今の空から天気を予想できる本




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はじめに

空を見ただけで天気が読めたらよいのに、と思ったことはありませんか。昔の人はそれを実践し、生活してきました。今は各種メディアで詳しい天気予報を知ることができます。

しかし、自分で空を見上げて天気を予想するのは、とても楽しいことです。雲のでき方、風の流れ、光の様子などから、天気の変化をいろいろと知ることができます。これらに季節の特色を加えれば、数時間先から翌日までの天気は、だいたいわかるようになります。

「夕焼けは晴れ」や「朝虹は雨」など、いろいろなことわざも知られています。ことわざは昔からの知恵で、単純化していてわかりやすいですが、当たらないときもあります。でもこんな点も加えればもっと当たるのに、という見方があるのです。

本書には、そんな天気を予想するための観察アドバイスをたくさん詰め込みました。あたかもその場で指をさして解説しているかのように、大きな写真に文字や矢印を直接書き入れ、見て欲しい場所を示し、そこにふさわしい説明を加えました。また、風で雲が絶えず変化していますから、風の流れもわかるように工夫しました。これは本書の大きな特色です。

このような空の観察方法は、私が数十年間、空を見続けて知ったことです。私が撮った写真に、私がわかったことを具体的に記したもので、その後の天気も、実際に起こったことが基になっています。

使い方は自由です。最初から見てもよいですし、季節ごと、天気ごとに、知りたい空を探すのもよいでしょう。また本書を片手に、空をじっくり観察するのもおすすめです。もしかしたらここにはない現象がいろいろ見えてくるかもしれません。そのときはぜひ、自分で新たなページを加えてみてください。そうすれば、本書はあなただけの天気の本になっていくでしょう。

最後に、この本をつくるにあたり、緑書房の宮島芙美佳さんにはたいへんお世話になりました。イラストは石田理紗さんに描いていただきました。ここに改めて感謝いたします。

武田康男

武田 康男 (著)
出版社: 緑書房 (2019/8/5)、出典:出版社HP

目次

はじめに
本書の使い方

◆ 天気はどうして変わるのか
◆10種雲形といろいろな雲

第1章 芸から天気を予想する

すじ雲がたくさん並ぶとだんだん雨に(巻雲)
うろこ雲が空に広がるとだんだん雨に(巻積雲)
うす雲が空に広がるとだんだん雨に(巻層雲)
ひつじ雲が他の雲と一緒だと雨が近い(高積雲)
おぼろ雲で太陽がぼんやりすると雨が近い(高層雲)
あま雲が垂れ下がって雨が降る(乱層雲)
うね雲が灰色に伸びて曇り(層積雲)
きり雲が下りて増えると霧雨、上がると晴れに(層雲)
わた雲が群れて流れると晴れかだんだん雨に(積雲)
にゅうどう雲が膨らむと強い雨と風(積雲、積乱雲)
かなとこ雲が高い空に広がると雷雨と風(積乱雲)
ちぎれ雲が晴れた空を流れて晴れ続く
きり雲が流れて上がると晴れていく
すじ雲がもやもやしていたら晴れ続く
うろこ雲が少しだけあったら晴れ続く
ひつじ雲のすき間が青空だと晴れ続く
うね雲が朝に雲海になっていたらだんだん晴れる
霧が朝に漂っていたら晴れていく
わた雲が昼にぽつんとあったら晴れ続く
わた雲が平たいときは晴れ続く
かなとこ雲は上が残って晴れていく
ロケット雲が消えると晴れ続く
つるし雲は台風去って晴れていく
滝雲が朝に流れて下ると晴れていく
笠雲だけだと晴れていく
飛行機雲が消えていくと晴れ続く
すじ雲が交差していると台風接近かも
レンズ雲がたくさん集まると雨や風に
上下の雲の動く向きが違うとだんだん雨に
黒い雲で空が暗くなると雷雨と風
笠雲が幾重にもなると雨や風
つるし雲が山の横で大きくなるとだんだん雨に
旗雲が山からなびいたら雨と風
雲が山を隠していったら雨に
低い雲が夜に明るく見えたら雨近い
乳房雲が広がったら大雨に
頭巾雲がにゅうどう雲にできたら雷雨と風
波状雲(さば雲)が広がったらだんだん雨に
飛行機雲がずっと残るとだんだん雨に
雲から地面へのすじはにわか雨
雲からのもやもやのすじは降る雪
ジェット気流の雲が伸びるとだんだん雨に
笠雲とつるし雲が一緒だと雨近い
笠雲と他の雲が一緒だとだんだん雨に

第2章 光から天気を予想する

青い空が澄んでいると晴れ続く
朝夕の薄明がきれいだと晴れ続く
夕焼け雲が明るく美しいと晴れていく
夕焼け雲が濁っていると曇りか雨
雲が夕焼けにならないとだんだん雨に
朝焼け雲が黄色いと晴れる
朝焼け雲が濃いだいだい色だと雨が近い
朝に虹が見えたらすぐ雨に
夕方に虹が見えたら晴れていく
丸い日量に低い雲でだんだん雨に
サンピラーの場所では雪が舞っている
幻日が並んで見えるとだんだん雨に
環天頂アークが出るとだんだん雨に
上方への蜃気楼が見えるとだんだん雨に
下方への蜃気楼は寒い日にでき晴れ続く
朝露が付いていたら晴れ続く
赤い月の出が見えたら晴れ続く
光芒が広がったら曇りか雨に
雲の影が朝夕に伸びたら遠くに積乱雲

