はじめて学ぶ 環境計量士試験 濃度関係 (国家・資格シリーズ 228)




まえがき

本書は、初めて環境計量士という国家試験の受験を検討される方や、世の中に出ている環境計量士の本では少しハードルが高くて苦労するという方などのために, 基本事項をできるだけ分かりやすくしようとして書いたものです。

「環境計量士って何なの?」というところから始めて,学習の仕方・考え方の一般論,受験要領,あるいは,国家試験で実施される各科目分野についても,それぞれ の重要事項について入門編としての解説を用意しました。環境計量士について知りたい方,環境計量士の勉強を始められてつまずいておられる方などに,まずは共通事項などを気楽に寝転んでお読みいただきたいと思います。そして、環境計量士の受験を目指すお気持になられたならば,各科目に用意しました説明を入門解説として役に立てていただければと思います。

これまで入口のところで事情が分からずに諦めておられた方や,学習途上で手ごろな解説書が少なかったために環境計量士の受験を断念されていた方もおられると思いますが,もう少し初めのあたりでの疑問が解消できていればそのあとはスムー ズに学習を進められた方も多かったかも知れません。本書は,そのような方々を中 心としてこれから環境計量士の学習を始めて国家試験に挑戦しようという方のため の助走支援書です。まずは、気楽に斜め読みしていただき,その後元気が出てこられましたら,頑張って環境計量士の学習を進めていただきたいと考えております。

ただ,本書は,あくまでも入門編ですので,あまり詳しい内容や高度な記述は割愛しています。ある程度理解されて,環境計量士とはどのような分野なのかを把握された上で、より本格的な内容の学習に進んでいただければ幸いと存じます。もち ろん、本書も国家試験の範囲の70%以上はカバーしておりますので,本書の範囲を十分に学習されましたら,国家試験の合格水準に到達することは可能です。(ただし,本書の範囲でも過去問などの十分な学習が重要ですし,分析法などでも別途の学習が必要です。)

本書が,皆様方の学習において少しでもお役に立てますことを心より願っております。

著者記す

福井 清輔 (著)
出版社: 弘文社; 第2版 (2009/1/25)、出典:出版社HP

目次

まえがき
環境計量士の学習にあたって

第1編 受験の相談
Q1 環境計量士とは,どんな資格なのですか?
Q2 環境計量士の合格基準はどの位ですか?必ず,60%を取らないと合格できませんか?
Q3 高等学校(あるいは文系の大学)しか出ていませんが,環境計量士の試験を受けられますか?また,独学以外に環境計量士の勉強をする方法があれば教えて下さい。
Q4. 環境計量士の試験って,暗記だけでは絶対に合格できないのでしょうか?
Q5 難しい問題の解き方を教えて下さい。
Q6 微分や積分が分からないのですが,環境計量士の受験はあきらめないといけませんか?
Q7 法律というものになかなかなじめませんが,法律の勉強の仕方を 教えて下さい。
Q8 環境計量士の勉強はいつ頃から始めるのがいいのでしょうか?
Q9 勉強する気持ちを長続きさせるにはどうしたらいいのでしょうか?
Q10 勉強するためには,どんな本を何冊買えばいいのですか?また勉強がイヤになった時の対策はありませんか?
Q11 試験前に,また,試験に臨んで気をつけるべきことはどんなことですか?
Q12 濃度区分と騒音・振動区分の二つを持っていると良いと聞きますが,本当でしょうか?
Q13 環境計量士の勉強の仕方を教えて下さい。また、お薦めの本はありますか?
Q14 電卓が持ち込み禁止になっていると聞いたのですが,ということは計算問題がやさしくなったのですね?
Q15 濃度分析の経験がありませんが,環境計量士の試験を受けても大丈夫でしょうか?
Q16 基礎化学や濃度分析の基礎になる問題を出して下さい。

