日経TEST 公式練習問題集: 「経済知力」を問う精選200問

まえがき

2008年秋の世界金融危機を契機に、世界の風景は大きく変わりました。米国、欧州、日本というそれまで世界経済を牽引してきた経済圏が停滞から抜け出せずにいる一方で、中国やインド、ブラジルといった国々は力強い成長を見せています。

それを端的に物語るのが自動車の販売台数です。2009年の中国の新車販売台数は1364万台を記録しました。2008年に比べると46.2%の大幅な増加です。米国は1043万台にとどまりました。世界金融危機以前の米国では年間1600万台強の新車が売れていたのですから、市場は3分の2に縮小したことになります。

日本国内の新車販売も2009年は前の年に比べ9.3%減の461万台となり、1978年以来31年ぶりに500万台を割り込みました。政府がデフレ宣言をした日本では、デフレがさらなる景気の悪化を招くデフレスパイラルの懸念も抱えています。企業にとっても家計にとっても厳しい状況が続きます。

しかし、危機はチャンスでもあります。例えば、成長するアジアを中心とした新興国市場を「アジア内需」という視点でとらえると、違った風景が見えてきます。多くの人口を抱える市場がよりよい暮らしを求めて花開こうとしているのです。そこには大きな商機が待ち受けています。今われわれに必要なのは、危機の先を見通し、危機をチャンスに変える力ではないでしょうか。

日本経済新聞社と日本経済研究センターが、経済の仕組みを理解して新しいビジネスを創出する力、すなわち「経済知力」の有効性を提唱し、「日経経済知力テスト(略称:日経TEST)」の第1回公開テストを実施したのは2008年9月でした。くしくも米国の証券大手リーマン・ブラザーズが破綻したのと同じ時期です。そして、その後の世界の変容は、ビジネスパーソンが経済知力を引き上げていくことの重要性がますます高まっていることを示しています。

本書は「日経TEST」の受験を目指す人々のための練習問題集として編まれたものです。経済知力とは何か、どんな問題が出されるのかということを理解していただくのが本書の目的です。しかし、本書に収められた200問に及ぶ問題は、マクロ経済から暮らしに身近かなヒット商品まで幅広い事象を対象としており、問題の一つひとつに向き合うことは日本と世界の経済、ビジネスの現状と将来の姿を知り、対応策を考えることにほかなりません。200問への挑戦を通じて、ご自身の経済知力の高まりを実感していただけるものと思います。

2010年2月
日本経済新聞社

日本経済新聞社 (編集)
日本経済新聞出版社、出典:出版社HP

目次

本書の使い方

日経TESTとは
あなたの「経済知力」を測る[Guidance]

1日経TESTと経済知力
2日経TESTの問題構成
3経済知力を高めるには
4受験者の声
■日経TEST公開テスト実施要項

練習問題I
基礎知識[Basic]

経済や経営に関する基本常識と仕事に役立つ実務性の高い知識を測る40問

練習問題II
実践知識[Knowledge]

課題の解決に取り組む際に必要となる本質的かつ実践性の高い経済・経営知識を測る40問

練習問題Ⅲ
視野の広さ[Sensitive]

多様な社会現象に対して幅広い関心を持つことができているかを測る40問

練習問題Ⅳ
知識を知恵にするカ[Induction]

吸収した情報から一般的な法則や共通性を見つけ出し、応用可能な「知恵」に変える力を測る40問

練習問題V
知恵を活用する力[Deduction]

既知のルールや一般論(知恵)を個別の事象に適用し、何らかの結論を導き出す力を測る40問

日本経済新聞社 (編集)
日本経済新聞出版社、出典:出版社HP

本書の使い方

日経TESTは独自に定めた出題指針にのっとり、1つの評価軸につき20問、計100問の問題を作成して出題しています。本書の問題も公開テストの出題指針に準じており、1つの評価軸につき40問、計200問を掲載しています。公開テストでは、どれがどの評価軸に属する問題かは明示していませんが、本書では日経TESTを受ける人のための練習問題集という性格を勘案して、評価軸別に章を立て、各評価軸の問題の特色を理解していただけるようにしました。それぞれの評価軸については、冒頭の「日経TESTとは」をご参照ください。