第3章 風から天気を予想する

季節風が吹いているときは山で天気分かれる
南風が強く吹くとだんだん雨に
東風が冷たく吹くと曇りか雨
西風が山を越えてくると乾いた晴れ
南風で低い雲と高い雲は強い雨に
湿った風が山を上ると雲が湧いて雨
風が山の上と下で違うとだんだん雨に
低い星がよくまたたくと冷えて晴れか霧
高い星がよくまたたくとだんだん雨に
雷の光と音が近いと雷雨と風
海のうねりは台風などからでだんだん雨や風に
漏斗雲が地面に下りたら竜巻
土ぼこりが広がると晴れて風強い

第4章 季節から天気を予想する

春:地面が暖まり雲湧きやすい
夏:湿った南風で雷雨も
秋:天気の変化と澄んだ晴れ
冬:日本海側と太平洋側で違う天気
台風:すじ雲と灰色のにゅうどう雲
温暖前線:雲が増えてしとしと雨
寒冷前線:積乱雲が並びにわか雨
豪雨:積乱雲が次々湧く
ゲリラ雷雨:大都市で急に発達する積乱雲
花粉:晴れた日の光景は花粉
PM2.5: 都会の空がかすむ PM2.5
黄砂:空が黄色くなる
火山噴火:火山灰で空が灰色に

Column
◆富士山と観天望気
◆天気の移り変わり
◆飛行機から見た雲

本書の使い方

本書では、実際にあった天気の写真 89 例を掲載。今、目の前に広がる空と本書を照らし合わせることで、観察のポイントをわかりやすく示しつつ、今後予想される天気の変化を解説します。

各矢印・字体の違いが示すことがら

・今見えている現象 :ゴシック体
・今後予想される天気:ミンチョウ体
・雲の動き
・風の流れ
・その他

本書の特徴・構成

第1章 雲から予想する天気
風の動きによって姿を変えるさまざまな雲の形から予想する 44種の空

第2章 光から予想する天気
さまざまな光の変化から予想する19種の空

第3章 風から予想する天気
風の向きや強さ、風が吹く場所から予想する13種の空

第4章 季節から予想する天気
季節ごとに観察される空から予想する13種の空

天気のしくみ
イラストを使い、天気はなぜ変化するのかや10種類の雲の正式名称と俗称をわかりやすく解説

天気に関するコラム
天気の観察ポイントとしての富士山の雲、天気が変化する様子、飛行機から見えた雲をそれぞれ写真とともに解説

ご注意
本書の内容は、気象学や著者の経験をもとに記載されています。しかし実際の気象状況には予測しえない事項(局所的で急激な天気の変化など)があり、記載された内容がすべての点において正しいと保証するものではありません。本書記載の内容による不測の事故や損失に対して、著者、編集者、ならびに緑書房は、その責を負いかねます。

天気はどうして変わるのか

地球には太陽の光が届きます。その熱で海や陸が暖まり、温度差によって大雪の流れ(風)が生まれます。また太陽の熱は、海などの水から、目に見えない水蒸気を大気中に送ります。上昇気流によって水蒸気が空の上で冷えると、小さな水や氷の粒が集まった雲になります。そして、雲から雨や雪が降り、川や地下水となって再び海にもどります。このように、太陽の熱や大気と水の流れによって、いろいろ

な気象現象が起こっています。

天気には、晴れ、曇り、雨や雪だけでなく、さまざまな風や、暑さと寒さもあります。また、雷が起こったり、台風や竜巻などの激しい現象もあります。こうした天気はそれぞれに起こる理由があり、いろいろなことが関わって、つながりのある変化をしています。天気の変化を読むことができれば、その後の天気を予想することができます。空にはそうした事例がたくさんあります。

10種雲形といろいろな雲

世界気象機関によって、雲は大きく10種に分類されています。10種雲形といって、雲を知る基本です。

雲ができる高さは、地上から高さ13km程度の範囲です。空気はさらに上にも、ありますが、上昇気流がこの範囲で止まるため、雲ができなくなります。

雲にはすじの形、かたまりの形、横に広がった形があり、雲ができる高さは3つ

あります。上層(5~13km)に巻雲、巻積雲、巻層雲、中層(2~7km)に高積雲、高層雲、乱層雲、下層(地表付近~2km)に層積雲、層雲があり、積雲と積乱雲は下層にできて、中層や上層まで広がります。しっかりと雨が降るのは乱層雲と積乱雲で、層雲、層積雲や積雲からまれに弱い雨が降ることもあります。

10種の雲はさらに、波状雲(さば雲)、レンズ雲(かさ雲、つるし雲)、ちぎれ雲、 頭巾雲、乳房雲、尾流雲、漏斗雲など形の名前が付いています。また、季節によって変化し、地形による雲など、各地で特徴的な雲もできます。

武田 康男 (著)
出版社: 緑書房 (2019/8/5)、出典:出版社HP