第2編 環境と化学
Q1 環境の法律についてはどのくらい詳しいところまで勉強しなければなりませんか?
Q2 化学には自信が無いのですが,基礎化学はどうやって勉強したらいいですか?
Q3 基礎化学の化学部分では,例年どのような問題が出ているのでしょうか?
Q4 化学で出てくるモルとは,どんな考え方なのですか?
Q5 原子核崩壊の半減期や化学反応速度の問題が分からないので、教えて下さい。
Q6 相図の見方が分からないので、教えて下さい。
Q7 気体の状態方程式とはどんなものですか,教えて下さい。
Q8 化学結合には,どんなものがあって、どんな特徴があるのですか?
Q9 気体一液体一固体の間で成り立つ化学の法則について教えて下さい。
Q10 吸着とはどんな現象ですか?また,吸着を説明する理論について教えて下さい。
Q11コロイドとはどんなものですか?どんな特徴があるのですか?
Q12 化学平衡について,そこで出てくる式の説明も含め教えて下さい。
Q13 溶解度積の意味と,その計算について教えて下さい。
Q14 熱力学が分かりにくいと思います。やさしく教えて下さい。
Q15 酸と塩基については,いろいろな定義があるようですが,それらをまとめて教えて下さい。
Q16 酸化と還元とはどういう考えで,酸化還元反応とはどういう反応なのでしょうか?
Q17 電気化学が分からないので,教えて下さい。
Q18 有機化合物の定義は何ですか?また,有機化合物には,どんな性質がありますか?
Q19 有機化合物でよく出てくる異性体とは、何ですか?どんな種類があるのですか?
Q20 化合物の共鳴とはどんなことなのですか?その内容と特徴を教えて下さい。
Q21 有機化合物の反応にはどんなものがありますか?
Q22 界面活性剤は,石けんのもとだと聞いたのですが,その原理を教えて下さい。
Q23 高分子化合物とはどんなものなのですか?教えて下さい。
Q24 化学プロセスの計算問題が難しく感じるのですが,どのように考えたらよいのでしょうか?
Q25 練習のために,基礎化学関係の基礎練習問題を出して下さい。

第3編 濃度の計量
Q1 分析技術にはどんな意義がありますか?また、試験ではどんな問題が出ているのでしょうか?
Q2 質量濃度をモル濃度に変換する計算問題がよく出ているようですが,どうやって計算するのですか?
Q3 [H+] や[OH-] のイオン濃度を求める問題もよく出ているようですが,ポイントを教えて下さい。
Q4 化学分析について,その概要を教えて下さい。
Q5 公定分析法とは何ですか?また,その分析法を全部覚えなければ なりませんか? .
Q6 試料採取法とその予備処理についてまとめて教えて下さい。
Q7 分析で使われる検量線とはどんなものなのでしょうか?
Q8 容量分析法とは,どのような分析法を言うのですか?その中の主な分析法についても教えて下さい。
Q9 分離分析法の概略について教えて下さい。
Q10 液クロやガスクロなどのクロマトグラフィーとはどんな原理の機械なのですか?
Q11 分光分析法とは,どんな分析法なのですか?
Q12 NMRとは、どんなものなのですか?何ができるのですか?
Q13 質量分析法の原理をまとめて教えて下さい。
Q14 環境分析では,かなりたくさんの分析法が出てきますが,全部覚えるのは大変です。どうやって勉強したらいいのですか?
Q15 練習のために,濃度の計量関係の基礎練習問題を出して下さい。

第4編 計量の法規
Q1 計量法の体系について教えて下さい。
Q2 計量法はしょっちゅう改正されていると聞きますが、受験にあたってどんなことに注意しておいたらいいのでしょうか?また,「計量法の大改正」と言われる平成4年の改正の骨子はなんですか?
Q3 計量法の目的と用語の定義について教えて下さい。
Q4 SI単位系とはどんな単位系なのですか?
Q5 トレーサビリティってあんまり聞いたことないのですが,どんなものなのですか?
Q6 計量法で「特定」という文字のつく用語がたくさん出てきますが, それらをまとめて説明して下さい。
Q7 商品量目の公差とは何ですか?どんな意味があるのですか?
Q8 ナントカ検査というものがたくさん出てきますが、まとめて教えて下さい。
Q9 計量法にも「指定ナントカ機関」というものが,いくつかあるようですが,その内容について教えて下さい。
Q10 計量法では構造と器差とがセットになってよく出てくるということですが,どういうことでしょうか?
Q11 特定計量器とは何ですか?普通の計量器とどう違うのですか?
Q12 計量法には法律で決められているマークがあるようですが,それらを教えて下さい。
Q13 自治事務とは、いったい何ですか?
Q14 練習のために,計量法関係の基礎練習問題を出して下さい。

第5編 計量の管理
Q1 標準化とは、いったい何ですか?
Q2 測定誤差の分野で,誤差や偏差など似たような用語が出てきます が,それらをまとめて教えて下さい。
Q3. 統計の分野でいろいろな量が出てきますが,それらの計算方法を教えて下さい。
Q4 平均や分散の計算がよく分かりません。教えて下さい。
Q5 統計で出てくる分布関数について教えて下さい。
Q6. 検定の考え方と,そのやり方を教えて下さい。
Q7 誤差の伝播のところで,難しい式が出てくるのですが,何とかなりませんか?
Q8 実験計画法とは、どんな考え方のものなのですか?また,実験計画法と分散分析法の関係を教えて下さい。
Q9分散分析がよく分からないのですが,どんなものなのですか?
Q10 相関係数について説明して下さい。その値によってどんな関係に なるのですか?
Q11 計量器の校正とは、どういうことを言うのでしょうか?
Q12 SN比とは、どんなものなのですか?
Q13 管理図とは何ですか?どうやって見るのですか? …
Q14 なぜコンピュータや自動制御について学ばなければならないので すか?また,それらの基本についても教えて下さい。
Q15 ラプラス変換とは何ですか?難しそうな名前ですが、分かりやすく教えて下さい。
Q16 練習のために,計量管理概論関係の基礎練習問題を出して下さい。
索引