問題は右のページに掲載し、正解と解説をその裏(左ページ)に掲載しています。また、解説には「Advance」という見出しで関連知識を記載しているものもあります。

似たような経済事象が、「実践知識」の問題として扱われたり「知識を知恵にする力」の問題として扱われたりする例に遭遇すると思います。問題作成の切り口の違いによって、経済事象が異なった表情を見せることお分かりいただけると思います。問題の配列は、緩やかなグルーピングを意識したほかは格別の意図はありません。

本書は日経TESTの出題構造を理解し、問題になじんでいただくのが本旨ですが、200問の問題と解説には日本と世界の経済の現状を理解するキーワード、情報が埋め込まれています。経済とビジネスについての今を読み解く解説書としてもお役立ていただけるものと存じます。なお、本書に収めた問題は2010年1月までの報道や公開された資料などを基に作成しました。

日経TESTとは

あなたの「経済知力」を測る Guidance

1日経TESTと経済知力

日経TESTは正式名称を「日経経済知力テスト」といいます。TESTは経済知力テストを英訳した「TestofEconomicSenseandThinking」の略称です。

初めて耳にする方も少なくないと思いますが、経済知力を簡単に定義すると、「ビジネス上の思考活動に必要な知識と、それを活用する力(知力)の総体」ということができます。経済の仕組みを理解し、新しいビジネスを創出する力と言い換えることもできます。ビジネスに携わる人々にとっては欠かせない能力です。

例えば、「新商品を開発する」という思考活動について考えてみましょう。進め方は多様ですが、以下のような流れが一般的と考えられます。

1日ごろから世の中の変化や同業他社の動向に関心を向け、新しい情報を知識として蓄積しておく。
2蓄積した知識の中から、「消費トレンド」や「ヒットの法則」を抽出する。
3抽出した「消費トレンド」や「ヒットの法則」を自社の経営資源に照らし合わせ、最適な商品アイデアを発想する。

1は日ごろの情報収集を意味します。2は収集した情報の編集・加工、3は加工した法則を現実に応用する過程を示します。このように、「知識」のストックとそれを活用する「知力=考える力」が存在することで初めて、新商品開発という思考活動を円滑に進めることが可能になります。もちろん、新たに収集した情報を生かすためには、経済構造や企業を取り巻く環境、経営実務などに関する知識をある程度は持っていることが前提になります。

ビジネス上の思考活動は新商品の開発に限りません。顧客の苦情処理、新たなソリューションの提供、日常業務における問題の解決、新規事業の立案、長期経営計画の策定…。これらも重要な思考活動です。そこではいつも、意識するとしないとにかかわらず、知識と知力が動員されているはずです。

日経TESTはビジネスの遂行に不可欠な「経済知力」を測るテストなのです。

2日経TESTの問題構成

これまで述べたように、経済知力はビジネス知識と知力=考える力で構成されます。知識の蓄積がなければ知力は生かせませんし、知力がなければ知識は役に立ちません。両者が有機的に結びついて経済知力が形成されます。

知識はもう少し詳しく見ると3つの要素に分類できます。「基礎知識」、「実践知識」、「視野の広さを示す知識(視野の広さと略します)」です。また、知力は「知識を知恵にする力(帰納的推論力)」と「知恵を活用する力(演繹的推論力)」の2つの要素に分かれます。この5つの構成要素こそ経済知力を測る評価軸ということになります。日経TESTでは各評価軸につき20問、計100問の問題が出題されます。

