及び国の債務負担〕
第86条〔予算の作成、国会の議決〕
第87条〔予備費〕
第88条〔皇室財産・皇室の費用〕
第89条〔公の財産の支出・利用の制限〕
第90条〔決算検査、会計検査院〕
第91条〔財政状況の報告〕

第8章 地方自治(92条~95条)
第92条〔地方自治の基本原則〕
第93条〔地方公共団体の機関、その直接選挙〕
第94条〔地方公共団体の権能〕
第95条〔特別法の住民投票〕

第9章 改正(96条)
第96条〔憲法改正の手続、その公布〕

第10章 最高法規(97条~99条)
第97条〔基本的人権の本質〕
第98条〔憲法の最高法規性、条約及び国際法規の遵守〕
第99条〔憲法尊重擁護義務〕

第11章 補則(100条~103条)
第100条〔憲法施行期日、準備手続〕
第101条〔経過規定~参議院未成立の間の国会〕
第102条〔経過規定~第一期の参議院議員の任期〕
第103条〔経過規定~公務員の地位

付録
1憲法の横断的な知識の整理
2大日本帝国憲法
3憲法関連法
(1)国会法(抄)
(2)内閣法(抄)
(3)裁判所法(抄)

東京リーガルマインド LEC総合研究所 司法試験部 (著, 編集)
東京リーガルマインド (2020/11/19)、出典:出版社HP