福井 清輔 (著)
出版社: 弘文社; 第2版 (2009/1/25)、出典:出版社HP

環境計量士の学習にあたって

本書の学習法を含めて,環境計量士の学習についての考え方を書いてみます。

環境計量士は分析分野の専門家
環境計量士は,分析の分野での専門家ですので、その分野での一通りの知識や見識を持ち合わせていなければなりません。

最初から専門家でなくてもよい
しかしながら,はじめからそのような知識や見識を持った人でなければ環境計量士の国家試験に挑戦してはならない,という訳ではありません。受験資格には制限はありません。受験時に,性別を問わないのは当たり前ですが,学歴 も実務経験も問われません。

上に述べましたような専門家としての知識や見識は,国家試験のための学習を積みながら,あるいは実務経験をこなしていかれる中で,また実務経験相当と認められる講習会などを通じて, そして実際に環境計量士としての業務をしていかれる中で身につけていくことでよいのです。

まずは,「この資格に挑戦しよう」という意気込みからスタートされればよいのです。

ほぼ 60% の正答率で国家試験に合格
その国家試験も,それなりにレベルの高い試験ではあります。一応,「難関」 とされています。しかし、頑張れば合格できないものでもありません。実技試験はありませんし,ほぼ 60%の正答率で十分合格ですから,実務や知識の完璧な専門家になっていなくても受験ができますし,合格できます。

本書の中でも説明してありますが,具体的に受験すべき4科目のそれぞれの特徴をよく分析し把握して,どの科目とどの科目の合計点が何点以上あればよいか,暗記科目と実力科目にそれぞれどのように対処して学習していけばよいか,などの計画のもとに努力されればかなり容易に合格圏内に近づくことができるでしょう。

3問中の2問が正答できれば余裕を持って合格です。いや,5問中3問の一答で合格ラインなのです。極端に言えば,5問中2問は分からなくてもいいのです。そのつもりで,気を楽にして学習しましょう。

まずは軽い気持ちで|
そうは言っても、環境計量士の分野では,やはり分析を初めて学ばれる方にとって、入口の段階で戸惑ったり疑問が次々にわいてきたりしやすいものです 本書は、そのような不安や心配にできるだけお答えできるように,多くの方が持たれる疑問を Question and Answer の形で整理していますので、斜め読みで結構ですから,まずは軽い気持ちでお読み下さい。

やる気になってきたら,技術的事項を学習しよう
斜め読みをしばらくされていると,環境計量士とはどんな分野なのか,どういうことが要求されているのか,暗記科目らしいものはどれか等,環境計量士の分野の事情がだんだんつかめてくると思います。人間は,難しいことが分からなくても,その周辺の様子が分かってくると,結構安心できるものです。そ のような状態になればしめたものです。

そうなった上で今度は,それぞれの科目の技術的事項について学習して下さい。ページの順序の通りでなくてもよいのです。斜め読みの段階で、より興味や関心を持たれた科目,少しでもとっつきやすそうに見えた科目から取り組まれてよいのです。

練習問題なども各所に配置してありますので,ご活用下さい。環境計量士の本試験の様式である,五肢択一式(いわゆる,五択です)の問題をそれなりに用意してあります。

本書の範囲でも十分学習されれば合格ライン
本書はまずは入門書として用意しています。多くの方々が入口付近で持たれる疑問,質問に答えようとして書いてあります。しかし、その流れにおいて、技術的事項の分かりやすい解説にも心がけております。環境計量士試験分野の 全部は網羅できていませんが,過去十年以上の出題傾向を検討した上で,難しい方の20~30%は除き,70~80%の重要分野はカバーしています。

ですから,本書の範囲であっても十分に学習されれば,国家試験で合格ラインの60%の正答を得ることは必ずしも難しいものでもありません。一生懸命 勉強されれば,合格も可能です。

もちろん,「過去問」と呼ばれる,これまでに国家試験で出題された問題を配く練習などを併用されれば、より確実に試験突破の実力がつくことでしょう。

福井 清輔 (著)
出版社: 弘文社; 第2版 (2009/1/25)、出典:出版社HP