(1)5つの要素=評価軸
それでは5つの要素=評価軸を詳しく解説しましょう。

1基礎知識[B=Basic] 文字通り、経済・ビジネスを正しく理解するための知識です。それを知らないと経済現象が正しく理解できず、仕事に支障をきたす恐れのある知識を指します。経済や経営に関する基本常識と、仕事に役立つ実務性の高い知識に大別できます。

デフレ、経済成長率、為替相場、社外取締役の機能、持ち株会社…。これらは経済や経営に関する基本常識に含まれるものです。実務性の高い知識とは、たとえば損益計算書の読み方、マーケティング手法に関する常識、個人情報保護法や著作権法など、ビジネスパーソンとして知っておきたい基礎的な法務知識などを指します。これらの問題では、キーワードをきちんと理解しているかどうかが問われます。

2実践知識「K=Knowledge」
課題解決に取り組む際に必要となる本質的かつ実践性の高い経済・経営知識を指します。この分野も企業を取り巻く経営環境に関する知識と、環境変化に対応して講じる戦略や対応策についての知識・理解の2つに分けられます。基礎知識がいわば教科書的で普遍性が高いのに対して、実践知識は生きた経済や企業行動を反映しており流動的な要素をはらみます。

BRICSの台頭、少子高齢化の進行、環境保護の動き、世界金融危機の影響などが経営環境に関連する知識です。一方、M&A、アウトソーシング、ネットスーパー、排出枠取引などは経営環境の変化に対応した企業行動を表すものといえます。

この分野の問題は個別的で、同じ戦略をある企業は採用するが別の企業は選択しないということがあります。ある企業にとっては妥当性が高いと判断された方策が、他の企業では評価されないということがあり得るのです。正答率を高めるには新聞や経済誌等のニュース、解説をしっかりチェックしているかどうかがポイントとなります。

3視野の広さ[S=Sensitive] 知的好奇心が強く、多様な社会現象に対して幅広い関心を持つことによって得られる知識です。通勤の途中に街角で体験したこと、テレビの海外ニュースで見た忘れられないレポート、新聞のアンケート調査の記事にあった意外な報告、趣味の音楽愛好仲間から聞いた面白い話、スーパーの店頭で出合った新商品などなど、日々の暮らしの中で記憶にとどめた知識は、いつの日か自分の仕事で役に立つことがあるかもしれません。
経済的な価値の源泉は日々の生活の中にあるからです。出題範囲は広く、受験者にとっては対策の立てにくい問題分野ですが、アンテナを常に高くしておくことが重要です。

4知識を知恵にするカー帰納的推論力[I=Induction] 知識として吸収した情報から一般的な法則や共通性を見つけ出し、応用可能な「知恵」に変える力を指します。先ほど説明した「新商品の開発」の事例でいえば、「2蓄積した知識の中から、消費トレンドやヒットの広則を抽出する」力が、知識を知恵に変える力です。複数の流行現象を分析して共通性に着目し、1つの概念へと抽象化する思考作業です。最近、頻繁に唱えられる「仮説構築」はこれに通じるものです。

出題の形式には、個別の事例を複数提示して一般論を推論するケースや、複数の個別事例の中から共通のルールや概念に該当するもの、または該当しないものを探し出すケースなどがあります。

5知恵を活用する力=演繹的推論力[D=Deduction] 既知のルールや一般論(知恵)を個別の事象に適用し、何らかの結論を導き出す力を指します。問題の原因の特定や結果の予測といった日常的な思考の多くは、過去の経験則に照らして判断しているという点で、演繹思考の典型ということができます。「新商品の開発」の事例では、他社のヒット事例から引き出した法則を自社の経営資源に適用し、自社なりの新商品を企画する過程がこれに該当します。既知のルールや一般論を適用するだけでは前例踏襲に終わる恐れがあり、本当に競争力のある商品を企画しようという場合は、「新商品の開発」の事例のように新しいルールを自ら創出する作業が重要となります。

出題の形式には、事象を提示して結論を推論させるケースや、結果を提示して原因となった事象を特定するケースなどがあります。「知恵を活用する力」の問題は知識や知恵が前提となりますので、知識問題や「知識を知恵にする力」の問題が含まれることもあります。また、グラフの問題などでは知識と推論のウエートの相違によって、分類が異なることもあります。

(2)成績表について
日経TESTの成績は1000点を上限の目安とするスコアで表示します。スコアは項目反応理論(IRT)と呼ばれる統計モデルを使って算出します。正解1問につき10点のスコアが配点されるわけではありません。スコアは事前調査を含めた各種のデータを総合して算出しています。スコアが示す値は常に一定です。仮に1回目のテストと2回目のテストに難易度の差があったとしても、成績表のスコアが2回とも500点であれば、その人の能力は変わらないということを示しています。テスト間の比較といいますが、前のテストから能力がどの程度向上したかを客観的に把握できるのが、IRTによる分析の特色です。

成績表ではこのほかに、5つの評価軸別スコア(上限の目安は100点)や順位、テストの結果についての講評なども記載しています。

3経済知力を高めるには

日経TESTに備えてどんな勉強をすればよいのでしょうか。テスト事務局で高スコアを獲得した受験者にテストの対策を伺ったところ、「特にありません。日経TESTのためだけの準備は無理です」との声が多く聞かれました。その理由は「出題範囲がきわめて広いため、対策の取りようがない」からです。一方で、高スコア獲得者がそろって実践していることがあります。それは「平素から経済やビジネスに関する知識を増やしたり、考えたりする習慣をつけておく」ということです。

日経TESTは日本経済新聞を読みこなすためのテストではありません。しかし、日経を毎日読み続けることをベースにして知識を増やし、蓄えた知識を活用する習慣をつけると、自分の力で解決策を導き出す力、つまり経済知力が身に付いてきます。そういう意味では対策がないわけではありません。以下、ビジネス知識の増やし方、知力を高める方法について、高スコア獲得者の体験などを基にまとめてみました。

(1)知識編 いかにビジネス知識を増やすか

1読む記事を増やす
経済知力を引き上げるための基礎体力づくり、それは経済とビジネスに関する知識を増やすことに尽きます。それには日々接する新聞の記事の数を増やすことが重要です。

新聞は毎日発行され、自宅に配達されます。1日の朝刊はおよそ新書2冊分の文字量があります。この全部を読むのは至難の業です。一般のピンネスパーソンの場合、新聞を読むことに割ける時間は朝の30~40分、多くて1時間くらいでしょう。その時間内で読める記事を増やすには、記事の構造を知ることが近道です。

「新聞記事には重要なことが書かれているため、最後まで読まないと生容を理解できない」と考えている方は少なくありません。これは大いなる誤解です。新聞記事は大事なことから順に書かれているからです。

記事は大きく3つのパートに分けられます。1見出し、2前文(リード)、3本文です。事例の記事(日本経済新聞2009年12月8日付け1面)を見てください。

大きな文字で書かれているのが見出しです。見出しはその記事にどういうことが書かれているのか、ひと目で読者に理解してもらう役割を持ちます。いわばひと目で記事の内容を把握してもらうためのものです。読者はまず見出しを読むことで、自分にとって読む価値のある記事かどうかを判断できます。

興味を持ったら次に前文を読みます。前文は見出しよりは長いですが、その分詳しく記事の概要が書かれています。

さらに続く記事が本文です。新聞の1面に出ている記事は本文が長めです。しかし、本文は後になればなるほど補足的な内容になっています。記事は重要なことから順に書かれているからです。忙しければ読まなくても構わないのです。新聞記事は見出しと前文を読めば大体の内容はつかめる構造になっているのです。

時間に余裕があれば、最後まで読むことが望ましいのですが、そうでなければ見出しと前文だけでも十分と思います。忙しい朝には最後まで読むよりも、1本でもチェックできる記事を増やすほうが得策です。

2ニュースはドラマ!あらすじをつかもう。
ニュースはよくドラマに例えられます。いくら人気俳優が出演しているドラマでも、評判を聞いていきなり途中から見始めてもストーリーは理解できないでしょう。面白味も感じられません。しかし、我慢してしばらく見続けていると、おぼろげながらも人間関係が見えてきて、ドラマの先行きを自分なりに予測できるようになります。

ニュースを追うのもこれに似ています。いきなり経済ニュースを読んでもチンプンカンプンですが、しばらくすると内容がつかめるようになります。

最近の小売店の店頭を見ると、プライベートブランド(PB)商品が増え、低価格志向を強める消費者の人気を集めていることに気付かされます。1991年にバブルがはじけた後の状況を知る人ならば、リーマン・ショック後の経済危機を受け、同じような現象が起こるだろうということは容易に推測できたのではないでしょうか。景気が悪くなれば低価格志向が強まります。そうなれば大手量販店のPB商品や新型のディスカウンターの台頭は十分予想できることです。

3言葉の意味を正しく把握しよう
ニュースを把握するために大事なのは、ニュースに登場する新しい言葉の意味を正しく理解することです。経済ニュースは専門用語が多いのでなおさらです。日本経済新聞の場合、ここで役立つのは朝刊の3面に掲載されている「きょうのことば」です。1面に出ている記事の重要な言葉をここで説明しています。1面の重要記事を見て「もうお手上げ」と思ったときには、ぜひ3面を見てください。理解するためのヒントがあります。

こうしたことを続けていると、自分の得意分野や不得意分野が見えてきます。金融、証券には強いが、消費、マーケティングには弱いといった具合です。

毎日の新聞からは今、何が起きているかは確認できますが、歴史的な経緯や背景などまでは把握できないことがあります。まとまった情報を吸収するには本を読むことも大切です。「日経文庫」(日本経済新聞出版社)のシリーズは経営全般から会計、法務まで幅広いジャンルを網羅しています。1冊1冊はそれほど厚くないので、短時間にまとまった知識を取り入れるうえで適しています。各分野のさらに骨太の知識を得たいという人には「ゼミナール」シリーズ(同)もお勧めです。

4情報感度を高める
新聞を読むことを習慣にすることで、日経TESTの知識問題の正答数は相当上がると思います。しかし、生の経済問題に対応できるようになるには、平素から広くアンテナを張っておくことが必要です。それは決して難しいことではありません。家族で買い物や食事に出かけるようなシーンでもかなりのスキルアップが期待できます。

スーパーの売り場に行ったら、どういう商品が人気を集めているのか、価格動向はどうなのか、要チェックです。企業は環境変化にいかに適応していくかが重要です。小売店の売り場などは環境変化を如実に反映する場です。

企業の戦略を読みとることもできます。最近の文具売り場はさまざまな大学ノートが発売され活性化しています。罫線にドットが付き、書き出し位置を上手にそろえられるもの、学校で配布されたプリントがきれいに張れるようにサイズを少し大きめにしたもの、見出しやキーワードなどを書き込むエリアがあり、情報を整理しやすい米国の大学流のノートなどです。大学ノートの市場は成熟市場といわれていたのですが、新タイプの登場がビジネスパーソンの需要を刺激し、市場が拡大に転じています。

(2)知力編 考える力をつける

これまで紹介したことを習慣化してスキルを高めれば、知識を問う日経TESTの問題に対応する力は高まっていきます。しかし、日経TESTには知識をベースに考える力を問う問題も出題されます。

1大きな流れに注目する
考える力を養ううえで、記事と記事の関係を考えることは大いに役立ちます。1つの記事を読んで理解したらそれで終わりとせず、他の記事との関係を追求するとトレンドが見えてくるものです。

2009年12月30日の日本経済新聞朝刊1面にはインタビュー連載、「2010年日本と世界」の4回目が掲載されており、三菱商事の小島順彦社長が「アジア内需」について語っています。「グローバル化する世界での成長は単純に内需・外需ではくくれない。他国・地域との連携が重要になる。アジアの内需は急拡大しており、この成長に日本が協力することで新たな需要を取り込むことが可能だ」。

かつては「アジア市場の開拓」という表現が一般的でしたが、最近は「アジア内需の開拓」という新しい表現が用いられるようになってきています。新しい言葉に象徴されるように、日本のかかわり方が一層強み込んだものになっていることに留意すべきです。

同日付けの11面、投資・財務面には個別企業の関連した動きが出ていいます。見出しには「アサヒ、経常益920億円超今期『中国』好調で予想上回る」とあります。前文を読むと、アサヒビールの国内ビール事業は外食産業の縮小で苦戦しているものの、中国での飲料事業の利益が業績に大きく寄与していることが分かります。

同じ日の投資・財務面には、2009年の企業の業績や財務を総括した記事も掲載されています。この記事によれば、企業業績は2009年3月期の下半期に1兆5000億円強の経常赤字(3月決算企業)に転落しましたが、同年末までにコスト削減、世界的な景気刺激対策で回復に転じました。その過程で日本企業の主戦場は欧米からアジアなどの新興国に移りました。日産自動車の稼ぎ頭は中国となり、スズキはインドで好調です。アジア内需の開拓が日本企業にとって急務になっていることが納得できます。こうしたことを意識して新聞を読んでいると、関連の知識が増えていくのです。

2自分・自社に置き換えて考える
もう一点、高スコア獲得者に対策について尋ねた際、多くの人が指摘したのは、記事に出ていることを「分かった」で終わらせず、「自社に置き換えたらどうなるか?」などと考える習慣を持つということでした。

最近よく耳にする言葉に「産業観光」があります。政府の観光立国行動計画は、産業観光を「産業に関する施設や技術等の資源を用い、地域内外の人々の交流を図る観光」と定義しています。ものづくりの現場を訪問し、地元の人々との交流を通して知的好奇心を満たすという点で、旧来の名所見物型の観光とは異なります。

中小企業自身がものづくりの魅力を広く伝えるために「ものづくり観光」を企画したり、修学旅行生向けにホテルが地元の工場を案内する催しを用意したりするケースがあります。従来は観光の対象とはいえなかった分野が注目され、企業イメージの向上や地域活性化に積極的に活用されるようになっているのです。

このようなニュースに接した際、「なるほど」と感心するだけでなく、「わが社にはどんな観光資源があるだろうか」と社内を見回してみることは重要です。それがきっかけとなって、予想外のビジネスチャンスが生まれるかもしれません。

このような思考を巡らす際に心がけていただきたいのは、自分なりに仮説を立て、事態の推移を見ながらそれが正しかったのかどうかを検証すること、そして、経営者や幹部の立場になって考えてみることです。一般社員の裁量の範囲は限られていますが、トップになった気持ちで考えてみることは、幅広い思考をするためのトレーニングになります。

4受験者の声

荒井昇一(あらい・しょういち)氏(33歳)第3回844点
大日本印刷株式会社市谷事業部市谷第1営業本部メディア開発営業部第2課プロモーショナル・マーケター

仮説を立て類推する力を問われるところが新規顧客開拓の仕事と共通
入社4年目からずっと、印刷技術を生かして、いかにビジネスを広げていくかという新規顧客開拓の仕事をしています。最初のころ、取引先になりそうな会社についてまったく勉強不足だということを痛感しました。すると、ある先輩から「新規開拓をやるなら新聞を読め」といわれたんです。それ以来、愚直に日本経済新聞や日経ビジネス、日経ビジネスアソシエなどのビジネス誌を読んできました。日経と別の全国紙1紙は6年間、1日たりとも読まなかった日はありません。

日経TESTは2008年秋の第1回テストを会社の団体受験で受けたのがきっかけです。参考書の『論点解説日経TEST」を読んだところ、話題の幅が広く、出題範囲は360度だぞと思いました。案の定、思っていたほどのスコアは取れませんでした。なかでも、会計や法務など普段あまり出れないジャンルは明らかに欠落していることに気付きました。

日経TESTのいいところは、ただ何かを暗記してもだめだというところだと思います。多くの問題は、出題の背景にこういうニュースがあり、てこから類推するとこうではないか…と仮説を立てながら解いていくことが必要。そこが私の仕事のやり方と関係が深いところです。

特別に日経TESTのために勉強したわけではありません。ただ愚直に新聞やビジネス誌を読み込んできただけです。ただ、その記事から何を読み取るか、どんな仮説を立てるか、自分なりの「記事トレ」をやってきたということです。それが自然に日経TESTの準備になりました。

根本成樹(ねもと・しげき)氏(38歳)第3回819点
日立マクセル株式会社グローバル営業本部オプトコンポーネンツ営業部

きっかけは経済危機力試しのつもりで挑戦
日経TESTは3回目で初めて受験しました。きっかけは2008年秋に起こった世界的な金融危機。あまりネガティブにならず、この先どうなるのだろうという意識で情報を追う努力をしていました。情報を集めそこから将来のビジネスの先を見通すという作業の中で、その成果を何かで試してみたいという思いが強くなりました。客観的に自分のビジネス能力を評価するのに日経TESTはうってつけの存在でした。また、金融機関に勤務する友人の勧めも受験の後押しになりました。

テスト対策のようなものは特にしませんでした。基本は毎日の日経を丹念に読むこと。ほかには時折、日経ビジネスや日経トレンディなどの雑誌にも目を通しました。情報は読みっぱなしでは生きてきません。ある企業が倒産をしたというニュースに接したら、それがどう自社に影響してくるのか、自分の立場から見た仮説やシナリオを描くように心掛けています。

事前準備無しの受験だったので、出題範囲が広いことには正直面食らいました。出題範囲の広さに対処するには、視野を広く持つことが大切です。私は消費者と企業人の視点をもって生きてきましたが、最近、少しではありますが投資を始めました。投資家の視点があれば企業の事業内容や財務の知識も自然に養われると思います。さらに経営者としての視点があれば有利でしょう。これからは、投資家の視点、経営者の視点も加えて、仕事に生きるビジネスの力を培っていきたいと思います。

日経TEST全国一斉試験実施要項

日経TEST 全国一斉試験実施要項
主催 日本経済新聞社・日本経済研究センター
実施日 第8回 2012年6月17日(日曜日)午後1時
第9回 2012年10月28日(日曜日)午後1時
試驗会場 全国主要都市
申し込み締め切り 第8回 2012年5月15日(火曜日)
第9回 2012年9月25日(火曜日)
申し込み方法 ホームページ(http://ntest.nikkei.jp/)からお申し込みいただけます
主要書店の店頭に配布の申込書もご利用いただけます
受驗料 5,250円(税込み)
出題形式 問題は四肢択一の選択式、解答はマークシートに記入
出題数 100問
試驗時間 80分
出題分野 経済・ビジネスの基礎、金融・証券、産業動向、企業経営、消 費・流通、法務・社会、国際経済など幅広い分野から出題
成績発表 テストの結果は上限1000点のスコアで表示
テスト実施の約1ヵ月後に成績表と公式認定証をお送りします
受驗資格 経済・ビジネスに関心のある方ならどなたでも受験できます
ホームページ http://ntest.nikkei.jp/
※詳しくはホームページ (http://ntest.nikkei.jp/)をご覧ください。

 

詳しくはホームページ(http://ntest.nikkei.jp/)をご覧ください。